愚兄の疾走
小屋がほぼ完成します。
あれから10日が経った。天気にも恵まれ建設作業は順調に進みほとんど完成を迎えていた。
「よし、これで最後だな。」
屋根の上に乗り作業するクトゥーがそう言って屋根から下りてくる。
夕日が綺麗に辺りを照らす中、移動拠点となる小屋を載せた荷車が形としてあった。
「お疲れ。後はペンキを塗るだけね。」
「ああ、明日の明るいうちにやれば余裕で終わるだろう。いやぁここまで来ると達成感が湧いてくるな。」
「そうね、まさか旅立ってすぐに建築作業をするとは思わなかったわよ。」
「がぁああう。」
それぞれ、満足げな顔で小屋を眺めていた。
「まだ完成じゃないぞ。仕上げでミスったら台無しだからな。明日もまた気合入れて行くぞ。」
「おー。」
「がううぅう。」
全員で拳を上げながら声を合わせて今日の作業を終了した。
明日はより失敗の許されない繊細な作業になる為早めの夕食を取りお茶を飲みながらゆっくりしていた。
クディは既に就寝していた。
「そういえば何色のペンキを買ったんだ?」
「え、知らないわよ。」
「何で買ってきた張本人が知らないんだよ。」
「いやぁ、防腐処理が出来るものを適当に見繕ってもらったからな。」
「好きな色とかなかったのか、赤とか青とか。」
「あんまり無いかな。まあ最悪後で塗り直せば良いでしょう。」
「まあ、防腐処理が出来ればとりあえずは問題ないが。」
コンコン。
ノックの音が扉から聞こえ二人は視線を扉へ持っていく。
「ごめんください。クトゥルさんいますか。」
「ちょっと待ってろ。」
クトゥーは最近聞いた声と一致し、扉に近づく。その行動にジュティがクトゥーを止める。
「ちょっとクトゥーここは人が来ないの忘れたの。それにクトゥルって誰よ。」
「ああ大丈夫あの人は二度目の来訪だから。というかクトゥルは俺だよ忘れるな。」
「あ、そうだった。」
扉を開けると、きっちりとした身なりの男が立っていた。
クトゥーが中へ促し一礼をして男も中に入った。
「お前が今来たってことは例の件か。」
「はい、申し訳ありません。もう少し早く来るつもりだったのですが。」
その言葉にクトゥーの顔に不安の色が出る。
「ということは。」
「一昨日発表されました。あ、でも安心してくださいまだ間に合いますので。」
「そうか。良かった。」
ホッとし安堵の息をつく。
一つ疑問点が湧いたのでクトゥーは質問する。
「あれ?前回お互い名乗ったっけ?」
「いえ、名乗ってません。ただ調べれば簡単に情報は手に入れられますよ。」
「さすが商人。」
そう言ってお茶を一口飲む。
「それでいつになったんだ。」
「明後日の午前中にやるそうです。明日道なりにヨンジュで向かえば大丈夫だと思います。」
「そうか。」
「はい、ですのでヨンジュを崖下に手配しております。」
ヨンジュは四足歩行の草食動物でヨンディと同じように生活に馴染んでいる動物の一種だ。足がとても速く力強く多くの物を運ぶが足が遅いヨンディとは逆で、ある程度の重さしか運べないが素早く物を運んだり戦時の移動手段の一つとしても使われている。足と首が長く首に沿って立派な鬣があるのが特徴だ。
「いや、ヨンジュはいらない。」
「え。」
突然の拒否に驚く、クトゥーとジュティは当たり前のようにお茶を飲んでいる。
「何で?」
「いや、明後日なら明日走れば間に合うし、俺ヨンジュ乗れないんだ。」
「足が届かないから。」
「うるさい。」
それでも納得のいっていない男は二人に問いただした。
「走るって森の中を抜けるんですか。足場も悪いし魔物にあったら足止めを食らう。そうなったら一日でつく保証が無い。だったらヨンジュを使えば、安全な道を走れるんですよ。」
「大丈夫、大丈夫。」
「ザサルエさんを倒した実力でも足止めされれば。」
そこで人差し指を男の前に出し黙らせる。そして、クトゥーはゆっくり告げる。
「俺の得意分野は逃げることだ、それだけは誰にも負けない自信がある。」
ニヤッと笑い堂々とした態度でそう語った。
「凄い、言い方かっこいいのに内容がカス過ぎる。」
