愚兄と隣町スフォーヒ
やっと到着します。
追記:一部世界観に合わない表現がありましたので修正させていただきました。修正内容は鶏をイゼロスリという架空の生物に変えさせていただきました。お気づきの方も多いと思われますがこの作品の動物は架空の魔物に変えていました。ヨンディもティムディティもモチーフとなった動物がいます。鶏がイゼロスリという鶏をモチーフとした魔物に変わった以外修正はありません。今後も気を付けて投稿をしていきます。今回は大変申し訳ありませんでした。
再び落ち着きを取り戻し、セミコは冷静になる。
「私の力が必要ってどういうことですか。」
「その体質を活かしてもらいたいんだ。」
「この体質をですか?」
自分のコンプレックスだった漏れ出す冷気を活かすと言われ驚きを隠せない。
「ああ、実は城下町の食品を扱う店はとあることで食品を保存しているんだ。」
「食品の保存?」
予想もしていない話が来てセミコは首をかしげる。
「そう、二つの層に分かれた箱を使うんだ。上の段には氷魔法で作った氷を置いて下の段に食品を置いて食品が傷むのを防ぐんだ。」
「へぇー。」
「でも、こういう小屋や家庭用には向かないんだ。」
「どうしてですか。」
「びしゃびしゃになるからだ。」
「あー。」
「しかし、キミがいればそれが解決する。」
ビシッとセミコを指さして言い放つ。
突然刺され、私?と自分を指さしながら首をかしげる。
「君は常に氷のような冷気を放っているだろう。言ってしまえば、とけないこおりみたいなものなんだ。」
「何だか、氷属性の技の威力が上がりそうなフレーズね。」
「何の話だよ。まあいい、それでその道具のように君専用のリュックを作る。そうすればこのパーティの食糧事情が向上する。それは、パーティの士気に大きくかかわるからな、君の力はとてもすごいんだ。」
初めて認められて感銘を受けるセミコ自然に口角が上がる。
堂々と話したが大事なことに気づいて口を開いてばつの悪い顔をするクトゥー。
「なんか道具みたいに言ってごめんね気を悪くしちゃったかな。」
「いえ、初めて自分が必要とされてとてもうれしいです。」
「あ、そうそれは良かった。」
笑顔のセミコを前にして言葉が止まった。
「さて、とりあえず隣町に行くぞ。箱の設計作成はゆくゆくやっていくそれまで保存食な。」
「了解。」
「わかりました。」
クトゥーは入り口を飛び出しクディに声をかける。
「よしクディ休憩は終わりだ出発するぞ。」
「がう。」
再びクトゥー一行が歩き出す。
しばらく歩き森を抜け隣町に到着した。農業を主にして発展した町スフォーヒだ。農業を主にしているため人口はかなり少ないが町としての面積が凄く広い、森や山に囲まれていて素材集めや修行に来る冒険者も少なくは無い。ゆとりのある上位冒険者が多く永住しているためより安全性がある平和な町だ。
「スフォーヒ到着。」
「やっと着いたわね。」
「そんなに遠いところから旅をしているんですか?」
「いや、イーワイ城下町からのスタートだよ。」
「?隣町ですよ。」
「まさか一月もかかるとは思わなかったわよクトゥー。」
「???」
二人が隣町の到着をしみじみと感じている中セミコだけが理解できずに疑問符を浮かべていた。
入口へと移動し止められる。
「ああ、説得するから二人は先に入っててくれ。」
「了解。」
「わかりました。」
二人は先に降りてライセンスを見せ、町の中に入っていった。
「とりあえずギルドに行きましょうか。」
「ギルドですか。」
「ええ、私の貯金以外もうお金は無いし、セミコちゃんの特製リュックの材料費もかかると思うからね。」
「何かすいません。」
「気にしないで、私もあなたの力を高く買ってるんだから。ついでにFランクで揃えようか何か問題があったりする?」
「いえ、大丈夫です。」
「そう。」
農場の間に走る大きな道を歩きながら今までの旅の話をしながらギルドへと向かった。
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「なあ、今でも夢なんじゃないかと思いたいんだけど。」
