小学生達の運動会練習生活
ぐっすり寝て過ごしたり、ゆったり読んで過ごしたり、せわしなく描いたり、そんな休日を各個人が過ごした後、平日が訪れ、仕事の日々がやってくる。
一方、宝鳥小学校も、運動会を来週末に控えている。
「早乙女君。こっちの機材は動くから大丈夫よ。」
「分かりました。あ、後、こちらのテントは破けているので要チェックですね。」
早乙女優と保健室の先生も準備により一層磨きをかけている。…心境はどうなのかは分からないが。
ともかく、小学校が運動会に染まりつつある。その影響は教師、そして、
「えー。それでは、今日も開会式の練習を行います。」
生徒側も、運動会を楽しみにしつつある。生徒達は、今日も運動会の練習に向けて、精を出していく。
「♪♪♪」
「?どうかしたの、綾?」
風間洋子は、桜井綾がいつも以上にウキウキしている様子を見て、声をかける。
「だって、今年で小学生最後の運動会なんだよ?いつも以上に頑張らなくちゃ。」
桜井は、小学生最後の運動会に悔いを残さないようにするつもりであった。そのためにも、全力で競技を行うつもりなのだろう。
「そうね。でも、綾の足じゃあ、クラス対抗リレーには出られないわよ?」
「ベ、別にクラス対抗リレーだけじゃないし!ほ、ほら!他の競技で貢献すればいいんじゃないかな?ね?」
「他の競技、ねぇ…。」
この時、風間はあることを危惧していた、
「な、なによ。」
「…何が出来るの?」
そう、桜井の運動能力で何が出来るのか知りたかったのだ。勉強なら問題ないのだが、運動に関しては大問題だったのだ。
「!?洋子だって、私と同じで何もできないくせにぃ!」
「何だって!?」
そして、風間も桜井と同じで、勉強は出来ていても、運動が出来ないのだ。そういうところが共通しているからこそ、
「何よ!」
「・・・ねぇ?もう辞めない?」
「・・・うん。なんか、ごめんね?」
喧嘩になりそうでも喧嘩にならず、仲良しでいられるのかもしれない。
「それじゃあ私達は…これがいいんじゃないかしら?」
「この、“同性二人三脚”?」
「ええ。これなら、走る速さより、息がいかに合うのかが重要だからね。私達なら大丈夫でしょう?」
「だね♪」
同性二人三脚。
それは、同性でペアを組む二人三脚である。それぞれ男子の部と女子の部があり、桜井と風間は女子の部に出るつもりだった。
そして、
「それにしても、まだ“異性二人三脚”が決まっていないのよね。一体、どうするつもりなのかしら?」
「ねぇ~?あの競技に参加する組がいるのかね?」
同性二人三脚があるということは、“異性二人三脚”もある、ということである。この競技は今年から導入されたばかりの新競技である。なので、例年、という実績がなく、どうなるのかまったく予想がつかないのだ。思春期で色恋沙汰、男女の体の特異性を踏まえると、どうしても強要はできないのだが、やりたい人がいれば参加してもいいよ、という自由参加競技でもあった。それほど、競技人数を集めるのに難がありそうなのである。
「誰に決まるんだろうね?」
「そうね。」
そんな二人の会話が、空へと消えていく。
午前の練習を終えた子供達は給食を終え、午後の練習へと突入する。だが、その前に決めるべきことがあった。それは、
「え~。それでは、異性二人三脚のペアを決めたいと思います。」
そう。運動会が近くなってきたので、練習の時間も踏まえ、そろそろ決めないと練習の時間が確保できなくなってしまうのだ。
「それで、やりたいペアはいますか?」
担任、小野口春は若干投げやりな問いかけをクラスに向ける。
「「「・・・。」」」
誰もやりたがらないため、指名されたくないため、必死に“私を選ぶな。”オーラを発している。そのオーラに、担任も、(だ、誰を指差せば…?)と、困惑していた。誰しも、無駄に注目を浴びたくないと考えているのだ。
「・・・そ、それじゃあ、男女別でくじ引きをして、決めようと思います。」
小野口はくじ引きで決めることにした。出来れば、やりたい人がやれば良かったのだが、残念ながらやりたい人は存在しなかったようだ。
「それでは…このくじを男子、このくじを女子がそれぞれ引いて下さい。」
「「「…はい。」」」
みんな乗り気ではなかったが、それ以外の方法を思いつかないため、
(((どうか選ばれませんように!!!)))
