愚兄の消火活動
あけましておめでとうございます。(2020年1月1日)
当作品は番外編とか作らず平常運転で進めていきます。
バケツに組んできた水をジュティに思いっきりぶっかける。
「思ったよりきれいな水ね。」
「生き物いても文句言うなよ。」
「わかってるわよ。」
一歩前に出て戦闘の空気に変わる。
クトゥーはクディに支持を出す。
「クディ空いているバケツがあればガンガン汲んできてくれ。」
「がう。」
クディが空のバケツを持ち川と小屋を行ったり来たりを繰り返す。
クトゥーは戦況を見てバケツを構えている。
ヴィツチジェとジュティが動き始めた。
「クェェエエ。」
炎の玉を数発ジュティに向かって飛ばす。ジュティはスムーズに玉を回避する。
「あぁぁ危ない。」
「があぁあぁあ。」
後ろで二人の悲鳴が聞こえるがジュティは振り返ることなくヴィツチジェを見ている。
「やばい。草に燃え移った、消火消火、クディ急いで急いで。」
「がうがう。」
水をかけるバシャバシャという音とシューという火が消える音が騒がしくなる。
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作戦会議の最後三人が寝る前。
「第二段階になったときは焼き鳥との戦いだけに集中してくれ。」
「?そのつもりよ。」
「いや、そうじゃなく河川敷だし森までとは言わないが燃えるものが多い。流れ弾や戦闘の勢いで燃え移る場面が多く出てくるだろう。その場合は俺達が処理する。だから周りを気にしないで戦ってくれ。」
「わかった。ありがとう、それじゃあ周りは任せたわよ。」
「がう。」
「任せろ、火からお前を完全に守ってやるよ。」
胸を叩き自信満々に答える二人にジュティは安心した笑顔を見せる。
「あ、川の水をかけるから文句言うなよ。」
「・・・ちょっと嫌だなぁ。覚悟しておくわ。」
空を仰ぎながら微妙な顔をした。
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「たぁああ。」
「クェェエ。」
ジュティが接近し剣と嘴が交差する。お互いにダメージを受けないように距離を調整しながら打ち合う。
ヴィツチジェは遠距離攻撃の炎の玉をメインにして攻撃を仕掛けてくる。ジュティも回避や風魔法による攻撃で相殺する。お互いに拮抗した状態が続く、ダメージはお互いにはないものの周囲は流れ火によって火が燃え移り始めた。だんだんと周囲が明るくなってくる。
「どりゃあ。あ、ジュティがそろそろか。」
しかし、二人の懸命な消火活動によって大きく燃え広がることはない。また、定期的にジュティに水分補給が行われる。
しびれを切らしたヴィツチジェが大きく空を飛び接近戦を封じる。ヴィツチジェの火とジュティの風が空中でぶつかり合う。お互いに相殺し合うが何発か打ち漏らしがあり、ジュティは火の玉をヴィツチジェは風の刃を何発か受ける。
「くっ。」
「カァ。」
戦いが続くにつれ共にダメージが蓄積される。ジュティは火による熱の攻撃を受けるが定期的にかけられる川の水によって大事には至っていない、ヴィツチジェも切り傷が付くがすぐに自分の火による熱処理をして戦えないほどにはなっていない。しかし、長い時間の集中状態と激しい動きによる疲労が彼らの体力を奪う。
「ハァ。」
「カァ。クゥァァアア。」
空中で体勢を立て直し今までよりも速い火の玉を放つ、勢いにより楕円形の玉になり襲い掛かる。
(速い攻撃じゃ今までと同じよ。)
今までの対処の様に風魔法を斬撃にして飛ばす。今までの攻撃なら火が風魔法によって裂け、辺りに飛び散る。しかし今回の攻撃は炎が散った後も何かがジュティを襲う。
「なっ。」
何発かの攻撃を腕や足に掠り切り傷が生まれる。
「何!?」
足元に数枚の羽根が突き刺さっている。
(これね、妙な小細工を。)
目を戻すと第二波が襲い掛かってくる。撃ち落とすことはやめ避けることに専念する。大きく動かされるため体力を消費させられる。
(どうにかしてあいつを撃ち落として接近戦に持ち込まないと決定打のないこちらがジリ貧で負けてしまう。さて、どうしようかしら。)
ジュティに名案はなかった。熱による汗だけではなく焦りによる冷や汗が流れるのも感じた。頭を回そうと思っても回避を促されうまく思考がまとまらない。
ジュティが戦火を交えている最中もどんどんと燃え盛る周囲を燃え広がらないように優先順位をつけながら消火を行う二人。
「クディ、良いペースだぞこの調子でじゃんじゃん持って来い。」
「がうぅう。」
だんだん楽しくなりクディは生き生きと運搬を続ける。
