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新中学生達から小さな会社員への期末考査対策生活

 数日経過した金曜日。

「それでは菊地先輩に工藤先輩、今日はよろしくお願いします。」

「おう。」

「あ~あ。今日は優君、会社に来ないのか~。もう今日は休もうかしら。優君会社に来ないし。」

「何ふざけたことを言ってやがる。お前は出勤するんだよ!」

「えぇ~~~。」

「それじゃあ優、今日は頑張れよ。」

「はい。」

「あ~ん!優君が遠くに行っちゃう~~~!」

 はぁ。菊池先輩はほんと、成長しませんね。相変わらずの我が儘です。

(て、それは私も変わりませんか。)

 今日は私の我が儘で会社を有休で休ませてもらいましたからね。急遽有休を使わせてくださいと課長にお願いしたところ、快く了承してくださり、本当、課長には感謝です。

「さて、私も出かけますか。」

 朝食は菊池先輩方と共に済ませましたし。後は持っていく物に抜けがないか確認してから社員寮を出るとしますか。

 社員寮を出て少し歩き、学校付近に来ました。その場には、既に何度か見た人達がいます。あの服装は制服ではなさそうです。まぁ、今日は私の我が儘で学校を休んでもらいましたからね。制服で来る必要はないので私服で来た。そんなところでしょう。

「・・・お?あれ、早乙女じゃね?」

「・・・本当だ。」

「確かに。あの小ささは早乙女君しかいないわね。」

「早乙女く~ん!今日はよろしくね~。」

 太田君、神田さん、風間さん、桜井さんが私の存在に気付き、私の元へ向かって歩き始めてきました。・・・それにしても、私の身長の事に触れた方が一人いたような・・・?いえ、気のせいでしょう。きっと、騒音か何かと聞き間違えたのでしょうね。

「みなさん、既にお揃いのようですし、出発しますか。」

「うん!て、どこに行くの?」

「もしかしてあそこか?」

「ええ。」

 桜井さんが質問してきたなか、太田君があそこと言ってきたので肯定しました。きっと太田君は、あの場所を覚えているのでしょうね。

「・・・あそこってどこ?」

「あそこは・・・まぁ行ってみればわかるさ。なぁ、早乙女?」

「え、えぇ。」

 確かに太田君の言う通り、行けば分かるのですが、急に話を振らないで欲しいです。ちょっと驚いてしまったじゃないですか。

「それではみなさん、行きますよ。」

「「「「はい。」」」」

 少し歩き、見慣れた建物が見えてきました。

「お。ここだここだ。」

「へぇー。ここの中に入っていくのね。」

「・・・以前、太田君と早乙女君はこの建物の中で二人っきりになったんだね。」

「・・・綾、その言い方だと何か誤解を生みそうだからやめた方がいいわよ。」

「?分かったよ、洋子。」

 私は受付を済ませ、無事に二部屋を借りる事が出来ました。

(やはり、事前に予約しておいて正解でしたね。)

 ネットで予約しておいたおかげで、受付がスムーズです。

「さて、受付も済ませたことですし、移動しますよ。」

「「「はい。」」」

 建物の中を移動し、部屋に到着しました。部屋の扉を開けると、複数の椅子と机があります。

(・・・とりあえずここに荷物を置きますか。)

「みなさんも、適当な席に荷物を置いてください。」

 私の言葉で、みなさんは持っていた荷物を椅子の上に置き始めました。まぁ、椅子は人数以上にありますからね。椅子の上に荷物を置いても座る分の椅子は確保出来るでしょう。

「それではみなさん、ここで勉強に必要な筆記用具類を出して、勉強を始めて下さい。」

 私はそう言ったのですが、

「「「「・・・。」」」」

 何故か勉強を始めませんでした。ひとまず私は、桜井さん達の勉強に必要な書類一式を鞄から取り出します。

「・・・あの。」

「ん?どうかしましたか?」

 さきほどから何か私に聞きたそうにしていますね。もしかして、勉強をしないのは、私に何か聞きたいことがあるからでしょうか?

「私達、何の勉強をすればいいかな?」

「何の勉強・・・なるほど。」

 そういえば、具体的にどのような勉強をして欲しいのか伝えていませんでしたね。

「すみません。私の配慮不足でした。今は勉強せず、くつろいでください。こちらの用意が終わり次第、声をかけさせていただきます。」

 私のこの言葉に首を振り、なにやら世間話を始めました。まぁ、くつろいでくださいって言ったのは私ですし、このまま準備を始めるとしましょう。

 私はプリントを4人の前に出して、社員寮から持ってきたノートパソコンの電源を入れます。

(確か、このUSBでしたね。)

 私はノートパソコンにさきほど取り出したUSBを差します。

(・・・どうやらこのUSBで合っているようです。)

 更にUSBの中に入っているデータを複数開きます。

「さてみなさん、準備出来ました。」

 私のこの一言で、みなさんの視線が私に向かれます。

「まず、みなさんの前に置いてある紙を見て下さい。」

 私のこの一言で、みなさんはそれぞれ目の前にある紙を手に取ります。

「なにこれ?」

「何かのグラフ、かしらね。」

「でもこのグラフ、国語とか数学とか書かれているね。」

「早乙女。これってもしかして・・・?」

「ええ。みなさんから貸してもらったプリントを元に作らせていただいた円グラフです。そのグラフを見れば、得意科目と不得意科目が一目で分かるようになっているはずです。」

