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社長の甥の会社出現生活~続~

「ということがあったんです。」

 私は出来るだけ要約し、私と森さんとの出会いを桐谷先輩にお話ししました。

「へ、へぇ~。そうなんですか。私、全然知りませんでした。」

「無理もないっす。自分、優の兄貴に会う時、社員寮に行くことが多いですから。」

「あれ?それでも森さん、会社に来ていたこともあったはずですが・・・。」

「その時、偶然にも有休で休んでいたからじゃない?」

「・・・そうですね。桐谷先輩が休んだ日に森さんが会社に来ていましたね。」

「あ、どうりで見たことないわけですね。」

 そして、森さんが桐谷先輩に向けて簡単な自己紹介を済ませました。その後、私は森さんに今回ここに来た目的を質問しました。

「それで森さん、今回はただ挨拶に来ただけ、というわけではないのでしょう?」

「・・・流石は優の兄貴っすね。何でもお見通しですか。」

 そう言い、森さんは両手に持っていた袋を置き、中を漁り始めました。そして、あるものを取り出しました。森さんがとりだしたものに、私は驚きました。

「それは・・・森さんの個人的趣味、ですか?」

「!!??ち、違うっす!誤解っす!話を聞いてくださいっす!」

 というので、話を聞くことにしました。確かに森さんの話は聞いていないですからね。聞くとしましょう。

「じ、実は、優の兄貴に女装を教えてもらいたく来たっす。」

「・・・え?」

 私は森さんの言葉に驚くことしか出来ませんでした。

「やったな、優。得意分野じゃないか。」

「工藤先輩ふざけないでください。次そのようなふざけた発言をしたら、工藤先輩を女装させて、その女装画像をネットに晒しますからね。」

「やめろ、それは本当にやめろ。」

 一応、準備だけはしておきますか。

「・・・おい優?その化粧道具の数々はどこから取り出したんだ?まさか本当に・・・?」

 さて、これくらいにしておきますか。工藤先輩に女装させる気はないですからね。

「だけど、優に女装の事を聞くのは正解かもしれないな。」

「まったく。工藤先輩だけでなく橘先輩まで血迷ったことを・・・。」

「だって、優は今もこうして女装しているじゃないか?」

「はぐぅ!?」

 橘先輩の指摘通り、確かに私は今も女装しています。

「ですがこれは、女装していた方がなにかと便利だからしているだけであって、私が好きでしているわけじゃあ・・・!」

「好き嫌いはともかく、女装の技術に関しては、かなり持っていると思うが?」

「それは、まぁ・・・。」

 男だとばれないよう、菊地先輩に教わったり、自分でも色々研究したりしていましたからね。

「やっぱ、優の兄貴は凄いっす!」

「嬉しくない称賛をありがとうございます。」

 私は呆れの感情を声に込めて発言する。

「ところで、どうして私から女装について教わろうとしているのですか?趣味ですか?」

 私がそう言うと、森さんは全力で手を左右に振り、

「そ、そんなことあるわけないじゃないですか!?そんなナヨナヨした趣味、自分には似合わないっす!」

「な、ナヨナヨした、趣味・・・。」

 私は森さんの言葉にガッカリしながら引き続き質問をする。

「であれば、どうして女装について教わりたいのですか?」

 私がそう言うと、森さんは少し暗い顔をしてから、話し始めました。

「うちの大学、近々大学祭が行わるんですけど、知っていますか?」

「いえ。」

「し、知らないんすか・・・。」

 私が正直に言うと、森さんは少しガッカリしてから話を続けます。

「ま、まぁいいです。それで自分、ある法律関連のサークルに所属しているのですが、そのサークルでカフェを開くことになったんすよ。」

「なるほど。」

 それが女装とどう繋がるのか分かりませんが、森さんの話を聞き続ければ分かることでしょうし、途中で口を挟むのは控えましょう。

「ただのカフェをするのもつまらないということで、一つ、ある手を加える事にしたらしいんです。」

「それが女装、だと?」

「それだけじゃないっす。」

「え?それだけじゃない、とは?」

 女装だけでも結構インパクトがあると思うのですが、それ以上のことをカフェに織り込んだのでしょうか?

