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小さな会社員のお盆休み堪能生活~月曜日~

 お盆休み初日の月曜日。

 今日は確か、潮田さんと待ち合わせ、でしたね。

 先日の勉強会のお礼、と言っていましたが、どういうことでしょう?たいしたことを教えたつもりもないのにお礼をされては、こっちに罪悪感が生じてしまいます。なら、こっちも何かしらお礼をした方が…。

 と、独りで悩んでいると、

「ま、待たせたわね。」

 …あ、潮田さん、でしたか。一瞬、誰だかわかりませんでした。それにしても、

「今日は何をするつもりですか?」

 今日の予定を一切把握していないのだ。把握しようとしなかった私も悪いが。これでは今後どう動くのかが分かりません。

「今日はあなたにご飯を奢ろうと思って。め、迷惑かしら?」

「いえ。そんなことはありませんよ?」

 何故そういう考えに至ったのかはきになりますが。

「そ、そう。それなら行くわよ!」

「はい。」

 こうして私は、潮田さんとお昼を食べに道を歩いていく。


 着いた場所は、

「さ、ここでご飯にしましょうか。」

「はい。」

 とあるファミリーレストランである。どうやらここでお昼を食べるようだ。ここならお手頃価格でご飯を食べることが出来るので、おごるには最適なご飯屋なのかもしれません。

こうして、私達は店内へと入っていく。

「いらっしゃいませー。2名様で間違いないですか?」

「はい。」

 店員さんから案内を受け、席へと着く。

「さ、ここは私が支払うから、好きなものを頼みなさいよね。」

 と、潮田さんは私にメニューを渡す。とは言っても、

(遠慮してしまいまよね。)

 大人の人におごられることは抵抗を感じないのですが、同年代の人におごられるのはちょっと…。

「それでは…このハンバーグで。」

 一番安いメニュー、と言うのは流石に気が引けるので、2番目に安いメニューにしておいた。これなら文句は言われないでしょう。多分、ですけど。

「私は和風おろしハンバーグのAセットで。」

 Aセット。

 それは、ライスとサラダとドリンクバーがセットになっているもので、普通にライスとサラダとドリンクバーを頼むより何円かお得になります。私の場合、ドリンクの水だけで十分なんですけどね。

「それでいいの?」

「はい。ハンバーグだけで十分です。」

 そんなにがめつくのも失礼ですし、後で軽く食べるとしましょう。

「…そう。それじゃあ店員を呼ぶわね。」

 店員を呼ぶため、潮田さんはボタンを押す。

「ご注文は何になさいますか?」

「ハンバーグと和風おろしハンバーグ。それぞれAセットで。」

「かしこまりました。」

 と、店員さんは去っていった。

「あれ?私は確か…?」

 ハンバーグだけ、でしたはず。それなのに、何故?

「あなた。私の財布を気にしたでしょ?だからハンバーグだけにした。そうでしょ?」

「・・・。」

 何にも言えませんでした。どうやら、私が思っていた以上に、潮田さんは私のことを見ていたらしいです。気づかなくてもいいことを、なんて思ってしまうのはいけないことですよね。ここは素直に好意を受け取るべきでしょう。

「ありがとうございます。」

「これぐらいわけないわ。今日はそれなりにお金を持ってきているから気にしないで。」

「わかりました。素直にごちそうになります。」

「そうよ。それでいいのよ。」

 と、潮田さんは私に笑顔を見せる。そうですよね。私も、もっと周りを見て、他人を気遣えるようにしなくてはなりませんね。

 ご飯がくるまでの時間、私は潮田さんの話を聞いた。

 なんでも、前回の勉強会のおかげで、いい成績を収めることが出来たらしい。そのお礼を兼ねての食事会だとか。本当に私のおかげなのでしょうか。単に、潮田さんの頑張りの賜物だけだと思うのですが。私は何にもしていないと思いますよ。

 また、どうやら私とこうして話をしてみたかったらしい。要するに、雑談したかった、ということでしょうか。私ではなく、他の人とすればいいのに。と思ったのですが、どうやら私と話をしてみたいらしく、色々なことを聞かれ、聞かされました。

 私の普段の生活、態度、趣味…。それとは対照に、潮田さんは、芸能界で辛いこと、やりがい、今の生活に満足していて…。

 そんな話を延々と話し、

「お待たせいたしました。こちら…、」

 頼んでいた品が届き、お昼を食べ始める。

 お昼を食べ始めても、話が止まる、なんてことはなかった。というより、食べ物の話題でさらに盛り上がった。潮田さんが、ですけど。私は主に、潮田さんの話を聞くことに集中していた。

