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愚兄と呼ばれた男の自由な旅  作者: おこめi)
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愚兄とザサルエの遺言

別に彼は死んでいませんし、死刑という訳でもないです。今後出番があるかは知らないです。そういった意味では遺言かもしれないですね。

「参ったな。あんなのにも目をつけられるようになったのか。今日もまた野宿だろうし食材かって行かないとクディおなかすかしてるかな。おばちゃんこのヨンディの肉1kgお願いしても良いかしら。」

「はいよ。1キロね5980ギューツね。」

「はい。」

(野菜とパンはまだ残っていたはずだから。今日はステーキとヨンディスープで決まりかな。)


 ジュティは肉屋で買い物をしていた。門の外に連れて行かれたクディのことを考えると、今夜も野宿になる。宿代の分奮発した夕食をとるつもりなのだ。

 

(保存食の買出しは明日回りながらかな。せっかくクディもいるし多めに買っていこう。)


 肉を受け取り門のほうへと移動している。日も落ちてきて冒険者達が戻ってくる大通りを歩きながら明日のプランを考えていた。


(それにしても簡単に抜け出せたわね。外にも見張りがいると思ったけどいなかったし、トイレの窓から余裕の逃亡だったわ。)


 門番にクディの場所を聞いて門を出る。クディのところに行くと途中まで一緒に行動した兵士が座るクディの横にいた。

 クディも門番も暇そうな顔をしている。クディはジュティに気づき立ち上がって近づく、その行動に兵士も気づきジュティの元へ移動する。


「おとなしかったでしょ。」

「まあな。途中から警護が馬鹿らしくなってたよ。それじゃあ明日もよろしく。」

「明日もつくの?」

「安全性は高いと言って何もわかっていない生物だからな、上に報告してどう判断するかだけど間違いなく俺は付く、そういう指示を受けているからな。」

「成程。」

「じゃあ、俺はこれで失礼するよ。変なことするなよ。」

「しないわよ。」


 兵士は手を振りながら門のほうへと歩いていった。

 ある程度のところまで眺めてジュティはテントを建て寝床を作った。


「久しぶりのテントね。これ建てたらすぐご飯作るからね。」

「がぁあう。」


 喜ぶクディを見ながら今日の夕飯を調理し、二人で仲良く食べて寝た。

 町でその日、やたら美味そうな匂いが壁の向こうからしたとかしないとか。


----


「さて、家具の調整はこんなところかな。素材運搬用荷車の連結をするか。その前に腹ごしらえだな。」


 ジュティとクディを見送った後、クトゥーは固定するために家具の調整等の力が関係ない仕事に取り掛かっていた。

 夢中になって作業し、太陽がてっぺんを超え方向いてきた頃の午後2時に遅めの昼食として干し肉とパンを取りに行く。

 昼食分を手に取り食べながら外に出て連結予定部分を確認する。

 小屋の後方に太いリングで連結する予定で、モンスターの素材などを乗せるために製作している。


「さて、始めますか。」


 昼食を食べ終わったクトゥーはまた黙々と作業を始めた。

 日が落ち暗くなったところで作業を中断する。誰にもこの場所が割れないようにするための気持ち程度の配慮だ。

 汲んで溜めていた水で汗を流しアジト小屋の中に戻ろうとする。


「お客さんか。あのやろう俺に嘘こきやがって。」


 錫杖を手に取り、何かが来る方向を見る。

 ゆらりゆらりと明かりが揺れながら近づいてきて姿を現した。


「こんばんわ。ザサルエさんはいらっしゃいませんよね。」

「ああ、いないよ。」


 スーツのようなきっちりとした身なりに黒いコートを身にまとっている。


「あなたがザサルエさんを。」

「そうだ。あなたの素性を聞いても良いかな。」

「もちろんです。はぁ、ちょっと休んで良いですかやっと見つけたんで疲れが出てしまいました。」

「おもてなしができなくて良いのであれば中へ。」

「出来ればもてなして頂きたいですね。」

「生憎、物資支給がいつになるのかわからないので無理です。」

「それは残念、まあ良いでしょう。中で話します。」

「はいよ。」


 殺意や敵意が無く、ただただお客さんのような空気で接してくる。クトゥーは大まかな見当をつけながら小屋に案内した。

