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女子新中学生の同好会創設生活

 優が学校に初登校した週。他の中学生たちは無事、期初めテストを乗り越えた。今年入学した1年生達は、来週に控えたお泊り行事に対する準備を進めていた。その準備と同時進行で、どんな部活に入ろうか部活見学をしていた。その中学1年生の中に、ある2人はいた。

「ねぇ洋子?洋子はどんな部活に入りたい?」

「部活、ねぇ・・・。」

 桜井綾に聞かれた風間洋子は悩んでいた。

 二人とも昔から運動関連が苦手なため、風間洋子は部に入るとしたら文化部だと考える。そこまで絞ったのはいいのだが、どの文化部に入ろうか悩んでいるのである。

「それでね、実はお願いがあるんだけど、いいかな?」

「お願いって?」

 お願いがあると言い出した桜井綾に対し、風間洋子はそのお願い内容について質問する。

「出来れば早乙女君と同じ部活に入りたいんだけど、いいかな?」

 桜井綾は風間洋子の顔色を伺いながら願望を述べる。

「早乙女君と同じ部活、かぁ。」

 風間洋子は少し考えてから、桜井綾に自身の考えをまとめて答える。

「もし早乙女君が運動部に入りたいって言ったら、綾も運動部に入りたいってこと?それに、運動部なら男女で活動内容が変わるかもしれないから、一緒に部活動が出来ないかもしれないわよ?それでもいいの?」

