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小さな会社員達の屋台運営生活~2日目その4~

(さて、着きましたね。)

 私は周囲を見渡し、賑やかな雰囲気を肌で感じます。

(一昨年も屋台をだしましたが、この雰囲気、嫌いではないです。)

 この夏祭り会場全体に漂う食べ物の香り。屋台で売っている唐揚げ棒やフランクフルト、チョコバナナが食べたくなりますね。

 あ、いかめしも売っていますね。菊池先輩の為に買って帰ろうかな。

(他の屋台も去年より活気がありますね。)

 いえ、この商店街そのものに活気があるように感じます。もしかして、さきほど私達が勤めていた屋台の影響でしょうか?

(だとしたら嬉しいです。焼きそばを作った甲斐があった、というものです。)

 商店会長さんは忙しそうに働いていますね。手伝った方が・・・、

(いえ、やめておきましょう。)

 せっかく気を遣って休ませてもらったのです。ここは大人しく傍観し、どうしても助けが必要だと判断したら参入しましょう。

(花火はまだ、ですね。)

 私はふと、空を見ます。

 空はちょうちんの明かりの影響なのか、いつもより明るく見えます。こういう風景って、風情があっていいですね。季節を感じます。

(・・・今度、自分の部屋に飾ってみようかな。)

 流石に一年中ずっと飾る気はありませんが、夏の間だけでも飾るのもいいかもしれません。

(せっかくですし、花火が始まるまでどこかで時間でも潰しますか。)

 どこで時間を潰しましょう?

(ん?あの人達は・・・?)

 確か、桜井さん達、でしたね。どうしてこのような場所に?

(夏祭りを堪能する為、でしょうね。)

 普段していない金魚すくいや射的等が体験出来ますからね。それらで遊ぶためにきているのでしょう。

(楽しそう、ですね。)

 同学年の人達が、同じ話題で、同じ遊びで楽しむ。

 私が体験出来ないことですね。

 これまでも、そしてこれからも。

 なにせ私には、同学年の知り合いなんて出来ないと分かっていますから。

(学校での扱いは、会社での扱いと比較すると本当に酷いですからね。)

 本当、どうしてカンニング魔、なんて呼ばれ始めたのでしょう。

「はぁ。」

 おっと。思わずため息が出てしまいました。誰かに聞かれては・・・いなさそうですね。

(このおめでたい雰囲気にため息は似合わないでしょうからね。誰にも聞かれていなくてよかった。)

 さて、せっかくですし様子見がてら、夏祭りを独りで堪能しますか。菊地先輩へのお土産も忘れずに買っておかないと。

(ん?)

 桜井さん達を視界から外そうとした時、ふと、後ろの青年達が目に入った。桜井さん達の父親・・・にしては若過ぎますね。そうじゃないなら、ご兄弟とか、でしょうか?弟、妹達の様子が気になって後をつけてきた。そんなところでしょうか。

(愛されていますね。)

 桜井さん達の身の安全は確約されているでしょう。ちょっとストーカー気質な兄達かもしれませんが、菊地先輩に比べたら可愛いものです。

(本当に菊池先輩はどこから現れるか分かったものではありませんからね。)

 正直、私がどこにいても声一つで駆けつけてきそうですからね。私がトイレとか風呂場にいても・・・。

(ま、トイレや風呂場で私が菊地先輩に助けを求める場面なんてないでしょうけど。)

 ・・・くだらないことを考えてしまいました。先に進むとしますか。

「・・・それじゃあ、あのガキ共がここから離れたら、あの焼きそばを奪うぞ。」

 私が青年達とすれ違った瞬間、不吉な言葉が聞こえてきました。

(ガキ共?奪う?)

 この発言からして、どう考えても桜井さん達の身内でないことが理解出来ました。となると、さきほどすれ違った青年達は一体・・・?

