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小さな会社員の京都出張前学校生活~火曜日~

 翌日の火曜日。

 私が普通に保健室に入ると、

「ごめんなさい。昨日伝え忘れていたことがあったの。」

 入った瞬間にそう言われた。人間誰しもミスはするし、謝罪もあったので、それを咎める気は一切なかった。

「え~っと、それで、何を伝え忘れていたのですか?」

 まさか、退学通知でも来たのだろうか。でも、一応小学生は義務教育なわけですし。

「今日、国語、算数、理科、社会の4科目でテストをすることをよ。」

「え?」

 まさかの抜き打ちテストだった。


 ま、私だけ無し、というわけにもいかなそうなので、もちろんやるが、

「このテストって、いつごろ決まったのですか?」

「2週間前よ。その時、あの人は君という敵をうまく利用して、みんなのやる気を引き出していたわ。」

「敵って…。」

 ま、確かにあのクラスの中では味方はいないけど。そういう意味では確かに敵か。

「それで、このことをあの人は直前、昨日まで私に黙っていたのよ。いくら早乙女君が憎いからってここまでする必要があるのかしら?」

 その昨日のうちにどうしてテストのことを言わなかったのですか?とは言わないでおこう。

「とにかく、そのテストをやればいいんですよね?私、やりますよ。」

「…ごめんね。昨日のうちに言うべきだったのに。もしかしたら、ひどい点数になるかもしれないのに…。」

「気にしないでください。先生にも色々事情が立て込んでいたのですよね?」

「それはそうだけど、だからと言って大切な要件を伝え忘れていいことには…、」

「なら、次から気をつけてもらえばそれでいいですから。私はあなたに感謝こそすれ、恨むのは間違っていることだと思っていますから。」

 そうだ。

 この人は学校で行き場のなかった私をこの保健室に行き場を提供してくれたんだ。むしろ、私がこの人に恩返ししなくてはと思うくらいだ。でも、今の私に出来ることと言えば、この人の過ちを許すこと。それぐらいしか出来ないのがもどかしい。

「…みんながみんな、あなたみたいに考えてくれば良いのにね。」

「先生?そんなことより、早くテストをやりましょう。そして、昨日みたいにおしゃべりしましょう?」

「そう、ね。」

 そして、私は保健室の先生が見守る中、テストを開始した。


 テストの結果、

「…まぁ予想していたとはいえ、本当に全教科満点取るとはね。」

「これってすごいこと、なのですか?」

 私自身、単に覚えていたことを紙に記載しただけで、凄さが全く理解出来ない。計算問題も、仕事内容に比べれば片手間で出来るくらいのものばかりだったので、これで良かったのか何度も見直しをしたくらいだ。

「当り前よ!このテストで満点を取った人は、この学校にはあなたを除いて一人もいなかったんだから!」

「この、学校?」

 私はこの保健室の言い方に疑問を抱く。

 つまり、他の学校の生徒なら、このテストで満点を取れる、ということなのかな?

「あ~。このテストって、ある会社が作ったテストに、あの人が手を加えたもの、なんだよ。」

「は、はぁ。」

 先ほどから言っているあの人、とはおそらく私の担任のことだろう。なんか仲が悪いのか、良いイメージを持っていないような発言をさっきからしている気がする。ま、私も良いイメージを持っていないのですが。

「だから、ただでさえ難しい統一テストがさらに難しくなっているはず、なんだけど…。」

「そうだったのですか?」

 私には全く分かりませんが?

 そもそも、このテストの元となったテストを見てみないと何とも言えないのですが。

「それで、このテストの結果だけど、どう言うべきかね?」

「どうって普通に言えば、」

 あ、なるほど。この先生が困っている理由がわかった。

 恐らく、普通に言えば、

“保健室の先生から答えを教えてもらったんだろ!この最低!!”

 と、罵られるだろう。

 かといって、0点や10点等、低い点数を取ったと伝えれば、

“ほ~ら!やっぱりこいつはカンニングしていたんだ!だからこんなひっくい点数しか取れないんだ、ば~か!!”

