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女子中学生モデルとそのマネージャーの番組出演勧誘生活

 翌日、仕事はいつも以上に頑張りました。そのおかげで、一日の遅れを取り戻すことが出来ました。相変わらず菊池先輩が、「今日の優君、素敵!抱いて!」なんて言葉が聞こえてきましたが、無視しました。仕事を順調にこなしていくうえで、菊地先輩から気になる話を聞きました。

「そういえば来週末、空いている?優君に会いたい人がいるんだけど、会ってくれない?会ってくれるなら、この某国にしか販売されていないメープルシロップ味を・・・、」

 私は喜んで承諾しました。それにしてもこのアイス、美味しいですね。メープルシロップの濃厚な甘さが再現されていますね。この甘さがバニラのスッキリした甘さとマッチしていて美味しいです~♪・・・しまった!?また菊池先輩にまた買収されてしまいました!?つい美味しそうなアイスに釣られてつい。私のアイス好きを巧みに利用するなんてずるいです。引っかかった私が言えたことではないかもしれませんが。

 それはさておき、私は引き続き仕事に集中しました。


そして当日を迎えました。この日はある店で集合らしいので、その目的の店に菊池先輩と向かいました。

「あ~あ。優君とのデートがもう終わっちゃったわ。なんだか悲しいわ~。」

 少しの徒歩ですら、私とのデートと勘違いするなんて、ほんと、菊地先輩は相変わらずです。もしかしたら、世間一般では、男女2二人組が一緒に歩くことをデートと呼ぶのかもしれません。デートの定義なんて知らないので断定は出来ませんが。

「ここがあいつの言っていたお店ね。」

 あいつ、ですか。菊池先輩があいつと言ったので、会いたい人はおそらく、菊地先輩と面識があるかたでしょう。それか、憎い相手、ですかね。ちなみに、私はこれから会う人に関する詳細な情報を知りません。理由は簡単で、菊地先輩が教えてくれなかったからです。

「優君、これから会う人について知りたい?ねぇ知りたい?」

 と聞いてきたので、

「いえ。どうせこれから会うので結構です。」

 と言っておきました。

「・・・なんか、私に冷たくない?もしかしてこれが所謂反抗期!?優君にも反抗期が・・・!?」

 私の言葉に対し、菊地先輩がよく分からない反応をしたので、スルーしておきました。

「・・・あれ?いないのかしら?」

 菊池先輩が周辺を見始めました。どうやら菊池先輩が待っている人が近辺にはいないみたいです。教えてもらった待ち合わせの時間にはまだ早いですし、まだ着いていないのかもしれません。

「あの言葉を言うしかないわね。」

 菊池先輩はなにか覚悟するかのように独り言を言います。

「女怪盗。貧相な女怪盗はどこかしら~?」

 女怪盗?そういえば前にも聞いたことがあります。確か・・・。

「ん?」

 何か人影がこちらに近づいてきますね。近づくスピードがとても速いように見えるのは私の気のせいでしょうか?

「おい!!その呼び名で呼ぶなと何度も言っているでしょうが!!!」

「!!!???」

 こ、この方は!!??

「!?す、すみませ~ん。」

 急に怒鳴った人は、周囲に謝り始めました。おそらく、急に怒鳴り、周囲の人が驚いたので、そのことに謝ったのでしょう。それにしても、今日菊池先輩が会いたい人はこの人だったのですか。

「あら~。それはごめんなさいね~。」

「こいつ、薄っぺらな謝罪の言葉を吐きやがって・・・!!!」

「・・・。」

 は、話しかけづらい・・・。ですが、話しかけるとしますか。

「お、お久しぶりです、峰田さん。」

 私の挨拶で、峰田さんはこちらを向き、

「早乙女君、今日は私達のために来てくれてありがとう。」

 笑顔で対応してくれました。さきほどまでの顔とはまったく異なるので、本当に峰田さんなのか怪しく感じます。本当に峰田さんなのでしょうか?

