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成人な女性達から何でも出来るOLへの懇願生活

 森亮介と早乙女優達が分かれてから数時間後。菊池美奈にあるメールが送られてくる。

「?なにかしら?」

 菊池美奈は副業をしながらメールの内容を確認する。

「・・・明日、ここに来られるかって?」

 それは、とある人物からある場所に来て欲しいというお願いが綴られていたメールだった。

「何故来て欲しいのかしら?」

 菊池はメールを深く読み、お願いしたい内容を理解しようと努める。そのメールの中に気になる記載を見つける。

「ん?出来れば優君も一緒に連れてきて欲しい、ですって!?」

 この記載を見た瞬間、菊池美奈の思考がこう変換される。

(つまり、優君と外出デート出来るってことね!!)

 そして菊池美奈は、早乙女優と合法的にデート出来ることを心から楽しみにする。

(優君にお願いして、デートに誘って・・・うふふ♪)

 菊池美奈は、早乙女優とのデートプランを練り始める。

「あ。」

 そして、いつの間にか忘れていたメールの存在を思い出す。携帯の画面を少し見て、

「まぁ、当日なんとかすればいいわ。そんなことより優君とのデートよ!」

 菊池美奈は早乙女優とのデートプランを優先し、本来の目的を後回しにするのだった。


 森さんとの別れから1日経過。私は菊池先輩から呼び出されました。

「優く~ん。私とデートしましょ~~~♪♪♪」

 こんなお誘いを受けました。私は少し考え、

「何かありましたか?」

 菊池先輩に何かあったのではないかと考え、こう質問してみました。私の気のせいでしょうか?

「何もないわよ?ただ、優君とデートしたいだけ♪」

 私は、菊地先輩の顔を見て一言。

「菊地先輩は私とデートしたいと言いましたが、今日の予定はそれだけではないですよね?」

 私は直感的に、今日菊池先輩に用事があるのではないか。そう判断して聞きました。すると、菊地先輩は驚いた顔を私に向けてきました。

「・・・よく分かったわね。私、今日別件があったこと、忘れかけていたのに。」

「菊地先輩が忘れかけちゃ駄目じゃありません?」

 まったく。用件を忘れちゃ駄目ですよ?ですが、菊地先輩らしいです。出来れば大事な要件を忘れる癖、直して欲しいですけど。

「それじゃあ今日一日、私とデートしよう!」

「・・・さっそく先ほど言っていた別件の事、忘れていませんか?」

「・・・気のせいよ。」

 本当でしょうか?まぁいいです。さて、菊地先輩が言っていた別件ってなんのことでしょうか?

(気になります。)

 ですが、菊地先輩自ら話そうとしません。話そうとしないことを聞き出そうとするのはよくないことかもしれませんし、話してくれるまで待つとしましょう。

「優君とのデート、今からドキドキし過ぎて眠っちゃいそう♪」

 話してくれます、よね?なんか色々心配です・・・。


 あれから私と菊池先輩は午前中、

「優君、ここの公園、カップルで訪れると永遠の幸せが訪れるというパワースポットなの。ここで私と優君の二人で愛の誓いをしない?」

「ここでちょっと休憩しましょう。この店には男女限定のドリンクがあって、一緒に呑むと、縁が一生無くならないっていうご利益があるらしいの。優君、私と一緒に呑みましょう?」

 最初は楽しくしていたのですが、だんだん面倒くさそうな顔になっていきました。多分ですが、菊地先輩がさきほど言っていた別件とやらの時間が迫っているのでしょう。菊池先輩は分かりやすくて助かります。顔に出過ぎだと思いますけどね。

「・・・ねぇ優君?もう帰らない?」

「別件があるのではないですか?」

「はぁ。さぼりたい。さぼりたいけど、行きますか。」

 はぁ、と、菊地先輩はとても重いため息を吐きました。そこまで行きたくないのであれば行かなければいいのに、なんて思いましたが、行かなければならないと菊池先輩は考えているのでしょう。そう思っているのはきっと、誰かの為だから、かもしれません。菊池先輩、結構人がいいですからね。普段の行いからは想像出来ませんけど。私は全部じゃないですけど、分かっているつもりです。これでも数年以上の付き合いですから。