「あーあー、行き詰ってるな。まあ、俺も空中の奴なんて相手したことないからな。」
必死に回避を続けているジュティを見ながらそうつぶやく。
「ちょっと助け舟を出すか。
おーいジュティ避けながら耳だけ貸せ。」
その言葉に一瞬クトゥーの見て戦闘に集中する。その行動に声は聞こえていると判断し言葉を続ける。
「行き詰ってるならまず自分の手札をゆっくり整理するんだ。そのあとに周りに何があるか細かいところまで観察する。次に今の問題点とどうしたらいいかを確認する。ここから柔軟な発想が必要だ。そして最後に何ができるか案を練るんだ。それで何も出なかったら諦める。以上だ。」
そのまま消火活動へと戻った。
(バレバレだったみたいね。)
回避を続けながら言われたことに従いゆっくりと考える。
(まずは自分の手札ね。えーっとまず今持っている剣による攻撃、何かを切ったりすることもできるけど、あの焼き鳥以外切るものは無いし木や枝を切っても仕方がないか。
魔法は火と風、風の方が得意だけどあの攻撃を吹き返す程の威力は出せない、火もあいつほどの威力は出せない。
問題点としては空中の相手に対する攻撃手段がないこと高度が高すぎて遠距離攻撃を余儀なくされる、そうなると避けられたり迎撃されたりしてしまう。剣の当たる範囲での戦闘ができれば何とかなる可能性が出てくる。
後は周りが川に木に石に羽。特に使えそうなのは川の水くらいよね。後は正直微妙ね、後はクトゥーとクディ、小屋と周囲と私を火から守ってくれているわね。)
クトゥーの助言があり冷静に状況を整理することができた。落ち着いたことにより攻撃を最小限で動くことができ体力の消費を抑えられている。しかし、ジリ貧な状況に変わりはない。
(さて、解決策を考えましょうか。近距離戦になるように誘導しないといけないのよね、あんまり遠距離戦の心得を持っている訳じゃないのよね、遠距離だと嫌がる状況はどんな状況かしら。
・・・まあ、攻撃が当たらなくなることかしら、後は近づかれることか。飛べないし、近づくことはできないわね。後は攻撃が当たらない状況か。そういう状況は総じて視界が悪い状況かしら。)
遠距離の経験の少ないジュティは頭を悩ませた、イーワイ城に勤め始める前は冒険者としての経験があるがパーティを組んだことはなく、学んできた流派は、近距離の剣術のみを扱う流派であり、風魔法とその魔法による遠距離攻撃は独学で学んだ付け焼刃である。遠距離として使うことは少なく距離を調整するためのけん制でしか使ってこなかったため、本格的に使う技術を心得ていなかった。
(・・・。)
少ない経験を思い出しながら懸命に思考を回す。
(・・・。視界。)
視界の奪い方を懸命に考える。
(考えれば考えるだけわからなくなってくるわね。)
避けながら体と脳を動かす。
(・・・。よし決めたわ。)
ジュティは一つの案を出す。
(諦めよう。)
彼女は対策を考えるのを諦めることを決めた。
(そうと決まれば強行突破ね。私の手は風魔法一手よ。)
回避を続けながら風魔法による反撃を開始した。隙を見つけては攻撃を放ちヴィツチジェを攻める。ほとんどの攻撃は回避される。何発かダメージにならないような当たり方をするが何の解決にもならない。脳筋のジュティはどんどんと攻める手を強めていく。
ヴィツチジェも強まる攻撃に自分の攻撃が安定しなくなってきている。しかし、有利な状況は変わらない。ゆっくりと時間をかけてジュティを攻める。
その時一発の流れ弾が大きく外れて小屋の方向に火の玉が飛んでいく。その攻撃に気づき思わず振り返り声を出してしまう。
「・・セミコちゃん!」
振り返ると小屋の前に一人の男が立っている。バケツから水を放ち錫杖で鋭い羽根を止める。
「おお、よそ見とはずいぶんと余裕があるなジュティ解決策は思いついたか。」
余裕の笑みで何事もなかったようにしている。
「今考えているところよ。」
「そうか。こっちは任せろって言ったろお前はあの焼き鳥だけに集中しな。」
「ありがとう。」
再びジュティは相手に向き直し、冷静に考え直す。
(力押しじゃ駄目ね、セミコちゃんのためにも何かいい案を考えないとね。)
セミコの危機によりジュティは思考を捨てたハイテンション状態を反省する。
(それにしてもだんだん暑くなってきたわね。
何だかじめじめした暑さね、こんなに火が飛び交っているのに何となく湿っぽいのは何故かしら。)
ジュティは周囲を確認する。空を飛ぶ燃える鳥、小さく燃え始める木々、それを懸命に消火するクトゥーとクディ、お姫様が熟睡する小屋。
「あ。」
ジュティに一つの妙案が閃く。
ジュティ対焼き鳥の続きです。次回ついに決着を迎えます。




