会社員達の最終出社生活
「それでは、今日が今年最後の出社日だからな。仕事を来年に持ち越さないよう、しっかりと業務をこなしていくように。」
「「「はい。」」」
あれから私達はクリスマスイブ、クリスマスをまたぎ、ついに今日が今年最後の出社日となりました。今日で今年の仕事を来年に持ち越さないよう、しっかりと仕事をしていきませんとね。
「後、午後からは大掃除をするつもりだから、そのつもりで仕事を全うするように。」
「「「はい。」」」
私達は仕事を来年に残さないよう、
「…優。」
「はい、何でしょう?」
「この書類に添付してあった資料はどうした?」
「資料、ですか?確かその書類に…あれ?」
「な?やっぱないだろう?」
「そうですね。今すぐ確認してみます。」
「頼む。」
仕事をやり切ろうと奮闘する。
「優く~ん!仕事が憂鬱なの!助けて~!!」
「え~っと・・・菊池先輩、お仕事お疲れ様です。」
「きゃー♪優君に感謝されたわ、きゃー♪」
「おい、変な事していないでさっさと仕事をしろ!」
「・・・ち。分かったわよ。」
「はぁー・・・。」
工藤先輩の悩み、本当に分かります。ですが、
「優君、また私とイチャイチャしようね♪♪♪」
「え、えぇ。」
菊池先輩の性格はもう変わることは無いかと思います。私は若干引きつった笑顔を菊池先輩に見せながら、そんなことを考え、仕事を勤めていく。
終業時間少し前。
「・・・ふぅー。」
「な、なんとか終わりましたね。」
「だな。」
「ま、ほとんどがあんたのデスクの整理のせいだけど。」
「うっ!?それについては本当に申し訳ないというかなんというか…。」
「まったく。同じ男性でも優君はもちろんのこと、橘だってあんなに整理整頓出来ているのに。」
「だって、整理整頓が苦手なんだもん。」
「うっわー。いい歳こいた中年男性が語尾にだもん、とか。」
「う、うっさい!ば、バーカ、バーカ!」
「…橘先輩。」
「ん?どうした?」
「あの二人、なんだか夫婦喧嘩をしているみたいですね。」
「そうだな。」
「そこ!うるさいぞ!!」
「「!!??す、すいません!!」」
「うっわー。いくら言い返せないからって後輩に八つ当たりするとか、うわー。」
「…すまん、さっきは言い過ぎた。」
「い、いえ!私は気にしていませんから。」
「俺も同じです。」
「そうか。なら良かった。」
時には怒り、時には笑い声が聞こえる中、私達は車内の大掃除を済ませていく。
そしてさらに時は過ぎ、
「さて、今日も今年の全仕事は終わったな?」
「「「はい!!!」」」
「それじゃあ今日、今年はこれで終了とする。今年もお疲れ様でした。」
「「「お疲れ様でした。」」」
大掃除、帰りの挨拶も済ませ、
「今日はどこ行く?」
「明日から休みだし、どこか遠くの店に飲みに行かね?」
「賛成!」
アフターのことを話し始めている。かくいう私もこの後の予定をかなり考えています。
「さて、今日は一晩中飲んでいるか!」
…ま、工藤先輩は相変わらずですね明日も仕事があるなら止めるべきなのですが、明日から年末年始です。そんなことは考えたくないでしょう。しかし、工藤先輩の体のことを考えると、やはり止めた方が…、
「優く~ん♪私達も帰って、さっそくイチャラブしましょう?」
「イチャラブはしませんが、一緒には帰らせていただきます。」
「え~?」
帰り支度を始めていると、
「あの。」
「?何でしょうか、桐谷先輩?」
桐谷先輩が私に話しかけてきました。一体何の用でしょうか?
「本当に今年は、忘年会、やらないのですか?」
「忘年会…はい。桐谷先輩の言う通り、今年、忘年会は行いません。」
忘年会。私や先輩方が所属しているこの会社では、ほとんどの年で忘年会が行われている。ほとんどの年、というのは、欠席者が多くなってしまう場合、この忘年会の開催は中止になってしまう。そもそも、この忘年会、そして来年に行われる新年会は参加自由なので、参加するも参加しないも自由である。だから忘年会が開催したり開催しなかったりするのだ。
「はい。何でも今年は、忘年会をやるメンバーが一定数を超えなかったとのことで。」
「そうなんですか。ちょっと残念です。」
と、桐谷先輩は残念そうにしていました。
「…そんなに忘年会に参加したかったのですか?」
「いえ!ただ、会社の忘年会の雰囲気を一度でも味わってみたかったなー、なんて。すいません。我が儘が過ぎました。」
「・・・なら忘年会、してみます?」
「え?」
忘年会となると、
「菊池先輩、今日のこの後の予定ですが…、」
「もっちろん、大丈夫よ!優君の頼み事以上に重要な用件はこの銀河に存在しないわ!」
「…そうですか。」
菊池先輩が何を言っているのか分かりかねますが、取り敢えずこの後は空いている、という認識で大丈夫そうですね。
「工藤先輩。」
「お、なんだ?」
「本日は私達と一緒に宅飲み、しませんか?私、お付き合いしますよ?」
「そうか?それじゃあ俺も参加させてもらおうかな?」
「ありがとうございます、工藤先輩。」
よし。工藤先輩も誘いに乗ってくれました。この課の方々って優しいですよね。
「橘先輩。本日この後、私達の社員寮で一緒に飲みませんか?」
