小さな会社員と何でも出来るOLの旅館生活
今月も投稿していきます。
プロロロロ。
今私は、バスに乗って、とある場所に向かっていた。
「うふふ~♪今からワクワクしちゃうわね、優君?」
「…ほんとに私が行っていいのですか?いても邪魔になるのでは…?」
「大丈夫よ!先方にも確認とったら、是非!って返答が来たわ。」
「そ、そうですか…。」
ゴールデンウィークを翌週に控えたある日、いつも通り会社で手伝いをしていると、菊池先輩から、
「優君、ゴールデンウィーク暇よね?ちょっと用事を頼まれてね。一緒に行ってくれないかしら?」
「えっと…。」
最初、私は断ろうとした。
ゴールデンウィーク中にやっておこうと思っていた勉強や、試作した料理等、やることはあるのだ。
だが、
「確かあそこには、ご当地限定のアイスクリームが…。」
「是非行きましょう!…はっ!?」
「そうね。是非、行きましょう。」
や、やられた…。
毎年、私は同じ手でこうやって、菊池先輩とゴールデンウィーク中、どこかに出かけている。
私も気をつけてはいるが、つい条件反射で反応してしまい、菊池先輩の掌で転がされてしまう。
来年こそは気をつけなくては!!
…ま、毎年思っていても、つい乗せられてしまうけど。
ということで、私達は今、長野のとある旅館に来ていた。
この旅館は確か…、去年もいっていた旅館だな。
名前は『骨白温泉』、だったかな。
長野でも人気な旅館だったと、口コミで書かれていたな。
確かに周りは自然だらけでいい景色だ。
室内から見たら、もっといい景色だろうな。
「さ。中に入るわよ。」
菊池先輩は普通に中に入っていく。
「いらっしゃいませー。」
歓迎の声を受けながら。
私も中に入ると、受付の人と話した後、
「さぁ優君、行きましょ♪」
と言い、手を引っ張ってくる。
「あれ?先輩、こっちは違うのでは?」
そっちは“関係者以外立ち入り禁止。”と書かれているし、パンフレットによると、客室は反対方向にあるのでは?
「何言っているの、優君?優君も働くのよ?」
「ふえ?」
その発言を聞き、思わず気が抜けた声が出ていたと思う。
でもしょうがないと思う。
だって、用があると言っても、一緒に働くなんて思わなかったのだから。
結局、別室に通され、
「これは着て、これは付けてね。」
と、菊池先輩に渡されたのは、ここで働くための制服と、ウィッグだった。
この施設には、制服は女物しか無いため、私は女装して出ろ、とのことらしい。
確かに背は驚くほど低いけどさ。
…はぁ。しょうがない、着るか。
私が着終わったころ、菊池先輩は誰かと話をしていた。
一体誰だろう?
私が視線を送っていると、その視線に気づいたのか、
“こっちこっち。”
と、手招きされたので、近くまで行った。
すると、
「やっぱ優君は最高ね!!何着ても似合うわね~♪」
と、頭をナデナデしてくる。
話していた人は苦笑いを浮かべている。
「初めまして、というわけでもないわよね?去年も会っているものね。名前、憶えている?」
「はい。確か、川島さん、でしたよね?」
「そうよ!さすが、菊池が認める子ね!」
と、また頭をナデナデされる。
この人は川島優香さん。
菊池先輩の友人らしく、この旅館の若女将をしているらしい。
この旅館、ゴールデンウィークや、夏休み等の長期休暇の時は、かなり繁盛していて忙しくなるのだが、その分人手が足りなくなるらしい。
それで、私達2人を呼んだ、ということなのだ。
といっても、
「菊池先輩はともかく、初心者の私が手伝っても大丈夫なのでしょうか?」
「な~に、大丈夫よ。去年もやってくれたでしょ?あの時みたいにやってくれればいいから。」
「は、はい…。」
自信ないな。
「優君?元気出して!笑顔で、笑顔で頑張るのよ!!」
「わ、分かりました。それではよろしくお願いします。」
「ええ。よろしく。」
こうして、旅館での手伝いが始まった。
旅館の仕事は色々あるが、私が担当するのは、誰もいない銭湯の清掃、だそうだ。
私は教えてもらった通りに掃除を始める。
………よし!こんなものかな。
「…うん!バッチリね!さすが、私の優君ね!」
「…菊池先輩、なんでここにいるのですか?」
「なんでって、私の方はもう終わったから、手伝おうと思って…。」
「早くないですか?」
これでも、全力でやったつもりなのだが?
