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女子小学生モデルの聖夜祭生活

 同日。

 小学生達がクリスマスイブを楽しんでいる頃、

「・・・はい、お疲れ様でした!」

「「「お疲れ様でした!!!」」」

 ここ、テレビ局でも大人達に混じって盛んに働いている女子小学生がいる。その女子小学生、潮田詩織は撮影を終え、帰宅しようと準備を始めていた。

「今日もお疲れ様。良かったわよ。」

「ありがと。」

 峰田不二子の励ましに、潮田詩織は素っ気ない返事をする。

「あ。」

 何とも思っていない体を貫こうとしていたが、動揺していたのか、つい道具を台から落としてしまう。

(やっぱり詩織・・・。)

 その時、峰田は温かい目で潮田を見る。

「…何よ?」

 その目に気付いたのか、潮田はジトっとした目で峰田を見る。

「別に?」

 と、峰田は知らないと言いつつ、顔が若干にやけていた。

「・・・そう。」

 完全に嘘をついていると確信した潮田だったが、根掘り葉掘り聞かなかった。

「あ、そうそう。今日が何の日かは覚えているわよね?」

 峰田は付加疑問文で聞いてくる。

「何の日?・・・ああ、今日はクリスマスイブ、だったわね。」

(私が子供の時なんか、クリスマスイブを今か今かと待ち望んでいたのにね。)

 潮田のクリスマスイブに対する興味の無さに、峰田は一種のジェネレーションギャップを覚える。やはり、大人と共に働いていくと、イベント事はどうでもよくなってしまうのだろうか。そんなことを峰田はふと考えてしまう。