「「「「おぉー。」」」」

 自分のグラフを一通り見た後、

「ねぇねぇ。洋子のグラフはどうなっているの?」

「私はね、結構社会が出来ているみたい。それに比べて、理科はちょっと出来ていないわね・・・。」

「へぇ。私とは逆なんだね。私、理科は出来るけど社会は出来ないの。」

「太田君はどうなの?やっぱり、前回トップだったエリート様は、どの科目もまんべんなく出来るのかしら?」

「あっはっは。そんなわけないだろ。俺、英語苦手だし。そもそも俺ら日本人なのに英語なんて勉強しなくちゃいけないんだよ。」

「いいなぁ。私、英語は出来るのに国語が出来ないの。」

「・・・それ、英語が出来ない俺への当てつけか?」

 なんか、それぞれ話が盛り上がっていますね。本当は、一人一人別室に呼んでその人の得意不得意、そしてこれからやる科目や問題について説明しようと思っていたのですが、その考えは捨てた方がよろしいでしょう。

「みなさん、各個人の能力を理解出来たかと思います。それでは次にこれをどうぞ。」

 私はさらに鞄から資料を取り出し、それぞれの人の前に置きます。

「「「何これ???」」」

「あ~・・・。もしかして早乙女、また作ってくれたのか?よくもまぁここまで出来るものだな。」

 そして、以前にも似たようなことを経験してた太田君のみ、若干呆れているような感情が見えます。私の気のせいかもしれませんが。

「・・・これってもしかして、問題集?」

「・・・今見てみたけど、この問題、私の苦手な理科の問題が結構多いわね。綾はどう?」

「私は・・・多分、社会の問題が多そうだよ。あれ?洋子とは中身が違う?」

「私は・・・国語の問題が多そう・・・もしかしてこれ、人によって中身が違うの?」

「ああ。おそらく早乙女は、人によって問題の構成を変えているんだ。そうだろう?」

「ええ。」

 私は太田君の言葉を肯定します。

(人には向き不向きがありますからね。)

 さきほど4人に渡した問題集は、それぞれ問題の構成が若干異なっております。

 基本的な問題は一通り入れておきました。ですが、得意科目の場合は、問題の難易度を高めに設定し、逆に不得意科目の場合は、問題の難易度を低めに設定しています。

 社会が得意で理科が不得意な桜井さんを例にしますと、社会の問題の難易度を高めに設定し、理科の問題の難易度を低めに設定してあります。

 そのような感じで、4人の問題の難易度を設定し、設定した問題の難易度に応じて問題を作成しました。

「よくもまぁここまで手のこんだものを作ったものね。」

「すごい・・・すごいよ、早乙女君!」

「本当、早乙女君ってすごいね。私じゃあとても真似出来ないわ。」

 そう、なのでしょうか?私としては、自身が出せる力を発揮しただけで凄いなんて言われてしまうとちょっと照れてしまいます・・・。

「その中に掲載している問題を一通り自力で解けるようになれば高得点は確実だと思います。出来るだけ具体的な数値で例えるなら・・・8割は確実にいけると思います。」

 もしかしたら私の読みが外れる、なんてことはありますからね。そのことも考慮するとなると7割くらいが妥当なのではないでしょうか。何がどう妥当なのかは分かりません。なにせ、私の第六感、勘を元に推測しただけですから。

「・・・相変わらずというかなんというか・・・凄い、わね。」

「とにかく、早乙女君に勉強を教われば問題ないってことが分かったよ。」

「早乙女君って、本当に何でも出来るのね・・・。」

「だよな。しかも、俺達に合わせた問題集も自作とか。絶対俺には出来ないわ。」

 その後雑談しながら桜井さん達は、私が渡した問題集に目を通し始め、勉強を始めました。

 え?私はどうしていたのかって?もちろん、勉強はしていません。

「・・・それで菊池先輩、私に何か出来る事はありませんか?・・・そうですか。何もない、ですか。わざわざ私の電話に応対していただきありがとうございました。それでは失礼します。お仕事、頑張ってください。」

 私は桜井さん達とあらかじめとっておいた別部屋に移動し、菊地先輩に電話をしました。電話の内容は、今の私に何か出来る仕事はないか、そのことを電話で聞いていました。そしたら、

「優君・・・。今日は優君、有給で休んでいるのだから、今日くらいは仕事の事を考えなくていいのよ?」

 そのような事を言った後、菊地先輩は電話を切りました。

(・・・ありがとうございます、菊地先輩。)

 きっと、菊地先輩なりに気を遣ってくれたのでしょう。そんな気、遣わなくてもよかったのに・・・。

(それでは菊地先輩の気遣いを無駄にしない為にも、今の私に出来る事をするとしますか。)

 今の私が出来る事は・・・。

「おーい。早乙女、今ちょっといいかー?」

 扉の外から、扉を叩く音と私を呼ぶ声が聞こえました。

(きっと、太田君達に勉強を教える事でしょう。)

 そうであれば、教えにいくとしますか。

「何でしょう?」

「ちょっと分からないことがあってよ。神田達にも聞いたんだが、全員分からないらしいんだ。」

「事情は分かりました。すぐに伺わせてもらいますね。」

 私はノートパソコンを閉じ、扉を開けて桜井さん達が勉強している部屋に向かいます。

「あ、早乙女君!」

「ちょうどよかったわ。私、ここの問題の解き方がわからないのだけど、教えてくれるかしら?」

「太田君、早乙女君を呼んできてくれてありがとう。早乙女君、私にも分からない問題があるのだけど、教えてもらっていいかな?」

「もちろん、俺にも教えてくれるよな?」

(さて、頑張るとしますか。)