「そう?いつも通りでしょ?そんなことより、次の仕事、行くわよ。」
「ま、待ってください!掃除用具の片づけがまだ…!」
私は急いで掃除用具を片づけ、菊池先輩の後を追った。
次は、客室のチェックだ。
お客様にまた来て頂けるよう、部屋を綺麗にし、寝具も綺麗にするのだ。
これらを何部屋もこなさなくてはならない。
今の私だけならかなりきついが、
「優君大丈夫?いざとなったらこの私を頼るのよ!」
この菊池先輩がいるから大丈夫なのだ。
…この人、何でも出来るから、ちょっと羨ましい…。
そして、いよいよチェックインの時間だ。
そろそろ今日泊まる予定のお客様達がいらっしゃる。
心して取り掛かろう。
ん?
なんか少し騒がしいな?
何かあったのかな?
でも、気にしちゃ駄目だよね。
「菊池さん、早乙女さん。ちょっと厨房の方が騒がしいから、様子、見てきてくれる?」
一緒に並んで待っていた仲居さんが、私達に声をかける。
ま、確かに気にならないと言えば嘘になるけど。
「分かりました、それじゃ優君、行ってみましょう?」
「はい。」
そして、厨房に行ってみると、
「板長!しっかり!しっかりして下さい!!」
「ううぅぅ…。」
そこには、横になっている人とその人を板長と呼ぶ人がいた。
え~っと…、これは一体…?
私が悩んでいると、
「ねぇ?一体ここで何があったの?」
菊池先輩が、近くにいた人に聞いてくれた、
「あの。それがですね…。」
菊池先輩を通して話を聞いたところ、板長がぎっくり腰で、腰を痛めたらしいのだ。
すぐに他の人が来て診断したところ、数日は絶対安静、だそうだ。
それでも、何日かはゆっくり静養して欲しいとのことで、しばらくは厨房に立てないとのことらしい。
本人は、
「こんなの、野良犬に噛まれた程度だ!唾でもつけときゃすぐに治る!」
と、言っていた。
いや、野良犬に噛まれた程度って、結構危ないのでは?
狂犬病とか危険じゃないのかな?
そんなことはともかく、つまり板長はゴールデンウィーク中、厨房に立てない、という事なのだ。
本来なら、次板、副料理長に任せるのが一番なのだが、間が悪いことに、
「旅行に行っている最中だと!??」
と、いうことだ。
なので、次板に頼むことも出来ないらしい。
いるのは、裏方の2人だけだ。
だが、
「料理の方は、大体終わっているのではありませんか?」
見ると、厨房には、今夜出す予定であろう、料理の数々が並べられている。
どれも美味しそうです。
「優君。それじゃ、明日の朝食は誰が作るの?」
「あ!??」
そうだ。
今日泊まるからといって、明日この宿をチェックアウトするわけではない。
むしろ、このゴールデンウィークを利用して、何日か泊っていくだろう。
といいうことなので、今日がよくても明日からどうする?といった会議が厨房で行われていた。
「やっぱり、君達二人で出来ないかな?」
「無理ですよ!?」
「そうです!俺達二人だけで、板長の分の仕事量をこなせません!」
「ならいっそ、外部の人を急遽雇うとか…?」
「それだと、仕事の効率が悪くなります。」
「それに、外部の人をこの厨房に入れるのには抵抗が…。」
「じゃあ、この旅館で働いている人で、料理が出来る人はいないかしら?」
「いるとは思いますけど。」
「板長ほどの腕となると、そうはいないかと…。」
「そう…。」
どうやら、まだ結論が出せないらしく、困っているらしい。
確かに、旅行の楽しみと言えば、やはり食事だと思う。
その食事を楽しみにしていたのに、急に食べられなくなったら、ここに泊まっているお客様達、きっと悲しむよね。
でも、それじゃ、一体どうすれば…?
ふと、顔を上げると、菊池先輩がこっちを見ていた。
そして、目が合う。
菊池先輩がニコっと笑うと、私の頭に手を置き
「だったら、優君にやらせてみてはどう?」
はっきりと言った。
「「「え???」」」
え?
どういうこと?
私は動揺したが、そんなことはお構いなしに、菊池先輩は話を続ける。
「優君なら、板長さんと同等…までいかなくとも、代わりにはなるのではないかしら?」
「でも、こんな小さい子を厨房に入れるのですか!??」
「確か優君。去年、あの板長さんから料理、教わっていたわよね?」
「ま、まぁそうですけど…。」
確かに菊池先輩の言う通り、あの板長さんから、料理を教わったことはある。
あの時はちょっと辛かった。
最初、何が間違っているのかまったく分からなかった。
けど、後々考えてみると、確かに間違っていたなーと実感出来た。
そして何より、和食のメニューの幅が広がったし。
だけど、
「私はそれまでの技量は持って…。」
「優君は黙っていて。」
「は、はい…。」
私、当事者だと思うのですけど…。
「大体、子供に任せるなんて、そんな無責任な…!」
「それだったら、私が補助として、厨房に入るわ。それなら文句ないでしょ?」
「「「はぁ???」」」
もう、何がなんやら…。
「だったら、あなただけが厨房に入れば…!」
「それは駄目よ。私、優君より料理下手だし。それともあなた達二人が優君の補助をしてくれるの?」
「そ、それは無理です!」
「そうです!そんな時間ありませんよ!?」
「でしょ?だから私が補助として厨房に入るの。」
「…美奈。ずいぶんこの子にご執心なのね。だけど、公私混同してはいけないわ。」
「私は公私混同しているけど、私の目が曇っていることは無いわ。」
「…確かに、あなたの言っていることはいつも正しかったわね。」
一体、この二人に何が…?
