愚兄達の作戦
区切りがいいので少し短めになってます。ごめんなさい。
ジュティは東の森の中に入り慎重に歩みを進めていた。
周囲の魔物にも意識を張りヴィツチジェの探索を行う、周囲は暗く、慣らした目によってやっと見える程度だ。数分進むと暗い森の中に光る何かを見つける。
「あれかしら。」
光る何かに足音を立てずにそっと近づく。近づくにつれ感じる熱にジュティは確信する。
木陰に身を潜め抗原を確認する。
赤い鶏冠が赤い炎で燃えている、炎に合わさり全身オレンジ色の羽がとてもよく似合う。尾羽は長く、赤、橙、黄といった暖色系の色が何本も束ねられている。目力の強い見開いた眼と鋭い嘴が鋭く光る。
「意外とかっこいいわね、きれいな羽ね。さてそれじゃあ始めましょうか。」
ジュティは自分の剣に手をかけた。
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「それじゃあ、作戦の説明だ。今回はジュティ主体の作戦となる。俺達は完全にサポートに回る。」
「ありがとう腕が鳴るわね。」
「もちろんやばかったら俺も参入するし、撤退も考慮している。その時はクディの出番だな。」
「がう。」
「まず東の森で戦うつもりは毛頭ない、そこで第一段階はジュティのみの動きになる。」
地面に図形を描きながら説明する。四角を中心にして東に大きな円を描く、小さな円を描いて森の方に線を引く。
「ジュティ一人で森に入ってくれ、ターゲットを見つけたらとる行動は二種類だ。」
「状況に応じてってことね。」
「ああ、まず一つ目は、そこで仕留められれば仕留めきる。近づいてばれていないのであれば不意打ちをかます。倒せそうな状況ならそのまま押し切る。もしダメな場合とばれた場合は二つ目の行動に移る、相手に攻撃を仕掛けながら後退してくれ。ここでの目標は敵をおびき出すことだ。」
中心の四角の前に二つの丸を書く。
「俺達もここですぐ逃げれるように待機する。合流してこっちの有利な場所へ移動する、これが第一段階の目標だ。」
「異論はないわ。」
「無理だけはするなよ、倒すことじゃなくておびき出すことを第一に考えろ。」
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剣を抜き足に力を入れる。ヴィツチジェは向こうを向いていてジュティに気づく気配がない。
ジュティは首筋を切り払うイメージを強め集中する。
「ふー。」
静かに息を吐き一度全身の力を抜きながら新鮮な空気を取り込む。
重心を前に持っていき滑らかに加速して一気にヴィツチジェに接近する。
木陰から出るガサガサという音に反応してジュティに目を向けながら跳ねるように飛び距離をとる。
ジュティも間合いに入るや否や瞬時に切り払い首を狙った。剣先を掠めオレンジの羽毛が少しと真っ赤な血が飛散する。
「くっ。」
ヴィツチジェはかなり慎重な生き物で音と共に後ろに下がったためかすり傷しか与えることができなかった。
ボウッと傷と落ちた羽を口から吐く炎で燃やした。視線をジュティに向けてきということを認識し鶏冠の炎が強くなる。
ジュティはすぐに踵を返して撤退した。
「ここで終われば早かったんだけどそう甘くはないか。」
逐一振り返りながらヴィツチジェがついてきていることを確認する。森の中を華麗に木々を避けながら飛んで近づいてくる。そのスピードは速くジュティは追いつかれることを確信する。
剣に魔力を集中させ風の魔法を乗せて切る。ジュティの鋭い剣筋の流れに乗り風の刃が空中を駆けて行く。ヴィツチジェもその攻撃に反応してスピードを緩める。そんな攻防を繰り返し森を駆け抜けた。
「クトゥー、クディ準備して出るよ。」
「了解。」
「があぁぁああう。」
クトゥーがジュティに近づきジュティはクトゥーを追い越しその瞬間クトゥーは石を投げヴィツチジェをけん制する。クディも走り出し二人がそれを追いかけて小屋に乗り込む。
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「撤退し合流したら第二段階になる。西の方に川が流れている、その河川敷で決着をつける。」
四角から西度方向に線を描き決戦の場を説明する。
「水ね。」
「ああ、うちのメイン主力は近距離になる。木々も少ないし燃え移ればすぐに消火ができる。ジュティも常に体を濡らしながら戦えるように俺とクディがバックアップする。」
「あ、そのためのバケツか。」
「そういうこと。」
そこまで行ってクトゥーは笑い地面に書いた地図を消した。
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ジュティは屋根に乗り、クトゥーは手綱を持ちながら西の方へ走っていた。
「来てる来てる、そのまま走って大丈夫。」
「わかった。」
森とはいえないにしろ木々は生えているため、クトゥーが手綱で支持を出しスムーズに駆け抜けていく。ジュティは風魔法を使ってヴィツチジェをけん制して距離を保ち続ける。
ヴィツチジェもしびれを切らしたのか、上昇し木々の上へと抜ける。
「なんか上に行ったんだけど。」
「何?気をつけろ目を離すな。」
「前の方に行った。」
クトゥーも上を見て確認する。すると先行したヴィツチジェが急降下してくるのが見えた。
「そのまま進んで迎え撃つわ。」
「わかった。風魔法を乗せろ教えたやつ。」
体全身を燃やしながら急降下してくるヴィツチジェに絶妙のタイミングでジュティは合わせ迎撃した。嘴で剣と打ち合い弾かれたヴィツチジェが体勢を立て直し追撃をしてくる。ジュティも風魔法を使いながら対抗する。
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「燃える鳥に戦うにあたり一つ覚えておいた方がいいことを教える。」
「何々。」
「魔力を吐いた息のイメージを乗せてから喉の内側から外に出す様に扱え、武器にもまとわせると多少燃えにくくなるだろう。」
「何で?」
「空気中の息より吐いた息の方が燃えにくいからな水が手に入るまでの気休めにしかならないと思うがな。」
「できたわ。」
話を聞きながら実践し、さらっとやってのける。
「風魔法はうまいな。」
「これしかやってこなかったからね。」
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うまいように燃えない様子に何となくヴィツチジェがイライラしているように見えたジュティはにやりと笑いながら迎撃を続けた。
「もうすぐ、森を抜けるぞ。」
木々を抜け水の音が聞こえる小屋を川沿いまで持ってきて止める、ジュティも屋根から降り戦闘態勢をとる。
木々の上から神々しく光りヴィツチジェがゆっくりと飛んでくる。月夜に太陽が輝いているかのように明るくしっかりと三人を見ながら近づいてくる。
堂々としたたたずまいにジュティは息をのむ。クトゥーとクディは小屋からバケツを取り出し、水を汲んでいく。
「クケェェェエ。」
高く響くヴィツチジェの鳴き声に体を震撼させる。
ジュティとヴィツチジェは天と地で見合っていた。お互いに目を離さずにしっかりと見合う。
「始めようか焼き鳥。」
「カァァァアア。」
ヴィツチジェも雄たけびと共に体を燃やす。
「クトゥ、クディ水よろしく。」
「応、任せろ。」
「がう。」
ジュティたちとヴィツチジェの戦いが本格的に始まりを迎えた。
こういう作戦のある戦いって、作戦が分かってた方が好きですか、作戦が分からずに最後に発表される方が好きですか?今回は中途半端に小出しにしていく形にしてみました。




