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小さな会社員達の屋台運営生活~2日目その8~

「さて、帰りますか。」

 今私は、病院から自宅に戻っているところです。

 あのふざけた青年達を追い詰めた後、きちんと警察署に問題なく行った事を確認し、その後は病院で診断書をもらい、帰宅しています。

(それにしても警察署で見ていた方は一体誰だったのでしょう?)

 一瞬しか見る事が出来なかったので正体までは不明でしたが、見えた限りで推測しますと、成人男性だったと思います。ですが、工藤先輩や橘先輩等、見知った方であればすぐに気づくはずです。

(おそらく、私と直接関わりのない成人男性が見ていたのでしょう。)

 もしくは、工藤先輩や橘先輩等、見知った方が見ていたにも関わらず気付かなかっただけ、のどちらかですかね。

 出来れば赤の他人が見ていたと思いたいですが、実際はどうだったのでしょう?本気で調べれば分かるかもしれませんが、今はそこまでする理由も気力もありませんのでやめておきますか。

(病院の先生にもかなり小言を言われてしまいましたからね。)

 この怪我を診てもらった時、それはもうひどかったです。

 なにせ、私を一目見ただけでとても心配されていましたからね。

 診断結果も、安静にするようにと言われましたが、自分の事ですから、早々に体を動かすでしょうね。

(それにしたって、まさか私の骨にヒビが入っているとは思いませんでした。)

 お医者さんの言葉によると、私のあばら骨に何本かヒビが入っているかもしれない、とのことでした。最初は診断書だけで問題ないと思ったのですが、骨にヒビが入っているという実績があれば、あの青年達の罪も重くなりそうですし、結果としてよかったです。

 後、お医者さんが私を見て唖然としていましたね。

 少なくとも骨にヒビが入っているのによく平然といられますね、なんて言われました。

 骨にヒビが入った時、つまりあの青年達に暴力を受けていた時は頭にきてしまいましたからね。アドレナリンが出て痛みに鈍感だったのかもしれません。

(というか、今もまったく痛くないんですよね。)

 まだアドレナリンが流れているのでしょうか?出しているつもりはまったくありませんが、まだ無意識に興奮し、アドレナリンが出ているのかもしれません。

(さて、遅くなってしまいましたし、どう菊池先輩、工藤先輩に言い訳しましょうか。)

 今私の見た目は、服がボロボロで血も付着しています。まず何かが起きたと思うでしょうね。

(服がボロボロでなければ、魚の解体中に血が付着してしまった、という言い訳も出来たのですが・・・、)

 服がボロボロですからね。死んだ魚が暴れて怪我をしてしまった、なんて言い訳が通じるわけないでしょう。

(安静にするよう言われたので会社を休む必要がありますが・・・まぁ、関係ありませんね。)

 休むのだとすれば、会社に事情を説明する必要があります。ある程度ぼやかして説明・・・出来るといいですね。

(出来れば秘密にしたいところですが、無理・・・ですね。)

 本当は心配なんてかけたくないのですが、何人かに事情を説明し、私の今の状況を理解してもらう必要がありますね。

「はぁ。」

 気が重いです。

 私はどう説明したらよいか考えながら帰宅しました。


 帰宅後、

「それで優君、どういうことなのか説明してもらえる?」

 菊池先輩はいつも以上に真顔で私に説明を求めてきました。

(まぁ、こうなりますよね。)

 私は最初、濁して説明していました。

「まぁ、これは色々ありまして・・・、」

「色々?そんな曖昧な言葉じゃあ分からないわ。ちゃんと一から十まで教えて。じゃないと、私が0.1から100まで調べて、優君をそんな目に遭わせた屑共を色々と追い込むわよ?」

