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愚兄と呼ばれた男の自由な旅  作者: おこめi)
19/97

愚兄と新人冒険者

区切りが良かったのでちょっと短めになってます。

 城下町の門の前に到着した。ライセンスを見せ町の中に入る。


「何か久しぶりな感じがするな。まずはこのティムディティの素材を売るか。ああ、ドゥエンスさんにも挨拶に行きたいな、ついでに買い取り先を聞いてみるか。ギルド通すといろいろかかるし。」


 ドゥエンスに会いに行くためにドゥミラ・モニトイへ向かった。

 店に入り挨拶をする店員を呼び止める。


「ああ、すいません。」

「はい、何かお探しですか。」

「えーっと、以前亭主のドゥエンスさんにお世話になりまして、お時間ありましたら挨拶をと思ったんですけど、いらっしゃいますかね。」

「・・・少々お待ちください。」

(何か、間があったな。)


 店員は半月ほど前に一度聞いたことあるようなフレーズを耳にしながらドゥエンスを呼びに行った。

 数分して一人の男が下りてくる。


「やあ、クトゥル君久しぶりだね。荷車は完成したかい。」

「・・・ああ、ジュティがお世話になりました。最初何で知ってるのかと思いましたよ。」


 二週間ほど前のおつかいを完全に忘れてしまっていたクトゥーは何故知っているのか少し考えてしまった。


「ほぼ完成しましたよ。今、ジュティがペンキで塗装しているころだと思いますよ。」

「ん?君だけが来たのかい?」

「ああ、ちょっと用事がありまして。」

「そうか。で、挨拶だけに来たのかい?」

「ああ、それがメインだったのですが、来る途中にティムディティを獲って食べまして余った皮と骨を買い取ってもらえるところを紹介していただきたかったんでした。」


 袋を取り出し中身を見せる。

 ドゥエンスは顎に手を当て考える。


「骨はこちらで買い取らせてもらおうかな。皮は専門家に見てもらおう、しっかりとした査定をしてくれると思うよ。」

「そうですか。ではよろしくお願いします。」


 奥へと促され、机の上に骨を並べる。若干血の付いた骨をしっかりと確認する。

 クトゥーも横で何となくボーと見ていた。

 しばらくして、ドゥエンスが息をつく。


「査定が終わりました。なかなかいい品ですね、きれいに分解されています。」

「・・・っは。ああすいません終わりました。」


 無言でぼーっとしていたのと移動の疲れで寝落ちしていた。


「すいません待たせましたか。」

「こちらこそすいません。」

「それで査定額なのですが。1万ギューツでどうでしょうか。」

「それでいいですよ。」


 店のお金から1万ギューツをクトゥーに手渡す。


「ありがとうございます。それじゃあこれをどうぞ。」


 袋を取り皮ごとドゥエンスに渡す。


「あの皮は査定に入っていませんよ。」

「面倒なんでおまけと思って持って行ってください。特にお金に困ってませんので今日の宿代の足しになれば位で考えていましたので十分ですよ。それじゃあもう行きますね。」


 そう言って店を後にした。

 少し多めに手に入った宿代を手に入れ晩飯を食べるために食堂に向かった。

 混み合っていてがやがやと仕事終わりの冒険者や商人達であふれかえっていた。相席するしかない状況で三人の冒険者のパーティの席に座った。


「すいません相席よろしいですか。」

「どうぞどうぞ。親御さんはどちらに。」

「あ、すいません。見えないかもしれませんけど20超えてるんです。」

「え、すいませんでした。」

「よくあるので。」


 男三人の中にクトゥーは座る。


「三人は冒険者さんですか?」

「ええ、そうです。Dランクの冒険者です。この辺で稼いでいるんです。」

「まだまだ大きな依頼はこなせないのでその日暮らしの毎日ですよ。」

「そうなんですか。」


 リーダー的存在の男がしっかりとした防具に身を包み大きな剣を持ち、身軽な装備で杖を持つ寡黙な男、同じく身軽な装備で弓矢を携える朗らかな表情の男、バランスの取れたパーティと言えるだろう。

 

「あなたも冒険者なんですか?」

「名前だけですよ。Fランクの命知らずですよ。」


 冒険者にはランクがある。基本的にはEランクからSランクまでのランク制でランクに応じて受けられる任務が異なる、もちろん高ランクになればなるほど難しいが、高収入の任務を受けることができる。昇進試験などギルドのアシストを全面に受けられるためほとんどの冒険者がこのランク制の冒険者になる。その分、一定期間に何件かの任務を受けたり、税金を納めたり、緊急招集任務の参加など義務が存在する。

 ではFランクとは、義務が存在しないがギルドからのアシストを受けることができない。基本的にどのランクの任務を受けることができるが、任務によって手数料が発生する。また、ランクなどの基準がつけられないため良い評価がされにくい。

 かなり少人数の冒険者しか登録していない。しかし、腕に自信があれば飛び級で高ランクの任務を受けられるため伝説的な冒険者の多くがFランクからの成り上がりだ。そんな伝説を夢見る馬鹿野郎たちがこのランクに入り多くの人が死んでいる。名ばかりの冒険者もこのランクに入る。


「Fですか!相当腕に自信があるんですね。」

「いえ、義務に縛られたくないだけですよ、いろんな世界を見てみたいので。」

「そんな旅も楽しそうですね。」

「まだまだ、始めたばかりですけどね。」


 そういって軽い世間話をしながら食事を続ける。

 不図、冒険者のリーダーがとある話題を出す。


「そういえば、あなたは期待の新人女性冒険者をご存知ですか?」

「初めて聞きますね?」

「彗星のごとく現れた方でCランクのライセンスから急にFランクに変更したと思ったら、高額賞金首をさらっと持って来たんですよ。」

「へぇー。」

「その金額が100万ギューツなんですよ。」

「ほう。」


 なんだか聞いたことあるような話だと思いながら表情を一切変えずに話を聞くクトゥー。


「二週間ほど前に賞金首のチラシを見てから来ていないのでどこかで高額賞金首を狙っているって噂です。」

「ふーん。で名前はわかってるのか。」

「えーっとなんでしたっけ。」

「ジュティだ。」


 今まで黙っていた男が口を開き名前を答える。

 その言葉に心の中でため息と頭を抱えた。


(身内の話かぁ。)


「私もそんなすごい冒険者になってみたいですね。」

「ははは、すごい目標ですね。」


 そのまま、三人と分かれて宿に泊まった。


(いよいよ明日か。一月ひとつきぶりになるのかな。心配はしてないけどあいつは不安なんだろうな。まあ、軟な育て方はしていないしやっていけるだろう。)


 柔軟体操をしながら明日のことに静かに思いふける。


(まあ、定期的に帰ってくるつもりだし問題ないな。あいつ明日びっくりするかな、いや、大勢の人が集まるだろうし見つけられないだろうな。)


 一通りの体操を終え錫杖を支えにして座る。


(明日も遅いわけじゃないしもう寝よう明日が楽しみだ。)


 そのまま座った姿勢でクトゥーは眠りについた。


 

次回は3話を上げているときから入れようとしていた話です。(まだ書いてない。)次々回あたりから本格的に旅を始めるつもりですのでもう少し待ってください。

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