みんな、選考されないように心の中で祈りながら、くじを引いていった。
結果、
「公平なるくじ引きの結果、男子は太田君、女子は神田さんに決まりました。二人とも、頑張ってくださいね。」
太田と神田に決まった。
太田は、
(はぁ。まさかこんなところで当たるとはな。当たるなら、アイスの棒とかが良かったぜ。)
と、某商品を思い出しながら、心の中の太田は涎を垂らす。
(え?何で私が?え?ええ!?)
心の中はもちろんのこと、態度にも困惑していることが一目瞭然であった。
互いの友人は互いを茶化していくが、
「まったく。ただの運だってーの。」
と、太田は友達の冷やかしをかわし、
「だから、狙って当てたとか、そんなの無理だから!」
神田は若干、声を荒げて反論している。
こうして、異性人三脚のメンツは決まり、
「では、太田君と神田さんは頑張ってくださいね。」
小野口の声に、
「「・・・はい。」」
ちょっと嫌な気持ちをだしつつ、了承の意を示す。それは、異性二人三脚の練習の始まりでもあった。
早速、二人は二人三脚の練習を始めるが、
「!?きゃっ!」
「うおっ!?」
早速転び、
「ちょっと太田君!足を速く動かし過ぎよ!もっと遅くして!」
「はぁ!?これ以上遅くしたら、勝てるものも勝てなくなっちまうだろ!」
「なによ!」
「なんだよ!」
早速言い合いをし、
「・・・ごめん。言い過ぎた。」
「こっちこそ、悪い。」
早速仲直りをし、
「それじゃあ次は、出す足を言いながら走らない?」
「おう。」
早速練習を再開し、
「「せーの、右!?」」
早速こけ、
「ねぇ!?なんで太田君が右足を出すの?私が右って言ったら、太田君は左でしょ!」
「はぁ!?それは逆だろ!」
早速喧嘩をする。
そんな進んでいるようで進んでいない練習を続けること十分。
「も、もうやだ。こけたくない。」
「そ、それはー。こ、こっちのせりふ、だぁ。」
散々こけ、散々言い合いしまくったおかげで、予想以上に体力を消耗し、短時間でエネルギー切れを起こすこととなってしまった。
「も、もう今日は帰ろう…?」
「さ、賛成だ。これ以上、擦り傷を作りたくないからな…。」
こうして、太田と神田の異性二人三脚練習初日は大失敗で終える。
次の日。各自運動会の練習の時間となり、個人練習を行っている時間帯。その時間帯に、スピードこそそこまで速くはないものの、一度も転ばずトラックを大回りしている女子二人組がいた。
「「右、左、右、左、右、左、右、左…。」」
その二人組からは、息の合った掛け声が聞こえ、確実に足を運ばせていた。
一方、
「「右左右左右左みぃ!!??」」
男子のペアは勢いこそあるものの、たまに大きくこけ、その度に大きい擦り傷を作り、言い合いとなっていた。もちろん、その間も女子のペアは確実に走り続けている。
「…なんか、凄いな。」
「そうだね。私達は一歩も出来なかったのに。」
その二組の二人三脚を見ていた男女ペア、太田と神田は今後、二人三脚をする上での秘訣を目で盗もうと、二組の二人三脚の様子を観察していた。決して、さぼっていたわけではない。
「それでどうする?」
「何が?」
「俺達はどうしたらあんな風に上手く出来るのか、だよ。」
「う~ん…。」
「・・・。」
太田は神田のことを見つめる。その様子は、リア充カップルと見間違うかのようである。
「分かんない。」
「…だよな。」
太田も、神田の意見に賛成だった。何せ、今も走っている二組は、どちらも同性。対する太田と神田は異性なのだ。走り方はもちろん、走り幅や息の合わせ方、性格等、色々異なってくるだろう。ましてや、今年まではほとんど会話を交わして来なかった仲である。そんな二人が話し始めてから数カ月で、息をバッチリと合わせる、なんて芸当は不可能だろう。と、二人はそんな考えに到達する。