(いえ、考えるまでもないですね。)

 おそらく、桜井さん達から焼きそばを奪おうとする悪人、ですね。

(ここはまず、商店会長さんに報告し、見回りを強化してもらい、焼きそば強奪を阻止してもらいましょう。)

 そう考え、足を動かそうとした時、商店会長さん達の笑顔が脳裏に浮かびました。

 今も、必死に頑張り、忙しそうにしながらも、この状況を楽しんでいる商店街のみなさん。

 その顔は、とても幸せそうで。充実した笑顔で満ち溢れていました。

 その顔を、私が曇らせてよろしいのでしょうか?今も楽しみ、充実している方々の笑顔を奪ってよろしいのでしょうか?

(私独りでこの状況をなんとか出来るのなら、私独りでなんとかするしかなさそうですね。)

 まずはあの青年達の後をつけるとしますか。

(確かこの先は、人通りがあまりなかったはず。)

 奪うとしたらこの先でしょうね。出来れば桜井さんに声をかけ、進路を変えたいところですが、下手に声をかけて感づかれると厄介です。相手が動くまで私は静観しましょう。

(準備だけは怠らないようにしませんと。)

 私は携帯で色々調べ物をしながら、その時を待つことにしました。


 少し時間が経ち、桜井さん達は人だかりの多い場所から次第に遠ざかり、だんだん人が少なくなっています。おそらく、桜井さん達は帰るのでしょう。


(いや、もしかしたら花火を見るために移動しているのかもしれませんね。)

 花火は夏祭りの目玉の一つですからね。

 さて、

(まだ、ついてきていますね。)

 私は桜井さん達だけでなく、今も後ろをついている青年達を目で捕捉します。

(準備の方は・・・ひとまず、最低限出来ていますね。)

 万全にするなら、他の方に連絡し、人手を増やすべきでしょう。ですが、まだ起きてもいない事案に対し、人手を割くわけにはいきません。

(かなり人通りが少ないですね。)

 いえ、ほぼない、と言い換えても問題ないくらいには、人通りが少ないですね。ここでなら、人が殺されてもすぐにばれることはないでしょうね。

(て、何を考えているのでしょう。)

 無意識で、桜井さん達が殺される可能性を考えてしまいました。このようなことを考えるくらいなら、商店会長さんではなくても、菊地先輩や工藤先輩に連絡を入れた方がよかったのではないでしょうか?

「ねぇ、そこの君達?」

 きた!

 私は聞き耳をたて、青年達と桜井さん達の会話に集中する。

「?もしかして、私達のことを言っているのかしら?」

 風間さんが青年達に質問していますね。

「ああ。君達で合っているよ。いかにも仲良しな君達に、ね。」

「それで、何の用だよ?」

 ここで太田君が青年達と風間さんの間に割って入り、青年達に質問していきます。

 太田君、年上の方に対して、臆せず質問するとは、なかなかの度胸ですね。

「ああ、なに。とっても簡単なお願いだよ。」

 そう言い、青年達は、桜井さん達が持っている袋を指差します。

「君達が持っているその焼きそば、僕達にくれないかなって。」

 青年達の言葉の意味を理解した桜井さん達は、自身が持っている袋を隠すようにします。

「・・・どうして俺達に言うんだ?他にも焼きそばを買った人ならそこら中にいるんじゃないか?」

「君達から優しい雰囲気を感じてね。もしかして君達なら、親切な君達なら、焼きそばを買えなくてひもじい思いをしている僕達のことを哀れに思って、焼きそばを恵んでくれるんじゃないかと思ってね。」

 優しい雰囲気を感じた?この青年達は何を言っているのでしょう?

 それに、ひもじい想いをしているのなら、まずはその体に付けているアクセサリー類を外してから言うべきではないでしょうか?