少しの間、川島さんと菊池先輩が睨み合う。
そして、先に折れたのは、川島さんだった。
「…分かったわ。でも、私以外の人は分からないと思うから…。」
と、私の方に顔を向け、
「早乙女優君。あなたに今晩、とりあえずやってもらって、その働きで決めましょう。それでいい?」
川島さんが妥協案?を述べる。
その後、少し静寂が訪れるが、
「わ、分かりました。みなさん、よろしくお願いします!」
私とペコリと、みんなにお辞儀をする。
「それでまぁ、今晩乗り切れるなら…。」
「それしかないんじゃ、しょうがないか…。」
そして、周りが妥協する形で、私が板長の代わりをすることになってしまった…。
「それで、あなたにお願いする料理はこれです。」
と言いながら、裏方の一人が私に一枚の紙を渡す。
あれ?これだけ?
品数が少ないような…?
あ、そうか!
今日はもう、大体終わっていたんだっけ?
それじゃ、この料理を作り終えれば、今日はお終いってことかな。
「あ、包丁、鍋等の調理道具はここ。調味料はここです。」
「あ、ありがとうございます。」
私はお礼を言い、包丁を手にする。
試しに持ってみたり、切るふりをしたりして、感触を確かめる。
…うん!
さすが、プロが使う包丁だ!家で使っている包丁と比べ物にならない!
私はちょっとワクワクしながら、
「それじゃ、よろしくお願いします。」
「「「はい!!!」」」
さぁ、調理を始めよう。
「ふぅー。」
「「お疲れ様です!」」
「お、お疲れさま、です…。」
つ、疲れたー。
あれから、まるで川の激流に身を投じたかのような忙しさだった。
一応、包丁を使う時は手元を見ていたが、それ以外はほとんど常に周りの状況、注文された品の確認、材料の準備等、実にやることが多い。
どう見ても三人でやる仕事量じゃないような気がする。
それとも、今日、お泊りになられるお客様が多かったのか、やけに注文が多かった気がするし、それもあったのかな。
旅館の厨房って、こんなに忙しかったのか…。
私は疲労した右手を抑えながら、更衣室まで移動しようとした。
だが、優は移動出来なかった。
それは、裏方の二人に止められたからである。
「あの…、君、凄いね…。」
「そうです!確かにあの人の言う通りでした!」
「いえいえ。そんなことはありませんよ。」
そうだ。
こんなことでへこたれる様ではまだまだ駄目だ。
もっと頑張らなくちゃ。
「お・つ・か・れ~♪優君?」
「うわ!??き、菊池先輩!??」
び、ビックリしたぁ!??
もう、急に私に抱きつかないでほしい。
「それで優君、どうだった?」
「はい。いつも通りに出来たと思います。」
「いつも通り、ね…。そちらの二人はどうだったかしら?」
「はい!とても小学生とは思えない包丁さばきでした!」
「このまま上達すれば、間違いなく板長を超えますよ!」
「そ、そんなことはないですよ…」
「ですが、あなたの動きは素晴らしい物でしたよ、早乙女優君?」
急に聞こえた声の正体を知るため、私は後ろを向いた。
そこには、40~50歳くらいの女性が着物姿で立っていた。
だが、私はこの人に会った覚えはなく、首をかしげる。
…この人は一体誰だろう?
それに、誰かに似ているような…?
「あ、お久しぶりです。」
「あら、もしかして…、美奈ちゃん?」
「はい、そうです。」
「やっぱり!ひさしぶりね!二年ぶりかしら?」
なんか、菊池先輩と、この女性は知り合いのようだ。
「…ところでその有能な子は?」
「はい!わ・た・し・の・優君で~す!!!」
と、言いながら、また私に抱きついてくる菊池先輩。
…ちょっと、当たっているんだけどなぁ…。
「ちょっとお母さん!何話しているの!?まだ仕事が残っているのに!」
「あら?そうだったかしら?」
え?
今、川島さんが『お母さん』って呼んだような…?
