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様々な者達の年末目前生活

 クリスマスが近くなってくるこの頃。クリスマスが近くなってくるということは、冬休みが近くなってくる、ということを意味している。その冬休みを期待している者達の中に、

「おはよう、綾。」

「おはよう、洋子。」

 風間洋子、桜井綾も含まれている。

 二人が学校に到着すると、クラス一同の話は、冬休みに何をするかで話題が持ち切りとなっていた。

 家でのんびりする者。

 国内旅行する者。

 国外旅行する者。

 ウィンタースポーツをしに遠出する者。

 実に様々である。

 そして、風間洋子、桜井綾の予定は既に一つ決まっていた。

(ま、私と綾はクリスマス前に、)

(真紀ちゃん家でお手伝い、だけどね。)

 と、二人は息の合った視線を送りあう。その視線に割り込んできたのは、

「洋子ちゃんと綾ちゃんは何か、クリスマスに用事とかあるの?」

 神田真紀である。

「あるも何も、」

「ねぇ?」

 風間洋子と桜井綾は互いの考えを理解している前提で話を進める。これも親友の二人だからこそ出来る話術の一つ、なのだろう。

「あ。」

 神田真紀は二人の意図に気付き、顔に手を当てる。

「その時はよろしくね?」

 その風間の発言に、

「うん、こちらこそ、かな?」

 神田ははにかむように顔を傾ける。

「うん!」

 桜井は全力の笑顔を二人に向ける。

「はーい、みなさん。そろそろ授業が始まりますよー。」

 担任、小野口の発言により、クラスの子供達は自身の席に座り始める。

「ではさっそく、今日行う学級会についてお話します。」

 この発言の瞬間、クラスが盛り上がる。学級会は、小学生達が楽しみにしている催し事の一つである。

「では今日は、校庭も体育館もおさえることができましたので、希望通り、男子はサッカー、女子はバドミントンをしましょう。」

 この言葉に、またもクラスは盛り上がる。希望は事前にアンケート形式で意見を出してもらっている。無論、その要望に、早乙女優の意見は含まれていない。

「それではみなさん、男子は外、女子は体育館に向かってください。」

 小野口の発言で、

「「「はーい♪♪♪」」」

 クラス一同、元気且つ機嫌よく返事をする。そしてクラス一同、楽しみで待ちきれないらしく、笑顔がこぼれた。

 クラス一同、

「おい、こっちだこっち!」

「パスパース!」

「それ、シュートだ!」

 外でサッカーをしていた。男子一同、みんな楽しく球技を行っている。その中に、

「俺にもボールよこせぇい!」

 太田清志もサッカーをやっており、パスはまだかと言葉を荒げている。

(どうやらみんな、楽しく遊んでいるようね。)

 クラスの男子一同が楽しく遊んでいることに微笑ましく思っているのか、思わず笑顔を隠せない。

「さて、次は体育館に行きますか。」

 そのサッカーの競技は、このクラスの男子人数マイナス1の人数で行われていた。

 次は体育館。

 ここでは、

「えーい。」

「あれ?シャトルどこいった?」

「そこに落ちているわよ?」

「・・・あ。」

「もう、まったくドジなんだから♪」

「「「ははは。」」」

 キャッキャウフフの実に和やかな雰囲気で行われていた。そこにはスポーツマンシップに乗っ取った熱い駆け引きや迅速な動きなんてものはない。この競技には、ただただ楽しさを追求した結果、このような和やかな雰囲気が誕生した。点をとったら、