 私は呼吸し、自身の精神をより安定させます。

「もちろんです。ですが、流石に全員同時に説明は出来ませんので、一人ずつでお願いします。」

 その後、私は全員の勉強を見ていきました。

「ありがとう。」

 その後、全員から感謝の言葉を言ってくれました。やはり、感謝の言葉を聞いて悪い気にはなりませんね。

 そして、私以外の全員が勉強に集中していました。

(・・・なるほど。)

 私は、桜井さん達の勉強の進捗具合メモし、どれほど学力が伸びているのか推測していました。そして、今も伸びている桜井さん達にピッタリな問題を作成していきました。

(ひとまず、この時間でこれほど伸びたのであれば、この難易度の問題も難なく解けるでしょう。後、もう少しだけひねった問題をだしてもよさそうなので、この問題も追加で作成しますか。)

 私は、桜井さん達と同じ部屋にいながら、ノートパソコンで追加の問題を作成していました。

(もしかしたら、2部屋もとる必要はなかったかもしれませんね。)

 ですが、既にとってしまった以上、出来るだけ有効活用したいところです。

「は~ら~へ~った~~~。」

 そんな声が聞こえてきました。その声を合図とし、4人はシャーペンを置き始めました。

(そういえば、そろそろお昼時ですね。)

 太田君の声を聞いていなければ気づけませんでした。どうやら私はいつの間にか時間を気にせず作業していたらしいです。

(出来れば昼前に準備を始めて、昼あたりに昼食を出せるようにしたかったのですが、上手くいきませんでした。)

 私の計画が台無しです。

「お昼の用意をこれからしようと思いますが、何かご要望はありますか?」

 桜井さん達の食べたい物を無言で用意出来ればよかったのですが、私にはそのようなことは出来ません。なので、直接聞いて確かめるとしましょう。

「私は、早乙女君の料理が食べられればそれで・・・。」

「う~ん・・・。特にこれといって食べたい物はないかなぁ。」

「早乙女君の料理かぁ。確かに食べてみたいかも。」

「せっかくだし、ハンバーガー食いてぇ!」

 ・・・なるほど。風間さんは特に意見はなく、桜井さんと神田さんは、私の料理が食べたい。太田君は、ハンバーガーが食べたい。これらの意見をまとめると、

「私が作ったハンバーガーを食べたい、という認識でよろしいですか?」

 私のまとめた考えでよろしいかみなさんに聞きます。

「うん!それでお願い!」

「私も異論はないわ。」

「ハンバーガーかぁ。久々に食べるかも。」

「よっし!」

 太田君の喜び方が顕著ですね。

(となれば・・・、)

 ハンバーガーに必要な材料は・・・大丈夫ですね。

「ではこれから昼食をご用意しますので、少々お待ちください。」

 私はこれからどんなハンバーガーを作ろうか考えながら部屋を出ました。


 一方、

「早乙女君、一体どんなハンバーガーを作ってきてくれるのかな?」

「かなり、楽しみよね。」

「それに、学校をさぼ・・・休んでのご飯。なんだか特別な感じがするわね。」

「あー。早くハンバーガーが食いてぇなぁ。」

 4人は、早乙女優が作るハンバーガーを楽しみにしていた。

「・・・よし。」

 社員寮でハンバーガーを作り終えた私は、桜井さん達がいる部屋まで戻りました。

「お待たせしました。」

 私が扉を開けて声をかけると、4人全員こちらを見てきました。

「「「「美味しい!!!!」」」」

 そして昼食の時間をとりました。最初、私の作ったご飯がみなさんの口に合うのか少し不安でしたが、そんな不安は杞憂に終わりました。みなさん、とても美味しそうに食べてくれていました。

「それにしても、まさかライスバーガーを作ってくれるなんて・・・、」

「ねぇ。ライスバーガー、久々に食べたわ。また食べたいわね。」

「・・・もう一つ食べたいけど、流石にないかぁ。残念。」

「美味ぇ。俺、こんな美味いハンバーガー食べたの生まれて初めてかもしんねぇ。」

 私のライスバーガーは思ったより好評でなによりでした。一応、ライスバーガーだけでなく、普通のパンで挟んだハンバーガーも作って持ってきていたので、それも食べるのか聞いてみたところ、

「「「「食べる!!!!」」」」

 みんな、勢いよく返事してくれました。その後、みんな揃って2個目のハンバーガーを完食しました。

(完食出来たのは、2個目のハンバーガーを小さめに作ったから、ですかね。)

 もしかしたら、4人ともとてもお腹が空いていて、ハンバーガー2つくらい余裕で入った、なんて可能性も考えられますね。まぁ真実は分かりませんが。

 ハンバーガーを2つ完食した4人は、食休みと称した雑談が十数分行われた。

 その雑談の内容は、今回の期末にどのような問題が出るのか。

 期末を終えた後の夏休みはどう過ごしていくか。

「さ、早乙女君は夏休み、どう過ごす予定なの!?」

 私がノートパソコンで文書を作成していると、桜井さんが声をかけてきました。別に休憩中なので雑談していても何も問題ないのですが、どうして私に話題をふったのでしょう?