でも確かに似ている気はするけど…。
「菊池先輩。もしかしてこの人って川島さんの…。」
「ええ。優君の思っている通り、この人は優香のお母さんなの。ちなみにこの旅館の女将をやっているの。」
「え?ええ!??」
似ているとは思ったけど、親子だったとは。
しかも、親子二代でこの旅館を経営しているのか。
私は、そんなことを考えながら呆けていると、
「初めまして。私はこの旅館の女将をしている川島詩乃と言います。」
「あ、はい、初めまして。もうご存知だと思いますが、早乙女優です。」
互いにお辞儀しながら軽い挨拶を交わす私と川島詩乃さん。
「私のことは詩乃、でいいからね?優君?」
「…はい、詩乃さん。」
「…ま、いいわ。優君。あなたの腕は私から見ても素晴らしいものだと思ったけど、あなた達はどう?」
と言いながら、詩乃さんは裏方の二人に視線を向ける。
「は、はい!俺達も十分も感じ取れました!」
「そうです!この子がいてくれるなら、きっとこの窮地も乗り越えられるはずです!」
「…とのことですので、このゴールデンウィーク中は、あなたのその腕を貸してもらえないかしら?」
「は、はい!」
こうして、ゴールデンウィーク中、白骨温泉、板前代理として、厨房に立つことになった。
「…美奈。あなたは公私混同し過ぎよ。少しは分別をつけて行動しなさい。」
「はい、はい、分かりましたよ~だ」
「またあなたはそうやって…!!」
…あの~。
ここで喧嘩するのはやめてもらえませんかね。
他の人達も呆れながら、その光景をただただ静観していた。
それからは、朝食と夕食は本当に忙しかった。
常に食材、調理道具等を手にし、調理し続ける。
みんなが楽しく食べている間、私達はずっと気を張り詰めているのだから、終わった瞬間は、毎回脱力感に襲われ、思わず、
「ふぅーーー。」
と、大きく息をするほどだ。
だが、その代わりなのか、それ以外の仕事は免除されることになった。
その空いた時間に私は、
「ほら。こんな風に、油を適量入れてから弱火にして、魚を焼くことで、魚がフライパンに引っ付かず、美味しく焼くことが出来ますよ?」
「…なるほど。確かに、フライパンに魚がこびり付いていませんね。これならフライパンを洗う時、いつもより楽できそうです。」
「そうです。この焼き方なら皮の薄い魚…、例えばホッケを焼くにもいいですよ。」
「それは参考になります。ありがとうございます!」
裏方の人から、魚の焼き方を教わっていた。
もちろん、私だってある程度は出来る。
だが、それはプロからすれば、
「は?何、そんなこと出来て当然でしょ?そんなことでプロの料理人とか名乗らないでほしいんですけど?」
くらいの腕だろう。
なので、時間が空いた時、私はプロの料理人から色々なことを教わっているのだ。
一方、菊池先輩はというと、
「うふふ~♪今日の優君もす・て・き♪」
うっとりしながら私達の光景を観察していた。
それも、
「…なんか、すみません…。」
「い、いえ、そんなことは…。」
二人が気まずくなるくらい、すごく見てくるのだ。
「…美奈。暇なら私達の仕事、手伝ってくれない?」
「今は無理よ。なんだって、優君の観察で忙しいのよ」
「…私には、二人の邪魔をしているようにしか見えないけど?」
「気のせいよ!さぁ二人とも、続きを…!」
ゴン!!
急に鈍い音がしたと思ったら、
「いったぁ!?ちょ、何するの!?」
川島さんが菊池先輩にゲンコツを繰り出していた。
「と・に・か・く!あなたには別件で手伝ってもらうから!」
「そ、それじゃあ、私の優君観察はどうなるの!??」
「そんなことは暇になったら好きなだけやればいいでしょ!こっちは人手不足なんだから!」
「そ、そんなぁ…。」
「さ、行くわよ。」
川島さんが菊池先輩を連れて行く。
その様子は、警察が、容疑者をパトカーに乗せるような、そんな感じだった。
「く、苦労しているのですね。色々と。」
「あ、あはは…。」
私は乾いた笑みで返すことしか出来なかった。
旅館に少しゆとりが持て、暇を持て余し始めた私と菊池先輩は、
「あなた達も観光してみたら?美味しいものが見つかるかもよ?」
との一言で、
「ねぇ優君。ここの鯉こく、美味しいわね。」
「ええ。今度作ってみたいです。」
長野を観光していた。
今はお昼時で、とある料理屋に入ったのだが、ここの鯉こくが美味しい。
どんな作り方なのかな?
後で調べておこう。
「さ、優君。食べ終わったら、次は観光しましょ?」
「はい!」
そうして私達は店を後にする。
そして次に訪れたのが
「ほら、優君。ここのアイスクリーム、美味しそうよ。一緒に食べましょう?」
「是非、味見しましょう。」
アイスクリームが売っているお店で休憩していた。
長野といっても、白骨温泉周辺の観光しか出来ないのだが、それでも結構楽しい。
なんといっても、
「このソフトクリーム、美味しい~♪」
「そう?良かったねー♪」
美味しいアイスが食べられたのだ!
これ以上嬉しい至福は無いだろう。
断言できる!
「優君。あそこのお店にも美味しいソフトクリームが売っているわよ?味は…リンゴ味?」
「それも頂きましょう。」
そんな物を見逃していたなんて!