「やったー♪」

 と、ガッツポーズをとる。逆に点をとられたら、

「あらら。」

 と、笑って失敗を受け入れる。

「ふぅ。」

 数十分もの間、バドミントンし続けた風間洋子は、ようやく休憩がとれる~、と言わんばかりに背を体育館の端に預ける。

「洋子、お疲れ様。」

 その近くに桜井綾は駆け寄り、風間の近くに座る。

「綾こそお疲れ様。」

 風間は自分の親友に言われたことをそのまま返す。

「もう今年もあと僅かよね。」

 この風間の発言に、

「そうだねー。」

 桜井は相槌をうつ。

「私はもっともっと遊びたかったな。」

 と、桜井は少し悲しそうに返事をする。

「あら?誰と、遊びたかったのかしら?」

 と、風間は誰と、の部分を強めて発言する。その風間の言葉に桜井は頬を赤らめ、下を向き、

「…早乙女君と。」

 今にも消えそうな声で呟く。そんな半径数マイクロメートル圏内でしか聞こえない声量で発したにも関わらず、

「やっぱ、綾はそうよね♪」

 風間はニヤニヤしながら返事をする。

「もう!そうやって私をからかって!」

 風間の意図に気付いた桜井は風間に憤慨するも、それほど怒っている訳でもなく、怒りのどこかに楽しさを感じられる。

「二人ともー。そろそろ二人の試合の時間よー。」

 クラスメイトの呼びかけに、

「あ、はーい。行こう、綾。今度は私と組んでダブルスで勝負よ。」

「うん!一緒に勝とうね!」

 こうして二人はバドミントンのダブルスで勝利するため、フィールドに立つ。

 この二人はいつも以上に体を動かしていった。普段ならへとへとになっているはずだが、いつも以上に体力があったのか、いつも以上に楽しく運動できたらしく、

「たまにはこうやって楽しく遊びたいわね。」

「うん!今度はお父さんお母さんともやりたい!」

「そうね。」

 きっと今の二人を写真におさめれば、モデルになれること間違いなしであろう。そんな笑顔を、みんなを惹きつける笑顔をしていた。


「学級会アンケート?」

「そうみたい。今、このテレビ局にいる子供を対象に行われているアンケートなの。だから詩織にもまわって来たみたいなの。」

 宝鳥小学校の面々だけが学級会のことを話題にしているわけではなかった。今、テレビ局で撮影を行っている女子小学生モデル、潮田詩織も学級会についての話題が提供されている。

「だからといって、この学級会アンケートって何?」

 潮田は呆れたように紙を峰田に見せる。

「ちょっと見せてね。」

 峰田はその紙を受け取り、内容を読み込む。

「・・・なるほどね。」

 峰田は内容を理解したらしく、首を上下に振り、内容を承諾する。

「それで、なんて書けばいいの?」

「ええっとね・・・。」

 峰田は潮田にどう説明すればいいのか少し考え、潮田に話す。

「近年行われる学級会。その学級会にどんなことがしたいか、それをこれらの選択肢の中から選んで欲しいみたい。無ければ自分で追加して書けるみたいよ。」

「へぇ。」

 潮田はその選択肢を見てみる。

「ねぇ?授業は分かるけど、何でスポーツとかかくれんぼとか鬼ごっことかあるわけ?普通、授業じゃないの?」

「確か聞いたところによると、学級会では色んなことをしているみたいよ。それこそ遊びの時間にするクラスもあるんだとか。」

「へぇ~。それじゃあこの授業以外にしますか。」

 潮田は授業という選択肢を消す。

「そもそも、なんでこんなアンケートをしているの?」

 潮田はこのアンケートが配られた時から抱いている疑問を峰田にぶつける。

「何でも、来年から撮影がスタートするドラマは、その学級会をテーマとしているみたいなの。だから、その話題提供にってところじゃないかしら?」

 峰田は峰田なりに考察する。

「へぇ~。そのドラマって何て言うの?」

「確か・・・学Q、じゃなかったかしら?」

「ふ~ん。」

 潮田は自分で聞いてきたにも関わらず、つまらなそうに返事を返す。

「優ちゃんと一緒に見たら?」

 その峰田の発言に、潮田の耳はピクピクと動き、

「優、そういうドラマ、見るのかしら?」

「あ。」

 峰田は自分で言い、潮田に指摘されて気が付く。早乙女優はそういったドラマの類は見ないのではないのか、ということに。

「だ、大丈夫よ!」

「何が?」

 潮田は出来るだけ冷静に言ったつもりだが、峰田は怒っているようにとらえる。

(ど、どうしよう?)

 峰田は自身の発言に責任を持つべく、どう回復しようか必死に思考を巡らす。

(こ、これだ!)