「このまま優君と愛の逃避行をしたい。」

「逃避行しないで現実と向き合ってください。」

 まったく。菊池先輩の言動に頭を抱えてしまいます。本当は素敵な方なのに。

 私はこのまま、菊地先輩の後を付いていきました。


 少し歩き続けて数十分。着いた場所は、

「さ、優君、入るわよ。」

「はい。」

 なんと、カラオケ店でした。カラオケって確か、歌を歌うための店、でしたよね?オーダーすれば料理も出るという話は聞いたことありますが、この場所で人と会うのでしょうか?それとも、菊地先輩がここで歌を歌って憂さ晴らしでもしたいのでしょうか?

「待ち合わせしているのだけど。」

「はい、少々お待ちくださいませ。」

 そんなことを考えていると、菊地先輩が受付の人と話を始めてしまいました。話を聞こうと思っていたのですが、即座に話を終えてしまいました。

「さ、行くわよ。」

 菊池先輩は足早に受付を後にしました。私は菊池先輩の後を追い、店の奥に行きました。

「ここね。」

 少し歩き、菊地先輩はある部屋の前に止まりました。

「まったく。せっかく優君と素敵なデートをしていたのに。その時間を潰しやがって。」

「菊地先輩、聞こえていますからね?部屋の中で絶対に言っては駄目ですからね?」

「え~?愚痴るぐらいよくない?」

「駄目です。きっと、菊地先輩に用があって、菊地先輩を信頼して頼ってくれたのですから。」

「だとしても、私をいいように使い過ぎじゃない?」

「少なくとも、菊地先輩を悪用する方ではないと思いますよ?」

「どうして?」

「そういう方なら、菊地先輩が事前に断っているはずですから。」

「・・・ほんと、優君は私の事、なんでもお見通しなんだから♪」

「別に何でもではないですよ。菊池先輩の全てを知っているわけではないですから。」

「そう。」

 菊池先輩は短く答え、私に笑顔を向けてくれました。

(菊池先輩の笑顔、いいな。)

 やっぱり、大切な人の笑顔を見ると安心します。

 さて、菊地先輩は誰に会う予定なのでしょうね。

 そして、部屋の中にいたのは、

「やっほー。」

「こんにちは、早乙女君。」

「久しぶり・・・でもないけど、また会ったね。」

 去年長野の旅館で会った川島優香さん。

 去年美和さんの件でお世話になった下田光代さん。

 潮田詩織さんのマネージャーである峰田不二子さん。

 計三人がこの部屋に集合していました。

 一体、どうなっているのでしょう?


「えと・・・こんにちは。みなさんお揃いで、一体何用なのですか?」

 私がそう聞くと、三人は少し驚いた後、菊地先輩の顔を見ました。

「あなた、伝えていないの?」

「早乙女君にも事前連絡してほしいと記載していたはずだけど?」

「まさか、よく読んでないわね?」

「そういえば、そんなことが書いてあったような、なかったような・・・。」

 菊池先輩は携帯画面を見直す。そして、視線を画面から外す。

「まぁ人間、誰しも見落としはするものよ。」

 この菊池先輩の発言で、3人は大きなため息をついた。私も三人がため息をつく気持ち、よく分かります。

「菊地先輩、仕事ではないとはいえ、送られてきたメールの内容くらいきちんと読んでおきましょうよ。」

「えぇ~?面倒くさ~い。」

「友人からのメールなら、面倒くさがらずに読みましょうよ。」

「え?友人?」

 私の友人という発言に、菊地先輩は疑問を抱いていました。

「「「え???」」」

 菊池先輩の疑問に、三人も疑問を抱いていました。

「・・・まさかですけど、菊地先輩とこの御三方は、知り合いではないのですか?」

 この場で初対面なのでしょうか?だとしたら、いきなりメールを菊池先輩に送信するのはなんだか違和感を覚えますし、そのメールに反応して来る菊地先輩にも違和感を覚えてしまいます。

(いえ、それはあり得ませんね。)