 二人はいすに座りお互いを見合わせる。


「まずはあなたが何者か聞きましょうか。」

「私はザサルエさんと取引をしていたものです。今回、ザサルエさんが捕まったと聞きましてこのアジトを探しました。

 捕まえた方がいればちょっとお話を、いなければいなければで状況確認といったところですかね。」

「別に一人取引相手が減っただけじゃないのか。」

「まあそう見えますよね。ただあの人は特殊で売ったお金の一部を身寄りの無い子どもや貧しい家庭に寄付をするなどのいわゆる義賊のような方でした。

 我々も信用がありますのでもちろん協力させていただきました。」

「わりぃなお金ほしさで捕まえちまった。」

「あ、別にそこに文句を言いにきたわけじゃないですよ。やり方がやり方ですし、それに他にも有志の方はいらっしゃいますし。」


 人物の見当は当たっていたが目的がいまいちわからずクトゥーは困惑していた。


(敵意は無いし、うらみも無い。何しに来たんだこの人。) 

「表の荷車は製作中のものですか。」

「ああ、長旅になると思ってな。今仲間が足りない材料の買出しだ。このアジトのものはザサルエから貰った。了承の上だぞ。」

「成程、わかりました。余った材料なんかはどうするつもりですか。」

「え、ああ、そうだな。」


 クトゥーは作ることに夢中であまったものの処理を完全に失念していた。まあ、ここに置いて行ってもいいかなとか思っていた。

 考えて答えが出ていないクトゥーに一つ提案をする。


「私らで回収させてもらってもよろしいですか。」

「え、いいの。」

「はい。ザサルエさんの最後の意思をつなぐためにここを探しました。」

「ザサルエの意思?いや、殺してないし死んだわけじゃないだろ」

「まあ、最後というのは少し語弊がありましたね。“俺の財産は全て寄付する捕まった時はよろしく”懸賞金がかけられた頃にそう私に伝えておりました。

 もう、あなた方の財産ですが、いらないものがあれば私達で回収してザサルエさんの最後の意思を子ども達や貧しい方に伝えます。いかがでしょうか。」

「乗った。罪悪感とかでは無いから安心しろ。」

「ありがとうございます。それでは、半月後くらいにまた来ます。」


 男は深々と礼をして感謝と回収時期を伝えた。


「あれが無くなったら行ったと思って回収してってくれ。」

「かしこまりました。それでは。」


 軽く一礼して扉を出て行き闇へと消えていった。


「あ、ちょっと待ってくれ。一つ頼まれてくれないか。」


-----


 朝を向かえ、ジュティとクディは再び昨日の兵士を連れてドゥエンスさんの元を尋ねていた。

 昨日の報告の結果、警備は彼一人で十分と判断し追加の兵士は無かった。


「やあ、ジュティ君おはよう。早速買いに行くのかい。」


 ドゥミラに入ると待っていたかのようにドゥエンスが立っていた。


「はい、材料と保存食を買い込んですぐ戻らないと、クトゥーが待ってますから。」

「成程、じゃあ行こうか。今日はよろしくお願いするよ。」

「?あれ、地図と紹介状を頂くのでは?」


 昨日とは、違う話にジュティは首をかしげる。

 笑いながらドゥエンスはジュティに謝る。


「すまんすまん、戸惑うのも無理は無いな。通知は送ったんだが、紹介状や地図を書くのが嫌になって今日の買い物に同席させてもらうことにしたんだよ。勝手に決めてしまったが構わないかい?」

「ええ、構いません私もあまり買いなれていないものなのでアドバイスしていただけると助かります。」

「ありがとう。同じ商人グループの仕事ぶりも見たいから僕が一緒に来る事は内緒にしているんだ。色々勝手にやって申し訳ないが協力してもらえるだろうか、今度何かサービスするよ。」

「良いですよ。協力します。では、今日一日よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしく。」


 お互いに礼をして買い物が始まった。


ちゃんと見返しているつもりなんですけど誤字がなくなりませんね。本当にごめんなさい、そして指摘してくださっている方本当にありがとうございます。これからも温かい目で修正していただければ助かります。もちろん誤字の内容に努力はしていきます。

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