「現実だろ、現に二人がその光景をはっきりと見て一人がここにいないのだから。」
「そうだよな。」
二人の男が冒険者ギルドの酒場で話し合っていた。
「荷物も無いしそろそろ何か仕事しないといけないんだが、・・・行けるか?」
「一晩空けても震えが止まらないんだ、ろくに武器も持てず魔法も出来る気がしない。」
「だよな。もうすぐCランクだったんだけど自信もなくしたよ。」
二人は暗い表情で話を続ける。昨日、森で恐怖体験を受けた二人はばたばたとスフォーヒに駆け込み一夜を明かした。トラウマになっているのか武器を構えることが出来ずにこうして酒場で休んでいた。
入口から誰かが入ってくる音を聞き二人は入口を見る。任務が終わった冒険者にしては早すぎる時間であるため二人は注目した。その人物を目撃し驚いた、荷物持ちの少女が美人の冒険者を連れて帰ってきたからだ。
目を合わせ頷き合い二人はガタっと立ち上がって二人の元へ行く。
「セミコお前生きてたのか。まあいい、すいません連れがお世話になりました。もしソロ活動をされているのであれば一緒に行動しませんか?森には恐ろしい殺し屋がいるようですし。」
まくし立てるように話す一人の男、セミコを使って綺麗な女性とお近づきになろうという魂胆が見え見えである。
もう一人の男が呆れながらセミコを確認し、あることに気づく。
「セミコ、荷物はどうしたんだ。」
「あ。」
持っていたセミコの荷物は全て小屋に置いて来ているためかなりの軽装である。
「えーっと。」
「あなた達ねいたいけな少女に荷物を全部任せた挙句、逃げ出して森に一人取り残した連中は、悪いけどセミコちゃんは私達のパーティに入ってもらったからあんたらとはもう関わらないわよ。」
「な、セミコ余計なことを。」
美人に悪い印象を植え付けられて逆恨みをする男。それを横目にもう一人の男が話し始める。
「わかりました、セミコは任せます。ただ荷物は返してください。」
「ふん、セミコちゃんが持ってた荷物なんだからセミコちゃんのものに決まってるでしょ。それともあんたらのものという証拠があるの。」
旅では基本的に何が起こるかわからないのでライセンスなどの貴重品は身につけているものにしまうことが多い。二人もその思考のため荷物に証明できるものが無い。
「見ればわかりますし、もともとセミコもパーティだったのだから私達のものだとわかるだろう。」
「わからないわ。ちゃんとした証明が無いと判断できないわ。そうね、男物の下着くらいは返しましょうか。」
やいのやいの言い合いを続けていると再び入口から音がして言い合いが止まり全員で入口を見る。
男二人はその姿を見て震えた。忘れもしない昨日の悪夢が蘇ってくる。
「いやぁ、悪い遅くなった。説得に時間がかかったよ、流石に中に入る許可は出なかったから外で待機してもらってる。」
子どものように小さい体、見間違えるわけが無い。
「ん?トラブル?どったの。」
「それが。」
「「すいませんでした。」」
急に男二人が腰をきっちり曲げて謝罪してくる。
「あなたのパーティとは知らずなめた態度をとりました。」
「命だけは勘弁してください。」
鬼気迫るその謝罪にクトゥーは考え込む。そして思い出す。
「ああ、あの時にいた二人かな。別に取って食おうって訳じゃないんだから何もしないよ。」
朗らかに答えるクトゥーに少しだけ安堵する。
二人の間を通るように入ってきて丁度三人の頭を高さがそろう。
「君達が何もして来なければだからね。何かしてきたら容赦なく殺すよ。」
首筋に言葉のナイフを当てられ全身に悪寒と鳥肌が走った。
ジュティは全てを理解し合点がいき、呆れた様子でクトゥーを見ている。セミコは訳がわからず放心状態になっていた。
「ところで何でもめてたの。」
「あ、荷物。」
「荷物?」
セミコが小屋へと走り入口を出てしまったためジュティが説明する。
「セミコちゃんの持ってた荷物に彼らの荷物があったんだってセミコちゃんが持ってたんだもん返す義理は無いわ。」
「お前の荷物じゃないんだからどっちにしろ持っていたセミコが決めることだろ、何でジュティが熱くなってるんだよ。」
「だって・・・。」
返す言葉が見つからなかったのかジュティはそこで黙った。
