有名なモデル達の有名番組撮影生活~不審者襲来~
(・・・なるほど。)
番組が始まり、私は他のモデルのアピールタイムを見ていました。
自分としては、自分の得意な事というより、今の自分に出来る事を発言するとしましょう。
(それにしてもみなさん、かなり堂々としていますね。)
流石はモデル、でしょうか。
ステージ裏で見ている人達だけでなく、観客席から見ている数多くの人達から一身に受ける視線に対し、緊張している様子がありません。上手く隠している可能性もありますが、この状況で緊張していないのであれば、本当に凄いと思います。
(私だったら・・・間違いなく緊張しますね。なんなら今も緊張していますし。)
今アピールしている人に大半の人の視線が集中しているのですが、私や潮田さんなど、他のモデルの方にも視線がいっているようです。
(私には彼女達のような熱量はありません。)
私はただ、出場してほしいと言われたからこの場にいるだけです。だから本当は、私が出場するのではなく、もっと心の底からこの場に立ちたかった他のモデルを起用するべきだと思ってしまいます。このような考えを持っていると見抜かれたら色々言われてしまいそうなので、この考えは心の内にしまっておきましょう。
(おっと。余計な事を考えていたら、もうそろそろ潮田さんの自己アピールタイムが終わりそうですね。)
潮田さんの自己アピールが終わったら後・・・2人、ですね。
(そろそろ私の自己アピールの時間となりますね。気を引き締め直すとしますか。)
と、私は集中し直していると、
「さっすが僕の詩織たんだお!すんばらしい自己アピールだったお!」
「「「!!!???」」」
突如、何者かがステージに上がってきました。
(あれ?この後、男性がステージに上がる演出ってありましたっけ?)
私が記憶している限りですと、この場面で男性がステージに上がる演出なんて無かったと思いますが、どうなのでしょう?私は周りのモデル達を見てみます。
(・・・どうやら突然の出来事のようです。みなさん、驚いているようです。)
峰田さん等、運営者さん達の顔色も見てみますか。
・・・やはりこちらの方々も驚いているようです。ということはこの男性、私達モデルや峰田さん達も聞かされていない事態が起きている、ということなのでしょう。
(というかこの人、一体どこから・・・あ。)
よく見たら、警備員の方が倒れていますね。おそらく、警備員の制止を聞かず、力技でこのステージまで来たのでしょう。
(となるとこの事態はまずい、ですね。)
まず目の前にいる男性が、潮田さんに向けての異常な執着心が剥き出しになっていることです。
その異常な執着心のおかげで、警備員の制止を振り切ってステージまで上がっている事ですし、次の行動を想像すると・・・潮田さんがあの男性に連れ去られる、最悪な未来しか考えられません。
そして、この男性を抑える為に多くの大人が駆け付けることにより、番組が急遽撮影中止、最悪、番組そのものがなくなる可能性もあります。
(そうなれば今このステージに立つ為、想像出来ないほど努力をされた方々の努力が、頑張りが無駄になります。)
なら、今の私はどうすべきなのでしょう?