「・・・ごめんなさい。これは家族みんなで食べる分なので、分けられる分はありません。」

「私も。これは家族の分であって、ひもじい思いをしている人達に恵む用じゃないの。」

「ごめんなさい。私のこの焼きそばを楽しみにしている家族がいるの。本当にごめんなさい。」

「俺も同じだ。見ず知らずの人達にくれるほど、買い込むことが出来なかったんでね。」

 どうやら桜井さん達は、青年達に焼きそばを渡す気はないようです。

(自分の意志を、自分の言葉で伝えるのは大切なことです。ですが今は危ないか。)

 瞬間、青年達の雰囲気が変わりました。

 さきほどまでは、とても誠実で朗らかな雰囲気でした。

 それが今は、狂気を纏い、獲物を捕まえる狩猟者のような雰囲気です。

「たく。これだから近頃のガキは。」

「やっぱ、これで分からせるしかなさそうっすね。」

「そうみたいだな。」

 青年達は自らの拳をならしはじめる。

 桜井さん達はその行動、青年達の突然の変貌に驚き、後ろに下がり始めます。

「な、何する気だよ。」

 太田君は青年達に怯えながらも質問します。

「なにって、決まってんだろう?」

「俺達が今から、何をするかなんてな~?」

「というか、この状況である程度想像出来るだろう?こんな暗い夜道を通るなんて、本当、お前らって馬鹿だよな~。」

 そう言いながら青年達は笑いを声に出します。

(悪いことに、ここでなら多少音がしても周りに気づかれることはありません。)

 そのことも計算して、青年達は桜井さん達に脅しをかけているのでしょう。ここでなら、騒がれても助けがこないことを見越して。

 本当、やり方が汚いです。

「こ、ここで俺が大声を出したら、きっと誰かが来るぞ!?」

「くるわけねぇだろ。こんな誰もいない場所で。しかも周りは夏祭りで雑音が多く飛び交っている。だからお前程度の声なんて、誰にも届かねぇよ。」

(やはり考慮していたか。)

 さっきまでは私の推測のみで青年達のことを汚いと思っていましたが、どうやら確信犯だったようです。やはり目の前の青年達は汚いです。

「来るもん!」

「!?」

 この時、桜井さんが青年達に対して、大きな声で反論しました。

「早乙女君が、助けにきてくれるもん!」

「早乙女?誰だ、それ?」

「私達の友達で、すっごく頼りになるんだから!!」

「・・・。」

 桜井さん、私のことを信頼しているのですね。今なら、さきほどの桜井さんの言葉が心からの本音であることが伝わってきます。

(出来れば、私の名前を言わないでほしかったですが、まぁしかたがないでしょう。)

 今起きている非現実的な状況に色々戸惑っているのでしょう。私も同じ状況だったら、菊地先輩の名前を漏らしていたかもしれません。

「そんなよく分からないガキに頼るくらいだったら、俺達に恩を売っておいた方がいいぜ?」

「そうだよな。焼きそばをもらった暁には、いい気持ちにさせてやるからよ~。」

「へへ。俺、あの娘がいいな。抱くにはよ。」

「「「「!!!!????」」」」

 桜井さん達は、自らの身を案じる。太田君は、桜井さん達の身を守るように、片手で佐倉さん達と青年達を分断する。

「させねぇ・・・させねぇぞ!」

 太田君は青年達に一生懸命反抗していましたが、

「男のお前に用はねぇ。邪魔だ。失せろ。」

「ぐっ!?」

「太田君!!??」

 一人の青年によって太田君は殴られてしまいます。

(殴った。これは完全にアウトだ。)

 私はこれ以上見ていられないと思い、前に出ることにしました。

「たく。ガキ風情がいきるからそうなる。」

「女を守ったからっていい気になっているんじゃねぇぞ?」

「ま、お前の頑張りもこれから無駄になるんだがな。」

 そう言い、桜井さん達に近づいていく青年達と桜井さん達の間に、

「そこまでにしておかないと、立場がもっと悪くなりますよ?」

 私は割り込む。

「「「!!!???」」」

 私以外の者達全員驚いていました。無理もないでしょう。いきなり私が現れたのですから。

「早乙女君!」

「早乙女?このガキが、か?」

 青年達は私を見定めるように全身を見る。この視線、なんだか気持ち悪いですね。菊池先輩のあの視線の方が・・・いえ、どっちもどっちですかね。

「とりあえず、ここは退いてくれませんかね?」

「あ?どうして俺様がお前みたいなガキの言う事なんて聞かなくちゃいけねぇんだよ?」

「だよな?俺は絶対嫌だ。」

 私のお願いに、青年達は笑って拒否してきました。まぁ、桜井さん達から焼きそばを奪おうとした人達です。私のお願いなんて聞くわけありませんか。

「別に聞かなくて構いませんが、もうそろそろ来るんじゃないですかね?」

「何がだよ?」

「お前の親が、か?」

「パパ―、ママー、てか?うける♪」

「地方公務員の方です。それとも、国家公務員、と言った方が伝わりますか?」

 この言葉に、青年達は顔を青くする。

(このタイミングで国家公務員といえば、思い当たる職業は一つしか思いつかないでしょう)

