表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/222

誕生日が同じな女子小学生とその身内達の聖夜祭催事生活

同日。

 クリスマスイブのお祝いは色んな場所で行われている。それは、とある一般家庭でも行われている。

 そして、この二つの家族も、このクリスマスイブに家族総出でパーティーを開くのである。

「ふんふんふーん、ふんふんふーん、ふんふんふーふふーん♪」

「今日は随分とご機嫌ね、綾。」

「当ったり前じゃない!?何せクリスマスイブよ!クリスマス料理にクリスマスプレゼント!もう嬉しくって今から鼻歌歌っちゃう♪そういう洋子こそ、今日はウキウキじゃん?」

「そうね。私もまさかお姉が今年も参加してくれるなんて思わなかったから。」

 そう言いながら風間洋子は、

「…え?私に何か言ったの?」

 自身の姉、風間美和を見て言う。本来、風間美和は受験生なので参加せずに、なんなら今年のこの催しを中止にするか、という案も出ていたが、「私のせいで中止になるのは嫌。なんなら私も出るから、みんなで今年も楽しみましょうよ♪」という本人の申し出もあり、この催しが開催されるのだ。

「もう綾ったら、そんなに楽しみにしちゃってもー。」

 と、桜井母は自身の娘を温かい目で見ている。

「そんなこと言ったって、あなたも結構楽しみなんじゃないの?」

 ここで、台所で調理している風間母も会話に参加してくる。

「ま、それはそうなんだけどね。こうしてみんなで集まれるのは嬉しいし、こういう機会でもないと、みんなでお酒が飲めないじゃない?」

「そうよね、違いないわね。」

 どうやら二人は、みんなで飲むお酒を楽しみにしているらしい。今もこの家の冷蔵庫には、小さい酒の缶の本数が二桁を超えている。

「なんで大人ってこんなものを飲もうとするのかな?」

「何でって、美味しいからじゃない?」

 一方で、未成年でも飲める物は申し訳程度に入っている。冷蔵庫の隣には、入らなかっただろうジュースが置かれている。

「美味しいのならみんなで飲めばいいと思うんだけど、なんで子供は飲んじゃダメなのかな?」

 桜井綾はテーブルを綺麗にしつつ、風間洋子に尋ねる。

「何でも、お酒に入っているアルコールが原因らしいよ。」

「なんで?」

「なんでって、私もそこまでは知らないわよ。お姉ならもしかして知っているかも?」

「呼んだ?」

 風間美和は台所から顔を覗かせる。

「「!!??」」

 風間洋子と桜井綾は驚き、動かしていた手は動きを封じられる。

「あ、急に話しかけてごめんね。それで、アルコールが原因な理由、でいいのよね?」

「う、うん。」

 風間洋子は控えめに頷く。

「それはね、アルコールを摂取すると脳が縮むんだよ。それに、未成年で飲むと、悪影響が身体に及ぶ可能性もあるとかないとか。」

「「へぇ。」」

 風間洋子と桜井綾は風間美和の話を聞き納得する。

「へぇって、一応保健でも学ぶと思うんだけど…。」

 風間美和は、自身が小学生の時に学んだことを思い出しながら愚痴る。

「さて、休憩はこれくらいにして、最後まで作りますか。」

「そうよね。美和も手伝ってくれる?」

「もちのろんよ!二人は…テレビでも見ていてね?」

「「うん。」」

 風間洋子と桜井綾はソファーに座り、テレビを見始める。

「それにしてもごめんなさいね。」

 桜井母は、風間美和に謝罪の言葉を発する。

「え?なんで?」

「だって受験生にやらせるなんて。本当なら綾にやらせるべきなんだけど、あの子、そこまで上手くないから…。」

「別にいいよ。私、料理得意だし、こう見えて今、結構いい気分転換が出来ているんだ。それに、」

「それに?」

「・・・10月はちょっと、心配かけちゃったから。」

 風間美和は少し申し訳なさそうに告げる。何せ今年の10月は、あのストーカー騒動があったのだ。その事は極少数しか知らない事項だが、風間美和本人にとっては一生忘れられない出来事となった。

「そう。」

 風間美和の悲しげな表情に、桜井母は何も聞こうとしなかった。本当は今すぐ聞きたい。何があったのか問いただしたい。だが、同時に見えているのだ。親友である風間母の悲しげな表情が。やはり親子だからか、表情もどこか似ている。