 何せ最近、この三人の中の一人、峰田さんとは会ったのですから。となると、

「いや?知ってはいるわよ?ただ友達かと言われると・・・、」

 菊池先輩はそこで深く悩み始めました。まさか、初対面かどうかではなく、友達かそうでないかの判定の違いだったとは。私、気づきませんでした。

(もしかしたら、菊地先輩が考えている友達と、みなさんが考えている友達の概念が違っているのかもしれません。)

我が儘を言ってしまうと、深く考えずに、

「ええ、友達よ。」

 て、言ってくれれば丸く収まった気もするのですが、心に秘めておくだけにしましょう。

「すみません。二度手間であることを承知して、詳細な説明をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「もちろんいいわよ。」

「今回、こちら側からお願いする立場ですし。」

「異議なし。」

「ありがとうございます。」

 私の言葉に、みなさんは了承してくれました。

「まぁ、こいつが早乙女君に話してくれればよかったんだけどね。」

 と、峰田さんが菊地先輩を睨む。菊池先輩はその視線に何も応えませんでした。菊池先輩、自分のせいで二度手間になっていること、気付いているのですかね。

 私は三人の話を聞いて、今回の用件について理解していきました。私なりにまとめていきましょう。



・来月の6月、大学祭がある。

・その大学祭で、峰田さん達も何か出展する。

・出店するものの製作に手伝って欲しい。



 簡単にまとめるならこんなところでしょうか。気になる箇所が複数あるので、それらを聞いていきますか。

「いくつか質問、よろしいでしょうか?」

「ええ。」

「まずですが、あなた達三人はその大学に在学している大学生なのですか?」

「いいえ。私達はその大学をとっくに卒業しているわ。」

「それなら、どうして今更大学祭で出展するのですか?」

「私達、同じサークルに所属していてね。そのサークルの習わしとして、卒業しても何かしら出展しなくてはならないらしいの。」

「そういうものなのですか?」

 私にはよく分かりません。

「少なくとも、卒業後最低1回は何か出展しないといけないらしいの。まぁ、出展をきっかけに就職先とか転職先とか、色々有利になるらしいから別にいいんだけどね。」

「なるほど。」

 つまり、出展することで企業の人間に自身の実力を見せつけ、就職活動に活かす、ということですね。そういえば、峰田さん達は既に就職しているので、就職活動ではなく転職活動ですかね。

「それで私達、卒業してから1回も出展していなかったから、今回出展しようと思ってね。」

「つまり、その大学を卒業した4人で今回出展しようということですね。」

 私は川島さん、下田さん、峰田さん、そして菊池先輩の4人を見て言いました。

 だが、私の発言で再び雰囲気が歪になる。

「えと・・・。」

「「・・・。」」

「・・・もしかして、違うのですか?」

 私は菊池先輩から直接聞いたことありませんが、もしかしたら私が知らない菊池先輩の新たな一面を知ることが出来るかもしれません。

 この雰囲気の中、最初に声をだしたのは菊地先輩でした。

「・・・私、大学にいっていないわ。」

「大学にいっていないのに、峰田さん達の出展を手伝ってもいいのですか?」

 聞いた感じ、川島さん達が所属しているサークルの卒業生だけで出展しなければならないように聞こえたのですが、私の気のせいでしょうか。

「お手伝いならいいの。だから私達はそいつにお願いしたの。そいつ、技術は本物だから。」

「なるほど。」

 よく分かりませんが、菊地先輩の能力を信頼し、お願いしたことは分かりました。

「・・・優君、聞かないの?」

「?何をですか?」

「何故この中で私だけ、大学に通っていなかったのか、よ。」

「確かに聞きたいですが、興味本位だけで聞こうとは思いません。それに私は、菊地先輩が大学卒だろうとそうでなかろうと、菊地先輩が大切な方であることに変わりありませんから。」