「ちょ!優君!走らなくてもソフトクリームは逃げないから!待って!」
そんなことは出来ない!
一刻も早くあのソフトクリームを食したい!
私はその一心で、店に駆け込んだ。
そうして、私の空き時間は、有意義に過ごせた。
ちなみに、菊池先輩は、どうやって過ごしていたかといえば、
パシャ、パシャ。
「うふふふ~♪ソフトクリームを食べている優君、素敵♪」
カメラでソフトクリームを食べている優を写真に収めたり、観察したりしていた。
こうして、二人の長野観光は、互いに満足いくものであった。
いよいよ今日がお手伝いの最終日。
今日を乗り切れば、明日は多少のんびり出来る。
私はその一心で調理に取り掛かろうとするが、
「…あの、大丈夫ですか?」
「そうですよ、優君。なんか顔色が…。」
「い、いえ、何も問題ありません。さ、今日も頑張りましょう。」
自分でも空元気だと分かっていた。
だが、今、私が頑張らなくてはこの旅館の料理を楽しみにしている人が悲しんでしまう。
そんな事態にはさせたくなかった。
「…優君、あなた…。」
「だ、大丈夫ですよ、菊池先輩!さ、ゴールデンウィークもいよいよ大詰めです!気合いを入れ直しましょう!」
さ、最後の調理を始めよう!
はぁ、はぁ、はぁ…。
ちょっとやばいかも。
手元が少し霞んで見える。
頭も上手く回らなくて、深く考えられない。
手にも力がはいらない。
「…優君。後片付けは私に任せて休んだ方が…。」
「へ、平気ですよ!そ、それより後片付けをしないと…。」
「あ!危ない!」
あ、ちょっとやばいかも。
思わず重心がずれ、そのまま倒れそうになってしまう。
だが、そのまま倒れることなく、
ボスッ。
誰かの胸の内に身を預けることになった。
その誰かとは、
「ご苦労様。後は僕とあの二人に任せて、あなたは休んでいて?」
見知らぬ男性だった。
まって、本当にこの人は一体誰だ?
「え!?で、でも…!」
「いいから、な?」
「す、すいません…。」
私は見知らぬ男性に、
「あの!この格好は恥ずかしいので降ろしてほしいんですけど…。」
「駄目。大人しく抱っこされていなさい。」
「は、はい…。」
いきなり抱っこされながら、近くの休憩場所まで運ばれる。
こんな形でお姫様気分を味わいたくなかったなぁ…。
「優君!??大丈夫!?怪我は!?どこか痛いところはない?」
「い、いえ。まったくないですよ…。」
ちょお!?
顔、近過ぎじゃないですか!?
「…えっと、そこにいる君。後は任せてもいいか?」
「ええ!もちろんよ!」
「なら問題ないか。」
男は軽く手をブラブラさせたり、鳴らしたりしている。
…これから一体何をする気なのだろう?
「よし!それじゃあ、後片付けを始めるぞ!」
「「はい!副料理長!!」」
…なんだ、副料理長、か。
それなら、ちょっと任せても大丈夫だよね。
「…先輩。すみませんが、少し、ほんの少しだけ、肩を貸してください。」
「もちろん、いいわよ!」
良かった。
私はそのまま菊池先輩の肩を枕代わりにして、目を閉じた。
「本当に、本当にすみませんでした。」
夕飯の片づけが済み、厨房での作業が終了したタイミングを見計らって、私は、裏方の二人、副料理長に謝罪していた。
本来、仕事を途中で放棄するなんて許されないことなのに…。
私は土下座する勢いで平謝りした。
「いいって、いいって。君がそこまで気にする必要なんかないよ。」
「で、ですが…!」
「それに、君は十分、いや、十二分に働いてくれた。この二人から聞いたよ?とても大活躍だったそうじゃないか?」
「い、いえ!結局、最後は副料理長に後始末させたみたいで…。」
「それくらい、別に気にしなくていいよ。数日ぶりに包丁握りたくなっていたし。」
「それに…。」
「もう過ぎたことをグダグダ言っていたってしょうがないよ?それに、謝りたいのはこっちなんだから。」
「え?」
私は副料理長の言っていることが分からなかった。
なんで、副料理長が謝ろうとしているんだ?
ミスをし、後始末をさせたのは、私の方だというのに…。
「…実はな、この調理場は本来、4~5人でようやく回せるようになっているんだよ。」
「え?」
ゴールデンウィーク中は、ずっと私と、裏方の2人、計3人で回していたんですけど?
「うん。君の疑問は分かっているよ。何故、3人だったのかはね。あの馬鹿が原因なんだ。」
と言いながら、深いため息をつく副料理長。
馬鹿って、一体誰の事だろう?