「男性は女装、女性は男装してカフェの店員として働く。これが今うちのサークルが行おうとしているカフェのテーマっす。」

「「「「・・・。」」」」

 森さんの凄い話に、私を含めた5人全員、固まってしまいました。

 まさか、そのようなカフェを大学祭で開くなんて。

「えと・・・モラル的に大丈夫なんですか?」

「それは大丈夫っす。女装男装について事前告知し、周知しておくらしいので。」

「そ、そうですか。」

 そこはきちんと対策しているのですか。まぁいいですけど。

「それで、女性陣は男装にノリノリなのですが、男性陣がまぁやる気がなくて。」

「やる気に関しては私、どうにも出来ないですよ?」

 私が話をしたぐらいでやる気が出るとは思えません。

「あ、やる気に関しては大丈夫っす。解決案が出たので。」

「解決案、ですか?」

 どのような案なのでしょう?

「はいっす。今回のカフェで上手くいったら、夏季休暇の時、サークルメンバー全員で海に行くっていう話っす。」

「なるほど。海鮮料理目当てですか?」

 海に行けば海付近ならでのお店が並んでいたり、新鮮な魚介料理を食べられたりしますからね。そういう事を餌にされたのかもしれませんね。

「いえいえ。女子大生の生水着が見られると、サークルに所属している男性全員喜んでいたっす。」

「・・・そういうもの、なのですか?」

 私にはよく分からないので、工藤先輩と橘先輩に話を振りました。

「・・・俺は大学時代、ほとんどバイトやゲームにつぎ込んでいたから分からん。工藤先輩ならきっと分かると思う。」

「俺か?当時の俺なら確かに喜んでいたかもな~。」

 工藤先輩が森さんの話に賛同していました。そういうものなのですか。別に私、女性の体に微塵も興味がないのですが、工藤先輩みたいに、女性の体目当てで海に行く方もいるのですか。

「・・・もちろん、当時の話だからな?今でも女子大生と海に行きたい、とかないからな?」

「・・・そうですか。」

「本当だから!そんな冷めた目で俺を見ないでくれ、優!」

 別に冷めた目で工藤先輩を見ていないのですが・・・。

「話を逸らしてしまいすみません。続きをどうぞ。」

「はいっす。それでまぁ、やる気の問題は解消されたんすが、肝心の問題が未解決なんすよ~。」

「肝心の問題、とは?」

「男性陣の中で、誰も女装出来ない事なんす。」

「・・・普通の方は出来ないのですか?」

 私はよく分からないので、工藤先輩と橘先輩にまた質問する。

「少なくとも、普通の男は女装する経験も必要性もほとんどないと思う。」

「俺も、俺の周りの男もいなかったと思う。」

「そう、ですか。ありがとうございます。」

 私みたいに男でありながら女性のような装いをする方は少ないのでしょうね。私にはあまりピンと来ていないのですけど。

「それであれば、同じサークルに所属している女性の方々にお願いしてみるのはいかがでしょう?」

 女性に聞けば、女性が普段している化粧の仕方や手順を教えてくれると思うのですが、どうでしょうか?

「えっと・・・それが、ですね~。女性の方々は自身の男装で忙しいとの事で、女装は自分達でなんとかしてくれ、との事でして~。」

「なるほど。」

 協力し合えばなんとかなるのでは?という考えもあったのですが、まぁそれなりの考えがあっての判断でしょうし、私が口を挟むところはそこでないでしょう。

「それでもう、優の兄貴に頼るしかないと思い、ここに来たというわけです。」

「・・・なるほど。事情はおおよそ理解しました。ですが、先に一つだけ言わせていただきます。」

「?なんでしょう、優の兄貴?」

 私は黙って時計を指差しました。時計の指針は間もなく、昼食の休憩時間が終わろうとしていました。

「私達はまだ勤務中ですので、退社後に色々話す、ということでひとまずよろしいでしょうか?」

「ありがとうございますっす!マジで助かるっす!」

「それでは、会社の勤務が終わるまで、社員寮でお待ちください。念のために言っておきますが、勝手な真似はしないでくださいね?した場合は分かりますよね?」

「う、うっす!勝手な真似はせず、大人しく待ってるっす!」

「大学の課題等をこなしていればいいと思いますよ。」

「分かりましたっす。それではこれで。」

 森さんは早急に用意を済ませて帰って行きますか。そういえば、今日は平日なのですが、大学の方は大丈夫なのでしょうか。大丈夫だからここに来たのでしょうね。余計な気遣いでした。