 私が学歴で人を判断すると思っているのですか?まったく、菊地先輩は私を甘く見過ぎです。

「それで質問、よろしいですか?」

「え、ええ。」

「さきほど出展と言っていますが、何を出展するのですか?」

「これよ。」

 そう言い、峰田さんは携帯の画面を私に見せてくれました。その画像を見て、私は硬直しました。私はまさかと思いながら、峰田さんに聞きました。

「・・・これ、まさかとは思いますが、女性服ですか?」

「ええ。」

 川島さんは私の質問を肯定しました。

「このサイズ、画像越しで分かりづらいですが、子供サイズではありませんか?」

「そうですね。」

 下田さんは私の質問を肯定してくれました。

「まさかとは思いますが、この服を私が着る、なんてことはないですよね?」

「・・・。」

 峰田さんは私の質問に何も答えてくれませんでした。その応答方法で、私がここに呼ばれた理由を察することが出来ました。

 ・・・。

「菊地先輩。」

「ん?今までかなり高レベルの笑顔を私に向けてくれるなんて、今日はラッキーデーだったかしら?」

「今日はもう帰りますね。みなさんも、今日はお疲れ様でした。」

 私は早々にお辞儀をして、この部屋を去ろうとしました。

「「「「待って。」」」」

 私が部屋を出ようと行動した時、川島さん、下田さん、峰田さん、菊地先輩の4人に止められてしまいました。

「もしかしなくても、私にこの服を着させて女装させるおつもりなのでしょう?」

「そうよ!優君の可愛い姿を永久保存するためにね!」

「バッカ!それは後で言うつもりだったのに・・・!」

 峰田さんが菊池先輩に何か言っていたようですが、私には関係ありません。

「とにかく!仕事ならともかく、私生活まで自ら女装するつもりなんて一切ありませんので。」

 おそらく、私をマネキンのように服を着せて、服の状態を確認したいのでしょう。そのような目的なら、マネキンをレンタルすればいい話です。それか、他の女の子に服を着せればいいはずです。そのことを聞いてみますか。

「そんな!!!???優君の女装姿を見る事は私の生きがいなのよ!!!???私の生きがいを奪わないで!!!!???」

「そこまで絶望的な顔を見せないでくださいよ・・・。」

 こっちまで罪悪感を覚えてしまうじゃありませんか。

「確かに私も早乙女君の女装姿を見てみたいけど、今回はそれだけじゃないの。」

「それだけじゃない、とは?」

 私は川島さんの言葉が気になり、つい質問してしまいました。

「今回、早乙女君の腕を見込んで、早乙女君にも服飾のお手伝いをしてほしいの。」

「私にもこの服の作製をお手伝いしてほしい、ということですか?」

「ええ。あなたの腕はこいつに匹敵すると聞いたからね。」

 聞いた、ですか。こんなことを話す方はこの中で菊地先輩しかいません。まぁ別に話してくれても構いませんが、菊地先輩にしては珍しい気がします。まぁ今はそんなことを考える事は後回しにしましょう。

 それより、私の外見ではなく、私が持つ技術を必要としているのなら、私は喜んで力を貸すとしましょう。

「・・・確認ですけど、私が呼ばれた理由は、さきほどのような服の作製に協力してほしい、ということでよろしいですか?」

「ええ。」

「その通りです。」

「お願い、してもいいかしら?」

「ええ。そういうことでしたら喜んで協力させていただきます。」

 私は4人にお辞儀をしながら了承の返事をしました。これを機会に、川島さん達に恩を返すことが出来ますからね。

「それじゃあ改めまして。」

「ええ。」

「分かったわ。」

 川島さん、下田さん、峰田さんは席から起立し、

「「「菊池美奈さん、早乙女優さん、よろしくお願いします。」」」

「「・・・。」」

 私は川島さん達の態度に驚きました。どうやら私だけでなく、菊地先輩も驚いているようです。

 正直、川島さん達の態度について少し指摘しようかと考えていたのですが、その考えは不要だったようです。

 何故指摘しようと考えていたかといいますと、頼むにしては菊池先輩を指示語で言っていたからです。普段の菊池先輩の態度からすれば仕方がないと思いますが、頼むのであれば、もう少し態度を改めた方がいいのではないか。そう私が考えたからです。まぁ、菊地先輩の普段の行動に非があると思いますので、言うか言わないか迷っていたのですが。

(みなさん、大人ですね。)

