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小学生達の洋菓子屋短期仕事生活

 さらに気温が低くなり、強制的に身を引き締めてしまうこの頃、世間はある2色、もしくは3色に包まれようとしていた。それは、クリスマスのトレンドカラーである赤と緑である。赤と緑をふんだんに用いたイルミネーションが世間を浮つかせ、あわよくば雪が降り、ホワイトクリスマスになることを望んでいる。カップルいちゃつくこの御時世、

「なぁなぁ。今年のクリスマスはどうする?」

「そんなの、ケーキ食べて過ごすに決まっているだろ?親にプレゼントをねだってな。」

 小学生達は既に冬休みに突入し、クリスマスへのカウントダウンを始め、どう過ごすか話し合っていた。その小学生達の中には、

「それじゃあ神田さん、よろしくね。」

「真紀ちゃん、今日はよろしくお願いします!」

「うん♪こちらこそ、だよ♪」

 風間洋子、桜井綾、神田真紀も含まれていた。


 時は少し遡り、今学期最後の登校日。3人は他の小学生達がこないような場所に集まっていた。

「それじゃあこれから、クリスマスまでの予定を簡単に話すね。」

 神田が話を仕切る。

「確か、22日と23日が私達のお手伝いの日、よね?」

「うん。洋子ちゃんの言う通りだよ。それでね、一応こっちも用意するけど、エプロンを持ってきてほしいの。」

「「分かった。」」

「後、親御さんにもきちんと伝えて欲しいって。これは私のお父さんお母さんから何度も念押しされたから、お互いに忘れないようにね?」

「「うん。」」

「後、お手伝いの詳しい内容は当日に教えるから、二人はエプロン片手に来てくれればいいから。何か分からないことある?」

「…私は無いかな。綾は?」

「そういえば、一番忙しくなる24日は、私達はお手伝い出来ないけど大丈夫なの?」

「うん。その日は太田君に入ってもらうから。」

 そう神田が言った瞬間、桜井と風間は笑顔を神田に見せる。

「な、何よ?」

 神田は二人の顔の変動に戸惑い、声質に変化をもたらす。

「「いーや。べっつにー??」」

 これほど嫌味のこもったシンクロは、そうはないだろう。これも、長年お互いを見てきた幼馴染だからこそ出来る業なのだろう。

「だったら、そんな変な顔しないでよ、もー!」

「ごめんね?つい、真紀ちゃんの反応が可愛くて。」

「そうね。反応が乙女そのものよ。」

「うっ!?そ、そうなのかなぁ?」

「うん!とっても可愛かったよ!」

「流石は恋する乙女って言ったところかしら?」

「もー!だから二人してからかわないでよー!」

 こういった話が行われた。その後、神田牧人太田清志が合流し、二人でクリスマスイブの手伝いについて会話を繰り広げていたのだが、それはまた別の話で。


「それじゃあ、これから二人ともよろしくね!」

「「はい!!」」

 こうして、桜井綾と風間洋子二人の小学生バイト、お手伝いが始まった。

 桜井綾と風間洋子はこういった店のお手伝いはまったくの未経験。なので、ケーキ作りには参加させず、店内の清掃や接客、会計等を行っていた。最初、二人は店内の清掃しかまともに出来なかった。それも仕方のないことだろう。何せこの12年、さきほど掲示された仕事の中で唯一系計済みの仕事だからである。それ以外は未知の領域で、一から十まで丁寧に、それもう丁寧に教えてもらわないと十分に使いこなせないのだ。だが、二人は成長期だからか、神田真紀が思っていた以上な成長を遂げた。神田真紀熱心な指導が功を奏したのか、桜井綾は接客を、風間洋子は会計をこなせるようになっていった。次第に神田真紀は二人を指導すべき同級生、ではなく、共に仕事をする仲間として接し始める。

「それじゃあそろそろ混みだすらね。人数で言えば、さっきの比じゃないから、覚悟しておくのよ!」

「「はい!!」」

「真紀―。ケーキの陳列をお願いできるかしら?」

「分かったわ。今行く。」

 さらに神田屋は混み出す。それは一時期とはいえ、店外に行列が出来てしまうほどである。本来、行列の待ち時間はイライラすることしかないのだが、

「いらっしゃいませー。本日はこんな寒空の中きていただきありがとうございます。こちらはサービスです。」

 サービスで熱いお茶を渡すほど、気の遣い方が上手くなっていた。風間洋子も、

「・・・はい。以上でよろしいでしょうか?計2870円となります。」

 桜井綾と張り合うように、仕事がみるみる上達していく。

(二人とも、本当に仕事が出来るようになったわね。)