「・・・なんだか、変わった人、でしたね。」

「まぁ最初、俺もそう思ったさ。けどまぁ、すぐに慣れたよ。」

「?どうしてですか?」

「この会社にはもっと変な人がいるからな。」

 と、工藤先輩は菊池先輩を見ながら言ってきました。

「・・・ねぇ?もしかしなくても、私の事を言っているの、この酒狂いが。」

 工藤先輩は菊池先輩の視線に恐れたのか、急に態度がおかしくなりました。

「そ、それは、俺だけが思っているわけじゃないぞ。きっと俺以外にも、お前が誰よりも変人だと思っているはずだ。なぁ?」

 工藤先輩はすがるような目で橘先輩と桐谷先輩を見始めました。その視線に対し、

「・・・そろそろ昼休憩が終わるし、仕事の準備でもするか。」

「あ、私、自分のお弁当箱、片づけますね。それじゃあ。」

 二人はそそくさと逃げました。

「後で覚えておきなさい。」

「ひぃ!?」

 菊池先輩は工藤先輩に向けて笑顔を見せた後、その場を後にしました。菊池先輩の笑顔、いつも見せる笑顔に見えたのですが、何故か恐怖を感じるのですが、気のせいでしょうか?

 そして私達はお昼休憩後、終業時間まできっちりと仕事をこなした後、残業せず社員寮に帰りました。帰ってくると、

「兄貴達に姉御達、お仕事お疲れ様っす!」

 森さんが夕飯の準備をして待っていました。森さん、先輩方の今日の予定を把握した上で夕飯を用意してくれたのでしょうか?だとしたら、とても気が利きますね。森さんは将来、妻を大切にする夫になるでしょう。結婚しないかもしれませんが。

「夕飯、準備出来ているので食べて下さい!」

 そう言いながら、森さんは炊飯ジャーを指差す。距離はありますが、ここから美味しそうなご飯の香りがします。今日のご飯は美味しく食べられそうです。

「えと・・・どうします?先に夕飯を食べてから話を聞きます?」

 私一人では決めかねるので、先輩方に相談しました。

「俺はどっちでもいい。」

「私もどちらでも構いません。優さんの意志に委ねます。」

「俺も構わないな。関係なく酒を飲むからな。」

「優君のご飯、私があ~んしてあげるわ♪」

 とのことでしたので、

「でしたら、せっかくのご厚意ですし、先にいただかせていただきましょう。料理は出来ていると思うので、並べるだけでも手伝わせてください。」

「これくらい自分一人でも出来るっすよ?」

「一人で出来るからといって、楽ということではないんですよ?多くの料理をさらに盛り付け、食卓に運んで並べる事も一苦労でしょうし、私にも手伝わせてください。」

「・・・俺、優をお嫁にもらいたいんだけど、もらっていい?」

 工藤先輩の言葉に、

「はぁ!!!???だ~れがお前なんかにこの愛しき優君を渡すものですか!!??優君は私のお嫁さんになって、毎日エッチするの!!!」

「工藤先輩も菊地先輩も冗談言っていないで、ひとまず荷物を自室に置いて行ってください。」

 食事するのに仕事鞄は不要ですからね。

「はいはい、冗談でももう言いませんよ~だ。」

「私は本気なんだけどな~。なんなら今からお試しで~、」

「しませんので安心してください。」

「安心出来ないわ~~~。」

((菊地先輩って、いつも元気だなー。))

 菊池美奈の発言を聞いた橘寛人と桐谷杏奈は、見慣れた光景、発言に少し遠い目をした。


 夕飯を食べた後、私の部屋に集合しました。夕飯時は、私達だけなく他の先輩方もいたのですが、今私の部屋にいるのは、私を含めて6人です。

「それで今回、どのような女装がしたいのですか?」

 私と、

「うっす。出来れば普通のカフェの女性店員みたいな感じにしてもらえるとありがたいっす。」

 森さんと、

「ついでだから、優君も一緒に女装する?なんなら季節を先取りしてマイクロな水着を・・・、」

「着ませんので持ってこないでください。」

 菊池先輩と、

「カフェ店員か。落ち着いた雰囲気があっていいかもな。」

 工藤先輩と、

「男の人の女装姿を見るって、なんだかドキドキしますね。これを機会に橘先輩もひとつ、女装してみません?」

 桐谷先輩と、

「絶対に嫌だ。俺は女装するより女装姿を見るタイプだ。」

 橘先輩です。最初、桐谷先輩と橘先輩は私の部屋に来ることが迷惑で控えようとしていたのですが、私がそんなことないのでどうぞと言ったところ、私の部屋に入ってくれました。おそらく、森さんの件をお昼に聞いてからずっと気にしていたのでしょうね。このまま帰していたら夜も眠れず、寝不足にさせていたかもしれません。

 ちなみに、全員にお茶とお茶菓子を出した私は礼儀知らずではないですよね?気が利かない男ではありませんよね?

