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社員達の会議準備生活

 私と菊池先輩の四年に一度の誕生日を先輩方に祝ってもらい、仕事に対する熱をさらに燃やしていった。その熱と比例するかのように気温も少しずつ上昇し始めているこの月。仕事はもちろんのこと、今年の三月はいつも以上に張り切っています。年に二度選定される出向する社員を決めるのもこの月です。なのでみなさん、想像以上にピリピリしていると思います。出向するのは四月ですからね。四月といえば、川田先輩と菊池先輩が対決するんですよね。楽しみですが、まずは桐谷先輩の件が片付いてからです。桐谷先輩の件を片付けて、桐谷先輩を精神的に安心させたいです。

「そういえば優君、学校の方は大丈夫なの?」

「学校ですか?」

 そういえば最近、学校のことを考えず、桐谷先輩の件のことばかり考えていました。なので忘れていましたね。

「そうなの。それでね優君、一つ思い出したことがあるの。」

「思い出したこと、ですか?」

 菊池先輩が思い出したこと、ですか。何だか嫌な予感がするのですが、それでも聞く必要があるのでしょうね。後で聞かないで酷い目に遭う、なんてことになったら災難ですからね。

「そう。私も最近まで気付かなかったんだけどね。」

 そう言い、菊地先輩はある紙を私に見せてくれました。この紙は・・・スケジュールが書かれていますね。このスケジュール、もしかして学校のスケジュールでしょうか。?十一月の欄に合唱コンクールが記載されています。三月の欄には一体何が・・・あれ?

「そう。優君も今見ているから分かると思うけどね。」

 ・・・やはり、何度見てもそうです。

「この卒業式の日にち、桐谷先輩の運命の日と被っていませんか?」

「そうみたいなの。」

「なるほど。」

 どうやら私の見間違いではないようです。

「それで優君、どうするの?」

「どうする、とは?」

 菊池先輩は一体何を聞きたいのでしょうか?

「優君は自分の卒業式と、」

「そんな分かりきった事、今更聞かないで下さい。」

 きっと、菊地先輩の話を最後まで聞くべきだったのでしょう。菊池先輩の話を途中で遮ってしまった私は少し無礼だったと思います。

「私にとって、学校よりこの会社の方が、桐谷先輩の方がとても大切なのです。比較対象にするのもおこがましいくらいに、です。ですので私は、卒業式より桐谷先輩の事を優先します。」

「・・・そう。優君がそう言うなら分かったわ。」

 どうやら菊池先輩は納得したみたいです。

「じゃあ優君、当日は頑張ろうね。」

「もちろんです。当日を乗り越え、来月も一緒に仕事がしたいですから。」

「それってつまり、現世は何があっても、私と一緒にいてくれるってこと!?きゃー、もう嬉しい!優君抱いて!」

「…ちなみに先ほどの発言は、桐谷先輩に向けての言葉、ですからね。」

「そ、そんな!!!???私は!?私はどうなの、優君!!??」

「そんなの、もちろん決まっています。」

「ええ!?決まっているってどういうこと!?優君教えて!」

「ダメです♪」

「そんなぁ~。優君、教えてよぉ~。」

 もちろん、菊地先輩とも今後、仕事をしていきたいと思っています。ですが、そのことを口にしてしまうとよからぬことが起こりそうなので言いませんけどね。それに、言葉として相手に伝えることが大切だといっても、恥ずかしくて言えないこともありますからね。

「優く~ん。」

 さて、当日に向けて、最終調整を行っていきますか。

 今後も、桐谷先輩と仕事ができるように。


 改めて決意を固めてから数日。ついに桐谷先輩の運命を決める会議当日となった。

 今回、桐谷先輩の運命を決める場は、数社の社長が顔を合わせる会議である。そもそも、何故そのような会議があるのかというと、年に一度、社長達が集まり、会話の場を設ける機会があるのだとか。その場は色々な場所で行われてきたのだが、今回、私が勤めている会社の社長である森社長の協力の元、当社で行われることになった。そして私達は、その会議の場の準備を行うことになった。私達というのは工藤先輩、菊地先輩、橘先輩、桐谷先輩、そして私。そのほかに追加人員として川田先輩も手伝ってもらっている。課長には話を通し、他の課の手伝いをしている。

「椅子の数は・・・これでいいですか?」

「はい、バッチリです。」

「資料も人数分コピー完了だ。後は置くだけだ。」

「分かりました。」

「発表内容の方は・・・ちょっと不安だ。」

「それについては、私もサポートするので、万が一の事が起きても安心してください。」

「優君、大変よ!」

「!?何かあったのですか!?」

 もしや、当日になって不具合が発生したのでしょうか!?今回使用する機具が故障したとか、まだ資料を作成しきれていないとか?そうであるなら、故障の原因を解消したり、全員で完成しきれていない資料を完成させたりしましょう。そうすれば短時間で終わらせることが可能はず。

