表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/222

何でも出来るOLと人事部なOLの勝負生活~お酒の飲み比べ~

 先月は桐谷先輩を脅迫してくる者の対応や、桐谷先輩と橘先輩二人の引っ越しを同日に行い、忙しなく時が動いていった3月。その忙しさはまる師走のようであった。そんな3月は終わりを迎え、時は4月。4月は色々変化の季節である。その変化を感じる者は数多く、新たな学校に入学したり、会社に入社したりと、自身を取り巻く環境が大きく変化することでしょう。当然、私をとりまく環境も変わっていくわけでして・・・。


「はぁ~。とうとう、4月になってしまったわ。」

「?どうしたのですか、菊地先輩?」

 菊池先輩がいつにもまして憂鬱そうです。いつもの菊池先輩とどこか違うように感じます。

「4月になったということは、あいつが、あいつがやってくるわ。」

「あいつ、ですか?」

 菊池先輩の言うあいつとは一体誰のことなのでしょうか?

「はぁ~。本当、憂鬱だわ。」

「憂鬱なのは分かりました。ですが、ここでその憂鬱な空気を出来る限り拡散させないようお願いしますね。」

「なんでよ~?優君に愚痴の一つや百億個くらいこぼしたっていいじゃん。」

「百億個って愚痴り過ぎでは?て、そんなことより、ここはみなさんが今も朝食を召し上がっているのですよ?朝から菊池先輩の愚痴を聞いては、志気が下がってしまいますよ?」

 今は4月になったばかりの朝。それも平日。なので、もうすぐ私達は会社に出勤しなくてはならないのです。出勤前の朝食の時間から愚痴を百億個も聞きたくはないものです。

「だって~。あの忍者が今日襲ってくるのよ?面倒くさいじゃない?」

「忍者?…ああ、川田先輩のことですか。確か今日、でしたね。」

「そうなの。本当、本当に面倒くさいわ~。」

 と、菊地先輩は重いため息を吐いた。

 今日は菊池先輩と川田先輩が、菊地先輩の仕事を賭けた勝負が行われるのです。この戦いに菊池先輩が負けたら、菊池先輩はこの職場を退職しなくてはならないのです。菊池先輩が勝ったら・・・何も起きません。正直、菊地先輩が勝ったら何かお礼でもすればいいのに、なんて考えるのは私の我が儘でしょうか。まぁ、これは菊池先輩と川田先輩との戦いですし、私が深く口を挟むべきではないでしょう。

「そうだわ。今日は仮病を使って、会社を休むとするわ。」

「仮病、ですか。」

 その時、誰かがこの社員寮に来たらしく、チャイムが鳴りました。

「?こんな時間に誰でしょうか?」

 普段、こんな時間に訪問してくる人なんていないのに。

「俺が見てくるわ。」

「お願いします。」

 工藤先輩が様子を見に行ってくれました。工藤先輩なら下手な対応はしないでしょう。

「そうね。優君、今から私は風邪を引くから、体調不良で休むことにするわ。」

「そんな無茶な・・・。」

 今から風邪を引くって。全裸で外に出て何時間も氷水を浴び続けるつもりなのでしょうか。

「いや、生理痛ということにしておけば、他の人に怪しまれることなく・・・、」

「聞こえているわよ?」

「「!!??」」

 こ、この声ってまさか!?

「まったく。そんなに今日出勤したくないのかしら、菊池美奈?」

「で、でたな!この忍者が!」

「誰が忍者ですか!?」

 か、川田先輩じゃないですか。一体どうやって?まさか、さきほどのチャイムって、川田先輩が鳴らしたのでしょうか?

「いや~驚いたよ。様子を見たら川田が立っていたからさ、急用って言うから入れたんだけどな。」

「ち!この役立たずが!何でこの不審者をこの寮に入れるのよ!」

「しょうがないだろ!急用だって言ったんだから!それで川田、急用って何だ?」

 確かに気になります。川田先輩が言う急用とはい一体何なのでしょう?