「それで、なんで呼んだの?まさか、優君の顔を見たい、なんてふざけた理由じゃないでしょうね?そんな理由だったらはっ倒すわよ。」

「こわ。相変わらずこの人怖いんですけど。」

「それで用件はなんなの?本当になかったら色々と終わらせるわよ。」

「本当に怖いわね・・・。こっちも用があって来たの。大体、あなたも予想がついているでしょう?」

「まぁね。その割にはずいぶん高級な店の前で待ち合わせ場所にしたわね。」

 そう言いながら、菊地先輩は近く目と鼻の先にある店を見る。その店は、とてもじゃないですが、私みたいな庶民が行くには敷居が高いです。

「ええ。今日はここでお昼を食べるからね。」

「ここで、ですか?」

 ここで食べるなんて、とてもお金がかかりそうで気が引けるのですが、大丈夫なのでしょうか?具体的に言うと、峰田さんの財布の中身です。

「ええ。ああ、お金の心配なら大丈夫よ。カードで支払うから。」

 そう言い、峰田さんはクレジットカードを見せてきました。クレジットカードで支払いをしても、自身の口座から引き落としになることはご存知なのでしょうか。現金を持っていなくても心配しなくていい、ということなのでしょうか。それでしたら納得です。峰田さんの全財産が数万円なわけでしょうし、きっとこのお店の支払いも出来る事でしょう。

「あらそう?それじゃあ今日はこの店の全メニューを制覇して、こいつの財産を食いつぶしてやるわ。」

「・・・言い方を変えるわ。常識な範囲でなら支払えるから、安心してちょうだい。」

 そう言いながら、峰田さんは菊池先輩を睨みつけた。

「~♪」

 睨まれている菊池先輩はどこ吹く風で、一切動じていません。流石というかなんというか・・・。

「あ!?詩織を車の中に放置しちゃっていたわね。すぐに呼んでくるから待っていてね。」

 そう言いきると、峰田さんはすぐどこかへ行きました。おそらく、峰田さんが使用している車近くでしょう。というか、潮田さんも来ているのですか。

(一体、どういう用件で私達を呼んだのでしょう?)

 口ぶりからして、菊地先輩は既に知っているご様子です。菊池先輩に聞けば分かるでしょうが、ここに来るまで一度も話に触れてきませんでした。ということは、よほど外で話したくないのでしょうね。菊池先輩のことです。きっと何か理由があって話さなかったのでしょう。今の私に出来る事は、その菊池先輩の意志を汲み取り、このまま流れに乗るだけです。話してくれる時が来るまで待つとしますか。

 こうして待っていると、潮田さんと峰田さんが来ました。軽く挨拶を済ませ、私達はお店の中に入りました。

「・・・4名でご予約の菊池様でしょうか?」

(え?)

 店員さんの発言で菊池先輩がこの店を予約したのかと思い、菊地先輩を見たのですが、

「・・・。」

 菊池先輩は峰田さんを見ていました。どういう事でしょう?

「あ、はい。そうです。」

 峰田さんはどうやら、いつの間にか菊池先輩と同じ苗字になっていたようです。

(て、そんな訳ないか。)

 推測ですが、峰田さんは菊池先輩の苗字を勝手に名乗ったでしょう。だから菊池先輩は恨めしそうに峰田さんを見ているのですね。

「あんた、まさか・・・。」

「悪いわね。勝手に使わせてもらったわ。」

 菊池先輩が何かとんでもないことを言いそうになっていたので、私は菊池先輩に矛を収めてもらうように説得し、店員さんに店内を案内してもらいました。案内された先は、小さな個室でした。その個室にはタブレットみたいな電子機器が置かれていました。おそらく、その電子機器で注文するのでしょうね。私達は座り、さきほどいただいた水を軽く飲みました。