「それじゃあ一回、女装させてみますか。少し待っていてくださいね。」

 私は化粧道具を一通りだし、別の部屋に森さんを移動させました。

「・・・ちなみに菊池先輩、森さんに合い、かつカフェ店員みたいな服とか持っていませんか?」

 自分で言っておきながらかなり無茶ぶりだと理解しています。ですが、菊地先輩なら持っていると思い、質問してみました。

「おいおい。いくらなんでもこいつがそんな都合いい服を持っているわけ・・・、」

「あるわよ?持ってこようか?」

「お願いします。私は下地を作りますので。」

「了解♪」

「て、あるのかよ!!??」

 やはり菊池先輩は持っていました。本当、菊地先輩はなんでも持っていますね。

 ・・・もしかしたら、

「今はもう手に入らないプレミアムアイスを持っていますか?」

なんて聞いたら、

「持っているわよ。」

と、返してくれるかもしれません。

(い、今は我慢しましょう。)

 私は聞いてみたい衝動に襲われながらもなんとか耐え、森さんを女装させました。

「?大丈夫っすか、優の兄貴?」

「だい、大丈夫です。」

「そうっすか。それは失礼しましたっす。」

 変なことを考えてしまいました。今は森さんの女装に集中するとしましょう。

 菊池先輩が森さんの女装用の服を持ってきてくれたので、私は菊池先輩からその服を受け取り、森さんの装いを大きく変化させました。

 結果、

「さぁ、森さんの女装が完成しました。先輩方、率直な意見をお願いします。」

「おう。」

「分かった。」

「お任せください。」

「ありがとうございます。さぁ森さん、どうぞ。」

 私は、森さんをこの部屋に言葉で誘導しました。

 ですが、

「・・・森さん?」

 森さんはこの部屋に来ませんでした。急に服がほつれ、動けなくてなってしまったのでしょうか?菊池先輩が用意してくれた服なので、そんなことはそうそうないと思いますが、絶対にないとは言い切れません。私は森さんの様子を確認してみました。

「森さん、どうかしましたか?」

 すると、森さんは固まっていました。もしかして、服ではなく別の個所に問題が生じた、とかでしょうか?であれば、森さんが動けなくなるのも納得です。

「これ、恥ずかしくないっすか?」

「・・・。」

 森さんの質問に、私は細いため息をつき、答えました。

「そんなの今更ではありませんか?」

 全ての男性が女装をするとは限りません。それどころか、女装をする男性は少ないでしょう。なので、男性が女装をすることは恥ずかしいことなのかもしれません。ですが、女装をする人が今更そんなことを気にしてもしょうがない気がします。もしかしたら森さんは、事情が違うのかもしれませんが。

 ちなみに私は、自ら進んで女装した人ではありません。女性の装いをした方が何かと都合がいいからしているだけであって、女装したいから女装しているのではありませんからね?て、私は誰に言い訳しているのでしょうね。今は森さんのことです。

「う。それを言われると・・・。」

「ほら、一緒にでてあげますから、ね?」

 私は森さんに向けて手を差しだす。

「優の兄貴、俺がどんな格好をしても見捨てないでくださいね?」

「分かっていますよ。」

 そして私は、森さんをみんなの前まで歩かせることが出来ました。

 先輩方の反応はいうと、

「おおー。結構いいじゃねぇか。」

「森さん、とっても似合っています!」

「悪くないな。」

 みな、森さんを褒めていました。

 今回、菊地先輩が持ってきてくださった服は、カフェで女性店員が着るような白のブラウスに黒のタイトスカートです。色合いだけ見れば、ワイシャツ姿のサラリーマンですね。まぁ、白いワイシャツに黒のズボンを履いている前提ですが。それに、今森さんが履いているのはズボンではなくスカートですけどね。そして、ロングヘア―のウィッグもつけてもらっています。カフェで働くのであれば、髪を結ぶ必要はありそうですね。まぁ、今はカフェで働いているわけでないので自由ですが。