「・・・。」

 そんなことを言われてしまいました。

 菊池先輩にそんな煩わしいことはさせたくないのと、手を汚してほしくないので、私は出来るだけ言葉を選んで伝えました。

 私が商店街の方に顔を出していたら、子供達を脅している青年達を見つけた事。

 その青年達を追い返す為に一芝居うって、子供達と青年達を引きはがした事。

 引きはがした後、青年達が夏祭りを妨害する危険があったので、私が食い止めていた事。

 食い止めている祭、青年達を逮捕してもらう為に色々証拠を探していた事。

 証拠を作るためにボイスレコーダーを起動させていたのだが、その際、どうしても許せない発言があったので、精神的に追い詰めた事。

 その青年達は今、警察署で捕まっていて、長い間出てこないので安心してほしい事。

 この怪我は、青年達を逮捕する為の証拠の一つとして、わざと攻撃を受け、診断書をもらってきた事。

「それと、安静にするようお医者さんに言われましたが、気にせず明日は出社しますね、」

「!!!???」

 私がこう言った瞬間、菊地先輩は分かりやすく表情を変えた。

「駄目に決まっているでしょう!!!???」

「!?」

 菊池先輩、声が大きいです。

「お願い、優君。」

菊池先輩は私の頭に優しく手を置く。

「!?」

 菊池先輩の顔を見た時、とても辛そうな顔をされていました。

「確かに優君は人助けをして偉いし、凄いと思うわ。でも、でもよ!?」

 とうとう、菊地先輩が泣いてしまいました。

「助けたとうの本人がそこまでボロボロじゃあ駄目よ!駄目なのよ・・・。」

 こうなることが、菊地先輩を悲しませてしまう事が分かっていたから、隠したかったんですよね。今更そんな事を言ったって遅いのですが。

「もう。こんなボロボロになってまで証拠なんて・・・。私に事前に行ってくれれば、証拠の十個やニ十個くらい簡単に集めていたのに・・・。」

 そう言いながら菊地先輩は私の服に手をかける。

「て、何をしようとしているのですか?」

「え?いつまでもそのボロボロな服を着ているわけにはいかないわ。だから着替えて。」

「そう、ですね。証拠も既に撮り終えていますし、着替えますか。」

 私が着替えようとした時、菊地先輩も立ちました。

「まさか、私の着替えを覗くつもりですか?」

 こんな時でも菊地先輩は・・・。

 そう思っていたのですが、

「?何を言っているのか分からないけど、優君が着替えている間に、私は優君の体を拭くためのタオルを持ってこようと思っただけよ?」

「・・・そうでしたか。疑ってすみません。」

 てっきり菊地先輩の事ですから、私の着替えシーンを撮影するのかと考えたのですが、なんだか申し訳ないです・・・。

 着替えを終えた後、菊地先輩は私に色々質問してきました。

 助けた同年代の子供達は誰の事なのか。

 青年達と言っているが、その青年達について詳細に教えてほしい。

 今、大丈夫なのか?どこか痛む個所はないのか。

「本当は大怪我している優君に今すぐ休んでほしいけど、ごめんね。優君にこんな無茶をさせてしまって・・・。」

「いえ。私は別に構いませんよ。今もまったく痛みを感じませんし。」

 骨にヒビが入っている等言われましたが、全然痛くないんですよね。今もアドレナリンが出ているとは思えないのですが。

「優君、我慢しなくていいのよ?」

「いえ、本当に痛くないんですよ?私も理由は分からないのですが。」

「・・・そう。」

 ?何故か菊地先輩が悲しそうな顔をしていました。私、本当の事を言っただけなのにどうしてでしょう?

 その後菊地先輩は、私の代わりにご飯の準備や洗濯等してくれました。私がやろうと思ったのですが、

「優君、自覚がないとはいえ、優君の骨にヒビが入っているのよ!?だから優君は休んでいるべきよ!というか本当に痛くないの?大丈夫?」

 私を心配し、何もさせてもらえませんでした。何度も言いますが、本当に私は大丈夫なんですよ?そう言っても信じてもらえませんでした。

「お医者さんが安静にするよう言ったのであれば、明日は素直に休むのよ!そうなると一応課長に連絡入れておいた方がいいかしら?・・・本音を言うとせっかくの休日に上司の声なんて聞きたくないけど、今回ばかりは仕方がないわね。」

「いえ、連絡くらいなら私が・・・、」

 と、私が言いかけたところで、

「お願いだから優君はゆっくり休んで?今はゆっくり、ゆっくり休んで。お願い。」

 と、必死な声で訴えるものですから、

「わ、分かりました。」

 大人しく菊池先輩の言葉に従い、大人しくしていました。

「・・・ええ。だから・・・。分かりました。それじゃあ。」

 どうやら事情を説明し終えたのか、菊地先輩は電話を切りました。

「どうでしたか?」

 私が質問すると、

「とりあえず分かったって。会社関係者各所には課長が直接事情を話してくれるって。それで私は優君の事を任されたわ。」

「ほ。」

 ひとまず言及は避けられたようです。お叱りもなさそうで良かったです。

「それで優君、課長から伝言よ。」

「なんですか?」

「体お大事に、だそうよ。それと、出社してきたら色々聞くから覚悟しておくように、だそうよ。」

「・・・私、退院してからしばらく雲隠れしてもよろしいでしょうか?」

「駄目に決まっているじゃない。」

「ですよね。」

 ただ単に現実逃避したかっただけです。

(当然と言えば当然かもしれませんが反対されてしまいました。)

