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小さな会社員の夏祭屋台相談生活

 期末考査が終わり、数日が経過しました。テストの結果がかえってきて、

(まぁ、打倒ですかね。)

 テストの結果を見て納得し、すぐにしまいました。

 全教科の解答用紙に、「0点」という記載がしてあります。国語、数学、社会、理科、英語に関しては・・・まぁいいや。

(どうせ、カンニングして解答したから無効、とでもいうのでしょうね。)

 カンニングしていないのにまったく・・・。まぁ、別にいいです。言ったところで話なんて聞かないでしょうし、時間の無駄です。

(それにしても・・・、)

 この体育と音楽の問題、まったく分かりませんでした。スポーツや音楽に関してほとんど知識がありませんでしたね。このような機会でないと気付かないとは、私もまだまだ未熟です。

(ですが、今更サッカーや野球等のスポーツ、音楽の知識を身につけたところで無駄な気がします。)

 もしかしたら将来、スポーツや音楽を仕事として活用するかもしれませんが、今の私にはそのような予定はありません。楽器を弾く機会はありましたが、楽譜を読むことが出来なくてもピアノを弾くことが出来るので問題ありません。スポーツは・・・やった記憶はないですね。なので、スポーツや音楽に関する知識が一切なくても問題ありません。なので、このテストで0点をとっていたとしても気にしないでおきましょう。

(さて、今日も仕事を頑張りますか。)

 解答用紙をしまい、仕事をするため、出勤することにしました。


 午前分の仕事が終わり、昼休みに差しかかった頃、ある電話が私の元にきました。

「もしもし?」

 電話の相手は、私が住んでいるこの町にある商店街の商店会長でした。

「・・・分かりました。では今夜に話をお伺いさせていただきます。はい、こちらこそよろしくお願いいたします。それでは。」

 どうやら今晩、今年の夏祭りの件で話があるみたいです。確かに夏祭りは今月末ですからね。詳細な打ち合わせが必要なのでしょう。

「優君、話は聞いたわ!」

「・・・ちなみに、あえて聞きますが、何の話を聞いたのですか?」

 ある程度予想は出来るのですが、それでも菊池先輩から直接聞きたいです。

「さっきの話よ!今夜、あのおじさん共と夏祭りの屋台の事で話をするのでしょう?私も付いて行くわ!」

 ・・・やはり、さきほど私が電話していた件でしたか。どうして私の電話を盗み聞きしていたのか、その件について問いただしたいところですが、どうせ無駄ですので諦めましょう。

「ちなみに、優君がどんなに嫌がっても無理矢理ついて行くつもりだから♪」

 と、ウィンクしながら言ってきました。

 ・・・つっこんだら負けです。つっこんだら負け・・・。

「菊地先輩の言葉の有無関係なしに、菊地先輩と工藤先輩に同行をお願いするつもりでした。一昨年の失敗もあったことですから。」

 確か一昨年、一人で屋台を切り盛りするつもりでしたが、想定していた以上に来客人数が伸び、菊地先輩と工藤先輩に手伝ってもらいましたね。その経緯がありますので、今年は菊池先輩と工藤先輩に最初から手伝ってもらう予定です。もちろん、二人がよければ、なのですが。

「そう。なら私一人で十分よ。あんな変態、連れていくまでもないわ。」

「優の頼みなら、断るわけにはいかないな。」

 どうやら私と菊池先輩の会話を工藤先輩に聞かれていたらしい。

(さきほどから、私の思考やら会話やら、色々筒抜けになっていませんか?)