 ・・・駄目です。考えても桜井さんの思惑が分かりそうにありません。ひとまず正直に答えるとしますか。

(夏休みの予定、ですか・・・。)

 今のところ、予定なんてほとんど・・・、

(あ。)

 そういえば予定、ありましたね。確か、潮田さんから番組の出演をお願いされていましたね。後、屋台にも出なくてはならなかったですね。私にも現段階で決まっている予定がありましたね。そのことを正直に・・・伝えたらまずいですね。

(正直に伝えたら、私が女装している変態だと思われてしまいます。)

 そんな誤解を生ませたくないので、ふんわりと伝えておきますか。

「人と会う、約束をしています。」

 これなら問題ないでしょう。

「へぇ。どんな人と会う予定なの?」

(どんな人、ですか・・・。)

 正直に、潮田さんと会います、なんて言ったら問題になるでしょう。ならなんて言えば・・・、

「・・・知り合い、です。」

 まぁ、間違ってはいない、はずです。変なことも言っていないはず、です。自信、ないですけど。

「へぇ。それって女の子?」

 ん?私の知り合いが女性だと何か問題があるのでしょうか?

(確か・・・、)

 潮田さんと会う際、女性だけでなく男性もいたはず。なら、男性と公言しても問題ないでしょう。

「いえ、男性です。」

 私がそう言うと、

「そ、そうなんだ。よかった~。」

 何故か桜井さんは安心しているような表情を見せました。一体どうして?

「よかったわね、綾。」

「うん!」

 何故か桜井さんは風間さんに励まされています。

「「・・・。」」

(この視線は一体・・・?)

 何故かは知りませんが、神田さんと太田君から生温かい視線を感じるような・・・?まぁ気のせいでしょう。

「さて、そろそろお昼の休憩を終わりにして、勉強を再開しましょう。」

「「「「はい!!!!」」」」

 私のこの一言で、4人は、勉強を再開しました。

(興味本位に聞いていいのなら、何故先ほど安堵したのか桜井さんに聞きたいところですが、辞めておきましょう。)

 勉強の妨げになりますからね。私の好奇心一つで勉強を妨害なんて真似出来ません。


 4人が勉強を始めて数時間。

「ねぇ、早乙女君?この問題が分かんないんだけど、解き方、教えてもらってもいい?」

「早乙女君?この問題の解き方なんだけど、これでいいのかしら?」

「早乙女君、この日本語、問題ない?私、おかしくない?」

「早乙女―。これ、全く分からんから一から教えてくれー。」

 桜井さん、風間さん、神田さん、太田君に勉強を何度も何度も教え、更に学力を伸ばしていきました。みなさん、この一日で学力が大幅に向上していますね。この調子なら期末考査も無事に乗り越えられるでしょう。

「・・・そういえば早乙女君は私達の勉強ばかり見てくれているけど、早乙女君は大丈夫なの?」

 桜井さんはそんなことを聞いてきました。なので私は正直に答えます。

「はい。さきほどみなさんに教えた知識、解法は全て記憶していますので。」

 すると、

「すごい!流石早乙女君!」

「・・・本当、早乙女君って何でも出来るのね・・・。」

「そんなに頭がいいなんて羨ましい・・・。」

 桜井さん、風間さん、神田さんから羨望の眼差しを向けられている気がします。きっと、私の自意識過剰ですね。私はみなさんに羨ましがられるほど出来た人間ではないですからね。

「・・・なぁ。一つ、聞いてもいいか?」

「何でしょうか?」

 太田君はどうやら何か質問したいようです。一体何を質問するのでしょう?

「早乙女、どうしてお前はそんなに勉強が出来るんだ?俺、お前が勉強しているところなんて一回も見たことないぞ?一体いつ勉強しているんだ?」

「確かに。」

「早乙女君が勉強しているところ、一回も見たことないわね。」

「太田君、ナイス!」

 太田君の質問に、女性達はそれぞれの反応を示しました。

(いつ勉強している、ですか・・・。)

 私は、太田君の質問に答えられるよう、頭の中でしっかり考えをまとめていきます。

「今私がみなさんに教えている事はいずれも、数年前に私が勉強したことです。なので、今しっかり勉強しなくても、軽く見る程度でも出来ます。なので、私のことは心配しなくても大丈夫です。」

 私がこう言うと、何故かみなさん、とても驚いていました。

「中学の勉強を、小学生でやっていたの・・・?」

「そういえば早乙女君、小学生の時、ほとんど学校に来ていなかったわよね。その時に勉強したってこと?」

「それじゃあ、学校を休んでいたのは、勉強をするためってこと?」

 最後の神田さんの推測に、また全員の視線が私に集中します。まるで、

“どうなの?本当に小学校を休んで勉強をしていたの?”

 とでも聞きたそうです。別に答えを濁してもよいですが、ここは正直に・・・、

(いえ、全て正直に話すのは辞めましょう。)

 正直に全て話すとなれば、私の過去も話す必要が出ると思います。私の過去は聞いていて気分を害するだけだと思いますので、少しだけ、少しだけ正直に話すとしますか。

(私が、学校に行かず、会社で仕事をしていた理由・・・。)

 そんなの、決まっています。

「いいえ。私がお世話になっている方々に恩を返す為に、今まで学校を休んでいます。」

 ちなみに、過去形でなく現在進行形で言ったのは、今もほとんど学校に行かず、会社で仕事をしているからです。学校に行き始めたと言っても、ほとんど学校に行けていないのが現状です。

