夕立のように
今回、主人公は人間くさいかも。
あと、長い
ロマンスカーが発車するまでに時間が少しだけ合ったので、俺と白は雑談に花を咲かせる。
白は一昨日で転校してきて二日目ではあるが、うちのクラスメイトはみんながみんな良いやつなので、楽しいそうだ。
すごくほっとした。
「そういえば、白はいつからそんな感じ? 昔は結構男勝りな子だったのに」
「幼稚園の頃からですよ。祐介さんの事が好きになって、女の子らしくアピールしなきゃと思って可愛くしたりお行儀良くしたりして……でも、そのときは気付いてくれませんでした」
白はいじけるような表情を見せた。
そ、そういえばそうだった気が……すっかり忘れてたし、気がついていなかった。
「ご、ごめん! 昔の俺は酷いな」
「ふふっ。でも、今は振り向いてくれてますし良いのですよ」
満面の笑みでとても嬉しそうに話してくる。
こりゃ振り向かないわけがないよな。
可愛いにも程があるって位可愛くなっている。
「ところで、おじさんたちは元気?」
おじさんたちというのは白の両親で、昔からかわいがってもらっていた。
でも、多分元気だろうなぁ。
「元気すぎて困る位で……賑やかで楽しいんですけどね」
えへへと白は照れ笑いをする。
「祐介さんのご両親は元気ですか? 最近忙しいと耳に挟みましたので」
「うちも元気すぎるよ。少なくとも俺よりは元気だし、二人ともバリバリ働いてるよ」
父は出版社の社長をやっている。
高校生の時に出版社でアルバイトを始めてその後入社。
業績で数々の伝説を残した後、自分で出版社を立ち上げ今では小説やラノベ、イラストやマンガ業界のトップに君臨する会社までに成長した。
そして母は、元々その会社に所属していた小説家で今もバリバリ執筆しているため、家事は家族分担制で行っている。
ちなみに、白の父親も同じような会社を立ち上げており、会社ぐるみで仲が良い。
白の母親は現役の作曲家で、ゲームミュージックやインストの曲を作っていたりする。
「よかったです。さすがおじさま方ですね」
「いつも母さんの執筆部屋からはうなり声が聞こえるけどな……」
母さんは鈍筆だからな。
「うちもですよ。最近は少し収まってきましたけど、できるだけそっとしてあげています」
お互いの両親のことはお互い知っているから会話はなかなかに弾む。
そういえば、白と手を繋ぎっぱなしだったな。
まぁ、いっか。
初めは急に許嫁にされて戸惑ってはいたけれど、昔仲良かったのもあって、今では話していてすごく落ち着く。
昔はお泊まりもしたしキャンプなんかも一緒にやったりしたな。
懐かしい記憶が蘇ってきて少しジーンとする。
「ねぇ、そのうち昔みたいにキャンプとか行かないか? 久しぶりにお泊まりとかも楽しそうじゃないかな」
「いいですね! 是非、行きたいです」
やったぜ。
意外と長く話をしていたらしくて、いつの間にかロマンスカーは動いていた。
カタンカタンとほどよく揺れる電車は少しずつ眠気を誘発させ、俺はいつの間にか寝ていた。
俺は白に頭を預けてしまっていたらしく到着まで寝させていてくれた。
申し訳ないと謝ると「気にしないでください。寝顔を見れてこちらも幸せでしたよ」だそうで、むしろ喜んでくれていたので、気にしないでおくことにした。
ずっと手は繋いでいたらしく、そのまま手を引っ張って導いてくれる。
ちょっと手汗がべたべたしないか心配だけど、今の白は昔のわんぱくさが戻ってきているように見えて、微笑ましく思えてくる。
改札を出ると、そこは海辺だった。
有名な別荘地でとても自然も豊かだし、何より都心よりも空気も綺麗だし浜風が心地よいところだった。
「白が一緒に来たかったところってここ?」
「そうですよ、覚えていますか? 昔ここで花火をしたり、近くに持ってる別荘でバーベキューをしたり」
「覚えてる、懐かしいなぁ。またやりたいな」
また、思い出が蘇ってくる。
二人で浜辺に座って海を眺めていると、突然後ろから声がした。
「先輩! と、泥棒! イチャイチャしないでください!!」
あぁ、この声はあいつだ。
俺は振り向きざまにげんこつを振り下ろす。
と、相手はやっぱり柚木で、軽く小突く位の威力ではあったのだがしゃがみ込んで頭を押さえている。
「い、痛いじゃないですかぁ~」
「痛いじゃないですかじゃねぇよ! ストーキングにも程があるぞ! それにそんな痛がるほど強く叩いてない」
まさかこんなところで追いかけてくるとは……なんちゅう執念。
白は突然のことでまたあわあわとしている。
可愛い。
柚木は痛みが治まったのか、ぴょんっと立ち上がり白に向かってビシッと指を指した。
「泥棒! もとい白さん、どっちが真に先輩の嫁になり得るか勝負をしましょう!」
「しょ、勝負ですか……!? 争いごとは苦手なのですが……」
昔から、白はわんぱくな時こそあれど争いごとは苦手だった。
そのため、幼稚園の時は必ず俺が守っていた。