・・・。
(・・・やるしか、ないですね。)
私はポケットに入れていた携帯に触り、画面を見ずにアプリを起動し、ある方に連絡を入れます。
(それと・・・、)
私は峰田さんを視線に捉えます。私の視線に気づいたのか、峰田さんと目が合いました。何か一生懸命手を動かしていますね。おそらくですが、今から峰田さん含めた大人達であの男性を確保する、と伝えたいのでしょう。番組の運営側として、この事態は早急に解決したいでしょうからね。
(でも、)
私は首を横に振り、追加で連絡を入れます。その後、視線を峰田さんのポケットに移動させます。これで携帯を見てくれれば嬉しいのですが・・・。
(お。上手く通じましたね。)
私の思惑通り、峰田さんは自身の携帯を見てくれました。すると、怪訝な顔をしました。
(今見ている間に、追加でお願いをしましょう。)
私は先ほどと同じように、画面を見ずに連絡を入れます。私のお願いの内容を理解出来たのか、とても不安な顔になっていました。
(出来れば信じてほしいです。)
私がお願いした内容は、ステージにいる男性は私に任せてほしい件と、この件に関して私に案があるので、出来る限り運営者の方々は表立って行動しないでほしい、という内容です。
私は男性の様子を見つつ、峰田さんの返事を待ちます。
(・・・ありがとうございます。)
峰田さんから許可が下りました。こんな状況でも私を信じてくれたのはとても嬉しいです。もしかしたらこの異常事態に正常な判断が出来なくなっている、なんて可能性も否定出来ませんが、そうであったとしても嬉しいです。
(それでは、モデルの為、番組の為に動いていきましょう。)
まずはモデルの為に、今も潮田さんを見続けているあの男性をなんとかしましょう。
一方、
「まったく、どうしてこんなことに・・・、」
潮田詩織のマネージャー、峰田不二子は頭を悩ませていた。
何せ、今潮田詩織の目の前に正体不明の男性がいるのである。正体不明の男性が何者なのか、誰の差し金なのか調べている真っ最中なのである。
「やっぱりあの人、今すぐ止めた方がいいんじゃ・・・?」
「でも私達が出たら、きっと撮影中止、最悪番組そのものがなくなるんじゃないの?」
「でもでも、モデル達が今も危険なんだよ!?今は番組の事よりモデルの方を大切にするべきじゃない!!??」
番組のスタッフ達が今の事態をどうにかしようと、懸命に話し合っている。
(本当は今すぐ助けたい。けど、私達が介入して番組が無くなったら・・・!)
峰田不二子も、これからどう行動するべきなのか迷っていた。
そんな時だった。
(・・・ん?優、ちゃん?)
ふと、今もステージに立っているモデルの一人、早乙女優と視線が合う。
(とにかく、今大丈夫なのか、私達がその男性を捕まえようか、その提案をしてみよう!)
峰田不二子は今の自身の考えを身振り手振りで伝える。そんなことをしていたら、ポケットが振動し始める。
(おそらく携帯・・・誰か私に連絡してきたのね。でも今はそれどころじゃないわ!)
峰田不二子はジェスチャーを続ける。早乙女優を見続けていた峰田不二子は、早乙女優の視線の動きの変化に気づく。
(視線が動いている?その視線の先は・・・私のポケット?私のポケットには確か・・・、)
峰田不二子は、ポケットから携帯を取り出す。すると、あるメールが届いていた。そしてその差出人に、峰田不二子は驚愕する。
(こんな時に一体誰から・・・て、え!?ゆ、優ちゃんから!!??)
差出人は、今もステージに立っている早乙女優からだった。
(一体どうやって!!??携帯をいじっている素振りなんて全然ないわよ!!!???)
峰田不二子は早乙女優を驚愕の眼差しで見た後、メールの内容を見て再度驚愕する。
(嘘・・・!!??)
その内容は、さきほどの驚き以上の驚きだった。
(この事態を、なんとか出来るというの!?)
