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国民達の大型連休生活~目つきが鋭過ぎる会社員の聖地巡り~

 大型連休も残り半分。家で過ごす人や外出する人、数多くいる。そんな中、

「・・・初めてだけど、こういう聖地巡りも悪くないな。」

 ある会社員、橘寛人は聖地巡りをしていた。

「あ。この神社に唯我隆斗の絵馬があるな。願いでも書いておくか。」

 その聖地と言うのは大人気ライトノベル、ラノベアルカディアの聖地のことで、その聖地は日本の福岡県である。つまり橘寛人は今福岡県にいて、聖地巡りをしているのである。

「・・・いつか、サングラス無しでも生活出来ますように。」

 ちなみに橘寛人は今サングラスをかけている。理由は、自身の目つきを隠すためである。何故隠しているのかというと、目つきが鋭過ぎて周囲の人々を恐怖させ、泣かせてしまう事を回避するためである。

「お参り、忘れていたな。」

 橘寛人は絵馬をかけた後、お参りをし、お守りを買う事にした。お守りは通常のお守りに加え、聖地だからなのか、ラノベアルカディアとコラボしたお守りが販売されていた。

(そういえば、桐谷も好きだったな。)

 橘寛人は会社の後輩、桐谷杏奈もラノベアルカディアが好きな事を思い出す。

「これとこれ、それぞれ2つずつ。」

 橘寛人はラノベアルカディアのキャラクターが記載されているお守りを全種類、それぞれ2つずつ購入する。

「さて、行くか。」

 橘寛人は神社での用事を済ませ、どんどん聖地を巡っていった。

「ふんふん。ここが、唯我隆斗の故郷、か。」

 ラノベアルカディアの主人公、唯我隆斗の産まれ故郷を訪れる。

「ここが、唯我隆斗と青木明日香が通っていた高校か。」

 唯我隆斗と青木明日香が通っていた高校を訪れる。

「そしてここが、唯我隆斗達が通い詰めていたラーメン屋か。」

 学生時代の唯我隆斗達が通っていたラーメン屋を訪れる。訪れた時点で、誰かの腹の音が鳴る。

「腹減ったし、入るか。」

 腹を鳴らした張本人である橘寛人は、そのままラーメン屋に入る。店員から歓迎の声を受け、橘寛人はカウンターに着席し、メニューを閲覧する。

(この隆斗ラーメン。もしかしてアニメ通りなのだろうか。)

 隆斗ラーメン。それは、唯我隆斗がラーメンを食べる時、複数のトッピングをするのだが、それらを完全再現しているラーメンである。ラノベアルカディアが大人気になり、この店を訪れる客が、唯我隆斗が食べていたラーメンと同じラーメンを食べたいという要望から生まれたのである。今では客の8割がこの隆斗ラーメンを食べにこの店を訪れている。橘寛人もその客の一人である。

「「隆斗ラーメン一つ。」」

 店員の了承する声が聞こえ、ラーメンが作られ始めたのだと推測する。だが、橘寛人はラーメンの製作状況より気になることがあった。

(さっきの声って・・・。)

 さきほど橘寛人と声が重なった人間。声質からして女性だった。声が聞こえた方角を見てみると、そこには女性がいた。それも、かなり見慣れた女性だった。なんなら先週社内で会った人間だった。

「・・・ひ、人違いじゃありませんか?私は青木明日香です。」

 その女性は橘寛人を見ると、すぐに顔を伏せて別の方向を向き、自分は青木明日香だと宣言する。

「いや、俺はまだ何も言っていないぞ?」

 女性に対し、橘寛人は冷静に話かける。

「あ。」

 女性は橘寛人の指摘に声を出して納得する。

「それで、どうして桐谷がここにいるんだ?」

 橘寛人は女性、桐谷杏奈の苗字を口に出して質問する。

「そ、それを言うなら橘先輩こそどうしてここにいるんですか!?」

「俺は旅行だ。それで桐谷は?」

「私は・・・帰省です。」

「帰省?あれ?でも確か・・・、」

 橘寛人はこの大型連休前、桐谷杏奈が帰省しないことを事前に把握していた。それなのに今、桐谷杏奈は帰省している。自分の記憶に語弊があったのかと自身の記憶を引っ張り出す。

「確かに会社では帰省しないと言っていました。」

 その言葉に、橘寛人は自分の記憶が正しかったと確認する。だがここで新たな疑問が生まれる。

「それじゃあ急に帰省を決めたってことか?なんでだ?」

 この質問に、桐谷杏奈は渋い顔を見せる。

「あ、悪い。言いたくなかったら言わなくていい。」

 渋い顔で橘寛人は察し、さきほどの質問に答えなくてもよいと言う。橘寛人の言葉に、桐谷杏奈は首を振って否定を体現する。

「別に構いません。構いませんが・・・、」

 桐谷杏奈はテーブルを指差す。そこにはさきほど運ばれた隆斗ラーメンがあった。

「ラーメン、食べ終えてからにしません?」

 桐谷杏奈の言葉に、橘寛人は肯定の意を示し、お互いにラーメンを食べ始める。

それなりに量があったラーメンを、橘寛人と桐谷杏奈は完食する。成人男性ならともかく、成人女性にはきつい量だったのだが、それでも桐谷杏奈は完食した。きっと、朝食を抜いて昼食に備えたのだろう。

「それでは美味しく充実した昼食を堪能したことですし、近くのカフェで休憩しませんか?」

 桐谷杏奈は携帯をいじった後、携帯の画面を橘寛人に見せる。

「ここか?そういえばここ、なんだか見覚えがあるような?ないような??」

「流石は橘先輩です!このカフェ、ラノベアルカディア第10巻に一度だけ登場したカフェのモデルになった店なんです!ここのカフェオレが名物らしいので、是非飲みに行きましょう!」

「お、おう。」

 こうして橘寛人と桐谷杏奈はとあるカフェに行くことになった。

 カフェに入ると、橘達と同じお客が多くいた。中には純粋にコーヒーを飲み、静かな時間を楽しんでいるが、ほとんどのお客が違う目的で来ている。それは、ラノベアルカディア第10巻に登場しているカフェのモデルとなった店を楽しむためである。橘寛人と桐谷杏奈は空席に座り、店員に注文する。

「私はカフェオレで!」

「俺もカフェオレで。」

 二人のオーダーを聞いた店員は、了承の返事をした後、キッチンの方へ向かった。

「さて、」

 橘寛人は桐谷杏奈の方を向く。桐谷杏奈は橘寛人の視線の意味を察したのか、さっきまで喜び満点の顔をしていたのだが、その顔に思いつめるような顔色が追加される。

「はい。それじゃあ話しますね。」

「・・・本当にいいのか?辛そうだぞ?やっぱ辞めるか?」

 橘寛人は桐谷杏奈の顔色の変化に気付き、話を辞めようと再度提案する。

「いえ、大丈夫です。もしかしたら橘先輩にも関係あることかもしれないですから。」

「俺に関係あること?」

「はい。」

 そして、桐谷杏奈は話し始める。

「まずは、大型連休前最後の出社日から話し始めますね。」

 何故桐谷杏奈は関東から遠く離れた九州にいるのかを。

次回予告

『国民達の大型連休生活~新入女性社員の意図しない帰省~』

 大型連休前の最後の仕事を終えて帰宅した桐谷杏奈は、夕飯の支度を用意している最中に、家族から帰省してほしいと連絡する。桐谷杏奈は帰省に乗り気ではなく、断ろうとしたのだが、家族の強いおしに負けて帰省することにした。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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