 全ての部活が男女合同で行われているわけではない。男女別や能力別で活動内容を分けている部活も存在している。そのことを風間洋子は言っているのだ。

「勝手なイメージだけど、早乙女君って運動部より文化部に入ると思う。後、私は出来れば早乙女君と一緒に部活したいな。同じ部活なだけじゃなくて、一緒に何かしたい。」

 風間洋子の問いに、桜井綾は更なる願望を風間洋子に伝える。

「一緒に何かしたい、か。」

 風間洋子は、2人が所属している中学校、宝鳥中学校にどんな部活があるのか思い出し始める。

「一緒に出来る事・・・料理、とか?」

 風間洋子の言葉に、

「料理・・・うん!早乙女君と料理、作りたい!」

 桜井綾はテンションをあげていく。

「それじゃあ料理部・・・はないわね。家庭科部とかも・・・ないわね。」

「え?それじゃあ早乙女君と料理、作れないの!?」

「・・・。」

 桜井綾の驚きに、風間洋子は何も言えずに黙る。

「・・・待って。」

「どうしたの、綾?」

「たしか部って、作ることが可能だって言っていたよね?」

「・・・そういえば、そんなことを生徒会長が言っていたわね。」

 桜井綾の言葉に、風間洋子は記憶を引っ張りだす。

「うん!だからさ、部を作ろうよ!料理を作る部をさ!そして早乙女君を誘おう!」

 桜井綾の提案に、

「ええ。私も綾と一緒に料理、したいわ。」

 風間洋子の素直な言葉を聞いた桜井綾は、

「やった♪」

 そして二人は、部を立ち上げようと動きは始めた。


「あ~・・・。申し訳ないけど、2人じゃあ部を作ることは出来ないね。」

「「え??」」

 桜井綾と風間洋子はさっそく部を作るため、必要な書類を作成し、職員室に滞在している先生に書類を提出した。だが、先生には断られた。

「ど、どうしてですか!?」

 先生のお断りの言葉に、桜井綾は理由を尋ねる言葉を聞く。

「どうしても何も、人数が足りないからだけど?」

「「え??」」

 先生はあっけらかんと答え、桜井綾と風間洋子は先生の答えに驚く。

「もしかして、部を作る時に人数制限があるの、知らない?」

 先生は本を引き出し、あるページを指差しながら説明する。

「どのような部を作るかにもよるけど、部を作る時は最低10人。同好会なら最低5人は必要だよ。」

「そ、そうなんですか。」

「知らなかったわ。」

 二人は先生から告げられた事実を知らず、驚く。

「だから、提出する気があるのなら、人数を揃えてまた来てね?」

 先生はそう言い、桜井綾と風間洋子から預かった用紙を返す。

「「はい。」」

 二人は職員室を後にした。

「で、どうする?」

「?どうするって?」

 風間洋子の質問に、桜井綾は質問で返す。

「同好会を立ち上げるにしても、私達を含めて後3人、早乙女君を含めても後2人必要なのよ?部なら後7人。一体どうする気なの?」

「う~ん・・・。」

 桜井綾は少し悩む。悩んだ後、

「とりあえず、歩きながら考える!」

 まるで開き直ったかのよう前進し始める。

「そう。」

 風間洋子は桜井綾の決定に何も言わず、桜井綾の横を歩き始める。

 少し2人で歩いていると、

「あ、保健室だ。」

 二人はいつの間にか、保健室前にいた。どうやら桜井綾は無意識に保健室に向かっているようであった。もしかしたら、ここにあの子が、桜井綾が密かに想っているあの男の子がいると思っていたのかもしれない。

「もしかしたら早乙女君、いるかも。」

「そうだね。先生によると、入学式は休んで、次の日は学校に来ていたみたいだけど保健室に来て、期初めテストを受けてそのまま帰ったみたい。そして、今日も学校を休んでいるんだって。」

 何故二人がここまで早乙女優の出席状況を把握しているのかと言うと、二人の担任、小野口春が自ら言っていたからである。小野口春は、去年まで小学生の担任をしていたのだが、今年からこの宝鳥中学校に赴任し、1年1組、早乙女優が所属しているクラスの担任となったのである。

「それにしてもあの先生。また早乙女君の事をカンニング魔、だなんて言ってさ。本当、嫌になる!」

「し!ここがいくら教室から離れているからって誰がいるか分からないから、こんなところでそんなこと言っちゃ駄目よ?」

「は!?」

 風間洋子の指摘に桜井綾はハッとし、口を押さえ、周囲に他の人間がいないか確認する。確認後、風間洋子に耳打ちする形で話し続ける。

「だ、だってさ!またあの先生が担任だなんて驚かない?」

「まぁ確かに私も驚いたわ。」

 桜井綾と風間洋子の言う通り、小野口春が二人の、1年1組の担任だと明かされた時、宝鳥小学校出身の者は驚いた。それもそのはず。何せ感動の別れをしたのに、たった1月で再開したのだ。大小あれど、驚かない者はいなかったことだろう。

「・・・ねぇ?2人は保健室の前で何を話しているの?」

「「!!??」」

 突然誰かに話しかけられた2人は驚き、声がした方向を向く。その方向には、白衣を着ている成人女性がいた。

「せ、先生!?」

 その成人女性は、保健室の先生だった。

「?まぁよく分からないけど、取り敢えず保健室に入りなさい。話しはそれからね。」

 そう言い、寺田静香は保健室の扉を開け、2人を入室するよう案内する。

「「はい。」」

 2人は寺田静香の案内のまま、保健室へ入っていった。

「で、ここまで来てどうしたの?」

「「・・・。」」

 桜井綾と風間洋子は少しの間、互いの顔を見つめ合う。そして、

「実は・・・、」

 話すことに決めた。


「ふぅ~ん・・・。確かに、部や同好会を作る時にそんな規定があったわね。」

 二人の話を聞いた寺田静香は、規則関連が載っている本を読み返し、納得する。

「それで、早乙女君を誘おうと思っているんですけど、早乙女君、明日登校しますか?」

「う~ん・・・それがね。もう今週は登校出来ないと言っていたわよ。だから次登校するのは来週の頭にあるお泊まり行事かな。」

「うぅ。そ、そうなんだ。」

 桜井綾は、早乙女優に会えなくてがっかりした。

「それと、これには同好会を作るには最低5人必要って書いてあるけど、早乙女君と君達2人を入れたとしても、後2人足りないわよ。そのへんはどうするか考えているの?」

「それは、真紀ちゃんと太田君を誘おうかなって。」

「真紀ちゃん?太田君?」

 寺田静香は、桜井綾の言う真紀ちゃんと太田君が誰なのか分からず、隣にいる風間洋子に視線を向ける。

「あ。同級生を誘おうと思って。ね、綾?」

「うん!」

(なるほど。)