「一応、あの二人に聞いてみる?」
「あの二人って?」
「綾ちゃんと洋子ちゃんだよ。」
と、神田は今も確実に歩みを進めている二人を指差す。太田は悩んだものの、
「・・・そうだな。それでいこう。」
それ以上にいい案が思い浮かばず、神田の案に乗っかり、二人から話を聞くことにした。
「えっと…、それで話っていうのは、何かな?」
「うん。実は…、」
神田は桜井と風間に現状を話す。
「なるほど。二人三脚で息を合わせる方法ねぇ。」
風間も神田と太田の悩みを聞くが、難色を示していた。理由は、自身が特にこれといった方法を実践していないからである。何も試さず、いつの間にか出来ていた。というより、始めから出来ていたのだ。なので、助言しようにも、どう助言すればいいのか分からないのだ。
「やっぱり、男女じゃ難しいのか?」
「私には分からないけど、私と綾は昔から仲がいいからね。」
と、風間は桜井に視線を向ける。
「うん!」
桜井は風間の視線に反応し、納得の意を示す。言葉が無くても通じ合っているとは、このことを差すのだろう。
「つまり、私達じゃあ出来ないってこと?」
この神田の問いに、
「「「・・・。」」」
太田、桜井、そして風間も口を閉じる。この問いに、答えを導き出そうとした者は、
「だ、だったらさ!最初は二人で一緒に歩いてみれば、いいんじゃないかな?」
桜井だった。
「「二人で歩く?」」
太田と神田は、桜井の提案にオウム返しを行う。
「うん。最初は二人で歩いて、歩幅とか、息とか合わせていって、次は早足、最後は走って、みたいにさ。ど、どうかな?」
と、目上の人に意見するかのように、桜井はおずおずと話し始める。その話の内容を聞いた風間は、
「うん、うん。いいんじゃないかしら?」
「だよね、だよね!」
風間は納得の意を示すかのように、首を縦に振っていた。
「そうね。確かに、最初から息を合わせて走ろう、なんていう考えそのものが間違いだったのよ。」
「確かに。それは今までやってこなかったかも。」
「最初から、どうやって走ろうかって、ずっと考えていたしな。」
他の3人も、桜井の案に賛成気味である。
「・・・よし。それじゃあその案でやってみるか。」
「うん、そうだね。」
太田、神田も意を決め、その練習方法を実践することにする。
「それじゃあ試してみるね。悩み聞いてくれてありがとね!」
「サンキューな。」
神田、太田は二人に感謝の言葉を述べる。
「うん!頑張ってね!」
「応援、しているからね。」
桜井、風間は二人にエールを送る。
「さ、私達も引き続き頑張ろうね。」
「そうね。」
男女ペアの後姿を見送り、桜井と風間は再び、二人三脚を始める。
そんな練習が行われている裏で、
「この備品は…まだ大丈夫みたいですね。次行きましょう。」
「ええ。次は確か…、」
早乙女優は保健室の先生とともに、備品のチェックを欠かさず行っていた。
そして、優自身、知らないだろう。
優にも、出る種目が決まっていることに。
次回予告
『小さな会社員と女子小学生モデルの写真撮影生活』
忙しくく怒涛な1週間を乗り越え、再び訪れる週末。だが、今週はある女子小学生モデル、潮田詩織のお願いのため、休日返上でテレビ局に向かい、仕事をする気持ちで写真撮影に臨む。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?