「…ごめん。最初から説明するよ。僕が旅行する時、どうしても、この調理場の人数が不足してしまう。だから、馬鹿にお金を渡して、“これで、料理人の友人でも雇ってくれ”と言ってお金を渡しておいたんだ。それをあの馬鹿は…。」
「…えっと、そうなんですか?」
私は一緒にいる女将、詩乃さんに話を振る。
「…ええ。私もあの馬鹿から、“このゴールデンウィークは若い奴らを鍛えるのにちょうどいい機会だから3人で十分だ!!”なんて息巻いていたから、その言葉を信じてしまったの。私こそ、厨房の様子をちゃんと見られなくて、ごめんなさい。」
「そ、そんな!?女将さんまで謝らなくても!?」
なんで女将さんまで頭を下げるんだ!?
「えっと、それで、さっきから言っているその“馬鹿”っていうのは一体誰なんです?」
「…ああ。それは…板長だよ。あの馬鹿は、僕が渡した金を全部パチンコやら麻雀やらのギャンブルで全部すっちまいやがったんだ!」
「ええそうよ!私も昨日、あの馬鹿の寝言を聞いてから調べたところ、金を渡された当日の休みに全部使い果たしたことが調べで分かったのよ!」
「まだ僕のポケットマネーだったからよかったものの、これがもし旅館のお金でギャンブルでもされたと思うと…。」
「ゾッとするわね。」
私は二人の底知れぬ怒りに、ただただ話を聞いていた。
それにしてもあの板長が…。
「確かに、板長の料理の腕は優秀なの。ただ…。」
「時々ギャンブルしないと、機嫌を損ねるんだよ。」
…なんか、大人って色々大変なんだな。
「…って、君には関係ないよな、ごめん。とにかく、君はこのゴールデンウィークの間、よく頑張ってくれたよ。ありがとう。」
「いえいえ!?結局、副料理長に迷惑をかけてしまったわけですし…。」
「さっきも言ったけど、元を辿れば、あの馬鹿が原因で、いつも以上に厨房に負担が多くなっちゃっていたから、その状況の中、君はよくやってくれたよ。って、これ、さっきも言ったね。」
「そ、そうですね…。」
周りにえも言われぬ空気が漂う。
その空気の中、勇気ある?発言をしたのが、
「…ちなみに、ゴールデンウィーク中、ずっと働いていた優君にはもちろん、給料は出るんでしょうね?」
菊池先輩だった。
最初は、お金の話をするのはどうかと思ったが、この空気を変えられるのなら別にいいかと思い、何も言わなかった。
「ああ、もちろんだよ。君には大変助かったしね。いいでしょ、女将?」
「もちろんよ。働きぶりはあの二人から聞いたし、通常より上乗せさせてもらうわ。」
「ええ!?いいですよそんな!?みなさんに悪いですし…」
「優君。」
ここで口を挟んでくる菊池先輩。
「えっと、何でしょう?」
「優君はね。この旅館、この厨房で大いに貢献したの。この二人はそれに見合った正当な報酬を支払うと言っているの。そうよね?」
「「ええ。」」
「ですが!私はまだ子供で…。」
「優君!」
「は、はい!」
私は思わず声が裏返ってしまう。
「これは、正当な、報酬なの。逆に受け取ってもらえないと、この二人に迷惑がかかるかもしれないのよ。そうよね?」
わざわざ、正当、という言葉を強調して言ってくる菊池先輩。
ちょっと怖い。
「そうですね。もし、受け取ってくれないと、有能な従業員を不当な給料で働かせている、と訴えられてしまうわ。」
「そうだね。そんな訴えがあてもおかしくないほど、目に見える素晴らしい活躍をしたからね、君は。」
「…。」
私は、二人の称賛を聞き、
「わ、分かりましたから、もうそれ以上は…。」
と、声を発した。
あんまり褒められることに慣れていないから、やめてほしい、かな。
「それじゃ、後はゆっくりくつろいで…。」
「ちょっと待った。」
ここで、副料理長が私達を止める。
…何だろう?