「そこにいる某人が会社を不当に休もうとしていることを小耳にはさんだから、無理矢理にでも連れて行こうと思ってね。」

「その耳、地獄耳のレベルじゃねぇだろ。」

 川田先輩、一体その情報をどうやって入手したのでしょうか?確か、菊地先輩が休もうとしているのはさきほどのことのはず。

「とにかく、あなたは今日、会社に来て仕事をしてもらうわよ。」

 そう言いながら、川田先輩は菊池先輩に少しずつ詰め寄り始める。

「私、今風邪を引いているの。それはもう高熱で高熱で・・・、」

「おでこを触ったところ、平温みたいなんだけど?」

「わ、私今日、生理痛で・・・、」

「見たところ、生理痛に苦しんでいる様子が見られないのだけど?」

「・・・く!急な生理痛が!」

「下手な子芝居なんか打ってないで、さっさと出勤準備しなさい。ほら。」

「いや!出勤したら仕事をさせられ、面倒くさい戦いをさせられるんだもの!絶対に嫌!!」

「正当な理由でない限り、休みは認めません。それと、私との戦いを面倒くさいなんて言わない!」

「い~や~!優君助けて~!」

「ほら、まずは着替えなさい。」

 菊池先輩は川田先輩に連れられてしまった。なんだか哀れな気もしますが、自業自得な面もあるのでなんとも言えません。

「・・・俺達も出勤準備して行くか?」

「ですね。」

 少しの間、沈黙が周囲を包み込んだ後、工藤先輩が提案してくれました。私はその提案に賛同し、出勤しました。少し時間が経過し、川田先輩に引きずられるような形で菊池先輩が出社し、仕事をし始めました。始業時間直後は、私を見ると元気になっていたのですが、お昼後は、終業時間が近づいていく度に、

「優君、今から愛の逃避行でもしない?」

「優君、仕事が終わったらすぐ、遠くに行って遊ばない?」

「菊地先輩、現実逃避していないで、今目の前にある仕事に集中してください。」

 おそらくですが、今日仕事後の川田先輩との戦いが嫌なんでしょうね。こればかりは私一人でどうこう出来るわけでないですし、応援だけ心掛けるとしましょう。


 そしてさらに時間は過ぎ、間もなく終業時間。みな、終業間際に行っていることをやり始め、デスクに散らばっている資料を簡単に整理し始めている。

「優君、優君。」

 そんな時、菊地先輩が私に話しかけてきました。

「どうしました?」

「もうそろそろ定時だからさ、この後すぐに遠出して、どっか食べに行かない?」

「遠出して、ですか?」

「ええ。なんでも有名な店らしくてね。特にデザートは、食材や製法にこだわり、惜しみなく時間を費やしたアイスが有名でね、」

「ぜひ行きましょう!」

 そんな店に行けるなんて、今日は幸運です!

 ・・・あれ?

「今日、川田先輩と用事があったのでは?」

「・・・。」

 私の質問に、菊地先輩は固まる。そして、終業の時間となる。

「さ、帰りましょう!それはもう、瞬間移動ばりにね!」

「それはなんのためかしら?」

「それはもう、あんな面倒くさいことはしたくないからさっさと逃げようと。分かるでしょう、優君?」

「菊地先輩、私じゃないです。」

 さきほど質問してきたのは私ではありません。

「え?どういうこと?それじゃあ誰が私に質問してきたの?」

「私よ。」

「え?こ、この声はまさか・・・忍者!?」

「忍者じゃないわよ!失礼ね!」

「お前、今定時になったばかりなのに、どうしてもうこの場にいるの?」

 川田先輩が私達のすぐそばにいた。ちなみに時刻は定時を過ぎたばかり。私達と川田先輩が働いている場所は、階が違ったはず。それなのにこの場にいるのはおかしくないですか?普通なら移動時間に数分はかかると思うのですが、まだ定時から1分ぐらいしか経過していませんよ?