「ふーん。」

 太田君は私の言葉に納得しているような納得していないような、よく分からない返事をしてきました。

「凄いね、早乙女君。」

「流石と言うかなんというか・・・。」

「恩を返す、か。私、そんなこと一度も考えたことなかったわ。」

「はいはい。それでは勉強を再開してくださいね。」

 まだ勉強する時間が残っていますからね。勉強出来る時に勉強しておきませんと。

「「「「はい。」」」」

 この返事を機に、4人は勉強に集中し始めました。

(さて、私も調べ物をしていきますか。)

 今回の期末テストの傾向を調べ直しておきましょう。後、4人の理解度、勉強の進捗状況から、今日からテスト当日までに解けるようになってほしい問題を考えるとしましょう。

 勉強を再開してから数時間。

 私は4人に問題の解法を教えつつ、最適な問題を考え、解いた問題の答え合わせをし、間違い個所、合っている個所について説明していたら過ぎていきました。

「・・・みなさん、キリがよさそうですので、ここでお開きにしましょうか?」

 私のこの言葉を聞いた4人はすぐシャーペンを手から解放し、

「「「「さ、さんせ~・・・。」」」」

 とても疲れた、という雰囲気を出しました。確かに、長い時間勉強に集中していましたからね。疲労が蓄積していたのでしょう。

(こういう時は甘いものですね。)

 甘いものを食べれば多少疲労は回復するので、何か甘いものを買ってきますか。

(この近くに甘いものを売っているお店は・・・ここですかね。)

 どうやらここの近くに美味しいアイスを売っているお店があるようです。私の好きなアイスのお店ではなさそうですが、それでも美味しいアイスを売っていそうです。サイトに載っているアイスの写真、美味しそうです。

(・・・別に、ただ私がこの店のアイスを食べたいから、というわけではないですからね。)

 て、私は誰に言い訳をしているのでしょうか。おかしいですね。

「ではみなさん、少々休憩していてください。」

 このまますぐ退室、というわけにはいきませんからね。

「つ、疲れた・・・。」

「そうね。私もすぐに動きたくないわ。」

「このまま一生ここにいたいわ・・・。」

「いや、それは言い過ぎだろ。」

 そんなやりとりを軽く聞いた後、私は退室し、さきほど検索したアイスの店に向かいます。

「アイスください。」

「ありがとうございましたー。」

 私はアイスを購入し、桜井さん達がいる部屋に戻りました。

「?早乙女君、その袋、どうしたの?」

「この近くの自販機で飲み物を・・・て、そんなわけないわよね。自販機で勝ったのなら、袋なんてつかないはずだし。」

「まさか、宿題!?」

「ひぇ!!??俺、宿題なんてやりたくない!絶対、やりたくない!!」

(私、何も言っていないのですが・・・。)

 神田さんの宿題発言に、太田君は強い拒絶を示しました。なんか誤解しているようですので、誤解であることを伝えておきましょう。

「太田君、安心してください。これは宿題ではありませんよ。」

 私のこの一言で、

「よ、よかった~。これで俺、明日も生きていける!」

「いや、それは大げさ過ぎでしょ。」

 太田君はとても安堵しました。そして、その様子に神田さんが声をかけました。

「それじゃあその袋、一体何なの?」

 桜井さんが聞いてきました。

「これは・・・、」

「もしかして、最近この近くに出来たアイスのお店の袋じゃない?」

 私が言おうとしたら、風間さんが言いました。

 まぁ、別にいいんですけどね。説明する私の手間が省けたと思うことにしましょう。人生、何事もプラス思考が大事ですからね。

「ええ、風間さんの言う通りです。」

「てことは、その袋の中にアイスが入っているってこと?」

「ええ。今日はみなさん、頑張っていましたからね。そのご褒美です。」

「「「「やった!!!!」」」」

 この一言で、みなさんの目の色が変わりました。どうやら喜んでくれているようです。

「この袋の中にアイスが複数ありますので、みなさん、好きな味をお選びください。」

 私は袋の中身をみなさんに見せます。

「うわー!」

「美味しそうね。」

「これ、本当に食べていいの?」

「俺、これ食べるわ。美味そー♪」

 この後、みなさんは好きな味のアイスを選び、幸せそうな顔をして食べ始めました。

(私もアイスをいただきますか。)

 部屋を出て、ロビーで食べるアイスは美味しいです。

 それは、このアイスが美味しいからなのでしょうか。

 それとも、一仕事終えた後にアイスを食べているから美味しいのでしょうか。

 きっと、全部なのでしょう。一仕事終え、美味しいアイスを食べているから美味しい。こんな当たり前のことに理由なんて考えなくていいです。美味しいものを食べて美味しい。それ以外考える必要なんてありません。


 一方、

((((美味しそうに食べるなぁ。))))

 4人は、早乙女優のアイス食事風景を見て、とても美味しそうに食べると内心微笑ましく思った。

(早乙女君が食べているアイス、今度食べてみようかな。)

(早乙女君って、本当にアイスが好きなのね。)

(早乙女君の笑顔、見ていてこっちも微笑ましくなるわ。)

(このアイス、美味♪)