「今の私、優君成分が不足しているの!それも著しく!!」

「「「「・・・。」」」」

「だから優君!今すぐ優君を抱かせて!」

「はぁ。」

 まったく。菊池先輩はいかなる時も平常と言いますか、ふざけると言いますか。

「こんな時にふざけたことを言っていないで、仕事をしてください。」

「そんな!?会議が始まったら、数時間は優君とお話出来なくなっちゃうのよ!そんなの、そんなのあんまりよ・・・。」

「お前、どうしたらそこまで悲劇のヒロインっぽくなれるんだよ。たかが数時間だろうが。」

 そんな工藤先輩のツッコミ虚しく、菊地先輩は私達の目の前で泣き始める。

 ・・・はぁ。まったく、菊地先輩はどうしてこう、はぁ。

「分かりました、分かりましたよ。」

 この後、菊地先輩の協力は必須となります。そんな時、あの時優君を抱かせてくれなかったから~、なんて言い訳をされてはたまったものではありません。

「・・・何が?」

「そんなに抱きたいのであれば、どうぞ。」

 私は了承の合図として、両手を左右に開き、抱きしめる事が出来るよう構える。もしかしたら私が抱く方かもしれませんが。

「それじゃあいただきます!」

 わたしがどうぞと言った後、菊地先輩は飛びつくように私を抱いた。・・・抱きつくときの声っていただきます…でしたっけ?そもそも抱く時の声とは一体・・・?

「ん~・・・優君の抱き心地、最高~♪♪」

 私の抱き心地、そんなに良いものなのでしょうか?自分で自分を抱くことは出来ないのでよくわかりません。まぁ、菊地先輩が良いと言っているのであれば、今はそれで十分でしょう。

「これで満足ですか?」

 私は、“放してください。”を遠回しに伝える。これで伝わるといいのですが、伝わったでしょうか。

「・・・本当は最低でも後一か月以上抱き続けていたいけど、仕方がないわ。」

 と、嫌々離れてくれつつも、抱きつく前よりは満足げな表情だった。一か月以上抱き続けたい、という発言の意味は不明ですが、満足してもらえたみたいでよかったです。これで先輩方の体調も万全となったことですし、やりますか。

「あ、あの!」

「ん?」

 ここで突然、桐谷先輩が声を荒げた。どうしてこのタイミングで必要以上に声を大きくしたのでしょう?

「どうした?」

 工藤先輩が桐谷先輩に声をかける。

「本日は私のためにしてくださり、ありがとうございます。」

 顔が若干下を向いていますが、私達に向けて言っているのでしょう。時々、私や橘先輩に視線を送りながら話しています。

「今日は本当に迷惑をかけてしまいますが、あの、よろしくお願いします・・・。」

 どうして桐谷先輩は申し訳なさそうに話しているのでしょうか?桐谷先輩が悪いわけではないのに。

「桐谷。」

「は、はい!」

 橘先輩の声掛けに、桐谷先輩は過剰に反応する。

「ここにいる全員は桐谷に迷惑をかけられた、なんてことは微塵も思っていないから大丈夫だ。」

 橘先輩は桐谷先輩に優しく諭すように言葉を渡す。

「それに、今最も辛いのは桐谷のはずだ。だから、今が踏ん張り時だ。今を乗り越えて、また今までみたいに飲みに行こう。」

 そう言い、橘先輩は工藤先輩を見る。その視線に工藤先輩は気づく。

「そうだな。飲みに行くのは大歓迎だ。焼酎、ビール、日本酒、ワイン、酒ならいくらでも付き合うぜ!」

「可哀そうに。そしてそのまま帰らぬ人に・・・、」

「ならないから!酒の飲み過ぎで倒れるなんてことにはならないからな!?」

「私も、お酒は飲めませんが、いくらでも付き合いますよ。」

「みなさん・・・ありがとうございます。みなさん、改めてよろしくお願いします!」

 桐谷先輩は頭を下げる。まったく、桐谷先輩が頭を下げる必要なんてありませんのに。

「さ、行こうか。ふざけた社長に制裁を下しに!」

「「「はい!」」」

「…分かったけど、あんたが仕切るのは癪に障るわ。なんか生意気。」

「そこははい、でいいじゃねぇかよ。しまらねぇ。」

 ・・・本当、菊地先輩と工藤先輩って仲がいいですよね。

次回予告

『社長達の会議生活』

 会議の準備が終わり、社長達が集まり、会議が始まる。工藤直紀は会議を進行していく中、ついに早乙女優達は桐谷杏奈を助けるために動きだす。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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