「そんなことより、仕事、終わったわよね?」

 川田先輩が菊池先輩に聞く。

「え?お、終わっていないわよ?今日は徹夜で終わらせたい仕事があってね。」

 と、菊地先輩は堂々と嘘をつきました。

「ふ~ん。仕事に関してはとても早く、クオリティも問題ない完璧超人が残業?へぇ~。」

 川田先輩は、菊地先輩の嘘を見抜いているようです。まぁそうですよね。菊池先輩は仕事に関する能力は著しく高いですからね。仕事をする早さはもちろんですが、質もととても高く、お得意様からいつも褒められているほどですからね。仕事以外に関して問題があるので私としてはなんとも複雑なのですが。

「・・・。」

「さ、帰るわよ?支度はほとんど済ませてあるから。」

「優君!この忍者に言い聞かせてあげて!こんな面倒くさい勝負したくないって!しても無駄だって!」

「全部聞こえているわよ!さぁ行くわよ!」

「優君助けて~!」

 そう言った後、菊地先輩は川田先輩に連れられました。

「・・・あの二人、実は結構仲がいいのではないでしょうか?」

「さぁ?」

 桐谷先輩と橘先輩の会話が聞こえてきました。まぁ本当に嫌いであれば、職場を変えるかもしれません。なので、職場を変えないくらいに仲はいいのでしょう。・・・その認識が正しいのか、本当に仲がいいのかは判断できないのですが。

「私は帰りますが、お二人はどうします?」

 つい先日引っ越してきたばかりですし、まだ必要なものを買いそろえていないかもしれません。

「私は大丈夫です!優さんについて行きます!」

「俺も大丈夫だから、一緒に帰るわ。」

「分かりました。それでは一緒に帰りましょう。」

 といっても、社員寮はすぐ近くなんですけどね。

 そう言い、私達は3人、

「おい!?俺の存在を忘れないでくれよ!俺も一緒に帰るぞ!」

 失礼しました。3人ではなく、工藤先輩を含めた4人で社員寮に戻りました。


 帰宅後。私はすぐジャージに着替え、共同リビングに向かいました。するとそこには、

「はぁ~~~・・・。」

 長い溜息をつく菊池先輩と、

「ふっふっふ。今日こそ私が勝たせてもらうわ!」

 意気揚々としている川田先輩がいた。そしてテーブルには多くのお酒が鎮座しています。このお酒を用意したのは、紛れもなく川田先輩でしょうね。今日の勝負のためにここまでお酒を持ってくるとは、流石です。種類も豊富にあるみたいですね。私が成人していたら飲んでいいか聞いていたかもしれません。

「・・・。」

「まだあげないからね?勝負で余ったらあげるから。」

 工藤先輩が欲しそうに見ていたことに気付き、川田先輩は釘を刺しました。工藤先輩なら人の酒を勝手に飲む愚行はしないでしょうが、念のためでしょう。

「それじゃあ、勝負よ!」

 そう言い、川田先輩は大きな酒瓶をテーブルに音を立てて置いた。

「私、優君のご飯を食べないと飲めない体なの。だから私、優君のご飯を食べない限り、その勝負は受けないわ。というか出来ないわ。」

「そうなの?」

「そんな訳ないと思います。」

 そんな制限聞いたことありません。

「何さらりと嘘ついているのよ。」

「でもご飯を食べないと飲まないのは本当よ?優君、一緒にご飯作って食べよ~♪」

 そう言い、菊地先輩は私に抱きつく。私に胸を当てているのはきっとわざとでしょうね。

「分かりましたから離れて下さい。」

「分かったわ♪」

 こういう時の菊池先輩は聞き訳がよく、すぐに私を解放してくれました。

「それじゃあ作りますか?」

「ええ、もっちもちのもちろんよ♪」

 ・・・たまに思うのですが、菊地先輩は意味不明なことを言ってきますけど、何を言っているのでしょう?私はスルーしているのですが、これは正しい反応なのでしょうか?これ以上深く考えても分からないので、次困った時は工藤先輩に聞くとしましょう。工藤先輩なら最適な対処法をご存知かもしれません。私はそんなことを考えながら、夕飯を作り始めた。