 それぞれの感想を胸の内に秘めつつ、自身が手に持っているアイスを食していくのであった。


 アイスを食べ終えた私達は、帰宅準備をし、建物を出ました。

「ふぅー。」

 桜井さんは大きく背伸びをします。

「それにしても今日は疲れたわね。」

 風間さんは首を左右に動かし、音を鳴らしていきます。

「でもでも、これでテストは楽勝だよね?」

「そうだな。これで新作のゲームソフトはいただきだぜ!」

 まぁみなさん、長時間勉強していましたからね。疲れが出たのでしょう。なので、もう今日くらい勉強しなくても何も言いません。ですが、これくらいは渡しておきますか。

「それでは最後に、みなさんにそれぞれ渡していきますね。」

 そういえば、さきほど帰宅する準備をしている時に渡せばよかったですね。非効率な行動をとってしまい、自分に嫌気がさしてしまいます。

「・・・これは?」

「さっきもらった問題集に似ているわね。」

「・・・この問題、さっき私が間違えた問題だ。あ、これも!」

「てことは、この問題集は、今日一日俺達が間違えた問題を問題集にしてまとめたのか?」

「太田君、正解です。」

 私は太田君の推測を肯定します。

「今日一度の勉強だけで全て身につける、なんてことは不可能に近いです。ですが、何回も何回も反復していけば、きっと覚えられます。」

 まぁ、一人で一度間違えた問題を解くのも精神的に辛いかもしれません。であれば、みんなで解くよう提案してみますか。

「それでも一人で解くのが辛いなら、再度みなさんで集まってこのような機会を設けるのはいかがでしょう?」

「「「「みんなで・・・、」」」」

 きっとみなさんなら、お互いに支え合い、教え合う事で互いの学力の向上が出来るでしょう。

「ええ。みんなでやれば、お互い、勉強を教え合い、支え合うことが出来ますからね。もちろん、一人でやりたい方がいるのなら止めはしません。人によって勉強方法はそれぞれですから。」

 私の場合、ずっと独りで勉強し続けていました。今となっては懐かしい思い出です。

(たった数年前の出来事なのに、懐かしく思うなんて・・・。)

 私も年をとったものです。

 ・・・まだ十代な私が、年をとったなんて考えは中年やお年をめした方々に失礼ですね。声にださないでよかった。

「みんなでやる時、早乙女君も一緒に勉強、してくれる?」

 私が思考していると、桜井さんが私に質問してきました。

「私の出来る範囲内であれば、みなさんのお手伝いをさせていただきますよ。」

「やった!」

 私の肯定に、桜井さんは声を出して喜んでくれました。

「「「・・・。」」」

「・・・な、なによぉ~。」

「「「べっつに~~~???」」」

「うぅ~。だって、嬉しかったんだもん!」

「何がそんなに嬉しかったのですか?」

 私が桜井さんにそう質問すると、

「え?えっと~~~・・・。」

 何故か桜井さんは言い辛そうにしました。そんなに言い辛いのでしょうか?であれば、無理に聞きだす必要はないでしょう。

「早乙女君、いくらなんでも・・・、」

「早乙女君って鈍感だよね~。」

「おいおい。今のはいくら俺でも分かるぞ。それなのに早乙女、お前ってやつは・・・、」

 そして風間さん、神田さん、太田君からは、何故か呆れの感情を向けられました。

(一体どうして私は呆れられているのでしょう?)

 ・・・考えていても分からないのでこれ以上考えるのは控えますか。

「それではみなさん、今日はこの辺で失礼しますね。」

 そして私はこの辺でみなさんと別れるため、別れの挨拶を始めます。

「う、うん。また今度、ね。」

「そうね。次会えるとしたら・・・期末の後、かしらね。」

「出来れば夏休み前に一度集まりたいよね~。」

「ま、全ては早乙女次第だな。」

 太田君の発言を皮切りに、4人は私を見ます。

「・・・善処します。」

 どの事象にも絶対なんてありませんからね。絶対と言い切ってしまいますと、後々自身の首を絞めてしまう事態になります。

「うん!楽しみにしているね!じゃあまたね!今日はありがとー!絶対、いい点を取って、最高の報告を早乙女君に届けるね!」

 桜井さんはこう言い、帰って行きました。

「私も綾に続くわ。今日はありがと。この恩は、テストの点で返していくわ。」

 桜井さんに続き、風間さんも帰って行きました。どうやら2人は一緒に帰るようです。

「早乙女君、今日はありがとう。お礼は・・・テストでいい点を取ってから考えるわ。まずはお互い、テストを乗り越えようね。」

「俺も帰るわ。お礼は・・・買ってもらう予定のゲームをやらせるってことでいいか?やり方なら俺が教えるから。な?じゃあな。」

 そして、神田さんと太田君も帰って行きました。

(これで私の出来る事はしました。)

 後は4人の努力次第です。あの4人なら、きっと高得点をとってくれるでしょう。

(さて、)

 私は私でやるべきことをするとしますか。

(まずは、期末考査でどうしても通学しないとならないですから、その時間分の仕事を最低でもしなくては!そのためにも、これから仕事の進捗状況について、工藤先輩に聞くとしますか。)

 工藤先輩なら、しっかりした返事を聞くことが出来るでしょう。菊池先輩に電話すると・・・中身のない返事しか返ってきませんからね。

(優君愛している~とか、優君のことを毎分毎秒思っているわ~とか。)

 自分で考えていて頭が痛くなります。なので仕事に関する話を聞く際は工藤先輩に限ります。

(確か今は仕事中のはずですが、電話しても大丈夫でしょうか?)

 もしかして今緊急の仕事が入っていててんやわんやしているとかあるでしょうか?もし緊急の用事があるなら、工藤先輩の方から電話をかけてくるはずです。それなのに私から電話をしても問題ないでしょうか?