「それじゃあ、用件を伝えるわね。」

 ここで峰田さんが話を切り出します。

「話と言うのは、3か月後の8月に行われる番組の事よ。と言っても、もう知っているでしょうけど。」

 と言い、峰田さんは私と菊池先輩を見ました。

「・・・え?」

 私は、峰田さんが何の事を言っているのか分からず、疑問をぶつけてしまいました。

「え?」

 私が聞き返したことに驚いたのか、私と菊池先輩を交互に見てきます。そんなことをされても、私は一切知らないのですが。

「えっと・・・言っていないの?」

「ええ。優君を驚かそうと思って♪」

(なるほど。)

 こんな状況になったのは菊池先輩が原因だと察することが出来ました。もしかして、私を驚かす目的で話さなかったのでしょうか?だとすれば、ちょっと悪趣味が過ぎるような気がします。いつかやらかしてしまうのではないかと心配になります。

「一応、郵送で知らせを送ったのだけど、届いていなかった?」

「・・・いえ?テレビ局関連の手紙は来てなかったはずです。」

 毎日郵便物はチェックしていますからね。

「え?じゃあ・・・?」

 峰田さんは菊池先輩を見ました。すると菊池先輩は自分の鞄を漁り始めました。そして、

「これでしょう?私のところに届いていたわ。」

「そう、それ!ていうかなんであんたが持っているのよ!?」

「私に届くよう、手配しておいたからよ。おかげで優君の驚く顔が見られたから問題ないわ!」

「・・・早乙女君。あなた、よくこんな意味不明な人と付き合っていけるわね。心から尊敬するわ。」

「ど、どうも。」

 菊池先輩は色々とおかしいですからね。もう慣れました。・・・もしかしたら、菊地先輩の異常さに慣れている私も異常なのかもしれません。そんなことはないと思いたいです。

「それじゃあ一から説明した方がいいわね。」

 こうして、峰田さんは3か月後に行われる番組について説明を始めました。

「その前に飲み物を頼んでもいいですか?」

「あ、そうね。まずはご飯を頼みましょうか。」

 私の一言で、ようやくメニューを見ることが出来ました。それにしても、飲み物だけで結構メニューがあるのですね。私は・・・コーヒーにしますか。

「あ、砂糖とミルク、つける?」

「いえ、私はブラックで大丈夫です。」

「お、大人ね、優。」

「?」

 ブラックコーヒーを飲めることが大人なんて、そんなことはないと思います。ブラックコーヒーを飲める子供もいるでしょうし、逆にブラックコーヒーを飲めない大人だっていると思います。まぁ見たことが無いので確実に言い切れませんが。

 今日の昼食は、比較的安価に設定されていたドリアを注文しようとしてたのですが、「・・・優君?あいつの財布の中身を気にしてそんな安いドリアを注文しようとしているの?」ということを峰田さんに聞こえるように菊池先輩が発言してしまいました。おかげで、「早乙女君?値段なんて気にしなくていいのよ?ウナギとか頼んでいいからね?こういう時じゃないとウナギ、食べられないよ?ウナギ、美味しいよ?」と、峰田さんがウナギを激推ししたので、私の昼食はウナギになりました。「なんだか私もウナギが食べたくなったわ。」峰田さんの言葉を聞いていた潮田さんも、私と同じウナギを注文していました。それにしても峰田さん、どうしてウナギを推していたのでしょう。峰田さん、ウナギが好きなのでしょうか。峰田さんもウナギを頼んでいましたし。そして菊池先輩はと言うと、「これで優君と同じよ!優君とお揃いなんて、嬉し過ぎるわ!」当然かのようにウナギを注文していました。菊池先輩、私とお揃いであることがそんなにも嬉しいのでしょうか。相変わらず菊池先輩の感情の推移がよく分かりません。結局みんなでウナギを昼食でいただきました。美味しかったです。

 昼食を食べ終え、飲み物を飲み始めた時、

「それで、話いいかしら?」

 峰田さんから話を振ってきました。話の内容は間違いなくさきほどの話でしょう。

「はい。」

「それじゃあ一から説明していくわね。」

「お願いします。」

 私は峰田さんから番組に関する説明を聞きました。

 話を聞いて、8月に行われる番組の概要が掴めてきました。

 その番組には数多くのモデルが出演するらしく、その出演しているモデル達からナンバー1モデルを決める番組だそうです。そして、出演するモデルの選定方法は、これまでのモデル活動や、調査等で決められるらしいです。

(つまり、私に出演してほしいと誰かがお願いしたってこと?)