 風通しがいいといえば聞こえはいいのですが、風通しが良過ぎるのも問題かもしれません。・・・まぁ、工藤先輩に一から話す手間が省けてよかったと前向きに考えますか。

「いいのですか?」

「ああ。だが、俺に料理の腕なんて期待するなよ?俺に料理をさせたら、核以上にやばい暗黒物質を作っちまうからな。」

「・・・普通の食材で核以上の危険物質を作れるのは確かにやばいわね。」

「もちろん、工藤先輩に出来る事をお願いするつもりですのでご安心ください。あらためまして菊池先輩、工藤先輩、今夜、私と同行してくれませんか?」

 私は再度、菊地先輩と工藤先輩に言葉でお願いしました。

「ええ、もちろん!」

「任せておけ。」

 二人の返事を聞いた私は、

「ありがとうございます。」

 感謝の言葉を返しました。


 仕事を終え、私、菊地先輩、工藤先輩は商店街の人達がよく使っている待合所に向かいました。その中に入ると、この商店街の商店会長が待っていました。

「いらっしゃい。待っていたよ、早乙女君。今日はありがとう。」

「いえいえ。こちらこそ今日はよろしくお願いします。」

 そして、商店会長さんと私の話し合いが始まりました。

 最初は、商店会長さんの報告を受けました。

 まず、既に材料をある程度確保出来たとの事。材料は、一昨年の屋台のメニューや、一昨年頼んだ食材と同じ食材を確保したとの事。それで問題ないか聞いてきたので、私は問題ないことを伝えました。

「それで、新メニュー等はありますか?あるなら、新規で必要な食材を確保する必要があるのですが・・・、」

「あるにはあります。ですが、新メニューに必要な食材に関して、一昨年頼んだ食材とは別に、新規で用意してもらいたい食材があります。」

「もちろん用意させてもらう・・・と、言いたいところだが、流石に食材次第かな。高級食材とか貴重な食材だったら、ちょっと仕入れ先を探すところから始めないとだからね。」

「それなら大丈夫です。新規で必要な食材というのは、この商店街で販売されていましたので、追加発注していただければ、と思います。そして、私が新規で必要だと思った食材の一覧がこちらです。」

 私は事前に書き記しておいた食材の一覧を、商店会長さんに手渡す。

「ありがとう。拝見させてもらうよ。・・・なるほど、確かにこれなら、全部商店街で取り扱っているから、追加発注してもらうよう頼めば十分だね。」

「よろしくお願いします。」

 私は商店会長さんに頭を下げます。

「いやいや。頼んでいるのはこちら側なのだから、早乙女君が頭を下げる必要なんてないよ。むしろ、私達が頭を下げる側だよ。」

「!?だからといって頭を下げないでください!?頭をお上げください!」

 商店会長さんが頭を下げ始めたので、私は頭を上げるよう伝える。

「いやいや!?こちらこそとても感謝しているのですよ!何せ一昨年は、早乙女君があの店を切り盛りしてくれたおかげで、一昨年は今まで類を見ないほど多くの来場者がいらっしゃったわけですからね。それもみんな、早乙女君が作ってくれたあの絶品の焼きそばあってこそ!」

「・・・そのことに関して、一つお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「・・・何でしょう?」

 私が声色を変えたことで何か察したのか、商店会長さんの声色も変わる。

「一昨年、私は独りで店を切り盛りしようとしたのですが、私の想定以上にお客様がいらっしゃり、結果としては独りで捌ききれず、ここにいる工藤先輩、菊地先輩の力を借りてなんとか切り盛りすることが出来ました。なので今年は最初から、工藤先輩と菊池先輩の力を借りようと思っているのですが、よろしいでしょうか?」

「?もちろん構いませんよ?」

「ありがとうございます。工藤先輩も菊池先輩も構いませんか?」

 私は確認の為、工藤先輩と菊池先輩に確認する。

「もちろん!」

「死んでもやるわ!」

 ・・・菊池先輩、死んでもやるなんて言わないでくださいよ。物騒じゃないですか。

「・・・あの、三人で足ります?」

「?足りると思うのですが、どうかされたのですか?」

 私の見立てでは、私、工藤先輩、菊地先輩の三人ならなんとか捌けると思っているのですが、商店会長さんは何を考えて質問したのでしょう?

「いえ、今年の来場者数なのですが、あくまで推測なので絶対とは言い切れませんが、一昨年の何倍もの方が来場すると見込んでいますので、一昨年と同じ三人で捌くことが出来るのかと、ふと思ってしまいましてね。よければ人材をお貸ししましょうか?」

「そうですね・・・、」

 もし商店会長さんの言葉を信じるとしたら、確かに三人だとかなりきついかもしれません。私とまったく同じ味を再現出来るのは今のところ菊地先輩しかいませんから、私と菊池先輩は調理と店頭、工藤先輩は裏方と店頭をそれぞれ兼任する予定です。出来れば私と菊池先輩は調理に集中したいところなのですが、それだと工藤先輩の負担が大き過ぎてしまうので、結果として私達三人で店頭を兼任する形にしたんでしたね。