 とはいえ、退院後の事を考えると憂鬱ですね。

「優君、私もお話がありますからね。」

「えぇ。」

 菊池先輩からのお話・・・とても嫌ですね。

「断ってもよろしいですか?」

「駄目に決まっているじゃない。」

「そう、ですか。」

 やだなー。絶対に小言を言われるじゃないですか。

「だから、ちゃんと体と心を治して、きちんと元気な顔を見せるのよ。お願い。」

 菊池先輩はいつになく真剣な顔で私にお願いしてきました。

 菊池先輩の意思が込められた言葉に、

「はい。」

 私はきちんと体を治してから、元気な顔で先輩方に会おうと思いました。



 翌日、あるニュースが補導された。

 そのニュースの内容は、ある青年達3人が逮捕された件である。

 何故報道されたかと言うと、青年達3人の行動が不可解だったからである。

 報道された内容として、青年達3人は突如警察署に赴き、逮捕してくれと懇願した後、警察官に暴行を働いた、というものだ。

 警察署の前で警察官に暴行を働いたのだから、他の警察官がすぐさま応援に入り、すぐ現行犯逮捕に至った。その後、警察の調査により、青年達には余罪があり、刑期の長期化が決定となったのである。

 だがここで一つ、疑問点が生まれる。

 何故青年達3人は突如、警察署に赴き、逮捕してくれと懇願したのか、である。

 警察も調査しているものの、その行動の理由は一切不明である、と報じた。

 だが実際は違った。

 警察は、何故青年達3人が突如警察署に赴いたのか、その理由を把握していた。

 それは、小さな悪魔から逃げる為、である。

 理由が判明したことはいいのだが、そのまま公表するわけにはいかなかった。

 何故かと言うと、どれほど青年達に質問をしても、小さな悪魔に関する情報が出てこなかったからである。なので、そのまま小さな悪魔が原因で青年達が警察署に足を運んだ、なんて言う事が出来ず、理由は不明と公表したのである。

 警察側の考えとしては、

“小さな悪魔に関する情報が不明な上、この世界に悪魔が実在するとは思えない。小さな悪魔の正体を掴むまで、この情報は極秘とする。”

 つまり、小さな悪魔とは何かを比喩した存在の事であり、その何かを突き止めない限り、理由は不明である。そう断定しても問題ない、と考えたのであった。

 警察の発表により、早乙女優が住んでいる地区に大きな変化が見られる。

 まず、子供達なのだが、小学校、中学校、高校に通っている学生の保護者達全員にある連絡が回る。

 その連絡は、不審者が近辺で逮捕されたため、夜は極力外出を控えるように、というものである。その連絡は、まだ見ぬ不審者から子供達を守る為である。

 その連絡は子供だけでなく、会社にも行き渡る。

 不審者による被害を無くす為である。

 こうして、早乙女優が住んでいる地区周辺はこの時期から夜に外出する人数が大幅に減少することとなった。


 そして、青年達3人のその後なのだが、調査をしていくうえで、だんだん精神状態がおかしくなり、重症化し、精神病院への入院が決定した。

 その後、3人がまっとうな人生を送ることは出来ないだろう。

 そして3人は毎日、ある言葉を言っていた。

 あの時、あの子供達を襲わなければ、あの小さな悪魔に逢う事は無かったのに。本当に、馬鹿な事をした。

 と。

 彼らはこれから、懺悔の毎日を送っていく事になる。


 そして7月は終わり、次は8月。

 より一層厳しくなる暑さが、早乙女優達を襲う。

次回予告

『会社員達の注意喚起生活』

 出勤した工藤直樹達は、早乙女優が未だ出勤していないことに気づく。何故出勤していないのか周囲の人達に聞いてみたところ、先日発生した事件のことを聞かされてしまう。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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