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ある姉から小さな会社員への進路報告生活

 日は経過して3月第2週。私達社員が会社に出勤した時、男性社員達が女性社員にお返しを渡していた。女性社員は「ありがとう。」と言いながら笑顔で受け取っていた。中にはその場で封を開けて食べている人もいました。その人曰く、「う~ん。今年も美味しい♪ありがとう。」と、味の感想を述べていた。味については問題なかったみたいでよかったです。時折、女性社員の先輩方から、「優ちゃん、ありがとう♪」とお礼を言ってきた。おそらく、私が一枚噛んでいると感づいているのでしょうね。私も女性社員の方々にホワイトデーのお返しを渡すことが出来たので良かったです。

「優君!このお返しを生涯、私の宝として永久の時より長く保管するわ!!」

「そんな長い時保管していないで食べて下さい。」

 菊池先輩は相変わらず過剰に感謝していました。感謝もいきすぎると困惑してしまいます。

 そういえば、今週潮田さんとお出かけする予定なんですよね。なんか昨日、突然連絡が入ってきて、することになったんですよね。まぁ今週の休日に関して特に切羽詰まった予定が入っていないですし、問題ありません。女性服を購入する事態は是非とも避けたい事態ですね。潮田さん、私のことを女性と誤認しているみたいですし、出来れば誤解を解きたいです。まぁ解いたら解いたらで別の問題が発生しそうなのですが。

「優君、仕事中に何考え込んでいるの?」

「・・・ちょっと仕事で度忘れしてしまったところがあったのですが、さきほど思い出したので大丈夫です。」

 私は咄嗟に出した言い訳を口にし、何とかこの場を乗り越える。菊池先輩、どうして私が考え込んでいると分かったのでしょうか。相変わらず私のことをよく見ています。それとも顔に出過ぎていた?今後はもっと顔に表情がでないよう気を付けて仕事していくとしましょう。

 時折、橘先輩と桐谷先輩の引っ越しに関する話を聞きながら、忙しい仕事をこなしていき、潮田さんとの約束の日を目前に控えた。


 忙しい仕事の日々を乗り越え、休日。休日出勤は無く、今日はのんびり資格取得のために勉強を・・・ではなく、

「これでいいか。」

 本日、潮田さんとお出かけするため、その準備をしていました。財布はもちろんの事、私服を購入するのであれば、手荷物はいつも以上に少なくしておいた方が都合がよいかも。

「・・・。」

 なんか私、潮田さんとのおでかけを楽しみにしていませんか?結構ピンチな事態になることが予想できそうですけど、大丈夫でしょうか?いえ、今から悩んでいても仕方がありません。いざとなれば急用で場を離れれば問題ないはずです。そのいざという場面がこなければいいのですけど。

 着る服は当然ジャージにしますか。いくら女性に思われているからと言って、私が自分の意志で女性服を着ると、「優君!?ついに受け入れたのね!」と、菊地先輩に言われてしまいそうです。

「あ。ゴミを捨てにいかないと。」

 すっかり忘れていました。私は捨てるゴミを手に取り、ゴミ捨て場まで足を運ぶ。ゴミを捨て終え、社員寮に戻ると、

「あ。」

「あ。お、おはよう、優さん。」

 何故か、女性がいた。しかもその女性の顔に見覚えがあります。確か・・・。

「・・・おはようございます、美和さん。」

 去年、色々相談に乗り、家族と話をしたことがある美和さんである。そういえば、美和さんのご両親とお話をしたことはありますが、美和さんの妹さんとお話をしたことがありませんでしたね。美和さんの妹さんは一体どのような方なのでしょうか。美和さんみたいに優しく、芯のある方でしょうね。多分、ですけど。

 それにしても、休日の朝に何故寮の前に?誰かに用事があるとか、でしょうか?では誰に?・・・おそらくですが、私でしょう。去年はそれなりに関わりを持っていましたからね。一応私ではない別の誰かに用事がある、という可能性もありますので、確認しておきますか。

「それで美和さん。こんな時間に来て、誰かに用事でもあるのですか?」

「うん。優さんならこの時間にいるかなって。」

 どうやら、美和さんに用事があるのは私のようです。私の憶測は正しかったという事ですね。

「私に用、ですか?」

 私に用とは、一体どのような用なのでしょうか?もしかして、またストーカー被害に遭っているとか!?いえ、それはない、とは言い切れませんがほとんどないでしょう。ストーカー関連であれば、私が渡した名刺、下田事務所に相談すればいいはず。となると、それ以外の用事、ということなのでしょうか?

「うん。外で立ち話もなんだから、一緒に朝ご飯でも食べない?場所は・・・前に行ったあの店でいい?」

「構いません。」

 本当なら潮田さんの用事の最終チェックでも行おうかと思っていたのですが、まぁいいでしょう。記憶しているので問題ないですし、約束の時間までまだあります。ですが、店内で過ごす時間によっては、美和さんとご飯を食べてから待ち合わせ場所に直交する可能性もあります。その可能性を考慮し、外出に必要な荷物を持っていくとしますか。

「ですが、必要な荷物がありますので、その荷物を取りにいったん自室に戻ってもいいですか?」

「う、うん。もちろんいいわよ?」

「ありがとうございます。」

 私は自室に戻り、あらかじめ用意してあった荷物を手に取り、再び自室の鍵を閉める。

(きちんと鍵は閉めて・・・ありますね。)

 鍵がきちんと閉められていることを確認し、

「お待たせしました。」

「うん。それじゃあ行こうか?」

「はい。」

 それにしても美和さん、一体私に何の用があるというのでしょうか?


