愚兄、ジュティの評価を変える
もはやクトゥーがほぼ出てない、ジュティ回です。
ジュティは周りからの注目を集めながら冒険者ギルドへと向かっていた。
(やっぱりこの状態じゃ目立つな。まあすぐそこだし気にしない気にしない。)
そして冒険者ギルドの扉を開ける。
簡易的な集会所にもなっているため明日の打ち合わせや査定待ちで残ってるものも多い。しかし、ジュティが入ると全員がそっちを注目する。
「あれって、ザサルエだよな。」
「ああ、100万の首だ。」
「中級冒険者でも捕獲は難しいとされていた奴だろう。」
捕縛されたザサルエを見てヒソヒソ声が耳に入る。ジュティは少し苛立ちを覚えながら受付へと向かった。
「あんな女に捕まるなんて実は弱かったんじゃないのか。」
その一言にギルド内に殺気が走る。体を震わせるものすら出てくるほどだ。
「止めな、今あんたが怒ってどうするの。それともここで暴れて賞金増やしてもらおうか。」
フルフル。
申し訳ない表情をしながら首を振る。
「よ、ようこそ、冒険者ギルドへ、本日はどのような用事でしょうか。」
「マニュアルに仕事するのも良いけど、見りゃわかるでしょう。賞金首の引渡しよ。それともSMプレイ中にでも見えたかしら。」
「・・ッ。」
「い、いえそんなことは今担当の方を呼んできます。」
ばたばたと中のほうへ受け付け上は入っていった。
ザサルエはうつむきながら小刻みに震えていた。
「何、笑ってんのよ、受付嬢がビビッたのはあんたのせいでしょう。場を和ませようとした粋な計らいよ、あんたにしか通じなかったけど。」
手を上げて、いやぁすまないすまないというように頷いていた。
少しして屈強な男と共に受付嬢が戻ってくる。
「これは本当にザサルエのようだな。」
「当たり前よ、薙刀も見せた方が良いかしら売ろうと思って持ってきたのよね。」
「ああ、いい、いい。この見た目とあの殺気は本物だろう今用意するからちょっと待ってろ。」
「あと盗難車の回収をお願いして良いかしら。」
「ああ、良いよ。どこにある。」
「門の外。近くで待ってると思うわよ。」
「わかったヨンディを出そう。」
そうしてまたしばらくしてお金が持ってこられた。しっかりと金額を確認してザサルエを引き渡す。
ヨンディつれて正面に行くから待ってろと指示があり、正面入口に移動する。
「なあ、君あのザサルエをおとなしくさせるなんてどうやったんだい。」
「組まないです。盗難車の引渡しがあるので失礼します。」
「え。」
ギクッとした表情をするしっかりとした装備に身を包んだイケメンが素敵な笑顔で声をかけてきたが、一声かけて立ち去ろうとする。
前を他の男達が囲む。どうやら同じパーティのようだ。
「ちょっと待ちなよ。ちょっとぐらい話しをしたって良いじゃん。」
「話し相手なら別の人に頼んでください。私は忙しいので。」
「ヨンディならまだ来ないよ。裏口って結構遠いんだ。」
「パーティが外で待ってますのであなた達と話す時間はありません。」
態度や口調、表情を全く変えずに淡々としゃべるジュティ。
「外から来た子か、俺達の事知らないんだな。パーティに入ってくれたらそのどこのものかわからない剣じゃなくもっと有名な剣をプレゼントするよ。」
最初に声をかけた男が再度声をかける。
「いい加減にしろよ糞餓鬼共。最初に言ったはずだ、パーティは組まないと耳腐ってんのか。」
グルーフの剣を非難され怒りをあらわにする。
先程までと違う気迫に男達は道を開ける。そしてそのまま入口をジュティは出て行った。
「何だあの女お高く留まりやがって。」
「リーダーどうします。」
「あとをつけてパーティを見てみよう。彼女をここまで言わせるパーティだ。どんなものか見に行こう。」
ジュティはギルドのおじさんと合流して門へと向かっていた。
「めんどくさいのに目ぇつけられたわ。」
「あの女好きの貴族の息子か。いい装備だけは仕入れられるからな。」
遠くの町の貴族の次男が家を継げない代わりに冒険家として名を上げようと友達を二人連れて旅をしている。最近はこの町に滞在し、功績をあげている。他のパーティとは違い金を持っているため装備の良さと言われている面もある。三人ともイケメンで女の子のファンを多く持っている。
「外の子だと決め付けてくるし、何で自分達に女の子全員がなびくと思ってるんだろうね。死ねよ。」
「まあまあ、そう言わないで。とりあえず門の外に出て良いんだよな。」
「はい、近くにいると思います。」
門番に話しをしてすぐそこにいることを聞きクトゥーたちの元へ向かう。
「お待たせ。クディお休み中?」
「お疲れ。ああ、分かれてからずっと寝てるよ。」
「これが盗難車だな。」
