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何でも出来るOLから小さな会社員への心情吐露生活

「・・・さて、これで全部冷蔵庫、冷凍庫に入りましたかね。」

 これで、自室でやるべきことは終わりましたね。

「後は菊池先輩のところですね。」

 きちんと戸締りはして・・・よし。

「さて、チャイムを鳴らしますか。」

 菊池先輩宅のチャイムを鳴らそうとすると、

「優君いらっしゃい!待っていたわ!!」

 ・・・何故菊池先輩は、私がチャイムを鳴らす前に出る事が出来たのでしょうか?・・・まぁ、事前に来ると伝えていましたし、チャイムを鳴らさなくても出られる・・・のでしょうか?私としては出来ないと思うのですが、菊地先輩ですし、深く考えないことにしますか。

「はい。それでは失礼します。」

 私は菊池先輩に向けてお辞儀をしてから、菊地先輩の部屋に入室する。

「それじゃあ優君、私にする?私にする?それとも、わ・た・し?」

「・・・早く用件を言ってください。」

「も~。優君ったらつれないのね。でも、そんな優君もす・て・き♪」

「・・・。」

 ほんと、菊地先輩はいつも変わらないと言うかなんというか・・・。

(はぁ。)

 心の中とはいえ、ため息をついてしまいます。やはり、菊地先輩はどこかの精神病院に通院させるべきなのでしょうか?それくらい、菊地先輩の心境は心配です。

「・・・優君?そんな悲壮感溢れる目で私を見ないで。」

「・・・そんな目で見ていません、よ?」

 菊池先輩、鋭いですね。ですが私はとぼけるとしましょう。何も知らないふりをしておけば言及されないはずです。多分、ですけど。

「・・・そう。ならいいわ。」

(ほっ。)

 どうやら言及はされないみたいです。良かった。

「それで、今日話したい事だけどね、」

(!?)

 急に菊井先輩の雰囲気が変わりました。これは、真剣に聞かないといけなさそうです。

「昨日の事なんだけど、いいかしら?」

「昨日の事、ですか?」

 私は菊池先輩に聞きながら確信していた。

(昨日の事という事は、あの事件に関する事ですね。)

 昨日といえば、あの大学での出来事しかありませんからね。

「ええ。ちゃんと話しておきたくてね。」

 ちゃんと、ですか。

「私は十分聞いたと思っているのですが、まだ聞いていないことがあった、ということですか?」

「ええ。」

 私の質問に、菊地先輩はハッキリと答えてくれました。

(まだ聞いていない事・・・。)

 一体何でしょう?

 ・・・駄目だ。まったく思い当たる考えが浮かびません。これは、菊地先輩の話を聞くしかなさそうです。

「あの事件が起きた原因は、あの女だけでなく、私にもあった、ということよ。」


 その後、菊地先輩は自身の言葉で話してくれました。

 菊池先輩が小学生、中学生だった頃。

 その頃、菊地先輩は同級生、上級生、下級生、先生に仲間外れにされ、いじめにあっていたこと。そのいじめの内容は、物を隠すことから、物を壊し、水浸しにした仕え無くする等、様々だったとの事。

 さらに、菊地先輩自身にも水をかけ、着ている衣服を台無しにされたのだとか。

(菊池先輩は辛い過去を乗り越え、今に至っているのですね。)

 改めて聞くと、壮絶な過去です。よくそのようないじめを受けても、今こうして生きていられますね。

(・・・いえ、壮絶ないじめを受けてしまったからこそ、今の性格になってしまったのかもしれません。)

 私に異常なまでの求愛行動に発言。それらを平然と行う心の強さ。もしかしたら、壮絶ないじめに遭ったからこそ、心が強くなったのかもしれません。

「・・・これらの経緯から、あいつは多分、昔と同じように・・・いえ。それ以上に過激ないじめをしたのだと思う。そして、そのいじめに私の大切な人を、優君を巻き込んだ。」

 そう言い終えた直後、菊地先輩は思いっきり私を抱きしめた。

「!?」

「だからきっと、昨日の事は、私が原因なの。私のせいで、ごめんなさい。」

(菊池先輩・・・。)

 菊池先輩の顔が見えませんが、感情が手に取るように分かります。

 菊池先輩は、昨日の出来事に関して、申し訳なさを感じているのでしょう。自分のせいで引き起こった。そう、勘違いしている。

(なら、私がすべきこと、話すべきことは・・・!)

 菊池先輩の心の負担を軽くすることです。

 例え、心の膿を完全に排除出来なくても、膿を小さくし、軽くすることは出来るはずです。

(ふぅ・・・。)

 ・・・では、話すとしましょう。

 菊池先輩が少しでも元気になるために。

「菊地先輩、私は、菊地先輩にいつも元気づけられています。」

 私は菊池先輩の背中を優しく撫でながら語りかけます。

「菊地先輩の優れた能力、その能力を決して悪用せず、人を助けるために使う心意気。その心意気こそ、私が菊地先輩を尊敬している理由の一つです。」

 ・・・一瞬、菊地先輩が工藤先輩を何かで脅している風景が脳内に浮かんでしまいましたが、気のせいですね。気のせいにしておきましょう。

「・・・私、そんな善行積み重ねまくっているお人よしじゃないわよ。少なくとも私は、自分の欲望のために惜しげもなく力を使う、そんな汚く汚れた女よ?」

(・・・何を言っているのでしょうね?あんなに心優しい菊地先輩が、汚く汚れた女、ですか・・・。)