 なにせ、私が言った地方公務員、国家公務員というのは、警察のことなのですから。そのことを悟った青年達が顔を青くするのは当然の反応でしょう。

(この場面、太田君を殴った事は一目瞭然ですからね。)

「まずいんじゃないのか?」

「ここはひとまず逃げるぞ。」

「おお。」

 青年達は私をひと睨みした後、急いで去っていきました。

「みなさんは大丈夫ですか?」

 正直、全員のメンタルは平気、ではないでしょう。

(体の方は・・・太田君以外、無事なようです。)

 一番心配するべきは太田君のようです。太田君はメンタルだけでなく肉体的にも傷を負いましたからね。

「わ、私は大丈夫。」

「わ、私もよ。」

「私も。それより太田君だよ!?」

 神田さんは誰よりも太田君を気にしていますね。よほど太田君のことが気になっているようです。

「いちち。あ~背中がいてぇ。」

「お怪我はありませんか?」

「あ?・・・早乙女か?もしかしなくてもお前が?」

「ええ。相手が私の言葉をすんなり信じてくれて助かりました。」

「やっぱり、さっきの言葉はブラフだったのね。」

「はい。」

「えと・・・どういうこと?」

 風間さんと私のやりとりに疑問を抱いた桜井さんは質問をしてきます。

「さっきの早乙女君の言葉は嘘。つまり、」

「警察は来ない、ということです。」

「早乙女君・・・。」

 桜井さんは私をじっと見る。

(?なんでしょう?)

 この視線、どうもあまり好きになれませんね。

「早乙女君、助けてくれてありがとう。」

 この桜井さんの言葉を皮切りに、

「本当にありがとう。私からもお礼を言わせてもらうわ。助かったわ。」

「本当に助かったよ、太田君も私達を庇ってくれてありがとう。かっこよかったよ。」

 神田さんの言葉の後に、桜井さんと風間さんも太田君に感謝の言葉を伝える。

「太田君は念のため、病院で診てもらってください。後、どのような怪我をしたのか一目で分かるよう、データとして残しておいてください。」

 あとはそうですね・・・。

「信頼出来る大人の方を呼んで、事情を話して送ってもらってください。復讐されるのが一番怖いですからね。それから、このことは出来るだけ口外しないようにお願いします。」

「それは別に構わないけど、いいの?」

「そうよ。みんなに伝えないとまた別の人に被害が・・・、」

「本音を言いますと、この件が原因で来年以降の夏祭りが中止、なんて事態になってほしくないんですよ。なので、来年以降も夏祭りが開催されるのであれば、誰に言っても構いません。それに・・・、」

「それに?」

 私は桜井さん達全員の目を見ます。

「・・・いえ、やめておきましょう。それより、今、ご両親等に連絡し、ここから自宅まで送ってくれる車で迎えてもらうことは可能ですか?」

「「「「・・・。」」」」

 全員、少し考えて、結論が出たようです。

「私は無理かな。」

「俺もだ。風間と桜井はどうだ?」

「私の両親、まだ仕事だったと思う。迎えは期待出来ないかな。」

「・・・私の両親なら、家にいるかも。」

「なら桜井さん、連絡の方お願いします。ご両親に説明、出来ますか?」

「えっと・・・。」

 出来ない、事は無さそうですが、時間がかかりそうです。

「であれば、これを読み上げて下さい。それだけで十分伝わるはずですから。」

 私はメモ紙を桜井さんに渡します。

「・・・早乙女君、あなたいつの間にこんなものを用意したの?」

「話している間に書いていましたが?」

 人と話をしながらメモを取る。社会人なら身につけるべき必須スキル、だと私は思っています。出来ないと、上司から仕事の内容や仕方をメモ出来ませんからね。一通り聞き終えてからメモをしても構いませんが、聞きながらの方が効率的だと個人的には思います。