「だから、お父さんお母さんにも恩返ししたいんだ。」

 風間美和は、笑顔で桜井母に言う。

「…分かった。私達で美味しいクリスマス料理、作りましょうね?」

「うん!」

 桜井母は、言いたいこと、聞きたいことを胸に秘め、食材の調理を続ける。心なしか、食材の調理スピードが速まっているように見受けられた。

 その日の夜。

「「ただいまー。」」

 二人の成人男性が家に入ってくる。それは、風間父と桜井父である。

「「「おかえりなさい。」」」

 風間洋子、風間美和、桜井綾は玄関まで迎えに行き、

「さ、早く夕飯食べよう?」

「もうお腹ペコペコよ。」

「荷物は私が持つよ。」

 少女3人が成人男性2人の相手をする。

((ああ、幸せだなぁ。))

 二人の父親は、娘達の思いやりに幸せを感じ、そのまま案内される。案内された場所は、もう何度も何度も見て、見慣れている場所。それなのに新鮮さを覚える。

「「おかえり。」」

 台所から二人の成人女性がエプロン姿で、容器を持って登場する。二人はその容器をテーブルに置く。

「さ、早く食べよう!」

 桜井綾は待ちきれないのか、早く早くと風間洋子を急かす。

「もう。そんなに急いでも料理は逃げないわよ。」

「あ、そうか。えへへ。」

 そんなやりとりの後に起こる笑い声。

 そして、全員が席に着き、

「「「「「「「いただきます!!!!!!!」」」」」」」

 全員、食事の前の挨拶を行い、一斉に自身の箸を手に取り、特別な食事が始まった。


 食事が終わり、時間が少し経つと、

「「zzz・・・。」」

 風間洋子と桜井綾は既に眠っていた。もうクリスマスプレゼントの事やサンタクロースの事はどうでもいいのか、長い夜を過ごすつもりはないみたいだ。だが、満面の笑みで寝ていることから、二人が幸せであることは間違いない。

 そんな有意義な睡眠とは対照的に、

「「はい、どうぞ。」」

「「サンキュー。」」

 大人達は酒を手に取り、

「「「「乾杯。」」」」

 静かで有意義な宴会の第二幕が始まる。

 静かに始まった宴会は、刻々と空きの酒瓶を増やしていき、

「「「「・・・。」」」」

 今も静かに飲んでいた。だがこれは、互いが不仲故に起きた状況ではない。ただ静かに飲むことが楽しいから飲んでいる、それだけである。そして4人は笑顔で飲んでいく。第三者の視点から見てみると、少し気持ち悪さを覚えるかもしれない。

「それで、10月に何があったんだ?」

 桜井父のこの言葉に、

「「!!??」」

 風間父と母は飲む手を一瞬止めてしまう。風間母はそのまま酒が入っているコップをテーブルに置き、風間父はそのまま一気に飲み干す。

「何もなかった。」

 風間父はそう言い切った。事前に色々言いたかったが、それらは全て、先ほどのお酒と共に飲みこんでいた。

(これで、いいのよね?)

 風間母も、風間父と同じ気持ちだった。

 その気持ちとは、親友家族を心配させないため、何も言わない事。自分達が下手に行ってしまえば、桜井一家に何か迷惑をかけてしまうかもしれない。そんな心配が、この二人の気持ちを同化させた。

「そんな訳ねぇだろ?」

 だが、二人の真意に気付いてか気付かずか、桜井父は風間父と母の深層心理まで潜り込もうとする。

「俺はな、自分の娘はもちろん、お前らの娘も家族同然に大切なんだよ。だから、何かあったのかぐらい、すぐに分かるんだぞ?」

 桜井父は風間父を睨みつけ、事情の説明を遠回しに求める。

「でもこれは、私達家族の問題で…、」

 そう風間母は言い訳したものの、

「私はあなた達が心配なの?それになにより、家の綾ちゃんが美和ちゃんの事、心配していたのよ?」

「「!!??」」

 風間父と母は驚く。何せ、桜井一家は風間一家の事を大切にしているが、これは単なる一方通行なんかではない。風間一家も、桜井一家の事を大切にしているのだ。だから、風間父と母は桜井綾の事も、自分の家の娘同然に大切に育て、見守ってきたのだ。

「私が大丈夫だって言ったから一時期何とかなったけど、私も不安だったわ。あなた達家族が私達から離れるんじゃないかと。」

「!?そんなこと…!?」

「それだったら何で悩んでいたの?」

 桜井母の問いに、

「「・・・。」」

 風間父と母は黙ってしまう。

本当にありのままを伝えてもいいのだろうか。

 この事を言ったら、この家族に迷惑をかけてしまうのではないだろうか。

 親友だからとこんなことを相談してもいいのだろうか。

 そんな不安が、風間父と母の間で彷徨う。

「・・・いいよ。話すよ。」

「「「「!!!!????」」」」

 急な第三者からの声。声の主は、ここにいる大人達なら、目を閉じていても答えられるだろう。その声の主は、

「み、美和!?どうして起きている!?」

 風間一家の長女、風間美和である。

「どうしてって、受験勉強の合間にトイレに行こうとしたら話声が聞こえて、それで聞いていたら…、」

 4人は自身の行いに猛省した。

 何故、未成年が聞いているかもしれない可能性を考慮しなかったのかと。今更後悔しても後の祭り。美和は冷蔵庫からお茶をコップに注ぎ、自身が使っている椅子の前に置き、着席する。