 おかしくないかな?なんて考えもしましたが、その考えはひとまず置いておいて、峰田さんの話を聞くことに集中しましょう。番組で何をやるかは詳細に決まってはいないようです。毎年、少しずつ形態が変わっているらしいです。では、大体どのようなことをやるのか聞いてみたら、潮田さんが教えてくれました。

「簡単な自己紹介と、自分の長所は毎回言っていた気がするわ。」

 という事らしいです。自己紹介と長所、ですか。まぁその2つはなんとかなるとしても、絶対その2つだけで終わらないでしょう。何かしらやらされるはずです。そういえば、前の時は何をしたのでしょう?聞いてみたら峰田さんが教えてくれました。

「前は確か・・・歌っていたわね。」

 歌?歌ってモデルの要素に関係あるのですか?私自身、歌とモデルにはなにもあ 繋がりが無いと思っているのですが、他の人は違うのでしょうか?まぁいいでしょう。

「大体これくらいかしら。何か聞きたい事とかある?」

 ・・・ありますので、聞くとしましょう。

「それでは質問、よろしいですか?」

「ええ。」

「まず、その番組の人選には去年のモデル活動や調査等で決めると言っていたそうですが、私は去年ほとんど活動していないと思うのですが、何故選ばれたのですか?」

 私がそう言うと、峰田さんと潮田さんの二人は顔を見合わせました。菊池先輩は何やら鞄を漁りだし始めました。

「ほとんど活動していないことなんてないわ。それに、早乙女君にはかなりのファンがついているわ。」

「そ、そうなのですか?」

 なんだか実感が湧きません。急に言われても納得出来ないからでしょうか。

「優君、これ見て。」

 菊井先輩が携帯を私に見せてきました。携帯の画面には、

「モデルユウのファンクラブ・・・ですか?」

 これは・・・なんですか?私、このサイトは見たことないのですが?

「顔が引きつっている優君も素敵♪」

「あの・・・このサイト、なんです?」

「モデルとしての早乙女君を激推ししている人達のファンクラブよ。会員者数が1万人突破しているわ。」

「・・・そ、そうですか。」

 私が知らない間にこんなことになっているとは。もっと世の中に目を向けた方がいいかもしれません。頭が痛くなりそうです。少し、このサイトの中身を覗いてみますか。

 ・・・。

「なんです、これ?」

「ん?このファンクラブの人達の発言が気になるの?」

「え、ええ。なんか、私の事をかなり褒めているようですが、これが、ファンクラブですか?」

「ええ。そのファンクラブでの活動は、モデルの優君に関する情報を共有し、褒めちぎることよ。優君の写真も添付されているはずよ。」

「・・・ほんとだ。この写真、私がモデルとして撮った写真が添付されていますね。」

 この写真、こんなアプリに掲載して大丈夫なのでしょうか。それにしても、この誉め言葉の数は凄まじいですね。なんだか嬉し恥ずかし、という気持ちです。

「少し照れている優君も素敵♪」

 ・・・菊池先輩の言葉に関しては完全に無視するとしましょう。

「私がとても・・・好かれている?好感を得ている?ことは分かりました。ですが、私はほとんどモデルとして活動していないのですが、それなのに何故選ばれたのでしょう?」

「その答えは、これよ!」

 無視していた菊地先輩から、何か渡されました。これは本、ですね。この本は・・・もしかしなくても、私がモデルとして撮られた写真の数々が掲載されています。言うなれば私の写真集ですね。こんなにも・・・あれ?