 独善に浸り、自ら行動を起こさなくてよかったと思います。

「それで、ちょっと聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」

「ん?なぁに?」

「あまり気にしていないけど、どうして遅刻したの?」

「え?遅刻、ですか?」

 私は下田さんと菊池先輩の会話に驚き、話に割り込んでしまいました。

「ええ。予定の時刻より数十分ほど遅れてきたのよ。」

 私達は気にしていないけどね、と追加で言っていましたが、私はその話を聞いた後、菊地先輩の方を向きました。

「菊地先輩?」

「ん?なぁに??」

「菊地先輩、もしかしてわざと遅刻しましたね?」

「え?」

 さきほどさぼりたいと言っていましたからね。

「そして、遅刻することを事前に報告していなかった。社会人としてあるまじきことではありませんか?」

「優君、顔が怖いのだけど?」

「菊地先輩、まずは遅れたことを峰田さん方に謝罪してください。」

「でもね、優君。こいつらは私にお願いしてきたのよ?ちょっとくらい遅れても・・・、」

「お願いしてきたとはいえ、立場は対等なはずです。それに、悪いことをしたら謝る。当然のことが出来ないのですか?」

「う!?」

「さ、菊地先輩、みなさんに謝ってください。」

「・・・悪かったわ。」

「もっと誠意を込めて下さい。」

「すみませんでした。」

「川島さん、下田さん、峰田さん。知らなかったとはいえ、遅刻してしまい申し訳ありませんでした。」

 私は菊池先輩に謝罪させて、自分も謝罪しました。知らなかったとはいえ、私も無断で遅刻してしまいましたからね。

「いや、あいつはともかく早乙女君まで頭を下げる必要はないんじゃ・・・?」

「いえ!私も峰田さん方を待たせてしまいましたので、謝罪させてください。本当にすみませんでした。」

 私は改めて謝罪しました。

「分かった!二人の謝罪は受け取ったからとにかく頭を上げて!ね?」

「お心遣い、感謝します。」

「まったく。ちょっと遅れたくらいでネチネチ言うなんて、人としてどうかと思うわよ?」

「遅れた張本人が言わないでください。」

 私は菊池先輩の態度に思わず深いため息をついてしまいます。本当、悪い人ではないのにどうしてここまでひねくれてしまっているのでしょうか。菊池先輩の将来を考えると頭が痛いです。

「それで、今からどこへ行って服を作るおつもりですか?」

 私がそう言うと、

「「「え???」」」

 と言われてしまい、

「え?」

 私も同じ言葉を返してしまいました。何故キョトンとしているのでしょう?

「今日やるべきことはもうほとんど終わったわよ?」

 ほとんど?ということは、まだやるべきことが残っているということですね。そのやるべきことについて聞くとしましょう。

「ということは、残りの時間で服を作成する、ということですね?」

 私が出した結論に、

「えと、違うわ。」

 下田さんが否定しました。違う?ということは、これから別の事をするということでしょうか?

「それではこれから何をするのですか?」

 私のこの問いに、

「「「女子会。」」」

 3人が息を揃えて答えてくれました。女子会、ですか。

「もちろん、服は作るつもりよ?でも、今日じゃない。」

「今日はあなた達2人にお願いすることがメインの目的だったの?」

「メインでない目的が女子会、ということですか?」

「ええ。こんな機会じゃないと滅多に私達は会えないからね。」

 峰田さんのこの発言に、川島さんと下田さんは納得している様子でした。

 確かに、今ここにいる3人の職業はバラバラですからね。

 川島さんは旅館の若女将。

 下田さんは弁護士事務所の運営。

 峰田さんはマネージャー。

 この3人が滅多に顔を合わさないのも納得です。そして、この機会を利用というのも納得です。

「そして、これから服を作る前祝いとして、早乙女君達にも来て欲しいの。駄目かしら?」

「別に駄目ではないですが、菊地先輩はともかく、私が参加してよろしいのでしょうか?」

 先ほどの話から察するに、目の前にいる3人と菊池先輩には繋がりがあるようですが、私にはその繋がりがありません。となると、私はこの場からいなくなった方が賢明な判断でしょう。