 今日の夕飯は、

「今日は目一杯酒を飲めるらしいからな。俺からの差し入れだ。」

 工藤先輩から差し入れしていただいた枝豆を存分に使わせていただきました。

 枝豆入りの炊き込みご飯に、枝豆コロッケ、枝豆サラダ。もちろん、塩ゆでした枝豆も大量に用意しています。ほとんどの方が、塩ゆでした枝豆を酒の肴にしますからね。

「「「いただきます。」」」

 こうして、みんなの夕飯が始まりました。数口食べたところで、

「さぁ、早乙女君特製の夕食を食べたことだし、勝負よ!」

 川田先輩は菊池先輩を指差しました。この際、人を指差してはならない、なんていうことは無粋かもしれませんので言わないでおきましょう。

「ええいいわよ。優君の料理を食べた私の飲みっぷり、見せてあげるわ。」

 こうして、川田先輩と菊地先輩2人の飲み勝負が始まった。


 飲み勝負が始まってから2時間。この2時間、本当に大変でした。

 何故大変だったかというと、

「私、優君の制服姿が見たい。」

 その菊池先輩の発言で、「確かに俺も見てみたいな。」とか、「そっかー。あの優ちゃんももう中学生になるのね。私も年をとるわけね。」なんて言葉が聞こえてきました。話の流れを推測し、いち早くこの場から退散しようとしましたが、

「優く~ん?私、優君のセーラー服姿、みた~い♪」

 菊池先輩が私に抱きついてきました。もう、川田先輩と飲み勝負をしているのではありませんでしたか?そんなことを考えながら後ろを振り返ると、「そうよ!早乙女君のセーラー服を見ないと酒が進まないわ!今すぐ着て!」と、川田先輩まで意味不明な事を言ってきました。間違いなく酔っているのでしょう。でなければ、平静時には絶対、私に女装を進める発言はしませんからね。私は川田先輩の発言を流し、呆れていたのですが、周囲の人間も酔っぱらっているためか、冷静な判断が出来なくなっていることに気付いていませんでした。

「優ちゃんは今から、このセーラー服を着るべきなのよ!」

 そして、菊池先輩のこの発言に、

「本当、菊地美奈の言う通りね!」

 川田先輩まで言ってきました。さきほどの言葉は気のせいだと思いたかったのですが、そんなわけにはいかないようです。そしていつの間にか菊池先輩の手に女性物の服が。もう嫌な予感しかしません。

「さ、優君?これを着てね?」

「逃がさないわよぉ?」

 菊地先輩だけでも厄介なのに、川田先輩まで。これだから酔っぱらいは好きになれないんですよね。まぁ、見ず知らずの人に迷惑をかけるより幾分かマシだと思いますけど。だからといって私を女装させようとするのはどうかと思います。これはもう、他の先輩方に助けを求めましょう。

「桐谷先輩は私の女装姿なんて見たくないでしょう?」

 私は桐谷先輩に当然のことを聞いた、つもりでした。

「いいんじゃないですか?優さんの女装姿、普段からとてもよくお似合いですよ?」

 まさかの裏切りでした。こうなったら橘先輩です。

「同じ男である橘先輩なら女装したくない気持ち、分かりますよね?」

 私は期待を込めて橘先輩を見つめる。

「・・・まぁ、一度着れば収まりそうだし、中学生になった記念に一度だけでも着てみたらどうだ?」

 もはやこの場に私の味方はいないのでしょうか?いえ、まだです!まだ工藤先輩がいます!

「あなたも優君の女装姿、見たいわよね?」

「そうだな!優の女装姿は何度でも見てみたいな!だからその酒をください。」

「ふっふっふ。話が分かる男で助かったわ♪」

 工藤先輩はどうやら、菊地先輩が持ってきたお酒に心奪われてしまったようです。

「そして優君には、これよ!」

「な!?そ、そのアイスは!?」

 まさか、鹿児島県でしか作られていない地酒の味を再現した、鹿児島県でもごく一部しか生産されていないアイスではないですか!!??そのアイスはノンアルコールで子供でも食べられるという宣伝もされていたあのアイスがどうして菊池先輩の手に!?私があの手この手で入手しようして、今も手をこまねいているところですのに。