「この写真、使わないのではなかったでしたっけ?」

 私は菊池先輩にある写真を見せる。その写真は以前使わないと言っていた写真で下。私の記憶違いでしょうか?

「ええ。当時の雑誌には使っていないわよ?」

「当時の?これは当時の雑誌ではないのですか?」

「ええ。これは最近販売された写真集だからね。」

「最近?最近、写真撮影なんて行っていないのですが?」

 どういうことでしょう?私は分からないので、分かりそうな峰田さんを見てみました。すると、何か後ろめたいことがあるのか、私を直接見ようとしませんでした。

「実はね、あの時撮った写真を使っているの。」

「あの時?あの時と言うのは、去年の大型連休後の時のことですか?」

「ええ。あの時、大量に写真撮って、色々着替えてもらったでしょう?」

「ええ、まぁ。」

 そういうものだと思って受け入れて臨みましたからね。

「あの後、早乙女君の写真を載せた雑誌の売り上げがかなり良くて、独自の調査をしてみたところ、詩織と一緒に写っていたモデル、早乙女君がかなり好評だったのよ。」

「へぇ。」

 全然知りませんでした。

「その後も早乙女君の写真を載せていったところ、早乙女君の知名度、人気がどんどん上昇していったわ。今では二大派閥の一角を担うようになっていったわ。」

「二大派閥の一角、ですか。」

 なんだかスケールが大きく感じます。私の気のせいでしょうか?それにしても、二大派閥というからには、私の派閥の他にもう一つ別の派閥があるということですよね。その派閥って何なのでしょうか?この話の流れですと、モデルに関する派閥ですよね。

(そういえば潮田さんって、かなり有名なモデルでしたよね?)

 まさか、もう一つの派閥というのは・・・?

「ええ。早乙女君もある程度察したと思うけど、もう一つの派閥は詩織よ。」

「・・・す、凄いですね。」

 私は今、潮田さんに向かって凄いと言いましたが、何が凄いのかいまひとつ理解出来ていません。

「あ、ありがとう。優にそうやって褒めてもらって嬉しいわ。私ももっと上を目指すわ。」

「そ、そうですか。」

 これ以上上を目指すって、具体的にはどこを目指すのでしょうか。まぁ詳細は聞かないですけど。

「ちなみにこの派閥と言うのは小学生モデルの時の話よ。」

「なるほど。ということは今ではもうその派閥とやらは解体されているのですか?」

「いや、二人が中学生になってむしろ拡張されたわ。」

「拡張、ですか?」

「ええ。二人のファンクラブに入会するのは誰でも無料なの。でも、有料コンテンツが投入されていて、会費を払えばさらに優君や詩織のことをもっと熱く語れるの。」

「・・・最近は色々と進化しているのですね。」

 もう何も言いません。頭が痛くなりそうです。私や潮田さんのファンクラブがかなりでかくなっていて、派閥とまで言われることになるとは。私が女装した男性だってばれていなければいいですが、大丈夫でしょうか?ばれたらとてもやばいことになること間違いなしですね。

「これで、早乙女君が人気だってことが分かったかしら?」

「え、ええ。それはもう過剰なくらいに理解出来ました。」

 色々と知りたいことも出てきましたし。出来れば知りたくないです。なんか、自分の感情が矛盾を生じさせていますね。本当は知りたくないのですが、現状を把握する必要があるのではないかと考えてしまいます。

「もっと言っておくと、今そいつが持っている本、今では在庫切れ起こしているからね。」

「え!?」

 見たところ、私の写真しか載っていないように見えるのですが、まさか・・・?

「菊地先輩、中身、見てもよろしいですか?」

「いいわよ♪なんなら、私の服の中も見てみる?」

「いえ、それは結構です。」

「ひどい!!??」

「・・・かなり年が離れている子に色仕掛けを仕掛けたことに驚いているけど、それを平然と断る早乙女君にも驚きだわ。」

 二人の成人女性が何か言っているようでしたが、私は無視して菊池先輩に借りた雑誌を見ていきました。

(嘘・・・嘘!?)