 峰田は咄嗟に妙案を思いつく。

「そ、そういえばさ!優ちゃんってアイス、好きよね!?」

 峰田は、声が若干上ずりになりながらも潮田に話す。

「そうね。」

 潮田は、早乙女優と初対面のことを思い出す。

「確か来年、このテレビ局でアイスのキャンペーンをやるって言っていたわね。それに誘ってみたらどうかしら?」

「・・・優、来てくれるかしら?」

 峰田はその潮田の問いに、

「ええ。それはもう確実に。」

 峰田は笑って答える。早乙女優と、潮田詩織の笑顔を願って。

「分かったわ。今度、誘ってみるわ。それと、」

「?何?」

「はい、アンケート。記入出来たわ。」

 潮田は記入が完了された紙を峰田に渡す。

「お疲れ様。それじゃあ出してくるからちょっと待っていてね。」

「ええ。」

 峰田は潮田の元から離れる。

「アイスのキャンペーン、か。」

 潮田はさきほど受け取った峰田の情報を確認し、

「優、喜ぶかしら?」

 早乙女優の笑顔を想像し、

(♪)

 はにかむように笑っていた。


 潮田詩織という女子小学生が働いているが、

「あぁー。どうしてこんなに年末が近くなると忙しくなるんだろうなー。」

「それはきっと、年末年始に十分休養が取れるようにじゃないですか?」

 この会社にも、早乙女優という男子小学生が会社で働いている。

「そうね。年末年始、思う存分優君とイチャイチャするためだもの。頑張って仕事をするわ♪」

 そう言って、菊地は鼻歌を歌いそうな気持で仕事をしていき、

「・・・終わったわ。工藤、今メールを送るから確認よろしく。」

 仕事が終わった。菊池にとって、常人がこなす仕事など、片手間で十分なのである。

「はぁ。お前って相変わらず仕事が早いよな。」

「余計なこと言っていないでさっさと確認しなさい。優君とのイチャイチャタイムが削られちゃうでしょう!?」

「こいつ。いっつも隙あらば優と接触しているくせに…。」

 工藤は菊池の態度に鬱憤を溜めるが、それを解放せずに確認作業に入る。

「・・・やっぱ菊池の仕事は完璧だな。間違えを探しても何一つ見つからねぇ。」

 心なしか、工藤が落ち込んでいるようだった。一度は見返そうとあら探ししていても、菊地の仕事はいつだって高クオリティーのノーミスであった。

「ふふん♪優君の事を思えばこんな仕事、どうってことは無いわ♪」

 と、自慢げである。

(いつもこれくらい仕事をしてくれたらいいのになぁ。)

 工藤は、優が勤務している時と不在している時の菊池の仕事風景を思い浮かべ、比べる。

 前者は、早乙女優といちゃつきつつも、優にいいところを見せたくて仕事を頑張る。

 後者は、優という原動力がないせいか、空気が抜けた風船のようにしぼみ、仕事のクオリティーが俄然低くなる。それでも最低限の質を守られているので直接文句を言う事はないが、それでもため息をつきたくなってしまう。

 何故このクオリティーを常時発揮出来ないのか。

「さて、今日は帰ったら優君とイチャイチャしようかしら?優君は何汚服が着たい?」

「あ、私は今日やるべきことがあるので、仕事が終わり次第失礼します。」

 早乙女優は菊池への愛を躱し、お辞儀をしたかと思うと、

「それではお茶が切れましたので、お茶のおかわりを淹れてきますね。」

 躱した際、優は菊池の湯呑みを手に取っていたらしく、優の手には二つの湯呑みが胴体を見せている。

「ついでに菊池先輩の分も淹れてきますが、他にお茶のおかわりが欲しい人はいますか?」

「あ、それじゃあ俺の分も頼むわ。」

「私、優さんのお手伝いします!」

 工藤、桐谷は優の言葉に反応する。

「あ~ん。優君、私の愛を受け止めてよ~。」

 菊池の悲壮な嘆きは、

「桐谷先輩ありがとうございます。」

「いえ、こういう仕事は新人である私の役目ですから!」

 完全に無視されていた。

「はぁ、はぁ。優君が私の事を完全に無視しているわ。こんな仕打ちも悪くない♪」

「「・・・。」」

 菊池、工藤、橘の計3人がオフィスに残されたが、菊地の発言に、2人は心の中でドンびいていた。

 普通の小学生は学級会をしているが、普通でない小学生はそんなこと関係なく仕事をしている。

次回予告

『小学生達の洋菓子屋短期仕事生活』

 クリスマス目前。神田家が経営しているケーキ屋、神田屋は忙しい。そんな中、桜井綾達小学生が、その仕事を手伝うため、神田屋を訪れる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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