セミコが戻ってきて男達に荷物を渡した。
「はい、ではこれお返ししますね。私はこの方達についていくのでこれで。」
そういいつけてクトゥーたちの元へと戻った。
「行きましょう。」
「そうだな。」
「んー。」
腑に落ちないジュティを引っ張り三人はカウンターへと向かった。
三人が離れたところで二人の男はその場でへたり込んだ。
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「良かったの返しちゃって。」
「いいんです。これで彼らとの縁も切れました。私のためにありがとうございますジュティさん。」
「ああ、そういう考えもあるのか。」
素直なまぶしい笑顔でお礼を言われジュティは照れくさくなり頬を少し染めた。
しかしすぐに顔を戻しクトゥーを睨む。
「というかクトゥー自分のやったことくらい覚えておきなさいよ。そして、何さらっと人殺しに走ってるのよ。」
「町の領域を抜ければ無法地帯だからな、俺も積極的に人殺しをするつもりは無いよ、俺から荷物を巻き上げようとしたから軽く反撃したら死んだだけだ。」
「まあ、良いけど。」
カウンターに着きセミコはライセンスの変更、クトゥーとジュティは賞金首や依頼を見ていた。
「いい首無いわね。」
「いい依頼も無いな。」
レベルの高いギルドのため大きな依頼は根こそぎ持っていかれている。残っているのは畑の肥料の素材集めや畑の手伝いなどしょぼいものだらけだった。
二人が悩んでいるとセミコが合流してきた。
「何かありました。」
「何もなくて困ってる。」
「そうですか。」
諦めてジュティ振り返ると冒険者のパーティが窓口で残念そうな顔をしていた。
「そうですか駄目でしたか。」
「ああ、すまないが他をあたってくれ。」
どうやら依頼を失敗したようだ。ジュティは近づき声をかける。
「どうしたんですか。」
「ああ、依頼を失敗してな。」
「難しい依頼なんですか?」
どれどれと受付嬢の持っている依頼票を手に取って見る。
依頼:ヴィツチジェの討伐。
「このヴィツチジェってのは?」
「火を纏ったり火を吐いたりしてくるイゼロスリみたいな奴さ、こいつがまた強くてな。」
イゼロスリは赤い鶏冠が特徴の鳥である。肉や卵がおいしく家畜用に飼育されているほど生活に馴染んでいる魔物の一つだ。野生のイゼロスリはかなりの高さまで飛ぶことができるが飼育されているものはあまり飛べない鳥としても有名だ。
「あんまり聞かない魔物ね。」
「そうだな、この辺じゃ見ないな、もう少し南の地域じゃ極稀に出現して討伐依頼が出るそうだ。」
「被害は?」
「何棟か燃やされたそうだ俺達も何とかしたかったんだが歯が立たなかったよ。」
「んじゃそれ受けるわ。」
「Cの俺たちじゃ話にならなかったしB以上あるいは、え、今何て言った?」
自分の耳を疑ったパーティリーダーがジュティの方を見て固まる。
「だから受けるってお姉さん手続きお願い。」
「待て待て、今、Bランク以上に上げる話をしてたんだ。お前何ランクだよ。」
「Fよ。」
「エフぅぅ?」
「そ、フリーのF。」
そこにクトゥーとセミコが近づいてきた。小さい子供が二人来た。
「いい依頼あったの?」
「あったわ。焼き鳥を倒しに行くわよ。」
「は?」
何言ってんだこいつといった表情でジュティを見返した。
「燃えるイゼロスリ、ヴィツチジェの討伐よ。」
「ああ?もっと南のとこの魔物だろ、流れか?」
「ぽい。」
「まあ、すぐ会えるんだったら何とかなるだろう。燃えるイゼロスリか。」
自分たちの男3女2人のパーティで歯が立たなかった依頼に子供二人連れの冒険者が挑もうとしている。流石のCランクも止めに入る。
「待て待て、嘗めすぎだろ、子連れで勝てるような相手じゃない。」
「子連れ?」
子連れの意味が解らずジュティが首をかしげる。クトゥーが大きなため息をつく。
「見えないと思うが俺は25だ。」
「ええええええええぇぇぇぇ!!。」
「・・・あ、言ってなかったか。」
セミコが一番驚いた。
長かったですね隣町にやっと着きました。今回の依頼はジュティメインのバトル展開を予定しています。