 カシャ。

「・・・あの~、工藤の兄貴?何故急に写真を撮るんですかい?」

「いや、なんとなく?」

「なんとなくで!俺の女装姿をカメラに収めないでください!」

 カシャ。

「・・・橘の兄貴?何故に撮りました?」

「どこかで使うかと思って、つい。」

「ついで撮らないで欲しいっす!」

 カシャ。

「・・・桐谷の姉御も、どうして写真を撮ったのです?」

「後で使おうかと思いまして。」

「何に使うんすか!!??」

 カシャ。

「優の兄貴まで!?」

「?私はこれから複数の服を森さんに着せるので、比較出来るようにデータとして保存しただけですよ?」

「あ、なるほ・・・ちょっと待ってください。俺、これ以外にも着なくちゃ駄目なんすか?」

「駄目ではないですが、一回で簡単な化粧方法、女性服を着る方法、所作等が身につきましたか?」

「それは・・・。」

「化粧や所作に関しては帰宅してからでも出来ると思いますが、女性服の試着はなかなか出来ないと思います。大学祭直前で時間をかけるよりは、今ここで何回か反復練習しておいた方がいいかと思いますが、どうします?」

「でも、俺一人だけだと・・・、」

 一人だけだと女装出来ない、ですか。女装する意志はあるみたいですが、一人で女装するのはまだ恥ずかしいと感じているのかもしれません。であれば、

「そしたら、みんなで女装すればいいのではないですかね?」

 私の提案に、

「「え??」」

 工藤先輩と橘先輩は驚き、

「「!!??」」

 桐谷先輩と菊池先輩も驚いた顔をしていました。

 何故でしょう?それに、なんだか嫌な予感がします。

「それってつまり、森さんだけでなく橘先輩や工藤先輩、優さんも女装するってことですよね!!??」

 と、桐谷先輩は私に迫ってきました。

「いえ、そういうことではない・・・、」

 と、自分では思っていたのですが、さきほど自分が発した言葉の意味を考え直すと、桐谷先輩の捉え方が正しいような気がします。

 もしかして私、余計な事を言ってしまいましたかね。

「「優・・・。」」

「・・・すみません。」

 工藤先輩と橘先輩の視線である程度察してしまい、私は謝罪の言葉を口にしました。ですが、時すでに遅し。何せ、

「であれば私、橘先輩を女装させてもいいですか!?いいですよね!!??」

「!?」

 桐谷先輩は橘先輩に迫り、目を輝かせて質問していました。

「つまり、優君はもっと女装したいという事ね!ついでにあの男も女装させて弱み・・・弱みを増やすとしますか。」

「おま!?弱みって今言ったな!?絶対言ったよな、なぁ!!??」

 菊池先輩は私に女装させようとしたり、工藤先輩の弱みを握ろうとしたりしています。

(二人ともすみません。もう私では止めることが出来ません。)

 この時、女性達が本気を出すと、男性達で止める事が出来ないんだなと学びました。


 その後、私、森さん、工藤先輩、橘先輩は色々な女性物の服を着せられました。

 ワンピースにフレアスカート、ブリーツスカートと、どこから持ってきたのか分からない服まで着ました。つくづく、自分の発言に後悔しました。

「橘先輩の女装姿、大変珍しい姿を画像に収めさせていただきました。」

 桐谷先輩は特に、橘先輩の女装写真を多く撮っていました。

「優君の女装姿も見れて、画像として残せて大満足だわ♪ついでにあの男の弱みを増やせたし、ぐふふ♪」

 菊池先輩は、私と工藤先輩の女装写真を数多く撮り、ご満悦な顔を浮かべていました。

 そんな女性2人に対し、私含めた男性陣は、疲労にまみれた顔をしており、

「もう、女装は嫌だ~~~。」

「女性、マジで怖い。」

「うぅ。これを大学祭まで我慢しなきゃならないんすか。辛いっす。」

 女装はもう二度としたくない、そんな顔をしていました。本当にすみません。

 工藤先輩と橘先輩は犠牲になってしまいましたが、決して無駄にはならないでしょう。多分、ですけど。

「それではもう今日は遅いので、森さんに先輩方、これで解散しましょう。」

 私の言葉が聞こえたのか、工藤先輩と橘先輩は自室に戻る準備を始めました。

「「えー?もっと女装させたーい。」」

 菊池先輩と桐谷先輩は、もっと私達を女装させたいのか、残念そうにしています。というか桐谷先輩、だんだん菊池先輩に似てきていませんか?私の気のせい、ですかね。気のせいにしておきましょう。

