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小さな会社員の大学祭支援生活~その5~

「!?」

 三島さんが、菊地先輩がメカ女と呼称されている理由を勝手に話したことに関し、菊地先輩の表情が一瞬変化したように見えました。一瞬でしたので、私の気のせいかもしれません。

「そのあだ名の由来なんだけど・・・、」

「やめて!」

 菊池先輩はここで、初めて三島さんに大きな声で反論しました。その声に、

「・・・へぇ~。」

 三島さんは何か察したのか、私に変な視線を向けました。

(なんか、嫌な視線です。)

 私は、その三島さんの視線に嫌悪感を覚えました。

「こいつ、小学生の時、色んな人からいじめられていたのよ。かくいう私もそのメカ女をいじめていたその一人なんだけどね。」

 そして、私にとって強烈な情報を言われました。

(!?)

 私は二つの事で驚きました。

 一つ目は、この三島さんが、自分がいじめをしていたと公言したことです。いじめという行為に関して、何も感じていないのでしょうか?

 そして二つ目は、

「優君に醜い話聞かせちゃってごめんね?」

 今まで見たことがないくらい、申し訳なさそうな態度で、私に謝ってきました。こんな菊池先輩、初めて見たかもしれません。

「今まで無表情なメカ女だったくせに、急に再会したら笑顔で・・・ムカつくわね。」

 三島さんは菊池先輩を一瞬見た後、再び私に視線を移しました。

「せっかくだから、こいつがどんな風にいじめられていたか教えてあげるわ。知りたい?知りたいわよね?」

「いえ、私は別に興味は・・・、」

 私はやんわりと断ったつもりなのですが、それでも三島さんは話し始めました。

「こいつはね、昔頭から雑巾で汚れた汚い水を被った事があるのよ。それに・・・、」

「ちょっと。わざわざこの子に聞かせなくてもいいじゃない。」

 菊池先輩は三島さんの言葉に被せるように反論しました。ですが、三島さんの言葉を聞いてしまい、私は驚きを隠すことが出来ませんでした。

「そう!私はあなたの苦渋にまみれたその表情が見たかったの!」

 そして、三島さんはここぞとばかりに大声をあげました。

「小学生の時、あなたはいつもすました顔をしていた。筆記用具をボロボロにしても、服をビリビリに引き裂いても、眉一つ動かさなかった。それがかんに触ったのよ!」

 菊池先輩に向けて大声を発した後、私に向けて指を指しながら再び話し始めます。

「そして、再びこうして会ったらこの子にデレデレで、見たこともない表情をしていたじゃない?なんだか幸せになっているようで・・・とっても腹がたつわ。」

 三島さんの視線が動き始め、裁縫道具が置いてある場所に視線を置きました。そして、その中のハサミを手に取りました。

「だから、美奈の苦渋にまみれた表情を見るために、犠牲になってね。」

「え?」

 三島さんは、私に向けてハサミを勢いよく突き刺そうと手を動かしました。

(!?これじゃあ避けきれない・・・!?)

 私は三島さんの攻撃を避けようと動きますが、動くタイミングが遅く、避けきれないと直感しました。このままではハサミが当たってしまう!

(・・・?)

 私は、自身の皮膚にハサミの刃が当たることを覚悟しました。ですが、その覚悟は不要となりました。

「!?」

「やっと、あなたのその顔が見られたわ♪」

「!?き、菊地先輩!!!???」

 何故なら、菊池先輩が私の身代わりとなってくれたからです。そのせいで、菊地先輩の顔に切り傷が出来、その傷から血が流れ始めていました。

「まだよ!私はあの時の屈辱を晴らすために、もっともっと、あなたを苦しめるわ!」

 三島さんは、傷ついた菊地先輩に向けてハサミを振り上げていました。

(危ない!?)

 私は菊池先輩の身の危険を感じ、無意識に行動を起こしました。

「・・・あれ?あいつはどこに・・・て、いつの間にあんなところに!?」

「菊地先輩、大丈夫ですか!!!???」

 ・・・私の見立てですと、さきほどついた傷以外、どこにも外傷はないように見えます。もしかしたら私が何か見落としているかもしれませんので、菊地先輩に確認で聞きましょう。

「・・・ごめんね?」

 私は外傷の有無に関する質問に対して、菊地先輩は何故か謝罪してきました。

「・・・それは一体、何に対する謝罪なのですか?」

 私が菊地先輩にこう質問すると、こう返答しました。

「私のせいで、優君を危険な目に遭わせちゃったから・・・。」

 菊池先輩の返答がいつもより弱気でした。

(・・・。)

 私は、三島さんと顔を合わせてから今までの事を思い出し始めました。

 三島さんと菊池先輩が出会ってから、菊地先輩はいつもの菊地先輩と様子がおかしくなっていました。どこか弱気に、申し訳なさそうで、いつもの勝気な性格で、私に見せる笑顔がまったく見られません。

(一体どっちが本物の菊池先輩なのでしょうか?)

