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女子小学生モデルのドラマ撮影生活

この作品は、「第16回MF文庫Jライトノベル賞第三期予備審査」に投稿しました。

いい反応がもらえるとうれしいです。

もちろん、感想は常に受け付けています。

 そして京都。

 そこに、

「それじゃあ申し訳ないけど、今週一杯、京都で収録、撮影だからね。よろしくお願いします。」

「分かったわ。」

 潮田詩織と峰田不二子の二人が来ていた。

 実は小学生モデルの仕事だけではなく、今後放送される予定のドラマの撮影も兼ねて、京都に来たのだ。なので、

(ちょっと緊張するわね。でも、頑張るわ。)

 潮田は柄にもなく緊張していた。

 潮田のドラマの役は、主人公の娘の友達役だった。それを聞いたとき、峰田は、

(役はこれで決まったし、台本も渡したけど、これで満足してくれたのかしら?)

 不安になっていた。


 実は、潮田が演じる主人公の娘の友達というのは、主人公の病気になった娘を元気づける重要な役なのだが、言葉の節々に棘を感じるようなきつい発言が多く、なかなか役が決まらなかったのだ。そんな時、

「なら、うちの潮田詩織にやらせてみるのはいかがでしょう!?」

 峰田が率先して名乗りをあげ、仕事を手にしたのだ。

 その仕事を潮田に報告したとき、

「…仕事をとってきてくれたの?ありがとう。それで、撮影日はいつ?」

 潮田はそっけない対応だった。

(あれ?思っていた反応と違う。)

 そんな潮田の反応に、

「え、えっとね…。撮影日は、6月末から七月初旬。台本はもうちょっと待って、ということだそうよ。」

 違和感を覚えつつ、必要事項を伝える。


 実を言うと、この時はただ、資格取得の勉強やら、いつもの復習や予習が重なり、寝不足になっていて、そのせいで反応が鈍かっただけだったりする。後日、自室や浴室で大いに喜んだのだが、「ちょっと詩織!うるさいわよ!」と怒鳴られ、それでようやく落ち着いたのであった。


「分かったわ。」

「あ、後、レッスンを受けてほしいから、空いた日に来てほしいんですって。」

「…どこに?」

「えっとね…。」

 その後、峰田が送り迎えをし、潮田はレッスンを受けた。

 だが、潮田はそこで満足しなかった。潮田は独自に、自分が演じる人物を調べ、どういう人物なのかを頭に叩き込み始めた。周りの人に教えられ、受動的に得た情報はもちろんのこと、能動的にも情報を得て、どういう人物で、どういう風に演じればいいのか勉強していたのだ。誰かに言われてやり始めた、とかではなく、自発的にやり始めたのだ。

 今までの潮田詩織なら、ここまでしなかっただろう。精々、台本に軽く目を通し、台詞を覚えるくらいで済ませていた。これも一種の成長の表れなのだろう。

 そんな様子を陰から見ていた峰田は、

(わ、私も頑張らなくちゃ!)

 スケジュールの調整を徹底して行った。

 潮田が万全の態勢で撮影に臨めるよう、常に最新の注意を払い、

「あ!すいませんがそこはこうではなく…。」

 周りの人にも自分の意思を、願望を出来る限り伝える。

「あ、すいません。来週のお昼なんですけど…。」

 潮田が勉強しているなか、峰田は京都に行っても、出来る限り潮田と一緒にいられるよう、雑務を東京にいるうちに全て終わらせたのだ。

 そんな峰田の頑張りをちょくちょく見ていた潮田は、

(なんだか、今回の峰田はずいぶんとやる気ね。私もあの子に自慢出来るように頑張らなくちゃ。)

 より一層、やる気をだしていた。互いの頑張る姿を見て、互いに頑張ろうとする。まさに、最高の関係と言えるだろう。

 そして二人は万全を期して、京都に来ていたのだ。

 

