後輩ちゃんの過去
すごく眠いです
放課後、俺はとある少女の家の前に来た。
もちろん柚木の住んでいる家だ。
父親はお偉いさんのはずだが、割と普通の家でびっくりだ。
とりあえず出てきてもらうためにベルを押すが反応がない。
さすがにこの時間に寝ているはずもないし、居留守だろうな。
まぁ、そうされえるのも自業自得なんだけど。
このまま待っていても絶対出てこないので、俺が握っている柚木の弱みを使わせてもらうべく、チャットを飛ばした。
「早く出てこなかったら、黙っておいてあげたお漏らしの件を拡散するぞ」
反応は早かった。
既読が着くなり、ドタドタとあまりにも焦りすぎではないかと思う勢いで聞こえてき。
「はぁはぁ……今頃何ですか先輩、私のこと嫌いなんでしょ」
出てきた柚木は目の周りを赤く腫らしていた。
あれから泣いていたのだろうか、自分が憎くなる。
「ほんとごめん、昨日は言いすぎた。俺が全面的に悪い」
頭を下げた。
下げれるだけ下げた。
もちろん表情は見えないし、感じることも出来ない。
「あ、頭を上げてください! とりあえず、上がってください……」
柚木は家へ上がるように促してきた。
許嫁がいるのに良いのだろうかと思いつつ、断る訳にはいかないので素直に従うことにする。
後、声が微妙に潤んでいる気がする。
気のせいかもしれないけど。
部屋まで連れられて、俺は座卓の前に座らされた。
なにされるかわかったもんじゃないので警戒はしておくことにするが、多分してこないかな。
いつもの雰囲気ないし。
俺の目の前に座った柚木と目を合わせて、しばらく沈黙が続いた。
居づらいが、逃げるわけにはいけない。
目は決して離さなかった。
「先輩、嫌いなこの家にわざわざなにしにきたんですか? 嫌みなら追い出します」
「昨日のこと、どうしても謝りたくてきた。俺のエゴと言われればそうかもしれないが、それでも良いから謝罪させて欲しい。本当にごめん」
再び頭を下げた。
すると、柚木の声が聞こえてくる。
「先輩、なんで私がストーカーまがいの行為をし始めたか知ってますか?」
わからなかった。
そもそもストーカーし始める前の柚木を俺は知らない。
「ごめん……」
「はぁ、そうだろうと思っていました」
ため息をつきながら呆れたかのように言う。
が、声はやっぱり震えていた。
「そもそも、私が先輩に惚れたのは中二の頃です。私が階段から足を滑らしたときに助けてくれてから、先輩しか見えなくなりまっていました」
覚えがあった、でもあの子は柚木みたいに活気あるような子じゃなくて、おとなしいイメージが強かった。
まさか……
「思い出しました? あのときの暗そうなやつが私です。先輩に好かれたいが為にコミュ力を身につけて、おしゃれも勉強して、色々頑張ったのに先輩は全然気がついてくれなかったんだもん!!」
柚木は泣いていた。
怒るような、悲しむような、そんな泣き方だった。
「私は先輩と同じ部活に入ってたし、いっぱいアピールしたのに全然振り向いてくれなかったし、同じ高校に入れて挨拶しに行ったのに覚えてくれて無くて」
だから――
「だから必死に気付いてもらおうとして、ストーカーみたいなことしちゃったの! 少し過剰にくっついて行ったら顔も名前も覚えてもらえて、嬉しくて段々エスカレートして……でも、それで嫌われて……うぅ、ひぐっ、うえぇぇぇぇぇぇ!」
気付かない間に、俺は女の子を悲しませてしまっていた。
そして、目の前で大事な後輩が涙を流してる。
俺は座卓をよけ、柚木の頭に手を伸ばした。
ゆっくりゆっくり、撫でてやった。
すると、柚木は俺の胸に顔を埋めて泣いた。
「ごめんな、気づけなくて。柚木なりに頑張ってたんだよな。ほんとにごめん」
今まで柚木に書けた声で一番優しい声だったと思う。
気づいてさえあげれなかった。
だから、これからはちゃんと向き合ってやろう。
俺は白が好きだ、でも、だからといってそれ以外から向けられる愛情を流すなんて最低だ、せめて受け止めよう。
「せんぱぁい、つらいよぉ……」
「いままで、受け止める事すらしてあげなかったもんな。これからはせめてちゃんと向き合うから」
「ほんとぉ……?嘘じゃない……?」
「嘘じゃないよ、恋人とかは無理だけどな」
「ありがどぉ……でも、絶対恋人になるもん……奪ってみせるもん」
「そうかそうか、俺の心をつかめる物なら掴んでみろ!」
「……うん!」
鼻声だが、顔を上げた柚木はいつもの柚木に戻っていた。
本当に可愛い後輩だ。
「それじゃあ、俺は帰るからな」
「明日からもアタックしますから!」
「おう、待ってるな」
謝れて良かった、そして柚木のことをちゃんと聞けて良かった。
でも、また明日から騒がしくなりそうだなぁ。
そんなことをぼやきながら、俺は笑顔で家に帰った。
そして翌日。
「先輩! 可愛い可愛い後輩がきましたよ! ほらほらわたくしと愛を育んでください!」
「だ、ダメです! 祐介さんは私の旦那様ですのでっ」
俺の腕をぐいぐい引っ張りながら、二人は争っていた。
にしても白って意外と負けず嫌いというか、少年的というか。
まぁ、やっぱり可愛いよね。
それに柚木もストーカー的ではなくなったとはいえ、アプローチの仕方は変わってない。
けど、雰囲気が変わった気がする。
俺はクラスのみんなに目線で助けをこいてるのにみんな孫を見る祖父母みたいな目線を返して来る。
まぁでも、こんな日もあって良いな。
状況と真反対に、俺は幸せを感じていた。
こんな日常が一生続けば良いな。
段々文章下手になってきてるかもしれない