峰田不二子が驚くことも無理はない。
なにせ、ステージ上に突如現れた男性からモデル達を助ける事が出来、なおかつ番組を存続させることが出来ると、そう記載してあったのだ。
(ん?更に追加で来たわね。・・・そう。)
峰田不二子は再度驚くも、さきほどみたいに驚くことはもうなかった。
追加で来た内容は、万が一の可能性を考慮し、ステージ付近に何人か追加で配置することと、警備面で少し不安がある為、警備に少し人を割いてほしいというお願いが記載してあった。
「はは。」
峰田不二子は思わず笑ってしまう。
この異常事態に救いの連絡。
もし、本当にこの状況を乗り越えることが出来たら・・・。そう考えると、峰田不二子の顔に自然と笑みが作られる。
峰田不二子は、早乙女優から伝えられたことを周囲の人達に伝え、その案に乗ってみようと話す。
「・・・言いたいことは山ほどあるけど、まずこれだけ聞きたい。どうやって連絡とったの?」
峰田不二子は自身の携帯を見せる。
「・・・見たところ、携帯を・・・て、もしかして・・・!?」
「ええ。優ちゃん、ポケットに携帯を隠し持っているのよ。だからポケットに手を突っ込み、隠し持っていた携帯から私に連絡をしてくれたのだと思う。」
「「「・・・。」」」
話を聞いていた全員、早乙女優を見る。
「ちょっと待って。ポケットに携帯を入れると、画面って見えないよね?」
「ええ。見えないでしょうね。」
「つまり優ちゃんは携帯の画面を見ずに、あなたに連絡を入れたってこと?」
「・・・そういうことに、なるわね。本当、何者なのよ・・・。」
峰田不二子の感想に全員が共感する。
「それより、この状況をどうやって乗り越えるつもりなの?」
「男性の件は・・・なんとかすると書いてあったわ。そしてこの番組の件は・・・一つ、案があるって。」
「なんとか?案?そんなあやふやな言葉だけで・・・、」
「・・・分かった。じゃあ書いていることを正直に言うわ。」
峰田不二子は、早乙女優の意見を正直に伝える。
「・・・そう、か。」
「その方法なら確かにモデルのみんなを守りつつ、この番組を存続出来るかもしれない。けど・・・、」
「優ちゃんのその後の事を考えると・・・、」
「やろう。いや、やらなきゃ!」
否定的な意見が出るなか、峰田不二子は早乙女優の意見に賛成の意思を示す。
「でも・・・、」
「なら他にいい案がありますか?ただでさえ今、一分一秒を争う状況なのに、ここでいつまでも悩んでいる暇なんてありません!それに例え、みなさんが乗らなくても、私は優ちゃんの案に乗ります。優ちゃんを助け、あの子達を守り、この番組を存続させるために。」
峰田不二子の言葉に、
「・・・そうだな。やろう。」
「・・・出来るだけのサポートをしよう。」
「今から他の警備会社に連絡して、すぐ引き受けてくれるか連絡してみる?」
「いや、それだったら他の番組スタッフに応援を頼もう。確かあの番号なら・・・あった!」
そして、プロデューサーと峰田不二子を中心に、番組スタッフが動き始める。
「私はここに残り、優ちゃんを見守ります。」
「うん。警備の事も私に任せてくれ。いざという時は任せる。」
「はい。」
峰田不二子は早乙女優含めたモデル達の為、近場で待機する。
(優ちゃん、頑張って。それと、上手くいくように祈ってよ、美奈!)
そして、今朝ある人物と話した内容を振り返る。
「あぁ~~~!!優ちゃんと離れたくない!私、一生このままがいい!!」
「今すぐ離れて下さい。」
「あぁん。優君のいけず~。でもそんな優君もす・て・き♪」
「「・・・。」」
菊池美奈は早乙女優に向けて惚けた顔をしつつ、残念そうな顔をしながら早乙女優から離れる。
「それじゃあ私はこれから会社に行って仕事をしてくるけど・・・分かっているわよね?優ちゃんに傷一つつけたら、あなただけでなく、あなたが大切にしている人達全員、膿の藻屑と化すから覚悟しなさい。」
「・・・優ちゃん、こいつの目がマジなんだけど、本気で言っているの?怖いのだけど。」
「気にしないでください。菊池先輩の冗談です。」
「本当、冗談に聞こえないのが恐ろしいわ。」