 そもそも、何故ここまで潮田がやる気なのか。

 この理由の一端に、早乙女優の影があった。

 あのペアの写真撮影以来、優の女装姿は瞬く間に広がり、噂になり、話題となった。そこまではよかった。だが、一時期、潮田より女装した優の方が有名になってしまった。こういう競争率の激しい業界にいるからこそ、身をもって体験し、思い知らされてしまう。

“トップモデルだけでいつづけるのは難しい。”

 と。

 だから、トップモデル以外の道にも進出すべきだと考え始めていた。そう考えていた矢先のドラマ出演オファー。神が降りてきたようなタイミングだった。

 それ以来、以前にも増して、自分磨きをするようになった。肌の手入れももちろんそうだが、内面を集中的に磨き始めた。

最初は、早乙女優のことを蔑んでやろうかと考えていた。ノートにも悪口を白い箇所が無くなるくらい書いたり、口でも何度も言ったりした。だが、途中で気づいてしまった。これでは、私を嫌っている同業者と同じだということに。

 潮田は自分の仕事に誇りをもって仕事をしている。だから、他人を蔑むのではなく、敬うようにして仕事をしている。態度にはあまりでない上、周りの人にはきつい言い方をしている時もあるが、そのほとんどが、潮田詩織なりのアドバイスだった。自分なりに言えること、教えられることを言っているつもりなのだが、それが「上から目線の女王様発言」のように、周りの人から思われていた。その上、普段はそっけない態度をとっているため、その噂が重力のように加速して広まっていった。だから、同業者の中で、潮田をよく思っている人はいないのだ。

 でも、早乙女優だけは違った。潮田の発言に耳を傾け、きちんと間違いを修正して撮影に臨んでいたのだ。同業者の中では初めて、潮田の言うことをまともに聞いてくれた人だった。

そんな人を蔑む行為が、どんなに醜くて汚いのか、潮田は独り、自己嫌悪に陥ったこともあった。一時期、本人に相談しようとしたときもあった。だが、優のあの現場での行動を思い出し、潮田は決意した。

“そうだ。自分を高めよう。”

 と。

 だから潮田は、興味のある分野の資格を取ろうと、ネットで色々検索したところ、この色彩検定を選んだ。

 今の潮田詩織は、ファッションやインテリアに多大な興味がある。潮田詩織曰く、

“かわいい服や家具に囲まれて生活すれば、より楽しい生活が出来る。”

 と言う。だから、色が与える印象や影響について知りたいため、この資格を取得したいと本人自らが強く願い、勉強を始めたのだ。それに加え、礼儀、一般マナー等、大人なら出来なきゃ恥ずかしい事も学んだりし始めた。そして今は結果を待っている状態である。潮田は合格してから峰田に報告しようと考えているので、峰田にこのことをまだ報告してなかった。潮田は、峰田はおそらく

「え?ええ??えええ!??」

 こう驚くだろうと予想し、時を待っていた。

 そして、そのことで自分の力を再確認した潮田は、調子に乗ることもなく、必死に資格の勉強、レッスンに励んだのだ。

「それで、この後はホテルに荷物を預けてから収録場所に集合、で合っているわよね?」

「え、ええ!その後は…。」

「あ。その後のことはいいわ。今は収録のことだけに集中したいの。」

「分かった。」

 こうして、

「ねぇ?あの二人、なんかさ、ねぇ?」

「確かに、只者じゃないというか、なんというか…。」

 周りの人達に注目されながらも、二人は京都の町を歩き始める。


 そして、

「今日はよろしくお願いします。」

「「「よろしく!!!」」」

(頑張れ、詩織。)

 峰田は無音の声援を送る中、潮田詩織の新たな挑戦が始まった。


次回予告

『小さな会社員の京都出張生活~看病~』

 優は、自身が抱えた仕事のため、今まで溜めてきた知識を総動員し、仕事をこなそうと奮闘する。だが、どうしても分からない部分があり、どうしようかと悩み始めた頃、小鳥遊からの提案により、黒田の看病をしつつ、聞いてきてと頼まれた。優はその提案に乗り、黒田の家に向かう。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

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