俺が白を背中に庇って、父さんに手は何があっても手は出しちゃいけないって教えられてたから、頑張って口で言い負かそうとしてたっけな。
その結果喧嘩になっても親たちは怒るそぶりも見せず、褒めてくれてた。
「逃げは許さないです。私だって先輩のことが大好きなのに、なんで急に現れたような知らない女に盗られなきゃいけないんですか! そんな女より絶対私の方が先輩にふさわしいもん! あんたなんて消えちゃえば良いんだもん!!!!」
柚木が今の台詞を口に瞬間、その時のことを思い出しながら、白を背中に庇った。
白は少し涙目になっており、俺の手を掴んでいる手は震えている。
さすがに我慢出来ない。
短気だと笑われても良いけど、白に危害を加えたりするやつを許すほどの器は持ち合わせていない。
「柚木、黙れ」
思ったより怒りが声に乗っていたのか柚木はビクッとして縮こまる。
「せ、先輩。だって……」
「だってじゃねぇよ。俺に対してストーカーしてる件は大目に見てやるよ。けど、白を怖がらせたりするようなやつは許さない。それに、ストーカーしたり大事な人を傷つけたりするやつを好きになる訳がないだろ、ちょっとは考えろ。あと、今日は帰ってくれ、顔も見たくない」
ちょっと俺は後悔した。
柚木はうつむいてなにも話せなくなっていた。
「あ、あの。ちょっと……」
さすがに強く言いすぎた気がしたし、白は怖いだろうに服をちょんちょんと引っ張って止めようとしてくれていた。
止めてくれていた事に、俺はそこで気がついた。
おかげで、少し頭が冷えた。
「ごめん、今日は帰ってくれ」
そう言うと、柚木はなにも言わずに帰って行った。
すごく悲しそうな後ろ姿で、涙をこぼしながら。
今謝った方が良いかとも考えたが、お互いがあまり冷静じゃない今の状態だとどうも出来なさそうなので、追うのはやめておいた。
「祐介さ――」
「ごめんな、白。せっかくのデートだったのに嫌な雰囲気にしちゃって。あと、止めてくれてたのに結局止まらないで、嫌いになったよなぁ」
さすがに泣きそうだ、自業自得ではあるが後輩を泣かせ、白の前で醜い行動を取ってしまった。
白に向き合ったはいいが、顔を上げて表情を見れない。
軽蔑してるか、怖がっているのか、わからない。
完全に短気でよくわからないやつだもんな、今の行動。
嫌われても仕方ない。
俺はなにも言えずに、振り返って駅に向かおうと思って体を動かそうとするとぎゅっと抱きしめられた。
一瞬、ぽかんとしてしまった。
顔を上げると怒っていた。
軽蔑とか、そういった感情は含まれてない、俺のための怒りなのがわかった。
「さすがにやり過ぎでした。怒ってます」
「ごめん……」
白はでも、と付け足す。
「守ってくれてありがとうございました。すごく、嬉しかった……私のことでそんなに怒ってくれるなんて思っていなかったので」
あぁ、ダメだ。
泣きたくないけど、泣いてしまいそうだ。
「それに、私は祐介さんの事を嫌いになりませんよ。大丈夫です」
そのまま俺は抱きしめかえして、しばらくじっとしていた。
顔は肩に埋めたまま。
その間、ずっと頭を撫でてくれていた。
弱いなぁ、俺って。
そして、白は思っていた以上に強いな。
その後、俺も落ち着き膝枕してもらっていた。
「白、ありがとう」
「そ、そんな! 私はなにもしてないですからっ」
かわいいなぁ、大好きだ。
「明日は謝りに行ってくるよ。やり過ぎたって」
「それが良いと思います」
その後も白と俺は、話したり商店街で物を見たり、ちょっとしたショッピングセンターで買い物をしたり、デートを堪能した。
色々有ったけどなんだかんだ楽しめたし、良かった。
白は終始笑顔ですごく楽しそうだったし、とても良い一日になったと思う。
柚木には、一応チャットで謝ったが『うん』としか帰ってこなかった。
好いてもらえること自体はすごく嬉しいし、悪いやつではないからな。
やることなす事ぶっ飛んでるけど。
柚木の父親はかなりのお偉いさんで多少やらかしてもなんとか出来てしまうからストッパーが若干かかってないんだろうな。
楽しかった一日はあっと言うまで、夕方になっていた。
「それじゃ、また明日」
「祐介さん。あ、あの。今日は本当にありがとうございました。また一緒にお出かけしましょう!」
夕日が差している。
白は夕日に照らされて、とても綺麗で。
見とれてしまった。
この感動を言葉にする事が出来ないのがなんとももどかしい。
「そうだな、いっぱい遊ぼうな!」
その後も惜しいが解散した。
その日の夜はいつもよりずっとぐっすり寝ることが出来た。
次は家でゆっくり過ごしても良いかもな、なんて考えながら。
翌日、俺は柚木のクラスに赴いた。
すると、何処にも柚木の姿はなく、聞いてみると休んでいるそうだった。
俺は仕方ねぇなと思いながら、放課後に柚木の家に向かうことにした。
読み返すと主人公訳わからないかも。あと、会話の描写下手すぎる