峰田不二子は菊池美奈の言葉に恐ろしさを感じる。
「優ちゃん、これから二人で話があるから、十分ほど席を外してくれない?」
「・・・別にいいですけど、あまり峰田さんをからかったりいじめたりしないでくださいよ?」
「・・・善処するわ。」
「確約しないと席を外しませんよ?」
「分かった、分かった。だから・・・ね?」
「・・・分かりました。それでは少し席を外しますね。ではこれから近場にアイスを売っているお店がありますので、そこでアイスを食べるとしましょう。」
早乙女優は楽しそうに席を外す。
「優ちゃん、朝からアイスを食べるつもりなのね。本当にあの子はアイス好きなのね。」
「ええ。うちの自慢の優ちゃんよ。」
峰田不二子と菊池美奈は、早乙女優の後姿を眺める。
「さて、これで優ちゃんの目と耳はなくなったわね。それじゃあ本題に入るわ。」
「本題?」
「・・・もし何かあったら、優ちゃんに任せておきなさい。」
「?何かってなによ?まさか今日の番組の収録に何か起こる、とでも言うつもり?」
「いや、私は単なる可能性を言っただけよ。それに、ある噂を聞いたの。」
「噂?」
「ええ。一部のファンがいきすぎた行動をしているって。それで出禁をもらっているファンもいるとか。」
「ああ、その話?そういう人はどこにでもいるからね。まったく困ったものよ。まさか今日、そのファンが何かすると?」
「証拠も何もないし、絶対に何か起きるって保証はないわ。だから可能性の話よ。」
「確かにあの子は色々出来るけど、そこまで出来るの?普通は出来ないと思うけど?」
「あなたこそ何を言っているの?あの子が普通の子供と同じなわけないでしょう?あの子、色々出来るから。」
「・・・本当、どういう育て方をしているのよ・・・。」
峰田不二子は菊池美奈の言葉に呆れる。
「とにかく、私が言う事は二つ。一つは、優ちゃんに怪我させたら絶対許さない事。二つ目は、何かどうしようもないほど困ったら優ちゃんに相談する事。以上。」
「・・・分かったわ。頭の片隅に入れておくわ。」
「そうしておきなさい。なんたってあの子は私の自慢の子。そんじょそこらの子とは比べものにならないほど頼りがいがあるわよ。」
「そうですか。」
峰田不二子は菊池美奈の話を聞くのに疲れたのか、既に疲弊の一端を表情に見せる。
「それじゃあそろそろ時間だし、私は会社に行くわ。本当は有休をとって優ちゃんの勇姿をこの目に焼きつけたかったけど、どうしても今日中にしないといけない仕事があるから行くわ。はぁ~あ、このままさぼりたいわ。」
「優ちゃんの事は私に任せてさっさと行きなさいよ。仕事なのでしょう?」
「・・・さぼっていいと思う?」
「さぼったら後日、あんた自身が後悔すると思うわよ?」
「はぁ。仕方がないわ。それじゃあこのまま行くわ。今優ちゃんに会うと、このままさぼる事間違いないから。じゃ。」
「ええ。撮影が終わったら報告するわ。」
「絶対にお願いね。」
そう言い、菊池美奈は去って行く。
菊池美奈が去った直後、早乙女優と峰田不二子が合流する。
「ただいま戻りました。」
「おかえり優ちゃん。アイス、美味しかった?」
「ええ。それはもうもちろん!」
「・・・そう。それならよかったわ。それじゃあ行きましょうか。」
「はい。今日はよろしくお願いします。」
「ええ、こちらこそ。」
(まさかあいつが予言していた通りになるとはね。まさかあいつ、ここまでの事を分かっていて・・・いや、そんなことはないか。分かっていたら優ちゃんをここに連れてこないか。)
峰田不二子は、今も身元不明の男性と相対しているモデル、早乙女優を見る。
(優ちゃん、頑張って!私が、私達がいつでも助けられるようにしているから!)
峰田不二子含めた番組スタッフは、早乙女優をいつでも助けられるよう準備をする。
次回予告
『有名なモデル達の有名番組撮影生活~不審者対処~』
携帯を通して峰田不二子に自身の考えを伝えた早乙女優は、潮田詩織達の前に現れた不審者と相対する。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?