(・・・いえ、そんなことは気にしないでおきましょう。)

 一度気にし始めたら、何も行動出来なくなってしまいます。それに、今回は確認だけです。さほど時間はとられないはずですので、電話したところでさほど邪魔にはならないでしょう。あくまで少し、ほんの少し世間話をする感覚です。

(・・・かけますか。)

 私が電話をかけようとすると、

「!?」

 突如電話が振動し始めました。画面を見てみると・・・工藤先輩!?

(なんというタイミング・・・。)

 もしかして工藤先輩、狙って・・・?いえ、そんなことあるわけないですよね。となると、この時間にどうして電話をかけてきたのでしょう?

「もしもし?」

「あ、優か!!??」

「はい。早乙女ですけど。」

 何故かは不明ですが、工藤先輩の声質からして、何かとても焦っているご様子。もしかして・・・何かトラブル、でしょうか?それも、私に頼らなければならないほどの問題、という可能性があります。あくまで可能性の範囲内なので断定は出来ませんが。

「よかった。実は、優か菊地じゃないと短時間で解決出来ないようなトラブルが発生しちまってな・・・、」

「であれば、菊地先輩にお願いすればよろしいのではありませんか?それに、例え短時間でなくても、多少時間をかけても解決出来るのであれば問題ないのではないですか?」

 菊池先輩に頼らない理由はある程度予想出来ます。ですが、短時間でトラブルを解決しないといけないというのは一体・・・?

「あ~・・・。菊池は色々あって使いものにならなくてな。まぁ、最低限の仕事はやっているから問題ないのだが・・・、」

「そんな時に緊急の仕事が舞い込んできた、とかですか?」

 私はこの会話中に思いついた可能性を工藤先輩に伝えます。

「あぁ。優の言う通りだ。なんでこんな時に限って・・・はぁ。」

 工藤先輩のため息がいつもより深刻に聞こえます。

「・・・本当は、俺らがなんとかしないといけないのだが、俺らじゃあ手が、技術が足りないんだ。すまない、手を、貸してくれないか?もちろん、お前は今日休みだからな。断っても誰も文句なんて言わないぞ。」

「もちろんです。喜んで手をお貸しします。」

 工藤先輩のお願いに対する返答なんて決まっています。

「ですが今、私はジャージなので、すぐ出社するとなるとジャージ姿での出社となりますがよろしいですか?」

「もちろん構わない。だから頼む。」

「ええ。それでは失礼します。」

 私が電話を切る直前、

「え!?優君、出社してくれるの!?」

 そんな声が電話先から聞こえてきました。あの声は菊池先輩でした。

 本当なら、さきほど工藤先輩が頼んできたトラブルも菊地先輩が解決できるはずですのに・・・。

(いえ、もしかしたら、菊地先輩一人では対処出来ないのかもしれません。)

 ま、そんな憶測はいいです。そんなことより今は社に向かい、トラブルの解決に尽力するとしましょう。

 この後、私は工藤先輩からトラブルの内容を聞き、トラブル解決に動いていました。そして現在、工藤先輩が代表で、トラブル解決完了の報告のメールを送信し、客先からの返事を待っているところです。本当は電話で報告してもよかったのですが、報告したことをデータとして残しておくため、メールで報告しました。

 客先からの報告の待ち時間、何もせずただ待つわけにはいかないので、私達は送付した資料に間違いがないか再度確認しつつ、みんなで雑談しています。さきほどまでみなさん、かなり切羽詰まっていましたからね。今くらい息抜きしても、誰も文句を言わないでしょう。

「はいもしもし!」

「「「「・・・。」」」」

 どうやら客先からの電話のようです。

「・・・ふー。」

 電話が終わったので、結果を聞くとしましょう。

「それで、どうでしたか?」

 工藤先輩は一息つき、

「問題なし、だってさ。後、解決してくれてありがとうとも言っていたよ。」

 私はこの工藤先輩の言葉を聞いて安心しました。私は工藤先輩の報告に安堵しました。なにせ、厄介なトラブルが解決しましたからね。少しくらい喜んでも問題ないでしょう。

「この後、依頼完了のメールを送ってくれるらしいから、そのメールを見せて報告するわ。まぁ、課長にはもう聞こえているだろうが。」

「そのようですね。ですが、改めて課長に報告しておいた方がよろしいかと思いますよ。」

「だな。じゃあ行ってくるわ。メールの件は・・・まぁ、送信されたらその時にまた報告すればいいか。」

 そう言い、工藤先輩は課長のデスクへ向かいました。

「それにしてもありがとう、優君。優君のおかげで助かったわ。」

「事態が収束してよかったです。それにしても、まさか菊池先輩もてこずっていたなんて驚きでした。」

「だってぇ~。優君が近くにいてくれなかったから、いつもの力が出せなかったのよ~。それに、」

「トラブルを起こした張本人が何故か、トラブルの原因や経緯を詳細に話してくれなかったからな。どうしてあんなに話さなかったのやら。」

 いつの間にか報告を終えた工藤先輩が戻ってきて、話に入っていました。

「・・・おそらく、自身の間違いを認めたくなかったんだと思います。俺もそう言う時、ありましたし、時には黙っていた時もあります。」

 会話に混ざってきた工藤先輩の疑問に、橘先輩が答えました。

(確かに。橘先輩の言う通りです。)

 自分が間違えた、なんてことは出来れば認めたくありませんし、間違えたとしても、その間違いを隠蔽しようという考えも理解は出来ます。私もそのような考えに至り、何度も隠蔽しようとしました。