 風間洋子の説明に、寺田静香は納得する。

「それで、この・・・料理同好会?料理部?の顧問は決めてあるの?」

「「・・・え?」」

「まさかだけど、顧問を誰にするか決めていない、とか?」

 寺田静香の質問に、2人は沈黙を答えとした。その答えで、寺田静香は全てを察した。

「なるほど。」

 寺田静香は今まで2人が話してきたことを脳内でまとめはじめる。

 そして、ある結論を導き出した。

「私が顧問になろうか?」

「「え??」」

 寺田静香こう結論付けたのには、理由がある。それは、早乙女優のカンニング疑惑である。


 寺田静香は、早乙女優の期初めテストの解答用紙を職員室に持っていき、先生に渡した。きちんと先生としてカンニングしていないか監督した結果、カンニングをしていないことを報告し、職員室を後にした。だが、その報告はなかったことになっており、翌日、ある噂が職員室に充満していた。その噂とは、

“早乙女優という子は昔からテストで高得点を獲得するため、カンニングを躊躇わないカンニング魔。”

 と。その噂と連携するかのように、

「だからその生徒は保健室登校しているのか。」

 なんて声が聞こえてきた。

(なるほど。そういうことね、お姉ちゃん。)

 寺田静香は自身の姉、寺田静音から早乙女優の話を聞いていた。その話を聞いた後、

“早乙女君がもし何かあったら、またはありそうになったら、お願いね?”

 姉から頼まれていた。寺田静香は、姉が言った言葉の意味をここで理解した。彼、早乙女優は誤解されやすい人間なのだと。そして、誤解しているのは先生だけではなかった。

「ねぇ、知っている?」

「うんうん、聞いた。誰かがカンニングしたんだって。」

「何でも、今日休んでいる早乙女優って奴らしいよ。」

「休んでいるって、カンニングしたから登校出来ないんじゃない?」

「そうかも。」

 してもいないカンニングの噂に尾ビレがつき始める。もう噂の完全根絶は無理だろう。だから去年、早乙女優の近くにいた寺田静音は早乙女優の近くに位置し、会話を続け、出来るだけ早乙女優の心に寄り添い続けた。せめて、早乙女優が不登校にならないように。結果、早乙女優は不登校にはならなかったが、普通とは縁遠い学校生活となってしまった。だから、せめて中学生は普通の中学生と遜色ない生活を送れるよう出来るだけサポートしてほしいという願いを込め、寺田静音は自身の妹、寺田静香に後を頼んだのであった。


「い、いいんですか!?」

 桜井綾は思わぬ提案に驚き、、言葉を大きくする。

「ええ。私も早乙女君が笑顔で部活動、同窓会活動しているところ、見てみたいから。だけど条件があるの。」

「「条件?」」

 寺田静香が言う条件と言う言葉を、桜井綾と風間洋子は繰り返す。

「・・・早乙女君を、よろしくね?」

 それは、何かと色々事情を抱えていそうな少年、早乙女優を気にし、普通の一生徒として、同級生として接してほしいという願いが込められていた。

「?うん。だって私、早乙女君と一緒に料理、したいから。」

 桜井綾は先生に向けて笑顔で言う。

「私も、早乙女君の料理、食べてみたいし。何より、綾と一緒に何かすることが嬉しいわ。」

 風間洋子は、桜井綾と一緒にいれることを嬉しいと感じた。

「洋子!ありがとう!」

 桜井綾は風間洋子に抱きつく。

(あの子、結構慕われているじゃない。)

 2人の様子を見ていた寺田静香は安心した。何せ、早乙女優にとって学校にいる人全員が早乙女優を憎んでいるわけではない。そのことが分かり、安心したのである。

 その後、桜井綾と風間洋子は残りの2人、神田真紀と太田清志を料理同好会に誘った。2人が誘いにのったかどうかは別の話で。

次回予告

『新中学生達の外泊生活~その1~』

 4月も折り返し地点になり、大型連休が近づいていくなか、早乙女優達中学生は学校行事の一環で外泊することとなった。ほとんどの者が体調を万全にして臨む中、早乙女優は万全とはいえない状態で当日を迎える。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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