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愚兄と呼ばれた男の自由な旅  作者: おこめi)
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愚兄と冷たい少女

メインかわいい枠の登場です。

 グルーフの王位授与式から一夜明け、良く晴れた雲一つない良い天気の中クトゥー一行は移動していた。森の道は木々が開けていて日差しが大いに差し込んでくる。

 クディが小屋を引きながらゆっくりと歩いていく、クトゥーは手綱を握りながらぽかぽかとした陽気に当てられ、眠気に促されていた。ジュティは後ろの荷台を出して素振り稽古に励んでいた。


「いい天気だなぁクディ。」

「がぁあう。」


 クディも楽しそうにゆっくりと歩いている。


「こんないい天気だもんな、気持ちもいい気持ちになるな。」

「がぁうぅ。」


 二人とも楽しそうに言葉を交わしながら呑気に歩いて行く。


「クトゥー、これどこに向かってるの。」


 後ろからジュティが叫び声をかける。それに振り返りながら答える。


「とりあえず隣町に行こうかと思ってる。依頼とか探して少し旅の資金を作ろうかと。」

「了解。」


 会話を終え素振りに戻る。

 

「!。クディ止まれ。誰か出てくる。」

「うぎゃ。」


 突然クトゥーが目を覚まし手綱と声でクディを止める。

 クディが止まると後ろから短い悲鳴が聞こえ、がさがさと音がして大きな荷物を背負った人が出てくる。

 140㎝程の小さな体に二倍くらいの大きな荷物を背負ったとてもかわいらしい顔をした少女で少し涙を浮かべながら疲れた顔をしている。クトゥー一行を認識すると浮かべていた涙が大きくなり泣きながらクトゥーに近づく。


「よ、良がっだぁあぁぁぁあぁあああ。助けて下さいぃぃい。」

「どうしたどうした。まあ、落ち着け。まず家に入ってゆっくりしろ。話はゆっくり聞くし、君に危害を加える気もないから。まず座って落ち着こうな。」


 泣き出した少女に降りて近づいて肩に手を当てながら家に誘導する。

 そうしていると小屋の裏からジュティが顔を出す。


「どうしたのクトゥー、すごい声がしたけど。」

「ああ、何かはぐれたのかな?とりあえず話を聞こうと思って中に入れる、ジュティもいいか。」

「そうね、何かとても大変そうだしね。」


 号泣している少女を見てジュティも小屋の中に入る。

 一時間ほど経ちある程度落ち着いた少女がお茶を飲みながら椅子に座っている。

 対面にはジュティが座り、クトゥーも少女の涙と鼻水でぬれた服をタオル代わりで少女に渡し、上半身裸でジュティの隣に座っている。クディは休憩中だ。


「いや、何か着てきなさいよ。」


 かも当たり前のように座るクトゥーにジュティが指摘する。


「え、今日は温かいし寒く無いぞ。」

「そうじゃなくて、え、羞恥心とか無いの。」

「無い、というか諦めた。」

「諦めた?」


 噛み合わない会話にジュティが聞き返す。

 クトゥーはとても遠い目をし、もうどうにもならない現実を突きつけられて哀しい涙も出ない程静かな絶望した表情で答える。


「どう頑張っても成長しないんだぜこの体。」

「あ、ごめん。」


 クトゥーは身長も残念だが、体つきも残念なのである。脱いだら引き待ったムキムキボディが隠されているわけではなく、子どものような未発達な体をしている。要するに筋力がほぼ無い、ジュティが反射的に謝るほどに。

 筋力が無い代わりにその身軽さのスピードや常人以上の体力をつけ、今の攻撃を避けて急所を一突きする戦闘スタイルを身に着けた。


「というわけでもうこれ以上何にも出来ないので諦めてさらしていけるのです。」

「そう。」

「と、すまんね置いてけぼりにしてしまった。まず自己紹介と行こうか。俺はクトゥル、Fの冒険者で人間だ。」

「私はジュティ、おなじくFで人間よ。クトゥーはあだ名みたいなものね。そんで引っ張ってる未知の生物がクディ、何かって聞かれても答えられないわ。」

「がう。」


 外から聞いていたのかクディが返事をする。


「えーっと、 名前はセミコロイシアトフォビです。妖人種ようじんしゅの雪女です。Eの冒険者です。」

「長い。セミコで良いか。」

「ちょっとクトゥー。」

「あ、はい。よくそれで呼ばれてるので大丈夫です。」

「良いんだ。」


 スッと立ち上がりクトゥーが自分の部屋へと移動する。


「どうしたの?」

「いや、何か寒くなってきたから服着てくる。」

「そういえば冷えてきたわね。」


 その会話にピクッとセミコが反応する。

 二人はその反応を見逃さなかった。視線をセミコに向け、セミコはその視線に動揺していた。


「何かわかるの?」

「えと、えーっと。」

「死にそうなくらい寒いわけじゃないし攻めてるわけじゃない。落ち着いて話してくれ。」

「は、はい。実はその寒さは私が影響していると思います。」


 しょんぼりしてうつむきながらセミコは話し始める。上を着たクトゥーも席に座りなおす。


「雪女だからか?」

「いえ、通常の雪女であれば自らの意思で放たなければ凄い冷え性だなってくらいで収まります。

 でも、私は常に霊気が外に漏れてしまうんです。」

「クトゥーあんたこの子支えたとき気づかなかったの?」

「支えるので精一杯だよ。」

「あ、そうね。」


 ガッツリ触れていたことを思い出しクトゥーに聞く。

 なんとも情け無い回答とさっきの体が照合され納得する。


「範囲や効果はどのくらいのものなんだ?」

「範囲は私の周囲一回りくらいで、効果は常に2,3℃の冷気が出ています。厚手の布なんか挟むと冷たく感じないと思います。外だとすぐ飛びますし家の中でも熱が少しずつ逃げますのである程度の寒さで止まると思います。」

