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女子小学生モデルの生誕祝賀生活

「ふ~。これで準備完了っと。」

「まったく。私にも手伝わせるなんて。」

「まぁいいじゃねぇか。せっかくのお誕生日会なんだし。みんなで祝おうぜ。」

「そうよ。そのために今回、みんなにも手伝ってもらっているんだから。」

 早乙女優と潮田詩織が部屋で話している最中、菊池美奈と工藤直紀、峰田不二子は何をしているのかというと、お誕生日会の準備をしていた。

「やっぱ楽しみだよね~♪」

「私達であの詩織のお誕生日を祝えるなんて。」

「それに、誕生日プレゼントもしっかり準備してきたんだー。喜んでくれるかな?」

 大人達だけではない。詩織の同業者である女子小学生モデルの子達も率先して準備に参加していた。みんな、この日のために、潮田詩織の誕生日を祝うために各々誕生日プレゼントを準備し、今も潮田詩織の誕生日を祝うため、スタジオに装飾を施している。

「それにしても、よくこんなことを許可してくれたわね。」

「えへへ。ここはほら、私のマネージャーの腕の賜物よ!」

「どうだか。どうせこのスタジオの権利書を盗んで・・・、」

「脅してなんかいないわよ!まぁでも、詩織の実績のおかげでもあるわ。」

「へ~。あ、そこ、間違っているわよ。」

「え?そうなのか?」

「ええ。正しくはこう、よ。」

 菊池は峰田と会話しつつ、工藤の間違いを修正する。

「・・・ねぇ、工藤さん。ちょっといい?」

「ん?なんだ?」

「ぶっちゃけ、あいつとはどのあたりまで進んでいます?」

「あいつ?どのあたり?一体何の話だ?」

「もう、とぼけちゃって!あの菊池美奈とどこまで進んでいるか、ということよ!」

「はぁ。」

 峰田不二子のコイバナに、工藤は抜け殻のような返事をする。

「・・・もしかしてあいつ、既にあなたではなく別の人と付き合っているの?」

「別に付き合っているというわけではない。ないのだが、既にあいつの心を射止めてしまったやつなら心当たりがあるぞ。」

「え!?それってもしかして・・・?」

 峰田は菊池の恋人候補に関する情報を工藤から聞こうとするものの、今までの光景、工藤の言い回しである人物を脳内に浮かび上がらせていた。

「多分、あなたの思っている人と俺の思っている人は一致していると思うぞ?」

「まさか、あの子が?」

「ああ。」

 二人の想像していた人物とは、早乙女優である。

「確かに普段からほのめかす言葉を聞いていたけど、本当なの?」

「本人曰く、かなり本気みたいだぞ?少なくともあいつは、常に優の事を考えているといっても過言ではない。」

「・・・。」

 峰田は、工藤の言葉に何も言い返さなかった。

 何せ、

「ふんふ~ん♪今日の優ちゃんも素敵だったわ~♪」

 菊池美奈はご機嫌で誕生日会の準備を行っていた。その間、優のことを思い出し、菊地は顔を大人らしくもない顔に緩んでいた。

「「「・・・。」」」

 それはもう、他の大人達が菊池美奈を遠巻きに心配してしまうくらいに。周りから見れば菊池美奈の顔に周囲の人間は引いてしまうだろうが、だからこそ工藤直紀の言い分が素直に納得できた。

「だから、あいつにそんな浮いた話を期待するのは無理だと思うぞ?」

「そうみたい、ね。」

 峰田は工藤の話に同意する。

「?ちょっとごめんなさい。」

 そして、突然感じた違和感の正体を探るべく、自身の服に取り付けてあるポケットを探り始める。そのポケットの中を抜くと、携帯がその手に握られていた。峰田はその携帯のスリープモードを解除し、画面を閲覧する。

