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会社員達の合唱練習生活

 半袖で過ごす人はほとんどいなくなり、長袖必須な気温となった。そんな気温でも頑張って根を生やす植物は存在しており、たくましいと思える。そんなたくましさを見習いつつも、11月は始まる。


「・・・うん。さすがは未来のピアニストね。もう教えることはないみたいね。」

「いえいえ。私のピアノなんてただの猿真似みたいなものですよ。」

「あなたのピアノが猿真似なら、そこらのピアニストは、その猿真似以下の存在になるわけだけど…。」

「そんなことは無いと思いますよ?現に私、音楽の知識は皆無ですし。」

「そのハンデをものともしない演奏なんだけどね…。」

 11月始まってすぐの日曜日。私は毛利さんの家に来て、ピアノの練習をしていた。事の発端は、この毛利さんからの頼みだ。毛利さんが片腕を怪我し、ピアノを弾けなくなったことにより、イベントに出る人の代理を私に頼んできたのだ。最初は断ったのだが、毛利さんの強い推薦と、菊池先輩方が、私の演奏を聞きたいというので、私は了承したのだ。だが、イベントに向けての練習は本当に困難となった。

私の場合、自他ともに認める知識の無さで、この暗号?みたいな記号の呼び名も知らなかったほどです。ちなみに、その暗号みたいなものは音符、というらしいです。この事実を知った時、毛利さんは、

「・・・ほんとに、音楽に関する知識が全く無いのね…。」

 と、がっかりされていた。ま、知識がないのは仕方がないことですよね。さらに、音階?というものも重要らしく、そのことについても知らなかったので、正直に言ったところ、

「本当に?ドレミファソラシド、よ?本当に知らないの?ねぇ?」

 本当に知らないので、知らないと答えたところ、

「これは・・・。練習方法を考え直さないと。」

 …なんだか、申し訳ない気持ちになりました。

「…優。もう少し、仕事や家事以外のことにも目を向けような?な?」

 工藤先輩までも切なそうな顔をして、私に言ってきました。工藤先輩が言うのであれば、少しくらいは考えましょう。あくまで、私生活に悪影響を及ぼさない範囲で、ですが。それで、肝心の練習メニューですが、

「私が演奏している時の動画を見る、以外になさそうだね。」

 以前、毛利さんが自身の演奏を動画にしていることを確認しているので、その動画を何度も見るしかない、と言われました。

「一から勉強している時間がないみたいだし、今回ばかりはしょうがないわね。」

 と、若干諦めが入っているみたいでした。ですが、無知を隠してもすぐにばれそうですし、無駄なことに時間を割くわけにはいかないですからね。とはいえ、最初は本当に大変でした。

「違うわ!そこはメゾピアノじゃなくて、ピアノにして!」

 と言われたのですが、

「?メゾ…?ピアノはこれ、ですよね?」

 私があまりにも音楽用語を知らないせいか、思った以上に意志疎通に苦労しました。音楽用語の説明をしてもらうたびに、毛利さんは呆れ顔になっていました。本当、お手数をおかけして申し訳ありませんでした。ですが、そんな練習も、何度も何度も続けていくと、それなりの演奏となりました。自分でも、上達していることが自覚できるくらいには上手くなったと思います。工藤先輩もある程度音楽用語を知っているみたいで、

「メゾピアノはやや弱く。ピアノは弱く、だよ。」

 そうなんですか?という意味合いを込めて毛利さんに視線を送ったところ、

「ええ。工藤君の言う通りよ。」

 工藤先輩が言い当てたので、凄いですね!と言ったところ、

「ま、小学生でも分かる問題だからなぁ…。」

 と、遠い目をされてしまいました。…もしかしなくとも、こういう知識は常識なのでしょうか?仕事には関係無さそうなのに…。ですが、そういう無駄?仕事には無関係な知識も時には必要になる時がくるのでしょう。今、みたいに。ま、こういう反省や活かしたいことは後で考えるとしましょう。

 そして、何日も何日も練習していく内に、音楽について、

「メゾピアノは!?」

「えっと…繰り返す?」

「「・・・。」」

 詳しくは、なれなかった。やはり、仕事と無関係だから、という線引きをしているからでしょうか。なかなか音楽用語を覚えられずにいた。練習最終日の今日でさえ、まともに音階?でしたっけ?それを言えないくらいですから。私には、それがどれほどやばいのかが分かりませんが。