 私はその菊池先輩の言葉に笑ってしまいました。

「・・・もしかなしなくても優君、笑っていない?」

「ええ。菊池先輩があまりにもおかしなことを言うからつい。」

「ついじゃないわよ!?私、真剣に・・・!」

「分かっています。分かっているから、あまりにも周囲が見えていないのだなと思ってしまい、その感情が笑いとなって出てしまいました。」

 私は笑ってしまった声を抑え、落ち着きを取り戻します。

「まず、菊地先輩が汚く汚れた、なんてことはありません。もし菊地先輩が汚く汚れた女性であれば、今の私はいませんからね。今の私がいるのは、心優しい菊地先輩がいたからです。」

「でも私はあの時、優君を護れなかった。あの時こそ、優君を護らなくちゃいけなかったのに・・・!」

「護ってくれましたよ。」

「いや、あの時護ったのは・・・!」

「ええ。菊池先輩が言いたいことは分かります。あの場で私の暴挙を止めてくれたのは工藤先輩です。ですが、それだけではありません。」

 私はあの場面を思い出します。あの時、近くにいたのは工藤先輩と菊池先輩ですね。

「菊池先輩から今まで教わった知識、技術達が、私、そして菊池先輩を護ってくれました。それに、菊地先輩が心優しいことは、あの時の行動で既に証明されていましたよ?」

「あの時の行動?私、何かしたかしら?」

「菊地先輩、あれに一切物理的攻撃を行っていなかったではありませんか。あれだけの攻撃をされていたにも関わらず、一切、手を出さなかった。これで心優しくなければ、一体誰が心優しいと言えるのでしょう?」

(失礼します。)

 私は心の中で先に謝罪してから、菊地先輩の頭を撫で始めます。

「あの時、あれを物理的に殴って黙らせる、という選択肢もあったと思いますが、菊地先輩はそれをしなかった。それはきっと、菊地先輩が心優しく、人を傷つけたくなかったからだと思います。」

「そんなこと、ないわ。私だって・・・、」

 確かに、確実にこうだ、なんて言える保障なんてないですよね。人の気持ちなんて内面的なものは、言葉にしても伝わらない、分からないものですからね。

「例え、菊地先輩にその気持ちがなくても、私にはそう見えました。なので、そういうことにしておいてください。」

「・・・そんなの、優君の勝手なこじつけじゃない?」

「ええ。私の、勝手なこじつけです。ですから、菊地先輩が、気にする必要はありません。」

「!?優君、まさか・・・!?」

 どうやら、菊地先輩は気づいたようです。

 ですが、ここで正直に言うのは違う気がしますので、黙っておきましょう。

「ん?菊池先輩、なんのことですか?私は何も知りませんよ?私はただ、菊地先輩は何も悪くなく、心優しい方だと言っただけです。」

「優君・・・。」

「菊地先輩、失礼します。」

 私は菊池先輩の頭を私の膝の上に移動させ、私のお腹に当たったところで位置を固定させます。そして、再び菊地先輩の頭を撫で始めます。

「菊地先輩は昨日、とても、とっても頑張りました。偉いです。お疲れ様です。ご苦労様です。ですから、今だけ、今だけはこうして甘えていても、何も文句は言いません。何せ、文句を言う人がこの部屋にいないですからね。」

「そうね。あの酒馬鹿とか、酒馬鹿とか、酒馬鹿とか、酒馬鹿とか。」

「もう。工藤先輩のことを悪くいったら駄目ですよ。工藤先輩だって、菊地先輩のことを想って色々言ってくれているのですから。」

 まったく。菊池先輩って工藤先輩の事、嫌っていますよね。心から嫌っている様子ではないのですが・・・。

「ありがとね、優君。」

「いえいえ。こうして私を頼ってくれた事、話してくれた事、とっても嬉しかったです。」

「・・・ほんと、ありがとう。」

(菊池先輩・・・。)

 今日の菊池先輩、さきほどから随分涙もろくなっているように感じます。本人を前にしていう事ではないと思いますので、発言は控えるとしますか。

「いえ。これも、菊地先輩の教えの賜物ですから。」

「・・・私、優君に何も教えてなんか・・・。」

「そんな暗いこと言わないでください。今だけは、私の好意に甘えてくれると嬉しいです。」

「・・・ほんと、優君が良い子に育ってくれて嬉しい。嬉しいわ・・・。」

 私はそっとハンカチを渡し、ティッシュを手元に用意しておきます。

(しばらく、菊地先輩が元気になるまでこのままでいますか。)

 その後、菊地先輩は先日の騒動で疲れてしまったのか、いつの間にか眠ってしまったようです。

 そして翌日の出勤直前まで眠っていたせいで、私達は遅刻しかけました。

「!!??き、菊地先輩!?もうこんな時間です!急ぎませんと私達、遅刻してしまいますよ!!??」

「えぇ~?後もう一千時間だけ膝枕して~♪」

「ふざけたこと言ってないで早く出勤準備してください!このままだと遅刻してしまいます!」

「優君となら、未来永劫遅刻し続けてもかまわないわ・・・。」

「かまってください!」

 そんなやりとりが出勤の前の朝、行われました。

 本当、朝から疲れました・・・。


 6月の最終週にとんでもない事件が起きたものの、なんとか事態は収束し、次の月を迎える事になる。

次回予告

『新中学生達から小さな会社員への期末考査相談生活』

 月は7月。桜井綾達中学生にそろそろ期末考査がやってくる。桜井綾、風間洋子、神田真紀、太田清志の4人は、早乙女優に勉強を見てもらおうとお願いする。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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