 この雑誌、本当に私の写真しか載っていませんね。所々、潮田さんの写真も載っているのですが、潮田さん単体での写真はありません。私と潮田さんが一緒に写っている写真はあるようです。まさか、本当に私しか載せていない写真集が販売されているとは・・・。

「ありがとうございました。」

 私は少しガッカリしながらも菊池先輩に借りた本を返す。

「いいえ、どういたしまして♪」

 菊池先輩は私から雑誌を受け取り、開いた。中身を見て嬉しいのか、顔に喜びの感情が出ています。私としては、喜んでもらえて嬉しい反面、これで喜んでもらえることに自分の価値が女装でしかないのか心配になってきます。私、女装しなくてもいい人、ですよね?魅力とか長所とかありますよね?男らしいですよね!?

 ・・・今は目の前に潮田さんがいることですし、男らしさは出さない方がいいでしょう。潮田さんに男だとばれると色々やばいですからね。このまま話を続けてもらいましょう。

「なるほど。私がその番組にオファーされた理由が分かりました。」

 納得は完全には出来ないですけどね。

「そう。それならよかったわ。それで、この番組に出てくれる?」

「・・・少し、待ってくれませんか?」

「え?あ、いいわよ。もちろん待つわ。」

 さて、この間にメリットデメリットを考えますか。

 私がその番組に出るメリットとして、モデルとしての名声が高まることでしょう。それに、モデルとしての経験値を稼ぐことが出来ます。モデルとしての経験で何が出来るのかは不明ですが、これから考えるとしましょう。後は・・・人との繋がりが広がりますね。人との繋がりが増えれば、色々出来る事が増えそうです。何が出来るかは・・・芸能関連ですかね。天気予報士とかアナウンサーとか俳優業とか、ですね。これらの職業の人達は、みんな人前に立って仕事しているので、もしかしたら度胸がついたり、人前でも緊張しなくなったりするかもしれません。可能性の話ですが。もっと深く考えればより色んな可能性が思いつくかもしれませんが、今のところはこれくらいですかね。

 次はデメリットについて考えましょう。

 デメリットとしては、番組を撮影中に私の女装がばれるかもしれない事ですかね。撮影中にばれたらきっと私、一生まともな生活が送れなくなること間違いなしでしょう。まぁ、普段から貯金していますし、不労所得もいくらかあります。なんなら在宅ワークも出来ますから、最悪家に一生引きこもって生活することを視野に入れておきましょう。後、モデルとしての経験が他のモデルの方達より圧倒的に不足している事です。不足しているので、私がその番組に出演してもいい結果を残す事が出来ないでしょう。そうなると、私に出演のオファーをしてくれた方に申し訳ありません。なにより、私の事をよく思ってくれている多くの方々に晒す必要のない私の恥を晒すことになってしまいます。

(結論としては・・・出ない方が良さそうですね。)

 名声や今後のことを考えるとなると、出ない方が賢い選択な気がします。他の方の考え方は分かりませんが、私は女装ばれの危機や会社での仕事や副業するための時間等を踏まえ、控えた方がいいと考えました。私自身の考えを誰かに公表する気はないので、心にしまっておきましょう。そういえば、他の方は私の番組出演に対してどのような意見を持っているのか聞いていませんね。少し聞いてみますか。

「菊地先輩はその番組の出演に関し、どのように思っていますか?」

「そんなの、決まっているわ。」

 そして、菊地先輩は続けて言葉を告げる。

「優君の意志を最優先に尊重するわ。」

(菊池先輩・・・。)