「もちろん参加していいわよ。なにせ、服を作る前祝いなのだから。」

「そう、ですか。」

 参加しない方が賢明な判断だと思っていたのですが、参加した方が賢明な判断でした。参加していいのであれば、参加しましょう。

「それでは、お世話になります。」

「ええ。素敵なお店を予約したから、一緒に堪能しましょうね?」

「そしてその後は、優君と熱い一夜を・・・、」

「過ごしません。」

「そ、そんな~~~。」

「はぁ。」

 まったく。菊池先輩はどうしていつも・・・。いつものことなのにため息がでてしまいます。

 この後、私達はカラオケ店から別の店に移動し、夕飯をいただきました。昼食後から話し始めたのに。時間の経過が速くて少し驚きです。


(それにしても、相変わらず早乙女君は凄いわね。)

 一方、川島優香、下田光代、峰田不二子の3人は、早乙女優という人間を尊敬の眼差しで見ていた。その理由は、

「優く~ん♪ご飯の後は私にする?私にする?それとも、わ・た・し?」

「全部菊池先輩じゃないですか。もちろんご飯の後は帰宅です。菊地先輩じゃありません。」

「なるほど。私じゃなくて私の体目当てね。」

「はぁ。」

 菊池美奈という女性と対等に話しているからである。

早乙女優と菊池美奈の間にどのような出来事があったかは知らない。だが、誰もが不可能と思われていた菊池美奈という人間の理解を、早乙女優という人間は成し遂げ、今も対等な立場で仲良く話し合っている。

(かつての私達にはできなかったことを、早乙女君は出来たのね。)

 三人は、今でこそ仲良く話しているように見えるが、かつては仲良く話していなかった。それどころか、声をかける事すらできなかった。それが今ではどうだろう。菊池美奈の態度は相変わらず悪いが、きちんと会話出来ている。

(本当、早乙女君には感謝ね。)

 3人とも、まったく同じではないが、似たような眼差しで早乙女優と菊池美奈を見ていた。

「ねぇねぇ優君?どうやらこれから行く店には、多数のアイスが置いてあるそうよ?」

「!!??その情報、本当ですか!!!???」

「ええ。これが今から行く店なんだけど、デザートのメニューを見てみて。」

「・・・どうやら、菊池先輩の言っていることは本当のようですね。」

「でしょでしょ?やっぱり、アイス食べる?」

「当たり前じゃないですか!?全種類制覇してみせます!」

「うふふ♪優君のやる気に満ちた顔を見ると、私も元気になっちゃうわ~♪」

 菊池美奈と早乙女優は今も対等な立場で話している。まるで、家族のような立場で話しているような、そんな微笑ましい雰囲気で。

(ありがとう、早乙女君。美奈と一緒にいてくれて。)

 3人は早乙女優に対する感謝の言葉を心の内に秘め、

「さぁ、前祝いだけど、大いに盛り上がっていくわよ。」

「そうね。こういう機会じゃないと滅多に対面で話が出来ないもの。」

「仕事のストレス、一杯吐いて、美味しいものを堪能させてもらうわ!」

 それぞれ今日の目標を掲げ、店に向かう。

 そして、

「う~ん。アイス、美味しい~♪」

「さ、流石は優君ね。もう全種類制覇した上に、もう一度全種類頼み直すなんてね・・・。」

「もちろん、このアイスの代金分お支払いしますので。」

「食べ放題の店なので、アイスも料金に含まれている・・・よね?」

「え、ええ。そのはず、よ?」

「ちょっと待って。今調べるから・・・大丈夫みたいだよ。」

「「ほっ。」」

 早乙女優が食べるアイスの量に、3人とも驚いていた。何度も見てきたはずの菊池美奈も、早乙女優のアイス欲に顔を少し引きつらせていた。

(?何か菊池先輩方の様子がおかしい気がします。気のせい、でしょうか?気のせいですね。)

 早乙女優は、周囲の方々の様子の違和感に気付きながらも、そのままアイスを食べ続け、周囲に驚きの感情を芽生えさせたのだった。

次回予告

『小さな会社員と同級生な男子の中間考査対策生活』

 早乙女優が登校していたある日、太田清志が保健室にやってくる。

 その目的は、あるお願いを早乙女優にするためだった。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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