「そのクリスマスイブで、あなたにプレゼントが届いているわ。」

「プレゼント?」

「そう。所謂クリスマスプレゼントってやつね。後ろの段ボールの中に入っているわ。」

 と、峰田は後ろにある段ボールを指差す。潮田はその指に従い指先の方向を見てみると、

「…多くない?」

 段ボールの箱に収まり切れていないほど多くのプレゼントが置かれていた。

「それだけあなたの人気があるってことよ。よかったじゃない?」

「そうね。どれも大切に使わせてもらうわ。」

 潮田は峰田に協力してもらい、峰田の車に段ボールいっぱいのプレゼントを運び入れ、そのまま帰路につき始める。

「それにしても、これほど多くのクリスマスプレゼントをもらってもうんともすんとも言わないとはね。」

「?だって今日がクリスマスイブだってこと、さっきまで忘れていたから。」

「それじゃあ詩織はだれからのプレゼントが一番嬉しいのかしら?」

「・・・さぁ?」

「ふ~ん。それじゃあこれは私からのクリスマスプレゼントってことで。」

 峰田は車を運転しつつ、懐から器用に包みを取り出し、潮田に渡す。

「ありがと。」

 潮田は簡素にお礼をいい、そのままバッグに貰った物を詰める。

「別にここで開けてもいいのよ?」

「家に帰ってからじっくり見させてもらうわ。」

「そう。それで後は誰から貰いたかった?」

「だから別に…、」

 潮田は端切れを悪くする。心当たりがあるのか、強く否定できなかった。

「誰?誰か言ってもらえれば、私もそれなりに協力出来るかもよ?」

「べ、別にいいわ。私、そうまでして欲しいわけじゃないし、相手に迷惑をかけちゃうわ。」

「ふ~ん。つまり、迷惑をかけたくないと思えるような人から欲しいのね。」

「!?」

 峰田は潮田の言葉の上げ足をとる。その事が気に入らなかったのか、峰田を強く睨みつける。

「あー怖い怖い。それじゃあこれでこの話はこれでお終いね。」

「ええ。もう上げ足をとられたくないわ。」

 先ほどの事がよっぽど気に入らなかったのか、今もどこかで気にしている潮田詩織である。

「さて、そろそろ着く…着いたわ。」

 峰田は車を停める。

「さて、この段ボール一杯のプレゼントは私が運ぶわ。詩織は自分の荷物を持って。」

「分かったわ。」

 二人は潮田宅にクリスマスプレゼントを入れる。

「さて、今日はこれで帰るわね。」

「え、ええ。」

 潮田はまたも歯切れの悪い返事をする。

「?どうかしたの?」

 そう峰田が聞くと、

「きょ、今日もありがとう。た、ただそれだけよ!」

 と、潮田は照れくさそうにお礼を吐き捨てる。

「…ええ。こちらこそどういたしまして。」

 峰田は笑顔で返事を返す。

「あ、そうそう。私からも最後に1つ。」

「?何?」

 峰田の言葉に潮田は疑問を持つ。

「優く、優ちゃんからクリスマスプレゼント、欲しくないの?」

「!!??そ、そんなわけないでしょう!!??ほら、さっさと帰った、帰った!!!」

 潮田は峰田の背中を強く押し、潮田宅から排除しようとする。

「はいはい。私はこれで失礼するわね。」

 峰田は笑顔からにやけた顔へと変え、そのまま帰る。


「…やっぱ、優君からクリスマスプレゼントが欲しかったのね。」

 峰田不二子には心当たりがあった。それは、今年の潮田詩織の変貌である。今までは仕事でも私生活でもとっつきづらいところがあり、そのせいで色々と損をしていると感じていた。それはひとえに、自身を高めるきっかけ、ライバルに近い存在がなかったからだと峰田は推測した。そして今年、潮田のライバルになりえる人物とコンタクトをとることが出来た。その存在は早乙女優。その実力は、モデル経験皆無にも関わらず、プロのモデルを数度見ただけ自分の能力として昇華させ、このまま続けていけば近い将来、潮田詩織を超えるsモデルとなっていただろう。その仕事ぶりを見た潮田はその後、自分から進んで勉強を始めた。今も自分で勉強しているのか、モデルやドラマの出演に無駄がなく、出演者とも演技に関して色々口を挟めるほどとなっていた。

(あの子はなんだかんだ、優君を特別視しているわね。)

 だから、潮田詩織が今以上に立派なモデルになることを祈り、

(とはいえ、最後にちょっと意地悪しちゃったわね。)

 峰田不二子は行動を起こす。

「・・・あ、もしもし?峰田不二、はぁ!?誰が女怪盗よ!?峰田不二子!あなたにちょっとお願いがあるの。ええ、優君に関連するお願いよ。それでね…、」


「ま、まったく!あいつったら!」

 潮田詩織は扉を強く締め、さきほどニタニタしていた峰田にイライラを募らせていた。

「なんで私が優からクリスマスプレゼントを欲しいなんてふざけたことを…!」

 潮田詩織は自分で否定しつつ、

(でも、もしもらえるとしたら、どんなクリスマスプレゼントを…?)

 早乙女優からクリスマスプレゼントをもらえる状況を仮説として組み立てる。

“潮田さん。はい、クリスマスプレゼントです。どうか受け取ってください。”

“これで潮田さんの胃袋を少しでもつかめたら幸いです。”

“どうか今後とも、潮田さんが元気で過ごせますように。”

「って、私は何を…!?」

 廊下を歩き、リビングの明かりをつけると、テーブルの上には大きめの包みが置いてあった。

「何あれ?」

 潮田詩織はテーブルに近づき、大きめの包みを詳細に把握しようとする。その大きな包みの上には手紙が置いてあった。

「…これ、ケーキじゃん。」

 大きな包みの中に入っていたのは、ケーキであった。

「ワンホール丸々買ってくれたのは嬉しいけど、流石に一人では食べきれないわよ。」

 潮田詩織は自身の父に呆れる。

「手紙の方は何を書いているのかしら?」

 潮田詩織は手紙を開き、内容を把握する。

「・・・。」

 内容は、



・本日はクリスマスイブであること

・だから大きめのクリスマスケーキをプレゼントとして置いておくこと

・だが、私は今日も仕事で帰りが深夜になってしまうこと

・お互いが暇になった時、二人でクリスマスのお祝いをしよう

・それまではすれ違いの日々が続くかもしれないが、お互い、それまで頑張っていこう

・メリークリスマス



「お父さん…。」

 潮田詩織はマジマジとケーキを見つめ直す。そのケーキは幼少期、自分がこれがいいと駄々をこねて買ってもらって以来、毎年同じチョコレートケーキとなっていた。今は別に好きでも何でもないが、その変わらない父の想いに打たれるものを感じた。

「流石にケーキはそこまで日持ち出来ないし、食べちゃうか。」

 潮田詩織は席に座り、

「いただき…、」

 ここで潮田詩織は、

「そういえば、お母さんにも少しおすそ分けしよう。」

 潮田詩織はワンホールケーキをショートケーキサイズに切り、

「メリークリスマス。」

 仏壇に供え、手を合わせる。

「お父さん、今でも好き嫌いが変わっていないと思っているのか、毎年同じチョコレートケーキを買ってくるのよ。」

 話しかけ、十分に話し終えると、

「いただきます。」

 潮田詩織は独り、ケーキを食べ始める。

(本当は独りじゃなくて…。)

 そんなことを想いながら、毎年食べるチョコレートケーキより少し苦めなチョコレートケーキを食べていった。

次回予告

『会社員達の聖夜祭生活』

 12月24日のクリスマスイブ。恋人と過ごそうとしている人達が多い中、早乙女優達会社員は仕事をする。仕事終わり、会社員達は社員寮に集まり、食事をすることになった。食事会が始まった後、早乙女優はある人物、恩を感じている人にクリスマスプレゼントを贈るため、ある場所へと向かう。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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