 こういう時、菊地先輩は大人らしい返事をしてくれます。こういう人だからこそ、普段のよく分からない発言が本当に残念です。

「でもまぁ、私個人の意見としては、優君の勇姿を見たい、かな?これでいい?」

「ええ。よく分かりました。」

 次は潮田さんに聞きますか。

「潮田さんはどう思いますか?」

「私?」

「はい。潮田さんの考えが聞きたいです。聞いた上で自身の考えをまとめようと思っています。」

「そう。それなら決まっているわ。」

 潮田さんは軽く飲み物を飲む。

「私は、あなたと一緒にでて、共に切磋琢磨したいわ。あなたとトップを競い合いたいわ。」

「そう、ですか。」

 最後は峰田さんですね。私は視線を潮田さんから峰田さんに移す。2回も行ってきたからか、私の意図をいち早く理解し、質問する前に答えてくれました。

「潮田詩織のマネージャーとしては、番組に出演してほしい。けど、一個人としては、早乙女君の意見を尊重するわ。後悔のないような選択をしてほしい。」

「そう、ですか。」

 ・・・。

(やっと、分かりました。)

 3人の方々の話を聞いて、ようやく自分の初心を思い出すことが出来ました。まったく、何故今の今まで忘れていたのやら。

(これまでと同じように行動していけばいいのです。)

 私の行動理念は、恩を感じた人から恩を返せるような行動をとり続ける事。その行動理念の元、私は今まで行動してきたと思っていますし、これからもそうするつもりです。この行動理念の元に行動するのであれば、答えなんて簡単に出ます。

「それではこの番組、出させていただきます。」

 私のこの言葉に、

「やったー♪」

 菊池先輩は素直に喜び、

「これであの番組はおおいに盛り上がるわね。詩織もうかうかしていられないわよ。」

「ええ。やるからには優に勝ってトップになってみせるわ。」

 峰田さんと潮田さんはやる気になっていました。

(これでいいのです。)

 この行動が正解か不正解かは分かりません。ですが、この行動で、菊地先輩に私の勇姿を見せ、少しでも恩を返すことが出来ればいいと思います。まぁ、勇姿と言っても女装した姿、なんですけどね。

(・・・やっぱ断った方が良かったかな?)

 い、いえ!今更撤回なんてしません!一度決めたことは出来るだけ貫きっと押しましょう。初志貫徹です。

「・・・それで、大変聞き辛いことがあるのですが、聞いてもいいですか?」

「ん?なあに?」

「この店にあるアイス、食べてもいいですか?」

 さきほどの昼食でアイスを注文していなかったのですが、どうしても食べたいので我慢出来ずに聞いてしまいました。さっきからずっと食べたかったんですよね。

「え?もちろんいいわよ?なんなら全種類制覇してみる?もちろん冗談・・・、」

「え!?全種類制覇していいのですか!!??」

 全種類制覇するとしたら数千円かかるのでアイスだけ自腹でも食べてみる価値はあると思っていたのですが、制覇していいのであればもう躊躇いません!!

「ではさっそく注文してみますね♪」

 さて、思う存分アイスを食べますか!!

「・・・え?本当に全種類のアイスを食べるつもりなの?嘘よね??ねぇ嘘よね???」

「・・・今見たけど、この店のアイス、20種類あったわよ。まさか優、全部食べるつもりなの?」

「優君ならあり得るわね。この前、100種類以上のアイスを食べていたからね。」

「・・・早乙女君、アイスが好きだと聞いていたけどそこまでだったとは。」

「優のアイス愛、凄いわね。」

 何か周囲が言っているようですが、出来るだけ聞かずにアイスを楽しむとしましょう。

「わぁー♪♪」

 とりあえずアイスを5種類注文してみましたが、どれも美味しそうです。最初は定番のバニラ、チョコレート、ストロベリー等を注文してみました。さて、食べてみますか。

「・・・♪」

 う~ん・・・美味しい♪この店のアイスもなかなか美味しいです。一瞬、店で売られているアイスとよく似た味でしたが、微妙に違うみたいです。アイスを手作りしているのでしょうか?それか、既製品に何か手を加えているのでしょうか?まぁ美味しいのでそんな細かい考えはしないでおきましょう。アイスは美味しい。それだけ分かれば十分です。