「君達、夕飯はもう済ませたかい?」
「「あっ。」」
そう言えば、なんだかんだで夕飯、食べていなかったな。
菊池先輩も、私に付き合っていたせいで、夕飯食べ損ねているし。
「今から運動がてら、軽く作るつもりだけど、どうかな?」
と、言いながら、厨房に向かおうとする副料理長。
どうしようか。
私は無言のまま、菊池先輩を見る。
視線が合い、
「いいんじゃないかしら?」
との言葉をもらったので、
「それじゃ、お願いします。」
と、頼んだ。
副料理長は笑顔で、
「はいよ。」
と、帰りに買ってきていたのか、レジ袋から材料を取りだし、
「それじゃ、いっちょ、始めるか。」
副料理長の調理が始まった。
結果から言うと、すごく美味しかった。
あの春野菜入りのグラタン、美味しかったー。
また、食べたいな。
ちなみにこの時、川島優香さんがどこにいたかと言うと、
「ねぇ!?だから言っているでしょ!?な・ん・で、全部ギャンブルですったりなんかしたの!??」
「それは、だから…。」
「言い訳はいいの!私は理由を聞いているの!!!」
板長を説教していたらしい。
…大人になっても、ギャンブルには手を出さないでおこう。
そう誓った瞬間だった。
ゴールデンウィーク最終日。
私と菊池先輩は荷物をまとめ、この旅館、『骨白温泉』を後にする準備を進めていた。
「優君、忘れ物は無い?」
「…はい。ありません。」
財布も持ったし、部屋もチェックしたところ、忘れ物もない。
手荷物も…うん。問題ないね。
「ちょっと待った。」
ここで、女将に止められる。
「えっと、何でしょう?」
「肝心な物を忘れているわ。はい。」
と言われ、二つの封筒を私達に渡す。
これってもしかして、
「…給料、ですか?」
「そうよ。あなた達二人分のね。」
「あ、ありがとうございます!」
「いやいや。こちらこそすまなかったね。あんな重労働させてしまって…。」
「いえいえ。こちらこそ、最後までお役に立てず申し訳ありません。」
「…君って本当に小学生?料理の腕もそうだけど、その姿勢、明らかに大人な対応なんだけど?」
「そりゃあ、私の優君だもの!さすがでしょ!」
「…あなたは関係ないでしょ。」
「あはは…。」
見送りに、川島優香さん、詩乃さん、副料理長、そして…暗い雰囲気を全身に纏っている板長が来てくれている。
…昨晩の内に、何かあったんだろうな。
詳しくは聞かないでおこう。
「…おい坊主。」
「な、何でしょう?」
まさか板長から話かけてくるとは思わず、ちょっと身構えてしまう。
…ほんとに何だろう?
「就職先、まだ決まってないなら家に来い。養子に向かい入れて、俺が直々に鍛えてやる。」
「ええ!?わ、私なんかの腕ではこの旅館の味を受け継ぐことなんか出来ませんよ!?」
「あったりまえだ!!今の腕でこの旅館が継げると思ってんのか!?」
「ひぇ!す、すいません…。」
「だから!俺が直々に鍛えてやるって言っているんだ。その時は覚悟しろよ?」
「は、はい!」
いきなりそんなこと言われても困るだけなのだが…。
いや、待てよ?
もし、ここで働くことになったら、ずっとあそこのソフトクリームを手軽に食べられる、ということになる。
…いくらなんでも、ソフトクリーム一つで就職先を決めるのは良くないよな。
後でじっくり考えよう。
「もう、『お父さん』はまたそうやってまた勝手に…!」
「だが…。」
「言い訳はいいの!」
え?
オトウサン?
今、優香さんは何て言った?
板長の事を、お父さんって…?
「…あれ?優君、言っていなかったっけ?優香は板長の娘よ?」
「え?ええ?えええ!??」
「…なんだよ。そんなに驚くこと、無いだろ。」
「…え?は、え?…え?」
…つまり、どういう事?
確か・・・、優香さんは、詩乃さんの娘さんで、板長の娘でもある、と。
つまり、
「…板長と詩乃さんって、夫婦、なんですか?」
すると、詩乃さんと板長がすこし照れながら、
「…ええ、まぁ。」
と、詩乃さんが返す。
・・・。
え?ええ??
えええ!!!???
「そうだったんですかぁ!!!???」
「あれ?これも言っていなかったっけ?」
「こんなこと、聞いていませんよ!!??」
う、嘘でしょ!??
確かに、言われてみれば、板長と優香さん、少し似ているような…?
「…そんなことより、バスの時間、そろそろじゃない?」
「「あ。」」
そうだ!
このバスに乗らないと!