「でね、私の事でお母さん達が言い合ってほしくないから話そうかなって。それに、」

「「「「それに????」」」」

 風間美和はコップを握る力をさらに強め、

「お父さん岡朝だけじゃなくて、おじさんおばさんにも一杯、いっぱいお世話になったから。」

「「美和・・・。」」

 さらに美和は、“それにおそらく、私の事をいっているんでしょう?”と、風間父と母に聞く。桜井父と桜井母は、風間美和の言っている意味が分からず、そのまま見つめ続ける。

「だからお願い。」

 風間美和からのお願いで、

「分かった。10月の時の事、全部話すよ。」

 その風間父の言葉に、桜井父、桜井母、そして、

「あ、あなた!?」

 風間母も驚く。

「親友にはやはり隠しきれる気がしない。それに、美和からのお願いだし、こういった重要な情報は共有すべきだと思う。いざという時は協力できるし、協力してもらえるようにな。」

 桜井父と桜井母は何を言っているのか分からなかった。それとは逆に、風間母と風間美和は納得した表情を公開する。

「それじゃあ話すね。事の次第は…、」

 こうして、夜遅くに二家族交えた会談が始まる。

 最初はゆっくりと重々しく話せていたが、次第に声が声じゃなくなり、続きを風間母が話す。だが、風間母も当時の出来事を思い出してしまい、風間父は引き継ぎ、最後までを話をした。

「・・・これが事の顛末だ。」

 風間父が話を終えると、

「「・・・。」」

 桜井母は話を聞いているものの、ハンカチ無しで聞ける様子ではなかった。桜井父は、常に拳を強く握り、行き場のない怒りを発散させていた。

「美和ちゃん!」

 風間美和に飛びついてきたのは、

「お、おばさん!?」

 桜井母であった。

「ごめんね。辛い目に遭ったね。何でも、何でも相談してくれていいからね。おばさん、いつでも力になるからね。」

 目元を赤く腫らせ、風間美和を強く抱きしめる。

「俺も同じだ。何かあったら家に駆け込んでくれていいからな。」

 と、抑えきれず流れてしまった涙をぬぐいつつ、桜井父は断言する。

「ありがとう、ありがとう。」

 二人の思いが乗った言葉に、風間美和は耐えられなくなってしまった。

 この風間美和という少女が真っ当に育った背景として、両親の良心だけでなく、こういった血縁者ではない大人達も関わっている事だろう。だからこそ、風間美和は今もこうして感謝を素直に述べられるいい子に育ったのだ。

「それじゃあ今日はみんなで寝ましょうか?」

「・・・うん。」

 風間母の提案に、風間美和は照れながらも肯定する。

「よし、それじゃあ俺も一緒に寝るか。」

「うん。」

 風間父を含め、3人で寝ることになった。

「よし!こうなったら俺も一肌脱いて、俺も一緒に…、」

 桜井父のおふざけ発言に、

「駄目に決まっているでしょう!?」

 桜井母は全力で阻止する。

「じょ、冗談に決まっているだろ。だからそんなに怒るなって。」

 桜井父は冗談だと断言するが、

「「最低。」」

 風間父と風間母はそう捉えていなかったらしい。だが、本心では冗談だと確信していた。今のこの空気を和ませるためにおふざけで言ったものだと、親友ならではの以心が直感で働いた。

「ちょお!?」

 桜井父のその言葉と顔に思わず、

「ふふ♪」

 風間美和は軽やかに笑う。その笑いが周囲に伝染し、さきほどまでの空気が一変した。

「とはいえ、冗談でも次からはそう言う事は言うなよ?」

 風間父の真剣な指摘に、

「うっ。わ、分かったよ。」

 桜井父はタジタジになりながらも返答した。どうやら冗談だと分かっていても嫌なものは嫌らしい。

 こうして、二家族交えたクリスマスイブの食事会は無事に終わった。

次回予告

『女子小学生モデルの聖夜祭生活』

 12月24日のクリスマスイブ。恋人と過ごそうとしている人達が多い中、女子小学生モデルある潮田詩織はモデルの仕事に取り組んでいた。仕事を終わらせて帰宅すると、クリスマスケーキと置手紙が目に入る。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