「・・・ありがとう、早乙女君。」

「ん?どうかしたのか?」

「ええ。早乙女君によると、詩織がこっちに向かい始めたって。少し前に連絡したから、その連絡を返してくれたわ。」

「そうか。それでお前はどうする?」

「もちろん、優君を迎えに行くわ!」

 いつの間にか近くに来ていた菊池が工藤の質問に速攻で答える。

「そう。・・・あ、優君からだ。」

 どうやらほとんど同タイミングで菊池の携帯も何かの電子情報を受信したらしい。

「何々・・・なるほど。」

 菊池はどのような電子情報を受信したのか把握したらしく、自身の脳にインプットする。

「工藤、帰るわよ。」

「帰る、か。あいよ。」

 菊池の言葉に、工藤は素直に従い、簡単に身支度を整える。

「え?ええ??えええ???」

 その二人の様子に、峰田は驚く。

「ねぇ?あともう少しで詩織のお誕生日会が始まるのよ?どうしてこのタイミングでスタジオを去ろうとしているのよ。せめて詩織の誕生日を祝ってからでもいいんじゃないの?」

 峰田は二人を引き止めるべく、二人にとどまるよう説得する。

 だが、

「いや、いい。遠慮しておくわ。」

「私もこいつと同意見よ。」

 二人に峰田の提案を受け入れず、帰ろうとする。

「待って!何で詩織の誕生日を祝おうとしないの!?」

 ここで峰田が食い下がる。その峰田の言葉に二人は動きを止め、言葉を峰田に発する。

「俺は優の付き添いで来たからな。俺個人で潮田詩織の誕生日を祝ったとしても、潮田詩織にはそこら辺で歩いているおじさんが祝っている事と変わんないだろ?何より、潮田詩織と俺はたった数回しか会っていないから、そんな奴に祝われてもしょうがないだろう。」

「私はこいつより会っている回数は多いけど、優君が祝わないことに、何か考えがあると思うの。私はその優君の考えを尊重するわ。」

「・・・そう。」

 峰田はどこか納得していないものの、早乙女優が無意味に潮田の誕生日を祝わないことはないだろう。きっとなにかした理由があり、潮田の誕生日を祝わないのだろう。そう判断した峰田は、

「じゃあ、潮田詩織に、誕生日おめでとうと伝えておいてくれ。」

「私はお誕生日おめでとうと伝えておいて。まぁ忘れたら忘れたでいいけど。それじゃあ。」

 こう言い、工藤直紀と菊池美奈はスタジオを後にする。

「あ。う、うん・・・。」

 峰田は二人を最後まで見送った。

その数分後、

「失礼します。それで、一体どの写真に・・・、」

「「「ハッピーバースデー、詩織ちゃん!!!」」」

 潮田詩織の誕生日会が始まる。

「こ、これを私のために?」

 潮田は峰田に問う。

「ええ。みんな、あなたの誕生日を祝うためにここまで準備したんだから。」

 その峰田の言葉に、周囲の人達はにこやかになる。

「「「はい、誕生日プレゼント♪♪♪」」」

「え?」

 そして、同業者の女子小学生モデル達は、潮田詩織に向けて小綺麗な包みを差し出す。それは先ほど女子小学生モデルが言っていた、潮田詩織に対する誕生日プレゼントである。

「あ、ありがとう。」

 潮田は全員から誕生日プレゼントをもらい、

「さ、詩織。このロウソクの火を、ね?」

 峰田は最後まで言わなかった。だが、最後まで言わなくても、この場にいる全員が、峰田の言いたいこと、潮田にやってほしいことが伝わっている。

「・・・。」

 潮田がロウソクの火を消す。ロウソクの火を消す行為にかかった時間は重病に満たないだろう。

「「「おめでとー!!!」」」

 改めてみんなは潮田詩織の誕生日に対するお祝いの言葉を贈る。

「ありがとう。」

 潮田は撮影するときの笑みとは異なる笑顔を自然と顔に表現していく。

 こうして、潮田詩織の誕生日会は始まる。

(やっぱり優は来てくれないのね。)

 そんな思いを、潮田詩織は陰で思い、ほんの一瞬だけ、笑顔に影が差した。

次回予告

『小さな会社員の生誕祝賀会非出席生活』

 早乙女優は潮田詩織のお誕生日会に出席せず、帰宅する。その帰宅に菊池美奈と工藤直紀はついて行きつつ、何故潮田詩織のお誕生日会に出席しなかったのか、その理由を聞く。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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