「ところで、あなたは今日どこで寝るの?これから自宅に帰るつもり?」

「え?そんなの、優の兄貴の部屋に泊めてもらう予定っす。優の兄貴、お願いします。」

 菊池先輩の質問に、森さんは平然と答えました。森さんの回答に、私はまぁそうでしょうねと納得していました。ですが、菊池先輩は納得してくれませんでした。

「はぁ!?私の愛しい優君と一晩、相部屋で過ごすですってぇ!?そんなの、絶対に許されないわ!!」

「別に私は問題ないのですが。」

 同じ男ですし。

 ちなみに、私が男であることや訳あって女装していることも森さんは既に知っています。私が森さんの勉強を教えている時、でしたかね。

「優君が良くても私は良くないわ!優君と一晩過ごしていいのは私だけなの!」

 はぁ。どうして菊池先輩が駄々をこねるのですか。まったく、頭が痛いです。

「ではどうします?菊池先輩が森さんを部屋に泊めます?」

「それも嫌。」

「菊地の姉御。本人を目の前にして言わないでくださいっすよ・・・。」

 となるとどうしましょうか?菊池先輩の言葉なら流してもいいのですが、何するか分かったものではありませんし、本当、どうしましょう?

「・・・なら、俺の部屋に泊まるか?俺の部屋なら問題ないだろう?」

 私が考えていると、工藤先輩が助け舟をだしてくれました。工藤先輩、ありがとうございます。

「そうね。それなら問題ないわ。」

 菊池先輩からお墨付きをもらいました。まったく。今に始まった事ではありませんが、菊地先輩の我が儘も困ったものです。

「それでは森さん、申し訳ありませんが今日は工藤先輩の部屋に泊まってください。」

「うっす。工藤の兄貴、お世話になります。」

「おう。」

 快く引き受けてくれたのですが、工藤先輩はどこか元気が無さそうです。

(やはり理由は女装ですか。)

 本当にすみません。私の迂闊な発言のせいで、工藤先輩達にも女装をさせてしまって。一応フォローを入れておきましょう。

「だ、大丈夫ですよ!先輩方の女装姿、とっても似合っていましたよ!」

 私がそう言うと、

「例え万が一似合っていたとしても、もう二度としたくない・・・。」

「橘の言う通りだ。やっぱ女装するなら可愛らしい男が一番だと思う。優とか。」

 工藤先輩?遠回しに私が女の子と言いました?確かに日常的に女装しているのかもしれませんが、これでも私は男なんですからね!

 私は内心、工藤先輩に反論しながら、お休みの挨拶を済ませ、今日を終わらせました。


 翌日、森さんは自宅に戻るとのことでしたので、練習用化粧品を渡し、家でも練習しておくように言っておきました。

「うっす!ありがとうございます!」

 森さんは私にお礼の言葉を言いながら、この社員寮を去っていきました。そういえば、私の化粧品入りの袋の他にも別の袋を持っていますね。私が森さんの袋の中身を聞くと、

「これは菊池の姉御と桐谷の姉御がくれたんす。その代わり、後で画像を送ってくるように、言われたっす・・・。」

 なんか、森さんの目がだんだん死んできていませんか?というか菊池先輩に桐谷先輩、いつの間に女性服を森さんに渡していたのでしょうか。

 まぁ、これで森さんに関する女装問題はこれで解決したことですし、後は成功の言葉を聞くだけですね。

(頑張ってください、森さん。)

 成功を祈っていますよ。

「あ!優の兄貴、是非、大学祭に来て下さいねー!」

 時間があれば、森さんの様子を見に行きますか。

次回予告

『成人な女性達から何でも出来るOLへの懇願生活』

 森亮介とのやり取りを終えた早乙女優は、菊池美奈と共に外出することになった。

 その外出にはある目的があり、その目的を達成するために、同じ大学出身の成人女性3人との話をする必要があった。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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