 潮田さんが今はまっている料理。潮田さんの料理の腕。潮田さんがかつて好きだった料理。潮田さんの嫌いな食べ物。その他もろもろ…。

 料理を食べ終え、店員さんによって皿を下げられ、後は会計だけ、かと思いましたが、

「こちら、デザートのパフェでございます。」

「ん。ありがと。」

「それではごゆっくりどうぞ。」

 パフェが出てきた。潮田さんはごく自然に受け取り、私の前に置く。なるほど、潮田さんの仕業でしたか。

「いえ、遠慮しておきます。」

 私はパフェを潮田さんの前に置こうとする。

「それ、数種類のアイスで出来ているアイスパフェ、らしいわよ。」

「え?」

 な、何ですかその素敵なパフェは?

「上に乗っかっているアイスはバニラ。下の層にはイチゴ、バナナ、メロンなどなど、色々な…聞いている?」

「…え?」

 これは生クリームみたいですが、ほとんどがアイスみたいですね。こんなにもアイスに恵まれているパフェなんて見たことありません。夏限定の冷え冷えパフェ、何でしょうか?

それにしても、こんな多彩な味、見た目のパフェは素晴らしいです!

「あれ?何か言いましたか?」

 さっき、潮田さんが何か言っていた気がするけど、気のせいでしょうか?

「…ずいぶんアイスに夢中なのね。」

「…し、失礼しました。」

 思わず見惚れてしまいました。それにしても、

(このパフェ、食べたいなぁ…。)

 どうやら潮田さんが頼んだものみたいですし、別の機会にいただくとしましょう。是非!

「ほら、早く食べないと溶けるわよ?」

「え?これって潮田さんが食べるパフェなのでは?」

「何言っているの?あなたのために頼んだものよ。あなた、アイス好きでしょ?撮影の時、アイスにつられていたし。」

「見ていたのですか…。」

 あの場面を見られていたとは。は、恥ずかしい。

「だから、はい。」

「わ、分かりました。」

 私はパフェを受け取り、食べ始める。

(お、美味しいですぅ…。)

 このアイスのヒンヤリ感、舌触り、最高です!

「…ほんと、美味しそうに食べるわね…。」

 そんな言葉を聞き流し、私はパフェを食べ続けた。


 パフェを食べ終え、支払いも終え、

「今回はごちそうになりました。ありがとうございました。」

「別にいいわ。前の勉強会のお礼だし。」

 お礼の言葉も言い終え、後は、

「それではこれで失礼しますね。」

 帰るだけですね。そうして私は社員寮に戻ろうしますが、

「え!?か、帰るの!?」

 潮田さんは驚いていた。何故でしょう?やることを終えたら普通、家に帰りませんか?それとも、

「まだ何かありますか?」

 私としては、要件を済ませたことですし、家に帰ろうと思っていたのですが。

「これから服を見に行くつもりだけど、一緒に行かない?」

「服、ですか…。」

 私はこのジャージで…、

「もしかして、そのジャージだけしか持っていない、なんてことは無いわよね?」

「…まぁ、他にもありますけど…。」

 ジャージの他には、余所行きの服がありますね。後は…菊池先輩が用意した女装の服、ですかね。それ以外は…ありませんね。休日は大体ジャージですし。ジャージだけは何着もありますし、服で困ったことも起きていませんし、大丈夫かと思っていたのですが。

「ま、あるならいいわ。なら、見るだけでも付き合ってくれないかしら?」

「…分かりました。」

 ま、帰ってきてから家事をこなせばいいことですし、買い物も帰宅後でいいでしょう。そう楽観し、潮田さんの買い物に付き合うこととなった。


 場所はとある大型商業施設。その中にあるとある店、衣服を売っている店の前に来た。衣服と言っても女性が必要としている服、女性服専用の店である。その店に今、

「さ、行くわよ。」

 私と潮田さんは来ていた。ま、潮田さんの買い物に付き合うだけなら、男の私が入店しても問題ありませんよね。菊池先輩とも一緒に来ていたことがありましたし。そもそも店員さんに男として見られているのでしょうか。いずれにしろ、今は関係ありませんね。そんなことより今は潮田さんの買い物に集中しましょう。