 と、罵られるだろう。

 つまり、どちらにしても罵られるので、どう言えばいいのか迷っている、ということなのか。とはいえ、私も後ろめたいことは一切していないので堂々としていればいいわけで。

「ありのままを伝えましょう。」

 私はそう答える。

「…分かったわ。そう伝えておくわ。」

 と、先生は保健室を後にした。

「はぁ。」

 まったく。こんなことで悩まされるとは。私もまだまだです。もっとしっかりしなくては。

 そう思わされたテストだった。


 時刻は11時半。そろそろ給食の時間が始まる時。

「ただいま。」

「あ、どうでしたか?」

「…予想通りだったよ。悪い方にね。」

 この一言で察してしまった私は、

「あ。そ、そうでしたか。」

 としか言えなかった。

「「…。」」

 無言の時間が続き、互いにただ立ち尽くす。

 そんな無駄な時間が過ぎゆく中、

「「あ。」」

 チャイムが鳴る。つまり、4時間目が終わった、ということかな?

「給食の時間にしよう。用意するから、ちょっと待っていてね。」

「はい。」

 先生が保健室を出た後、私も昼食の用意をし始めた。

 さて、今後はどういう対応を取るべきでしょうか…。

 実に考えさせられたテストであった。

 

 そして、昼食をとりながら、話題は今週の予定となっていた。

「…以上が、今週の予定よ。と言っても、あくまで予定だから、変更する箇所があると思うけど。」

「いえ。それでも教えてくれてありがとうございます。」

 私は保健室の先生から聞いたことを手帳にメモする。


 今週の予定を簡単にまとめると、以下の通りだ。



 ・明日(水曜日)はクラブがある日で、私は家庭科クラブに所属しているということなので、出なくてはいけない

 ・明後日、明々後日(木曜日と金曜日)は修学旅行の班別行動時のルートの最終チェックを行う



 とのことだった。

 明日のクラブは出なくてはいけないだろうけど、明後日、明々後日の事は関係ないな。そう思った。

 そういえば、

「明日のクラブで持ってこなくてはいけない物とかありますか?」

 前回の料理対決?みたいな出来事はそうそうないだろうから、必要な物が変わってくるかもしれない。それに、家庭科クラブは家庭に関する事、料理や裁縫等を行うクラブだろう。だから、それなりの物、食材や糸、布等を用意する必要があるはず。

「ああ。そのことは事前に聞いてあるよ。」

 と、先生は箸を置き、ポケットの手帳を取り出す。食事中に聞くことではなかったかな。

「え~っと。明日のクラブには卵を持ってきてほしい、とのことだ。」

「卵って、あの市販されている卵ですか?」

「ええ。卵は二個以上持ってこいとのことだ。」

「二個以上、ですか?」

 何故、個数が決められていないのでしょう?

「あ~…。何でも、失敗してもいいように多めに持ってきてほしい、とのことだ。」

「ああ。なるほど、分かりました。」

 失敗してもいいようにってことでしたか。

 確かに、私も料理を習っていた時、いつも失敗ばかりしていたな。いくら失敗しても、

「大丈夫よ、優君。まだまだ材料はたくさんあるからね。」

 と、トンカツやロールキャベツの材料を台所に出していたっけ。あの時は必死だったから周りの事があまり見えていなかったけど、ああいうさりげない助けがあったからこそ、今の私が成り立っているのか。今なら、菊池先輩の気持ちが少し理解出来る気がする。

「そうですか。分かりました。」

「それと、明後日明々後日の件だけど…。」

「それは私には関係ない、ですよね?」

 そう。

 再来週は京都での仕事要請がある。私がそこに行く時期と、修学旅行の時期がちょうど重なってしまっているため、私は修学旅行に参加出来ない。本当は、それは単なる建前で、同じクラスの人達と行きたくなかっただけだが。そう考えると、私もまだまだ子供だな。嫌な人と旅行に行きたくないだけでその旅行を休むなんて。

「…そう、だったね。なんか、ごめんね?」

「いえ。先生が謝ることではありませんよ。」

 これは私自身の気持ちの問題でもある。私がもっと大人な対応が出来ていれば、先生に負担をかけるなんてなかったのに。

「さ、そんなことより、さきほどの話の続きをしましょうよ。」

「さっきの話の続き?何を話していたっけ?」

「確か数年前、小学生が漢字検定1級を取った、という話ですよ。」

「ああ。その話ね。確か…。」

 こうして私達は、給食の時間が過ぎても話し続け、火曜日が終わる。

次回予告

『小さな会社員の京都出張前学校生活~水曜日~』

 急遽、テストを受けることなってしまったが、それでも満点を獲得した優。そして、今週の予定を聞き、頭の中で予定を組み立て始める。

そして水曜日。優はクラブのため、保健室の先生監視のもと、家庭科室でクラブ活動を始める。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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