「あ、もう5種類食べ切ってしまいました。追加で注文するとしますか。」

 どれを注文しましょうか・・・まぁ、上から順に注文しますか。どうせ全て完食するつもりですので。

「う~ん♪♪」

 このあんこの味がするアイスも美味しいです♪

「ありゃ?もう食べ切ってしまいました。また食べたいですが、別の味のアイスを注文するとしましょう。」

 これでもう半数以上食べたことになりますね。さて、次のアイスは、複数の層でできているアイスみたいです。ミルフィーユのアイス版みたいなものですかね。美味しいです♪

「もう残り5種類ですか・・・。」

 なんだか食べ足りない気がしますが、こればかりは仕方ありません。

「「「・・・。」」」

「ふぅ。」

 残りの5種類を食べ終えました。これで20種類制覇です。

「流石は優君ね。20種類のアイスなんて簡単に食べ切っちゃうのね。」

「・・・ねぇ?アイスを20種類食べ切るって簡単な事なの?」

「量にもよると思うけど、普通は難しいと思うわ。というか、ほとんどの人が出来ないと思う。」

「もう少し食べたい気もしますが、これでおしまいにしますか。ご馳走様でした。」

「・・・もしかして優君、まだアイス、食べられるの?」

「?ええ。流石に際限なく食べるのは峰田さんに迷惑がかかるので控えておきます。」

「・・・ちなみに、後どれくらいアイスを食べられるの?」

「どれくらい、ですか・・・。」

 私は峰田さんの質問に少し考える。私もどれくらい食べられるのか把握し切れていないので正確な量は分かりません。なので、おおよその量を言うとしましょう。

「う~ん・・・。アイスだけであれば、少なくともさきほどの量の3倍は食べられますかね。」

「「「さ、3倍・・・。」」」

 う~ん。少なく見積もりし過ぎてしまったでしょうか。他の方達がなんだかおかしな反応をしていますし。

「さて、峰田さん。」

「は、はい。なんでしょうか?」

 ?何故峰田さんは私に対して畏まっているのでしょう?私に対して今更畏まる必要なんて思うのですが。まぁ、峰田さんなりの考えがあって畏まっているのでしょう。なのでスルーして質問をしましょう。

「今決まっている範囲でいいので、今後の予定について教えてくれませんか?」

「え?え、ええ。もちろん教えるわ。ちょっと待ってね。」

 こうして私はアイスを完食した後、今後の予定について聞き、スケジュール帳に記載しておきました。

(後でタブレットや携帯にもスケジュールを入れておきますか。)

 スケジュール帳を無くした時のために。

 こうして私は今後の予定について把握し終え、峰田さん、潮田さんと別れた。

「今日の昼食、ご馳走様でした。とても美味しいお店で食事させていただきありがとうございました。」

「別に気にしなくていいわ。この番組が放送されたら、また一緒にこうして食事しない?また私が奢るわ。」

「私も自分で食べたアイス代はお支払い致しますので。」

「もう!アイス代くらいこいつに払わせておけばいいのに。優君ったら律儀なんだから♪そんな優君も素敵で愛しているけどね♪♪」

「それじゃあね、優。また。」

 そんな会話の後、私と菊池先輩は社員寮に戻った。

「それにしても、私ってそんなにアイス食べています?」

「・・・優君、それ本気で言っている?」

「え?」

 菊地先輩、何故そんなに驚いているのでしょう?謎です。


 一方、

「やはり、優の兄貴の力が必要みたいっすね。」

「やっぱ、あの女の力を借りるしかないわね。出来れば借りたくないけど。」

 二人の者が、早乙女優と菊池美奈の力を借りようとしていた。その存在を早乙女優と菊池美奈はまだ知らない。

次回予告

『社長の甥の会社出現生活』

 潮田詩織と峰田不二子から番組出演依頼の話を聞いてから仕事をしている最中、ある男性が会社に来訪する。

 その男性とは、社長の甥であった。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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