 場所を移動し、私と美和さんは店内に入っていった。店員さんの案内により、私と美和さんは席を着き、メニュー表を開く。

「私はモーニングカレーセットを。」

「私も同じで。」

 メニュー表を開いたものの、前に頼んだメニューを頼むことにしました。そしてカレーが届くまでの間、私は美和さんに話を振ることにしました。

「それで、私にどのような用があるのですか?」

 私は本題を切り開く。

「えっと・・・どうやって話そうかな・・・?」

 そう言い、しばらく悩んだ後、

「えっと・・・何か私に聞きたい事、ある?」

 そう言われましても…、

「別に特別聞きたいことはありません。」

「え!?そうなの!!??数か月一切会っていないのに!!!??」

「私の記憶では美和さん、先月に会いに来たと思うのですが、どうでしょうか?」

「う。そういえばそうだったわ。」

 先月の事なのに忘れていたのでしょうか?ど忘れであれば可能性がありそうです。

「それで美和さんは、何を私に伝えたいのですか?」

 私は美和さんに質問してみる。

「そうね・・・私の現状報告でもするわ。」

 と言い、美和さんは小さな鞄から一枚の紙を取り出し、机の上に出す。この紙は、何か資料みたいですね。ある大学の名前が記載されているようです。その大学に関することがこの一枚に要約され、記載されているみたいです。

「この大学がどうかしたのですか?」

「私が今年受験生だったのは覚えているよね?」

「ええ。」

 確か、この店で話している時に聞いていましたね。今年受験をすると。そういえば、もう受験はほとんど終わっているような気がします。後残すのは後期ぐらい、ですかね。よく覚えていないので、間違って覚えているのかもしれませんが。

「そして私は今年、この大学を受けたの。」

「結果はお聞きしても?」

 そういえば、美和さんの学力は聞いていませんでしたね。数年前の学力は平均以上と聞いていましたが、現状はどうなっているのでしょうか?

「もちろん!」

 そう言い、再び鞄を漁り、またも紙を二枚だしました。この数字の羅列は、もしかして受験番号でしょうか?もう一つの紙には、大量の数字が並んでいますね。上に合格者一覧、と記載されていますね。そして、双方の紙に目立っている赤丸。この赤丸内の数字が同じですね。となると・・・、

「受かった、という認識でよろしいでしょうか?」

「うん!私、この大学に受かったの!優さんのおかげよ!」

「私の、ですか?」

 私、美和さんに勉強を教えた記憶なんて脳内のどこにも存在していないのですが?

「私は美和さんに何も教えていませんよ?」

「ううん。私は優さんのおかげで、勉強に集中できて、夢も出来た?」

「夢、ですか?」

 美和さんの夢とは一体なんでしょう?そんな話、一度も聞いたことがありませんね。

「うん。私は将来、弁護士になろうと思っているの。」

「弁護士、ですか。」

「うん。前の私みたいに困っている人を助けられるような、そんな人になりたい。そのためには、法律に詳しくないと駄目だと思ったの。」

「だから、弁護士になろうと決めたのですか?」

「駄目、だったかな?」

 私は美和さんの質問に即答できなかった。

(・・・よし。)

 私は自分なりの回答を脳内に浮かべてから返事をする。

「駄目とか良いとかは、今は判断できないと思います。良かったと思えるよう、これからを過ごしていってください。」

 人の人生に間違いや正解なんてつけられない。もちろん、殺人や脅迫等、やってはならないことは多々ある。けれど人の人生とは、それぞれの人に合った様々な生き方があるはずです。自分に合った生き方を見つけるのはとても難しい。無理かもしれない。だから自分で考え、行動し、自分で自分の人生を正解に導くしかないと思っている。

 私の今の生き方も、きっと普通の人から見ればおかしいかもしれないし、間違っている事でしょう。少なくとも、普通の人と異なった生き方をしている自覚は私自身あります。それでも、私は今の生き方を変えるつもりはありません。何せ、今のこの生き方こそ、私が望んだ生き方なのですから。

 正解か間違いかをどうしても判断したいのであれば、今の自分が幸せか不幸せ化で判断すればいいのではないでしょうか。あくまで私個人の考えなので、強制もしないし強要もしません。

「そう。それじゃあ、あの時の優さんみたいに助けられるよう頑張るね。」

「そうですか。ぜひ、頑張ってくださいね?」

「うん!」

 やはり、人は苦しい顔を浮かべるより笑顔の方が素敵だと思います。言葉にするのは恥ずかしいのでやめておきますが。菊池先輩に向けて言ったら・・・鼻血だしそうです。

「お待たせいたしました。」

 ここで店員から、私達が頼んだメニューを運んできてくれた。

(あ。そういえば。)