 いえ、どっちが本物の菊地先輩なのかは明白ですし、そもそも本物か偽物かなんて関係ありません。

 私は、菊地先輩の笑顔が見たいんです。

(!?そうだ!?)

 気が動転し過ぎて、色々遅くなってしまいましたが、菊地先輩の傷のケアをしないとなりませんね。私は瞬時にポケットから絆創膏を取り出し、菊地先輩の傷の上に貼ろうとします。

(そういえば、傷口の消毒を忘れていましたね。)

「菊地先輩、傷口の消毒をさせてもらいますね。」

「優君?どこからその消毒液を取り出したの?」

「そんなのどうでもいいじゃないですか。」

 常に消毒液、絆創膏を携帯していてよかったです。こうして菊池先輩のケアを行うことが出来るのですから。

 私は菊池先輩の傷口を消毒し、絆創膏を貼ります。

(こんなところでしょうか。)

 ・・・私としては問題なさそうなのですが、菊地先輩は大丈夫でしょうか?一応聞いてみますか。

「菊地先輩、何か違和感はありますか?」

「何もないわ。ありがとう。」

 ・・・本当、菊地先輩はいつにもまして弱気です。そして、いつも私に見せてくれる菊池先輩の笑顔が見られなくなっていますね。その理由は分かっています。

その理由は、目の前にいる三島さんです。三島さんがいるから、菊地先輩が笑わなくなり、笑顔が消えたんです。

(そういえば・・・。)

 私は携帯を取り出し、あるデータベースにアクセスし、さきほど見ていたデータを閲覧します。

(やはり・・・!)

 この人は、菊地先輩にとって害のある人間だ。

(私が今すべきことは・・・?)

 菊池先輩を安心させて、元気にさせ、笑顔にさせる事です。

 それになりより・・・、

(許せない!!!)

 私にとって大切な人を、恩を返したいと思っている大切な人を理不尽に罵り、平然としている人をそのままにしておくなんて出来ません!

「?何を、する気なの?」

 菊池先輩が私の意志をどう汲み取ったのか、質問してきました。私は具体的な事は言わずにこう返事することにしました。

「大丈夫です。菊池先輩の笑顔を守るために動くだけですから。」

 私は出来るだけ笑顔で返事しました。ずっとこの笑顔で過ごして欲しい、そんな気持ちを込めて、菊地先輩に笑顔を見せました。

「だ、だめ!」

 すると、菊地先輩は私に大きな声で駄目、という言葉をかけてきました。その駄目という言葉の意味は分かりませんが、安心させておきましょう。

「大丈夫。」

 言葉だけでは私の意志が伝わり辛いのかもしれません。であれば、菊地先輩の手を握り、意志を行動に移しましょう。

「だめ・・・そのままじゃああなたは・・・、」

 何か菊地先輩が言おうとしていますが、今の私には関係ない事でしょう。きちんと関係あるならしっかり言うはずですからね。

(さて、と。)

 俺の大切な菊池先輩を理不尽に傷つけやがって・・・。絶対、簡単に許さねぇ。


(駄目、優君。)

 この時、菊池美奈は早乙女優を止めようとした。

 決して、三島美香子のためではない。

(あの顔、絶対に殺す気だ。)

 早乙女優が三島美香子を殺すと確信したからだ。菊池美奈は、早乙女優が見せていた笑顔の裏にはびこる殺意を感じ取っていた。そして、菊池美奈から視線を外した瞬間の早乙女優の顔を見た。

 その顔は、無。

 三島美香子に対して生死なんてどうでもいい、まるで道端に生きているアリを踏み潰しても素通りするかのような、そんな目をしていた。

(今の優君が本気を出したらもう・・・、)

 菊池美奈は悟る。

 今、早乙女優が持てる物理的力の全てを出したら、確実に三島美香子を殺せる。だから止めたかった。早乙女優に殺人をさせないために。だが、菊池美奈がいくら早乙女優に伝えようとしても無意味だった。

(お願い優君・・・!)

 今の菊池美奈に、早乙女優を止める事は出来ない。

 そして早乙女優は、

「まずは謝罪だ。それ以外ありえない。」

 三島美香子を徹底的に蹂躙しようと動き始める。

次回予告

『何でも出来るOLのかつての生活~小さな会社員との出会い編~』

 三島美香子に対し、敵対する意志を隠さない早乙女優。

 そんな早乙女優を見た菊池美奈は、早乙女優と出会った時の事を思い出す。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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