ジュティは思わず意図的に感情をもらした。
「うるさいな、しょうがないだろう。」
「ところで、何の件?どこ行くの?」
「知らないで便乗してるのも結構やばい奴だぞ。」
「言った事は大体やってるから信用に値するのよ。」
「ちょっと違うな。」
間違ってないと思うのに間違ってると言われ不思議そうに首を傾げるジュティ。
「俺は、実行できると思ったことを言葉にしてるだけだ。」
「成程。」
「はぁ、わかりました。もうどうでも良いです。仕事したんで帰りますね。」
置いてけぼりにされ疲れた様子の男は切り上げて帰ることにした。
「おう、悪かったな。ああ、この小屋もペンキ塗ったら終わりだから。」
「ああ、わかりました。後日準備できましたら伺います。」
立ち上がり扉のほうへと向かっていく。
「では、失礼します。」
そう言って男は小屋を出て行った。
「んで、どこ行くの?」
「ああ、イーワイ国城下町だ。グルーフの晴れ舞台を見に行く、一緒に行くか?」
「いいお誘いだけど遠慮するわ。人混み好きじゃないし、大人しくペンキ塗ってるわ早く終わったら迎えに行くわよ。」
「んじゃ、城下町で待ってるわ。それで疲れてるからもう寝る。おやすみ。」
「おやすみ。」
朝になりクトゥーは早めに起きて荷物の整理をしていた。リュックに一通りつめて錫杖を手持ちして準備完了のようだ。
「んじゃ、行くわ。」
「朝食は?」
ベッドから寝起きのジュティが目をこすりながら聞いてくる。
「食べながら行くよ。余裕はあると思うけど魔法が使えないから夜は歩き辛いしね。」
「はぁぁあ、いってらっしゃい。」
「いってきます。」
大きな欠伸と一緒に見送られ、クトゥーは森の中を駆けていった。
自分の小ささと身軽さを利用して飛び跳ねるようにスピーディに進んで行く。慣れているかのように迷いなくノンストップで進んで行く城下町まで最短距離だ。途中で出会った魔物には一切目をくれず持ち前のスピードで魔物を巻いていく。
(このペースなら夕方になる前に着くかな。今のところついてこれている魔物はいないか。)
周りに気を付けながらぐんぐんと進んで行く。
太陽が頂点に達したところで休憩をとることにした。ティムディティをちょうどいいタイミングで見つけ錫杖で仕留めナイフで解体をして肉を出す。魔法が使えないので木の皮を採取して錫杖をこすり摩擦で熱を生み火を起こして肉を焼き、持ってきたパンと一緒にランチタイムだ。
(あと3時間くらいかな。味付けは塩しか持ってないが十分うまいな。)
焼きあがったところからもりもり一頭分の肉を食べ進めていく。朝から止まらずに動いていたためおなかがすいている。
(ん?お客さんか。)
肉を食べながら何かが近づいてくるのを感じる。
(二足歩行3人なのは間違いないかな。歩き方的に人間かな。)
錫杖を左手にティムディティの角を右手に持つ。
すると三人の軽装の男が森から姿を現した。三人ともにやにやとした顔つきでクトゥーを見ている。
「よう、ガキ。うまそうなもん食ってるじゃないか。」
「売る気はないよ。用がないなら失せろ。」
「何だt・・。」
喧嘩腰に言ってくる真ん中の男に右手に持っていた角を投げる。首に埋まるようにめり込んだ角に言葉を遮られ苦しそうにして静かに倒れた。一瞬にして仲間をやられた二人は動揺する。その同様に入り込むように睨みを利かせ低い声で残りの二人を脅す。
「喧嘩を売りたい奴は後何人だ。全部買ってやるよ、負けてもらうけどな。」
後ずさり慌てて二人は逃げて行った。
「勝てると思ったのかね、大人しく引けばよかったのに。」
元居た場所に戻りランチの続きを始める。
「あ。焦げてる。」
火にかけていた肉の一部が焦げていた。
昼食を終え引き続き森を駆け抜けていった。
令和元年12月15日までのユニークの統計が711でテンション上がりました。8代将軍や警部が主役なもの位しか見たことないんですがね。わかる人だけわかって下さい。わからない人は流してそのまま知らずに生きた方が多分幸せです。