「…それにしても、本当に動画を見て聞くだけであそこまで弾けるようになるなんて…。」

「普通、楽譜とかを見て弾くんだっけか?」

「ええ。楽譜に色々メモして、楽譜を見ながら弾くのよ。中には見ないで弾く人もいるけど。」

 そんなことを言った後、

「だから、優ちゃんは異例中の異例なの。音楽知識もない上、楽譜も見ずに弾けるんだから。」

 と、諦めと言うか、呆れの表情で私を見てきます。

「だが、音楽知識が無いなら、楽譜を見ても意味ないんじゃ無いか?」

「そうとも言えないわよ。優ちゃんみたいに譜面を読めなくても、指導者から言われたことをメモするのにも使うし、それを何度も見て、自身が間違えやすいところを見直すものよ。」

「そういう点は、ある意味テスト勉強に似ているな。」

「…そういわれればそうかも。なんだか懐かしいわ。」

 へぇ~。私にはそういった体験をしていないので何とも言えないのですが。

「それにしても、優はガンガン吸収しているよな。日々淡々と聞いている俺でも上達ぶりが分かるよ。」

「あ、ありがとうございます。」

 なんだか面と向かって褒められると照れてしまいます。

「それに引き換え、」

 と、ここで毛利さんの声のトーンが低くなる。

「私達のメンバーが融通効かなくてごめんね?」

 と、私に謝ってきた。

「私は別に気にしていませんよ?」

 ここで言うメンバーは、今度のイベントでピアノを弾く際、私の演奏に合わせて歌を歌う人達のことだ。

前に何度か毛利さんの家とは別の場所で顔合わせをしたのだが、

「はぁ?こんなガキが代わりの演奏をするのか?無理に決まっているだろう?俺は帰らせてもらうぜ。」

 と、ある男性が言い切った事を始めとし、続々と男性が帰っていった。男性だけでなく、大半の女性も帰っていった。そんなことが起こり、20人ぐらいいた人達が女性達数人だけとなった。このことに毛利さんは、

「…やっぱり、初めはこうなるわよね。優ちゃ、花ちゃんは小さいものね。」

「はぐぅ!?」

 私の身長のことを言っていた。私が精神的ダメージを負った後、すぐ謝ってくれた。とはいえ、私の心にきた発言だった。私だって気にしているのに…。それで、毛利さんが私に演奏して欲しいという事なので、試しに演奏してみたところ、

「「「・・・え?」」」

 何故かみなさんは驚いていた。

「これ、毛利さんの演奏そのものじゃない!?」

「本当ね。録音を流した、という訳じゃなさそうだし…。」

「こんな子が弾いてくれるなら、今回のイベントも成功だわ。」

「だね。毛利さんが怪我したって聞いた時はどうなるんだろうって思ったけど。」

「これなら安心だね。」

 そんな言葉が飛び込んできた。良かった。私の演奏はようやく人に聞いてもらえる域になった、というわけですか。本番まで数日あるので、これを機にますますの上達を図りましょう。こうして、毛利さんが演奏している動画を見て聞くだけでなく、他の方々と合わせることになった。といっても、私の演奏に合わせて、他の方々が歌っている感じだった。中でもちょっとおかしなことがありました。それは、

「なんで俺まで…。」

「うふふ♪優く、花ちゃんとの共演、楽しみだわ~♪」

 なんと、人数不足ということで、工藤先輩と菊池先輩も一緒に歌うことになったのだ。工藤先輩は気ノリしていない様子でしたが、菊池先輩は楽しそうだった。プロに混じって素人が混ざってもいいのでしょうか。…ところで、工藤先輩や菊池先輩は歌に関しては初心者ですよね?勝手に初心者だと括ってしまいましたが、もしかして素人ではない、のでしょうか?何かしら経験を積んでいるとかあるのでしょうかね。

「それじゃあ優く、花ちゃん、いくわよ!」

 ちなみに、私や先輩方、毛利さん以外の方がいるので、予め決めていた偽名で呼ばれている。とはいえ、菊池先輩はあまり隠せていないようですが。大丈夫でしょうか。まぁ、もしばれたとしてもあまり問題が…ないと言いたいです。こうして、他の方々と顔合わせし、練習も順調…ではありませんが、イベントを成功させたい気持ちがより高まりましたね。

 それにしても、急な応援要請に対し、先輩方は対応できていましたね。一応、歌詞?を見ながらでしたが、かなり歌えていました。やはり、私が弾いている曲はそれほど有名なのでしょうか?そんな有名な曲を知らなかったとは…。自分にとってはそれほど重要なこととは思えないのですが、なんだか疎外感を覚えます。

 最低限の音楽知識もままならないまま、私はイベント当日に向けて走り出します。

次回予告

『小学生達の予定計画生活』

 優達が練習に励んでいる頃、宝鳥小学校の学生達も合唱コンクールに向けて練習を続けている。そんな中、合唱コンクールとは別の予定を、小学生達がそれぞれ計画している。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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