「優く~ん?このアイスを食べたいのなら、」

「食べます!そして、着ます!」

 私はアイスに釣られてしまい、ついついセーラー服に袖を通してしまいました。アイスに釣られてしまったさきほどの自分を恨みたいところです。

「に、に、似合っているわ!!最高よ、優君!!」

 この菊池先輩の言葉がスタートの合図となったのか、「さすがは優ちゃんね♪」や、「実は優、女なんじゃないか?」なんて言葉が聞こえてきました。まったく失礼です。私は男だと何度も宣言しているというのに。まぁ、身長の低さで性別を誤解されることは何度もありますけど、あんまりじゃないですか。

「優く~ん?他にも来て欲しい制服と、期間限定地域限定のアイスがあるのだけど、どうする?」

「アイス!食べたいです!!」

「それじゃあ制服、着ましょうね?はい♪」

「はい!」

 私はこうして、別の制服を着せられることになってしまいました。アイス関連になると食欲の赴くままに答えてしまう自分が虚しいです。アイスはとても美味しくて満足したのでよかったといえばよかったですけどね。菊池先輩からいただいたアイス、どれもこれも美味でした♪


 途中、私が女性用の制服を着るという謎のイベントがありましたが、それでも菊池先輩と川田先輩は飲み勝負を続けていました。

 その結果、

「うぅ。負けたくない。負けたくないのにぃ。」

「もう飲めないの?それじゃあ私の勝ちでいいわよね?」

「うぅ。また私の負けだなんて。悔しいぃ。」

「まぁ結局、こうなっちまうんだよなぁ。」

 菊池先輩と工藤先輩以外、酔い潰れてしまいました。酔い潰れた人達の中には川田先輩も含まれています。つまり、今回の菊池先輩と川田先輩の勝負の勝敗が決定したことを意味しています。

「それにしても、菊地先輩はどうしてそんなにお酒に強いのですか?工藤先輩は常日頃飲んでいるから分かるのですが、菊地先輩は普段飲んでいませんよね?」

 まぁ、自室で飲んでいる可能性もあるので、普段飲んでいない、なんて言いきれないのですが。少なくとも私の目が届いている範囲では、菊地先輩はほとんど飲酒している光景を見ていません。

「うふふ♪それはね、」

「それは?」

「私だからよ!」

「それ、答えになっていませんよ?」

 何故そこまで自信満々なのでしょうか?私の質問の意味が理解出来ないわけでもなさそうですし、これ以上突っ込むのは無意味でしょう。菊池先輩はそういう人なのだと、こちらが無理矢理納得するしかなさそうです。