次はいつ来るか調べてないし。
「それじゃあみなさん。色々とお世話になりました。」
「…優香。」
「何、美奈?」
「いい加減、結婚したら?」
と、菊池先輩は優香さんを挑発。
「はぁ!?あなただって、結婚していないくせに!人の事言えないでしょ!!?」
「私には優君がいれば幸せだから、ね?」
「ええ!?」
急にそんなこと言われましても…。
「それじゃ、また来年、ね?」
「ええ。」
「…それまでに結婚、しているといいわね♪」
「うっさい!さっさと帰れ!」
こんな騒がしい中、私達はここ、白骨温泉を後にした。
優達を見送った四人の話題は、
「…なぁ?ほんとにあの坊主のこと、考えてくれねぇか?」
優のことについて、だった。
板長は、優の引き抜きを本気で考え、そのことを他の三人に伝えていた。
「確かに優君はすごいけど、僕や板長よりは腕は劣って…。」
こう、副料理長が告げていると、
「…はぁ。お前はほんと、周りが見えていないよな。だからお前はいつまで経っても、副料理長のままなんだよ」
「んなぁ!?」
副料理長もそこまで言われると思っていなかったのか、つい向きになって、
「それじゃ、板長がそこまで優君に固執しているのか、理由を聞かせてくれるよね?」
若干、切れ気味に質問する。
優香、詩乃も板長の本意が知りたくなり、耳を傾ける。
「いいか?本来、あの厨房は4~5人で回せるほどの仕事量があるのは分かっているよな?」
「ええ。それは何年もあの厨房で働いていますからね。言わなくても分かっていますよ。」
「だが、優が倒れた日、俺はあの二人の様子を見ていたが、いつも通りだったんだよ。」
「…いつも通り、というのは?」
「いつも通り、つまり、俺達4人で厨房を回していた時と同じ様子だったんだよ。」
「…それが何か?」
副料理長は板長の言っていることがいまいち分からなかった。
だが、
「…!ま、まさか…!?」
女将である詩乃は板長の言いたかったことが理解したらしく、目を皿のようにして驚く。
「…お前は分かったみたいだな。」
「…どういう事?ちゃんと分かるように説明してよ、お父さん。」
ここで我慢出来なくなった優香が父の板長に説明を催促する。
「…つまりだ。俺とお前、二人分の仕事量を、優は一人でこなしていたってことだ。」
「…嘘だろ。」
副料理長は信じられなかった。
優の調理する姿を直接見た訳ではないが、あんな小さな子供がそこまで出来るなんて。
信じることを一瞬拒絶した程だ。
何より、あの頑固な板長が、自分より上の存在を認めない男が、間接的とはいえ、自分より優れた人がいると、自ら認めていることに驚いていた。
「まさか、あなたにそこまで言わせるなんて…。」
優香も詩乃も驚いていた。
一瞬、人が変わった?と自分の目を疑ってしまったほどである。
「俺も最初は疑ったさ。でも、あいつらに聞いたんだよ。“あの坊主と調理していてどうだった?”てな。」
「…それで?」
「…とても調理しやすかった、だと。それでまた聞いてやったよ。“俺達と坊主、どっちの方が調理しやすかったか?”って。」
「まさか…。」
「ああ、坊主の方、だってよ。坊主と調理する時、決まって、調理しなくちゃいけない材料や調理道具、調味料を的確なタイミングで、近くに置いてくれるんだとよ。」
「嘘でしょ!?そんなことが出来るってことは…!」
「ああ。あの坊主はあの二人の行動や、調理手順を全て頭の中に入れたうえで、いつどうすればいいのかを完全に把握していた、ってことだよ。今の俺でも、自分のことだけで手一杯なのによ…。」
「そんな小学生がいるなんて…。」
四人は最早言葉が出なかった。
しばらく無言の時間が続いたが、その均衡を破ったのは、
「それよりお父さん。今月から給料なしね!」
優香だった。
「はぁ!?何でだよ!?ありえないだろ!」
「当たり前でしょ!人のお金をギャンブルに使っちゃって!申し訳ないと思わないの!?そもそも、こんな事態を招いたのは、誰のせいだと思っているの!?」
「だが、このことがあったおかげで、あの坊主の能力が…。」
「言い訳し・な・さ・ん・な!」
「は、はい…。」
頑固な板長も娘の説教に弱いのか、さっきまでの強気な姿勢が嘘のように弱くなっていく。
「それにしても、あなたの友人、もう結婚していたのね?あんなお子さんがいたなんて…。」
「え?あいつ、結婚していないよ?」
「「「えええ!!!???」」」
驚くのも無理はなかった。
なんせ優香以外、優はあの菊池美奈の子供だと思っていたのだから。
さき程の口げんかも、冗談程度にしかとらえていなかったのだから。
「…それじゃあ、優君と菊池さんとの関係は、一体なんだ?」
「…さぁ?私も詳しく聞いていないし。よく分からないわ。」
「よく分からないわって、それでいいの!??」
「いいも何も、あの二人、とっても幸せそうだったし、別にいいんじゃない?」
「「「・・・。」」」
優香は菊池の過去を少しは知っている。
だからこそ、あの菊池の幸せそうな顔を壊したくなくて、必要以上に踏み込まなかったのだ。
そう、優という存在が、菊池を変えてくれたのだ。
一方、優香の発言で、三人は、今まで旅館で見てきた優と菊池との会話や、その様子を思い出す。
その様子は本物の親子のようだった。
時には、優が菊池のいき過ぎた言動を抑え、時には、フラフラになっている優を支える菊池。
そんな情景が脳裏に浮かぶ。
そして、
「そうだな。」
「ええ。私達が口を挟むことではないようですし。」
「何より、二人があそこまで幸せそうにしているもの。それでいいわ。」
いつしか、どうでもよくなっていた。
そして、
「…来年も、来てくれるといいわね。」
「そうね。」
来年のことを考え始めていた。
また、あの二人に会うために。
近いうちに、また投稿していきたいと思います。
また、これを読んで、「あれ?おかしくね?」と思った方々は、多分正しいと思います。
9割9分イメージでかいているので、矛盾が生じていると思います。
感想、ブックマーク等、お待ちしております。