 それは、何年も同じ仕事をし続けている神田真紀も少し悔しがってしまう程の上達ぶりであった。桜井綾と風間洋子。二人とも、己の持ち味を仕事に活かせる人材であった。無論、何もかもが全て上手く言ったわけじゃない。なんなら、二人とも成功例より失敗例の方が多かったくらいだ。だが、失敗は、失敗にならなかった。理由は、

「まぁ小学生なら仕方ないわね。」

 お客様の方がそう笑顔で二人をなだめるのだ。お客様は見慣れない二人の新入りに微笑みを向け、失敗しても可愛いものだと褒めたのだ。それで調子に乗り、ずるずるとダメ人間になるかも、なんて心配を一時期神田真紀は二人にしていたが、それは杞憂に終わった。二人はその慰めを、向けてくれた微笑みをもっと見たいがためにどうすれば考え、より仕事を覚え、この店をまわしていったのだ。

 そして、忙しなくゆっくり進んでいた時間は終わりを迎え、

「きょ、きょうはおつかれさまでした。」

「「お、おつかれさま…。」」

 桜井綾、風間洋子のお手伝いの時間が終わる。それは、

「それじゃあ二人には好きなケーキを選んでもらって。それを今回のお礼としてあげるわ。」

 この神田母の発言に、

「「!!??わーい!!」」

 二人は素直に喜ぶ。やはり小学生の女の子。甘い食べ物は嬉しい。それに、好きなケーキを丸々一個無料でくれるのだ。カロリーやアレルギーさえ気にしなければ、クリスマス前とは言え、最高のプレゼントとなりうるだろう。

「それじゃあ、一応二人が好きそうなケーキは奥にあるから付いてきてね?」

「「うん!!」」

 二人はさっきまでのお疲れムードはどこに行ったのか、すっかりウキウキ気分となった。

「それじゃあケーキ、ありがとうね!」

「本当にこんな豪華なケーキをもらってよかったの?」

 桜井綾は素直に喜んでいたが、風間洋子はそうではなかった。やはり、一時期とはいえ、店の経営に携わった身。金銭面がどうしても気になってしまう。

「いいの!だって、現金を二人に渡すと色々困るから代わりにって、お父さんお母さんが言っていたし。」

 そして二人は片手に大きなケーキを持ち、

「それじゃあ明日もお願いするね!」

「「はい!!」」

 3人は別れを告げ、1人と2人に分かれる。

「いやー。こんな大きいクリスマスケーキ、もらっちゃったね。」

「そうね。私達家族で食べきれるかしら?」

 二人は帰路についたなか、改めてもらったケーキの箱を見る。それは、親がたまに買ってきてくれるショーとケーキより明らかにサイズが異なっている。

「それじゃあさ、この二つのクリスマスケーキの食べ比べしようよ!」

「食べ比べ?こんな大きいケーキが2つもあるのに、出来るの?」

「出来るよ!私と洋子の家族総出で食べれば!」

 と、桜井綾は笑顔で風間洋子に話かける。

「…クリスマス前だけど、いいわね。」

 桜井綾の案に、風間洋子は笑う。その笑いに、

「うん♪」

 桜井綾はさらに笑みを深くする。

 こうして、桜井一家と風間一家はこの日、二つのケーキを食べ比べすることになった。結果として、二つとも完食することが出来ず、二日かけて食することにした。

 一方、

「さて、いよいよ明日がクリスマスイブか。」

 寝る直前、僅かに明るく光る夜空を眺めながら、太田清志は明日へ思いを募らせていた。それは、明日への不安と、どんなプレゼントがもらえるのかという楽しみが織り交ざっていた感情である。

次回予告

『普通な男子小学生とケーキ屋の娘な女子小学生の洋菓子屋短期仕事生活』

 クリスマスの季節、神田家が経営しているケーキ屋である神田屋は忙しい。そんな中、太田清志が来店し、店を手伝う事になった。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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