 て、今はそんなことどうでもいいですね。

「それでは、大通り前で集合するよう連絡し、自宅まで送ってもらうようお願いします。大通りなら人通りが多いので、さきほどのような輩がいたら、すぐに周りの大人達が対応してくれますので。太田君、しっかり桜井さん達を守ってあげてくださいね?」

「お、おお。男の俺がしっかり守るさ!みんな、俺に続け!」

 よかった。

 歩けないほどの怪我をしていたなら別の手を考えるところでしたが、太田君は思った以上に元気で安心しました。

「それではみなさんはあちらから大通りに行ってください。私はここで失礼しますので。」

「待って?」

「?なんでしょうか?」

 いきなり風間さんが止めてきました。私に何か聞きたいことがあるのでしょうか?

(桜井さんは今、ご両親に連絡をとっているようですし、後は桜井さんのご両親に任せたいのですが。)

「早乙女君、あなたはどうしてここにいたの?単なる偶然?それとも、何か理由があったのかしら?」

「・・・確かに。私達は花火目当てでこの近道を通ったけど、早乙女君は花火を見るためにここを通った、じゃないよね?」

「そうなのか?じゃあどうしてこんな暗い道をわざわざ通るんだ?」

 この道を通る理由、ですか。

「私は偶然、さきほどの青年達の会話を偶然聞き、桜井さん達が狙われていることに気づき、ここまで後をつけてきました。ですが、本当なのかどうか分からなかったので傍観していましたが、太田君を殴った時点でクロだと断定し、口を挟ませてもらいました。」

 間違ってはいません。あの青年達が夏祭りを荒らしたら、大惨事になること間違いなしですからね。

 それに、あの青年達が口からでまかせを言い続けている可能性もありましたからね。先に手を出した場合、こちらが訴えられる可能性だってあります。本当、色々気をつけないといけないから困ったものです。

「・・・そう。私達を助けるために、ね。改めてお礼を言わせて、ありがとう。」

「ありがとう、早乙女君。」

「あんがとな、早乙女。」

 桜井さんは連絡をしている最中でしたので、私と話す事が出来ないようです。まぁさきほどお礼を言われたので、改めてお礼を言う必要はないと思います。

「それでは私はこれからやるべきことがありますので失礼します。夜道、お気をつけください。」

 私は桜井さん達に背を向け、歩き始めます。

「ありがとう!」

 桜井さんの声が後ろから聞こえてきました。

 私は後ろを振り返ります。

 すると、桜井さんが私を真っすぐ向いてこちらにお礼を言ってきました。電話で事情を伝えながら、こちらの会話も聞こえていたようです。

「帰り道、お気をつけください。」

 私はそう言い、桜井さん達を視界から外します。

(さて、行きますか。)

 さきほど、桜井さん達には出来るだけ口外しないでほしいと言い、その理由として翌年以降の夏祭り中止を避けたい、と言いましたが、他にも理由はあります。

 その理由というのは、

(太田君に手を出したということは、他の方にも手を出す可能性が十分にあります。なら、私のやるべきことはひとつ。)

 あの青年達を、太田君に手を出した青年達を、潰す。

(そもそも元凶を排除すれば、警戒する理由がなくなりますからね。元凶を排除すれば、桜井さん達は安心出来ますし、翌年も安心して夏祭りを行うことが出来ます。いいこと尽くしです。)

 そのためにも、私がきちんと後始末をしなければなりません。

 来年以降の脅威とならないよう、確実に。

 私は入念な準備と確認をしながら、青年達の後を追いました。

次回予告

『小さな会社員達の屋台運営生活~2日目その5~』

 早乙女優達と別れた後、桜井綾達は両親と合流する。合流後、自身の身に起きた出来事を話す。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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