(それだけじゃありませんね。)

 もし店の前に行列が出来る場合、その行列を整理してもらうための店員を確保する必要があります。欲をいえば、店頭を担当してもらう店員も欲しいところです。

「去年と同じであれば三人でも問題ないと思ったのですが、去年以上であれば、最低でも一人、欲を言えば二人ほど追加の人員が必要になるかもしれません。」

「いえ、四人、かしらね」

 私が二人と言ったことに対し、菊地先輩が口を挟んできました。

「?どうして四人なのですか?」

「店舗を一昨年より拡大させて、店頭に二人、店舗前の列を整理するのに一人、裏方に一人、調理に一人、というところかしらね。」

「店舗を拡大、ですか?」

 どうして店舗を拡大することが前提みたいな話しぶりなのでしょうか。そんな話、一度もしていなかったと思うのですが?

「・・・確かに店舗を拡大すれば、一昨年より多くのお客様の対応が可能になりますし、一昨年以上にお客様が来るから・・・分かりました。店舗拡大の件、前向きに検討させていただきます。」

 あれ?店員の補充人数について話し合っていたはずが、いつの間にか店舗拡大の話になっていませんか?おかしくありません?

「工藤先輩、なんか話の流れ、おかしくないですか?」

 私は確認の為、工藤先輩の意見を聞きます。

「・・・まぁおかしいと言えばおかしいが、今更じゃないか?」

「今更、ですか?」

 どういう意味でしょう?

「あいつはいつも突拍子もないことを言ってからな。」

「それもそうですね。」

 確かに工藤先輩の言う通りです。菊池先輩はいつもおかしなことを言っていますからね。今更気にしたところで無駄、ということなのでしょう。

「・・・二人とも、私の扱いひどくない?」

 菊地先輩、それは普段の行いのせいだと思います。

「それで、どう?」

「いいと思います。私は菊池先輩の言葉を信じます。」

 菊池先輩は突拍子もないことを言いますが、菊地先輩の人を見る目は確かですからね。

「分かったわ。それで優君、今夜は私とワンナイトラブでイチャイチャと肉体関係を築かない?今夜は激しいわよ♪」

 ・・・こういうおふざけがあるから、素直に褒める気になれないのですが。

「・・・それじゃあ商店会長さん、人員の件は忙しくなり次第連絡を入れますので、その時はよろしくお願いします。」

「・・・え?・・・あ、はい。」

 商店会長さんは何度も菊地先輩と私を何度も見てきます。言いたいことは分かりますが、ここはスルーさせていただきます。

「店舗の件は追って連絡を入れさせていただきますね。」

「分かりました。それじゃあ今年の屋台の件、どうかよろしくお願いします。」

 商店館長さんは改めて頭を下げてきました。

 もう。わざわざ私に頭なんて下げなくていいのに。

(もしかしたら、商店会長さんなりのけじめ、なのかもしれません。)

 人にものを頼むので、最低限の礼儀、節度をわきまえての行動、という可能性もあるので、むげにその行動を否定するのはかえって失礼にあたるかもしれません。ならここは、その行動を肯定するような声をかけませんと。

「はい、任されました。それでは今日はこれで失礼しますね。」

 私は商店会長さんにお辞儀をし、退席しようと行動し始めます。

「ええ。当日はよろしくお願いします。」

「はい。」

「優の事は、俺達がしっかり見ていくから心配しないでくれ。」

「そうね。優君が来場する人達に欲情しないよう、しっかり性欲を発散させておかないとね。そのためにも優君、私で性欲を発散させてね♪」

 菊池先輩の言葉は無視しましょう、無視。

 さて、屋台が上手くいくといいのですが、大丈夫でしょうか?

(・・・いえ、今から弱気になっては駄目ですね。)

 絶対成功させてみせます!そんな覚悟を胸に秘め、私は社員寮に戻りました。

次回予告

『会社員達の考査結果確認生活』

 期末考査、終業式が終わり、早乙女優含む中学生達に夏季休暇が訪れる。

 だが、早乙女優に休むつもりはなく、屋台に出す焼きそばの研究をしていた。

 そんな時、菊池美奈は早乙女優に期末考査の結果を聞く。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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