「ねぇ?このピンクのスカートはどうかしら?私に合っているかしら?」

「そうですね…、」

 私は潮田さんの服選びに付き合い、今までの知識や体験を元に、潮田さんと対話する。ここで菊池先輩との会話が生きてくるとは思いませんでしたけど。

 そうして、服選びだけで数十分近く経ち、

「あ~。結局、手ごろで私に似合いそうな服はなかったわ。」

 何も買わなかった。店側にも迷惑をかけた気もするけど、これは気にしない方がよさそうですね。菊池先輩の時もそうでしたし。

 さて、それで後は家に…、

「さ。次は小物を見に行きましょうか?」

「…はい。」

 帰れなかった。

 こうして私はまだ、家に帰してもらえないみたいだ。


 小物店では、色々と見ていた。私もさっき以上に真剣に物を物色している。

 何故なら、

「さて、どれにしようかしら?」

 どうやら、お揃いの品を買いたいらしい。それもお礼の一環らしく、潮田さんはもちろんのこと、私も身に付けられる小物にしなければ。

「このカチューシャなんてどうかしら?」

「この色ですと…ちょっと私には…。」

 仕事で普段身に着けている白と瑠璃色のカチューシャならともかく、桃色のですと…。

「そう。なら…これはどう?」

「これは、シュシュ、ですか?」

 シュシュ。

 それは髪留めの一種で、髪を結わえる時に使う品物。前、菊池先輩にもいくつかもらいましたが、全部劣化による破損で壊れてしまったんですよね。予備もないわけですし、色も緑。髪を軽く結わえる分には申し分ないかもしれませんね。

「潮田さんはそれで大丈夫ですか?」

「ええ。私も前、髪留めが壊れちゃっていたのよね。」

「そうなんですか。」

 それにしても、私と同じような時期に髪留めが破損するなんて偶然もあるものですね。

「それじゃあそれにしようか?」

「そうですね。それでは、買いに行きましょうか?」

「そうね。」

 こうして、私はお礼の品を買ってもらった。

 最初は断ろうとしたが、

「ここは私が払うから、財布なんか出さなくていいわよ。」

 と、前もって釘を刺されてしまった。こう言われてしまっては、私は何も出来ません。なので、

(そういえば、こうして同級生と買い物なんて、生まれて初めてかもしれませんね。)

 外で待つことにした。何人か並んでいたので、数分はかかるでしょう。

 …それにしても、今日はずいぶん人が多いですね。お盆休み、ということだけあり、娯楽施設に行く人が多いのでしょうか。それとも、休日の買い物目的で来た、ということなのでしょうか。家族連れの方々が多いみたいですね。

 ・・・。

 家族、ですか。

 私には、菊池先輩と工藤先輩の2人が今の…、

「…ねぇ。ねぇってば!」

「…はい?」

 あれ?そういえば確か…?あ、今は潮田さんと買い物に来ていたんでしたね。

「どうしたの?あの家族を見ていたようだけど…?」

「いえ。何でもありませんよ。」

「そう?それより、はい。」

 と、潮田さんは2つある袋のうち、1つを私に渡す。

「さっきのシュシュ。これはお礼だから。」

「はい。ありがとうございます。大切に使わせていただきます。」

「ま、当然よね。」

 こうして買い物を終え、駅前まで歩いて向かう。道中、無言の時が続いたが、嫌ではなかった。

 そして駅前、

「きょ、今日は楽しかったわ。ありがとう。」

「いえ。こちらこそごちそうになりっぱなしでしたし。何かお礼がしたいところです。 ですが、今の私では、出来ることなんてあまりありません。自分の無力さがもどかしいです。」

「…あなた。初のモデルであそこまで出来ていて無力とか、私を馬鹿にしているの?」

「そんなことを言われましても…。」

 私としては、あれが精いっぱいでしたし。

「…はぁ。それじゃあ、またね。」

「はい。」

 こうして、潮田さんは駅構内へ向かっていった。

「…さて、私も戻りますか。」

 自分が帰るべき家に。

 こうして私は歩み始める。

 お盆休みの月曜日は終わりをつげ、火曜日が近づいていく。

次回予告

『小さな会社員のお盆休み堪能生活~火・水曜日~』

 潮田詩織との二人っきりの時間を過ごした月曜日。次は工藤直紀との1泊2日の京都旅行である。優はマティーニ味のアイスを、工藤は幻の酒を楽しみにし、京都へと向かう。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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