 店員にお礼を述べてから、忘れていたことを思い出す。

 それは、合格祝い。今年、美和さんは頑張り、受験を成功という形で乗り越えたのだ。親御さんからきっと何かしらの合格祝いをいただいていることでしょう。女性なら・・・流行りの服とか化粧道具とか、そんなものでしょうか?であれば、私はそれ以外の何かを美和さんに合格祝いとして渡すとしますか。何かいいものはあるでしょうかね。何かいいものは・・・。

(ありました。)

 今日潮田さんに渡そうと思っていたお返しです。このお返しは先日に作っている上、失敗してもいいように多めに作ってあります。なので、他の方にこのホワイトデーのお返しを渡しても、潮田さんに渡す分は確保できているんですよね。これを合格祝いにすればいいでしょう。

(このお返しは、食後に渡すとしますか。)

 私のお返しは食べ物ですからね。飲食店で堂々と食べ物をテーブル上に広げるのはマナー違反になるかもしれませんからね。

 話をしながらも食事を終え、

「ふー。」

「美味しかったですね。」

 私達は店を出ました。これであれば渡せそうです。

「美和さん」

「ん?なぁに?」

「これ、合格祝いとして受け取ってください。」

 私は鞄から包みを取り出し、美和さんに渡す。

「これって・・・?」

「合格祝い?」

「はい。さきほど大学に合格したとのことでしたので、ささやかながらそのお祝いをこれでさせていただきます。」

 私は包みを美和さんに渡す。

「これって・・・?」

「食べ物です。ちゃんとしたお祝いは親御さんにしてもらってくださいね?」

 まぁ、あの親御さんであれば、私の想像以上に、美和さんを祝ってくれることでしょう。それほど、美和さんを大切に思っていたのですから。

「ありがとう。ありがとう。」

 美和さんは私の小さな体に抱きついてきた。

(よかった。)

 喜んでもらえてよかったです。私に少しの間抱き続けた後、美和さんは離れてくれた。

「そういえば優さんって、どこの大学に行くことにしたの?」

「・・・え?」

 私、小学生なのですが?

(あ。)

 そういえば、美和さんは私の年齢を勘違いしていたんでしたね。確か美和さんと同じ高校3年生、でしたっけ。となると、私も大学に向けて入試をし、大学に入学したと考えてもおかしくないでしょう。本当は私、小学生なのに。あ、今年で小学校を卒業し、中学校に入学するため、今年からは中学生でした。

「え?だって今年、優さんも受験生だったでしょう?どこの大学受けたのかな~って。」

「・・・。」

 私、どこの大学も受けていないのですが。はて、どう返事すれば・・・?

「…まだ、合否の通知がきていないのです。」

 私はとりあえず、この場しのぎの言い訳をすることにした。

「え!?まだ合否判定出てないの?遅くない?」

「…まぁ、遅いとは思いますが、後期で受けましたので。」

「なるほど。後期ならまだ合否判定が出ていないのかも。」

 美和さんは私の言葉に納得してくれました。咄嗟の言い訳に納得してもらってよかったです。

「合格の通知が来たら教えて。今度、私が合格祝いを贈るから。」

「分かりました。」

 そもそも受けていないので合否の通知なんてこないでしょうけど。

「それじゃあ、朝なのにわざわざ付き合ってくれてありがとう。」

「いえいえ。」

「それじゃあまた近いうちに会おうね♪」

「…美和さんが望むのであれば、きっと遠くない未来にまた会えますよ。」

 私からは望みません。何せ私は証拠確保のためとはいえ、美和さんを危険な目に遭わせた張本人ですから。

「ええ。それじゃあ。」

「はい。朝食、ご馳走様でした。」

 私は頭を下げ、美和さんを見送った。

「さて、そろそろ電車に乗って向かいますかね。」

 美和さんを見送った私は、潮田さんとの約束を守るため、目的地に向かい始めた。


 一方、

「ただいまー。」

「美和、おかえり。」

「どこ行っていたんだ?」

 美和は風間宅に戻る。

「ちょっと、優さんに会いに行っていたんだ。それで、私の夢とか近況報告も一通りしてきたの。」

「あらあら。私も一緒に行けばよかったかしらね?」

「いいよ~、お母さん。」

「…俺も会ってあの時の無礼を謝るべきだったか?」

「ふぁ~。おは・・・何の話をしているの?」

「あら洋子、おはよう。今起きてきたのね。それじゃあ朝ご飯の準備でもしようかしら?」

「おねぇ、さっきまで何の話をしていたの?」

「ふふ、内緒♪」

「はぁ。」

 こうして、風間宅の一日が始まっていった。その一日はとても穏やかで、去年ストーカー被害に遭ったとは思えないほど和やかな雰囲気が風間一家に存在する。

次回予告

『小さな会社員と女子小学生モデルの買物生活』

 突如、風間洋子の姉、風間美和と話をした早乙女優だったが、予定を変えることなく出発する。目的地に着いた早乙女優は、予定の時間まで余裕があったので、暇をつぶしつつ、ある人物を待つことにした。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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