(ですが、)

 それは社会人としてはちょっと不適切だと、私は思います。

 人間誰しも間違える時は間違えます。なので、間違う行為を無にする、なんてことは非常に難しいです。だからといって、隠蔽するのは間違っています。

隠蔽行為を続けてしまうと、個人のミスが会社のミスに繋がり、会社に莫大な損害がでてしまうからです。絶対損害が出る、というわけではありませんが、損害が出た場合、下手したら億単位の損害賠償を請求される場合だってあります。それに、社会的地位も失うことになるでしょう。そんなことになれば、隠蔽行為後、激しく後悔し、人生を棒にふってしまう事になりえます。

「ふぅ~ん。でも仕事なんだから、間違ったりミスしちまったりするのはしょうがないにしても、きちんと説明すべきだと思うけどな。」

「それは俺も同意です。社会に出てから、情報共有の重要性を嫌と言うほど教わりましたから。」

「だな。俺も課長に散々怒られたわ~。」

 そんな雑談を交わしていた時、あの人は突然現れました。

「どうやら緊急の案件は無事片付いたようね。」

「「「「「!!!!!?????」」」」」

 私、菊地先輩、工藤先輩、橘先輩、桐谷先輩は驚きました。なにせ急に後ろから声会が聞こえたと思い、後ろを振り返ったら、さきほどまでいなかった先輩、川田先輩がいるのですから。

「きたわね、現代に生きる女忍者め。」

「誰が女忍者よ!?さっきからずっとここにいたわよ!」

(え?)

 私、今の今まで気付かなかったのですが?

「こほん。さて、私がここに来た用件は・・・もう分かっているわね。」

「臨時のボーナスが入るって話かしら?」

「そんな話、どこからきたのよ!?ぜんっぜんちがうわよ!」

 川田先輩が菊地先輩の言葉を真っ先に否定しました。まぁ、川田先輩が忍者なわけないですよね。忍者なんているわけありません。・・・いませんよね?なんだか自信がなくなってきました。

「じゃあ一体何の用で来たのよ?私達を馬鹿にしに来たの?うわ~。社内の風紀をわざわざ乱しに来るとか、どれだけ陰湿なのよ。さっそく上層部に報告して目の前の女忍者を解雇してもらうよう進言を・・・、」

「しなくていいから!あぁもう!話が進まないじゃない!?全てあんたのせいよ!」

「えぇ~?一体、私に何の罪があると言うのかしら~?ねぇ、優君?」

「・・・川田先輩、それでここに来た用件とは何ですか?」

 これ以上埒があかないと判断した私は、菊地先輩と川田先輩とのやりとりを無視して、川田先輩に話をふりました。これ以上二人で話をさせていると、きっと菊地先輩が永遠に話を脱線させ続けますからね。そのような未来しか見えません。

「話をふってくれてありがとう。用件はこれよ。」

 川田先輩が見せてくれたのは一枚の紙でした。その紙に記載している内容は、

「来月の決闘、ですか・・・。」

 そういえば来月は8月。となると、4カ月に一度行われている、菊地先輩と川田先輩との対決が行われる月になりますね。

(よくもまぁ、毎回毎回忘れずに来てくれますよね。)

 ほんと、粘り強いというか執念深いというか。そこまで菊地先輩を辞めさせたいのですかね。

(いえ。きっと違いますね。)

「どうせ私の勝ちなんだから、あなたが不戦敗しても誰も文句言わないわ。さっさと生き恥晒しなさい。」

「絶対嫌よ!?」

 きっと・・・、

「今度こそ絶対、あんたという女をこの会社から消し去ってやるから覚悟しなさい!今回の勝負は・・・、」

「?どうかしたのかしら?早く前回同様、勝負内容を言いなさいよ。」

「今回の勝負内容は、当日まで秘密よ!これで少しでも私の勝率が上がるわ!」

 ・・・違い、ますよね?

(まさか川田先輩、本当に菊地先輩を辞めさせるおつもりで・・・?)

 だとしたら、菊地先輩に助力した方がよさそうですね。

「う!?」

「・・・ちょっと。急にお腹をおさえてどうかしたのかしら?」

「う、うるさい!別に変なものを食べ過ぎてお腹壊した、とかじゃないわよ!勘違いするんじゃないわよ!それじゃあ言いたいことは言ったし、私はこれで失礼するわ。早くトイレに行きたい・・・。」

(川田先輩・・・。)

 おそらくですが、今回の勝負事も何か食べ物に関係しているのでしょう。最後はあまり聞き取れませんでしたが、トイレという単語が聞こえてきました。

(まさかと思いますが川田先輩、またお腹を壊しているのでしょうか?)

 だとしたら、菊地先輩との勝負どころではないと思うのですが・・・。ですが、そう言っても川田先輩はお腹を壊し続け、当日の勝負に備えるでしょう。

(それでも毎度、川田先輩は菊池先輩に負けているのですから、不憫でなりません。)

 本当、川田先輩って苦労人というか、努力が報われないというか・・・。

(きっと川田先輩にも、いいことがありますよ。)

 私は川田先輩の幸せを願いながら退社していきました。

(さて、来週は期末考査ですか。)

 そのためにも、体調は万全にしますか。

次回予告

『新中学生達の期末考査実施生活』

 期末考査の日を迎えた者達は、それぞれ異なる意気込みで期末考査に臨む。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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