「確かにそうね。そんな厚い服着てるわけじゃないのに寒いとは思わないわね。」


 そういえばと納得するジュティを横で顎に手を当て真剣にクトゥーは考えていた。


「その冷気はずっと出てるのか?」

「ずっと出てます。」

「魔力は?」

「使ってる感じは無いですね。体質みたいなものだと思って貰って大丈夫です。」

「成程。」


 その後もずっと考えているクトゥーを置いてジュティが違う話題を振る。


「どうして一人で森の中に?あんまり危なくない森かもしれないけど、Eの冒険者が一人では相当自信があるか、何かあったかのどちらかよね。」

「はい、後者です。私はほとんど戦闘ができませんので男三人のパーティの荷物持ちをしてました。」

「ちょ、男三人って大丈夫だったの!?」

「はい、あまりにも冷たいので相手にされませんでした。冷えて興奮できないみたいですよ。」

「そういうもんなのかしら、どうなの。」

「ん?ああ、そうだなあまりにも寒いとそれ所じゃなくなるかもな。たつ物もたたないんじゃないか。触れるだけ熱も奪われていくわけだから冬場にやるのとは事情が変わってくるだろ。真冬の川に浸かりながらって想像するとわかりやすいんじゃないか。」

「ああ、成程。」


 意外とストレートな会話にセミコは軽く赤面して聞いていた。

 一頻り納得したところで真剣な顔に戻しジュティが再開する。


「話がそれたわね、それでその三人はどうしたの?」

「その流れでよくそこまできりっとした表情に持っていけるな。」

「えーっと、何か狼煙?見たいな一筋の煙を見つけまして荷物を全部私に持たせて三人はその方向に行きました。

 私は全部の荷物を背負い遅れながら三人を追いました。すると、そのうちの二人が叫びながらこっちに戻ってきました。何かあったのかと話しかけようとする前に、見えていなかったのかそれともとにかく逃げたかったのか私を無視してどこかへ行ってしまいました。

 こうして私は一人になり魔物に出くわさないことを全力で願いながら道に向かって歩きました。」

「そして、俺達に出会ったと。」

「はい。」

「もう一人の男はどうしたの?」


 その言葉にビクッと反応してガタガタと小刻みに震えながらセミコは話し出した。


「殺されていました。」

「殺された?魔物に?」

「いえ、多分人に殺されたんだと思います。」

「根拠は?」

「ティムディティの角がのど元にめり込んでいました。」

「えぐいわね。」

「他に外傷もなく、その方もDとはいえそれなりに腕はありましたので、一撃で尚且つ反応できないほどの速さで殺されたんだと思います。」

「その強さに二人も逃げたのね。」

「はい、私も恐怖でもつれる足を必死に動かして離れました。あまりにも綺麗な死体に震えが止まりませんでした。」


 当時のセミコは言葉に出来ない恐怖を感じ理解するのに時間がかかった。理解してどう行動すればいいか理解するのに時間がかかった。それほどまでに綺麗な美しすぎる死体だった。


「成程ね、ところでクトゥー聞いてる?」


 ずっと顎を抑えて考え続けているクトゥーにジュティは声をかける。


「ん?あ、ああ聞いてるよ。叫んでたんだろ。」

「どこの話かな?」


 途中から全然聞いていなかったクトゥーに頭を抱えながら呆れた。


「さっきから何考えてるの?」

「ちょっとね。ところでセミコこれからどうするんだ?」

「えーっと、隣町で宿屋とか商店の仕事でもしようかなって思ってる。」

「そうか、行く当て無いんだったら俺達と一緒に来ないか。」

「え。」


 突然のことにセミコが固まる。

 固まっている間にクトゥーがジュティに耳打ちする。


「それを考えていたの?名案ね。やっぱクトゥー最高。」

「だろ。」


 にやにやしながらハイタッチを交わす。

 その音に固まっていたセミコが復活する。


「は。え、どういうことですか。」


 戸惑うセミコにクトゥーが落ち着いた声でセミコに伝える。


「俺達は君が欲しい、一緒に旅をしてほしい。無理強いはしないけどできれば来てもらいたい君の力が必要なんだ。」

「私戦えませんよ。」

「構わない。」

「私弱いですよ。」

「私が守るわよ。」

「俺は守れない。」

「いいんですか?」

「こっちからお願いしてるんだ、いいに決まってるだろう。」


 にこやかに笑う二人の笑顔にうれし涙がこみ上げる。


「よろしくお願いします。」


このメンツでやっていくつもりです。今のところこれ以上増やすつもりはないです。

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