かばんから資料を出し、番号を確認して、つれてきたヨンディにセットする。慣れているようだ。
「これはもともとこんなに痛んでいたのか。」
この質問は来るとは思っていたが嘘をついてトラブルになるのも嫌なので罰が悪そうに正直に答える。
「ああ、すいませんそれはちょっとうちの子が引っ張るの初めてで加減がわからなくてちょっと痛めました。」
「そうか。まあ、戻ってきただけましだろう。届出にも出てる番号だから明日話しに言ってくるよ。」
「もし怒っていたら俺達ってこと言わないで下さい。」
「わかってるよ。」
一通りの確認を終えて、おじさんがリストなどの資料をかばんにしまう。
「それじゃあ、これは預かっていくよ。こればっかりは本人次第だから報酬は期待しないでくれ。」
「わかってますよ。ああ、帰る前に一つお願いしても良いですか。」
「何だ。ギルド長じゃないからあんまり難しいことは出来ないぞ。」
「大丈夫です。証人になってもらいたいだけですから。」
疑問符を浮かべるおじさんを尻目にジュティが声を出す。
「そろそろ出てきたらストーカーさん達。」
シーンとして何も起こらないでいる。
「成程、ストーカーの自覚が無い糞男達だったのね。私と勝負しない?勝ったらあなた達のパーティ、考えても良いわよ。」
「その言葉本当だな。」
「勝てたらね。」
先程、ジュティに絡んだ三人が出てくる。
「3:1で良いわね。」
「構わないよ。それじゃあ私が出よう。」
リーダー格の男が剣を構える。
動かないクトゥーとクディ。ジュティと男は二人疑問符を浮かべ向き合っている。その様子を見てクトゥーは静かに笑う。
「おい、その男勘違いしてるぞ。ちゃんと言ってやれ。」
「ん?ああ、そういうこと。」
ジュティは相手の三人を指差し、
「3対。」
その後自分を指差して告げる。
「1で良いわよ。」
馬鹿にされていることに三人が気づく。おじさんは心配そうに見ていた。
「わかりました、お望みなら3:1で相手しましょう。あなたが言ったんですからね後悔しないで下さいよ。」
「その前に宣言して頂戴。この勝負での怪我や死亡は一切の責任は問われずお互いにうらまないことを私は宣言する。」
「わかりました。私もこの勝負で出来た怪我や死に一切の責任を問いません。」
「俺も怪我や志望は問わない。」
「同じく俺も問わない。」
戦おうとしている4人がそう宣言した。ここは町の外であり法による規制が薄くなっている場所であり、そう宣言して戦いを挑むのは珍しくない。むしろ平和の国イーワイだからこそこの宣言がある、他の国では町の外に出ると無法地帯とあまり変わりは無い。
「それじゃあ、おじさん証人ってことでよろしくね。」
「あ、ああ、わかった俺が証人になる。」
戦いの火蓋が落とされようとしている今まさにこの瞬間一人の男が笑い始めた。
「はっはっはっはっはは。始めちゃうんだ。女一人に男三人が大真面目に勝負挑んじゃったよダッセェ。」
「な。」
「ああ、ごめんごめん良いよ始めな。耐え切れなかったからごめんね。ムキになっちゃ駄目だよ、一つだけ忠告すると3対1のほうが良いよ。」
リーダー格の男が二人に出ないように合図を送った。
(ああ、余計な事言っちゃったな。)
「では、行くぞ。」
彼は勢いよく攻めに行った。彼の振る剣にジュティは余裕を持ってかわしていく。あたりそうであたらない上手い位置で避けている。身に着けている鎧に自身があるのか防御をおざなりにした攻めのスタイルだった。
(なんというかこいつの剣。)
クトゥー戦いの様子をしっかりと見ている、さっき剣を見る約束をしたので今見てしまえば楽できるかなと思って二人の様子をずっと見ていた。
(凄い普通、というか武器や防具が良いだけで別に技とか力があるわけじゃないんだな。ジュティがちょっと強いくらいで考えていたけどだいぶ強いんだな。)
「ねぇ、そこの二人も来たら。」
険しい表情になっていくリーダーに二人がフォローに入る。しかし、人相手に3:1をしたことが無いようでお互いに傷つけないようにおっかなびっくりの攻撃で上手くかみ合わない。
ジュティも手ごたえのなさに飽きているようだった。
三人の動きが鈍くなってきたときジュティが三人の武器をそれぞれはじき飛ばした。
「私の勝ちでいい?もう二度と関わらないで。」
三人は頷きいそいそと逃げていった。
クトゥーは不満げに戻ってくるジュティを見ながらおじさんを町に帰らせジュティの戦闘欲を解消させた。
剣も軽くなり以前よりも速く読みづらい攻撃になっていたが、クトゥーにかすり傷すら与えられなかった。
その日の夜は城壁近くにテントを張って一夜を明かした。
別にサブタイトルを縛っている訳じゃないんですけどどこまでやれるか自分を試したいの。