「・・・予定だけなら空いているが、俺が行ってもいいのか?」
「ええ!もちろん大歓迎です!」
「…ありがとう。それじゃあ俺も行かせてもらうよ。」
「ありがとうございます、橘先輩。」
これで一応人数は5人、となりました。
「桐谷先輩、人数は5人と少ないですが、この後社員寮でプチ忘年会しましょう。」
「…え?本当に私のために、いいのですか?」
「ええ。何せ、桐谷先輩は今年入って来た新入社員なのによく頑張ってくれましたから。ね?」
私は先輩方に話を振る。私の見立てからしますと、桐谷先輩は新入社員の割にはかなり出来ていたと思うのですが、先輩方の評価はどうなっているのでしょうか?あんまり悪い評価でなければいいのですが。
「…そうね。新入社員の割には、出来ていた方だと思うわ。」
「仕事も丁寧で、よく色んな所に気付いていたしな。」
「桐谷みたいに頑張りやな人は、今、成果が出なくとも、今後、大きく成長すると思う。」
よかった。みなさん、私が思っていた以上に、桐谷先輩のことを高く評価していたみたいです。
「あ、ありがとうございます!」
こういう礼儀正しい姿勢も、高評価の秘訣ですね。
「それじゃあみなさん、この後は社員寮にお集まりください。簡単ではありますが、これから私達で簡易的に忘年会を開きたいと思います。」
「やったー!優君とエッチ出来るー!」
「…いや、優はそこまで言っていないからな。単なる忘年会だぞ?」
「俺も、ここ数年忘年会に出ていなかったから、少し楽しみだな。」
「え?橘先輩ってそんな感じなんですか?」
「ああ。何せ、俺の目つきのせいで色々と迷惑をかけたくないからな。」
「んー・・・。そんなことないと思いますけど。」
さ、忘年会のために、これから料理を作るとしますか。
結果、最初は5人で楽しく忘年会みたいに飲んで食べて楽しく話して、を繰り返していたのですが、途中から私達の騒ぎ声を聞きつけたのか、参加したい人が名乗り上げ、最終的には二桁を余裕で超える人数で忘年会を行いました。料理の準備には菊池先輩も手伝ってくれましたが、桐谷先輩、そして以外にも、橘先輩も手伝ってくれました。その上、桐谷先輩も橘先輩もある程度料理の腕に覚えがあるらしく、かなり慣れているようでした。そういえばお二人は今、この社員寮ではなく、会社から通勤圏内で一人暮らしをなさっているんでしたね。二人とも、一人暮らししている間は自炊をしているみたいです。
「今日は本当にありがとうございました!」
桐谷先輩の感謝の言葉と、
「今日は俺も誘ってくれてありがとう。」
橘先輩の言葉に、
(簡易的ではありましたが、忘年会をしてみてよかったです。)
なんだかんだで今年、忘年会をする予定はなかったのですが、これはこれで良かったのだと思います。みなさん、とても笑顔で飲んでいらしたし。
「いえいえ。こちらこそ、大変よい時間を過ごせました。」
こうしてみなさまに恩を返すことが出来ました。もちろん、返しきることはまだ出来ていませんが、それでも普段から返せるよう心掛けているつもりです。
「それじゃあ、今日は本当によい一日でした。みなさん、よいお年を。」
「よいお年を。」
桐谷先輩の言葉に続き、橘先輩も言葉を繋げる。そういえば、今年はこれでもう桐谷先輩、橘先輩とも会えなくなるんですよね。少し寂しくなりますが、仕方がありません。
「ええ。お二人ともよいお年をお過ごしください。」
私は頭を深々と下げる。
「来年、初出社の時に遅刻でもしたら承知しないからな。」
「!?は、はい!来年はより一層気を引き締めます!」
「来年も精一杯働かせていただきます!」
「いや、そんなマジに返答しなくても…。」
「せんせー。ここに上司という立場を利用して、後輩に色々危ない発言をしている人がいまーす。」
「危なくねぇよ!?てか、先生って誰だよ!?」
菊池先輩と工藤先輩の痴話喧嘩って、見ていて飽きない気がします。本人達の前では決して言いませんが。
「それではお二方、良いお年を。」
重ね重ね言ってしまいました。ですが、こういうことは何度言っても趣深いものを感じます。
「はい。」
「ああ。」
二人の短い返事を機に、二人は帰っていった。
「さて優君。私も、優君とあっつい濃厚な一夜を…、」
「過ごすつもりはありません。それでは今日はこれで。」
私は菊池先輩から間合いをとり、お辞儀をしてから自室に戻る。
「えええ!!!???」
「振られてやんの。いい気味だ。」
「!?うっさい、この、ハゲ!!!!」
「誰がハゲだこらぁ!せめてはげている奴に言えよ!」
二人が何を話しているかは不明ですが、きっとどうでもいいことなのでしょう。私はそのまま年末年始を迎えようと動き出す。
一方、
「大丈夫だ。きっとばれていない。ばれていないから大丈夫・・・。」
社内から逃げ出す大人がいた。その大人の行動により、不特定多数の年末の過ごし方が変動することになるとは、この時、誰も知らない。
次回予告
『それぞれの年末生活』
学生大人共に休みに入った年末。それぞれ自由に過ごし、年末という休みを謳歌していく。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?