「うぅ。」

「川田先輩、大丈夫ですか?」

 私は、川田先輩の体調が不調そうに見え、手を貸す。あれほどお酒を飲んで体調火等崩さないわけありませんよね。二人を除いては、ですけど。

「だ、大丈夫だ、うぅ。」

「すぐにトイレに行きましょう。そこで楽になりましょう。肩、失礼します。」

 私は川田先輩に肩を貸そうとしたのですが、私の身長が小さいばかりに、川田先輩を負担なくトイレに運べません。こうなったら抱っこするしかなさそうです。

「腰、失礼します。」

 私は川田先輩の体を持ち上げる。

「ごめんねぇ~。私、重くない?」

「いえ、まったく重くありませんので大丈夫です。」

 成人女性の平均体重も川田先輩の体重も知らないので何ともいえないのですが。

「いいなぁ~。私も酔っぱらえば優君にお姫様抱っこしてもらえるかな?」

「馬鹿な事言わないでくださいね?」

 私はそんなことを菊池先輩に言いながら、川田先輩とともにトイレに向かい、川田先輩のお世話をした。数分経過し、トイレから戻ると、

「zzz・・・。」

 工藤先輩は完全に寝ていた。他の先輩方はさきほどの2時間の間に自室に戻っていたので、この場には私、工藤先輩、菊地先輩、川田先輩の4人しかいません。

「優く~ん?私、酔っちゃったみたいなの~♪だからぁ~、私をお姫様抱っこで部屋まで連れてって~♪そして~、私を一晩中愛して~♪」

「馬鹿な事言っていないでさっさと自室に戻ってくださいね?もうこれでお開きにしましょう。」

「ぶぅ。優君のけち~。でも大好き♪」

「ありがとうございます。私も菊池先輩のことが大好きですので、さっさと自室に戻ってください。」

「は~い♪お休み、優君♪♪」

 全ての食器は今水に浸けていますので、川田先輩を寝かしつけてから洗うとしますか。そういえば川田先輩はこの後、どうするおつもりだったのでしょうか。今から川田先輩のお宅に訪問して置いていくことは出来ないですし、明日は休日です。この共同リビングで寝かせても問題ないでしょう。この共同リビングにはベッドはないので、毛布と布団を持ってきますか。念のため、川田先輩に何か起きた時に対応できるよう、私もこの共同リビングで一晩明かしますか。やることはいくらでもあるので、そのやることをやりながら、川田先輩の目覚めを朝まで待つとしますか。まずは食器の片づけをしながら朝食を作って、それから資格取得のための勉強を行っていくとしましょう。

「zzz・・・。」

 私は川田先輩を寝かし、

「お休みなさい、川田先輩。」

 私は独り言をこぼす様に告げ、作業に入った。

 その後、川田先輩は酔っぱらっていた記憶が残っていた、起床して私の顔を見た瞬間、とても申し訳なさそうに、「本当に迷惑をかけてごめんなさい。この度は本当に、本当に申し訳ありませんでした。」と、畏まった謝罪を受けました。私としてはほとんど気にしていなかったのでその旨を伝えると、「だって、私の事をお姫様抱っこで運んでくれたでしょう?その・・・重くなかった?」なんて言ってきたので、そんなことはないと伝えました。私の質問に、川田先輩はとても不思議そうな顔をしていましたが、そのまま帰って行きました。元気になったみたいでよかったです。

「ま、あんな醜態を年下に晒してしまったのだから、当然の反応なのかもね。」

 なんて菊池先輩が言いましたが、どういう意味でしょう?前夜の川田先輩の様子が恥だなんて思った事ないのですが。もしかしたら、川田先輩は私と異なる価値観を持っており、その価値観で醜態だと判断したのでしょう。であれば、私がこれ以上深く考えても仕方がなさそうです。

「げ!!??」

 突如、菊地先輩が変な声を発しました。

「どうしましたか、菊地先輩?」

 私は菊池先輩に質問します。

「あいつ、8月もまたやる気みたいよ。」

 そう言いながら、菊地先輩は私に携帯画面を見せてきました。私は菊池先輩の言葉に意味を理解すべく、携帯画面を凝視します。その画面に記載されている内容を大まかに訳すと、以下の事が書かれていました。

“今回は負けたけど、8月は絶対に負けないわよ!”

 と。なるほど。それで菊池先輩は嫌そうな顔をされていたのですか。

「8月も頑張ってくださいね。」

 私は菊池先輩に応援の言葉をかける。

「うへぇ。」

 菊池先輩はとても嫌そう?面倒くさそう?な顔をしていました。私からは頑張ってください、としか言えません。これ以上の発言は控えますか。

「まぁ先の事を嫌がっても仕方がないわ。それより優君、せっかく今日は4月の休日だし、制服を着てもらおうかしら?」

「全力でお断りさせていただきます。」

「そ、そ、そんな!!!???」

「何故そこまでガッカリ出来るのでしょうか?」

 相変わらず菊池先輩の感性が分かりません。ひとまず、今日の朝食を作りますか。出来れば川田先輩も食べていけばよかったのに、早々と帰られてしまいましたね。一緒に食べたかったのですが、仕方がありません。

 さ。今日も有意義に休日を過ごしますか。

次回予告

『小さな会社員の中学初登校生活?』

 早乙女優が小学校に通い始めてから1年。ついに早乙女優は中学生になり、中学生となった。そして、記念すべき初登校日だったのだが・・・。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