女子小学生モデルから小さな会社員への洋菓子贈呈生活
「・・・はい?」
同性?友チョコ?潮田さんは何を言っているのでしょうか?私は男ですし・・・あ。そういえば潮田さんは私を女だと思い込んでいるのでしたっけ。今の服装はジャージですが、女性ものの服を着ている姿を何度も見ていましたし。なんなら、多くの人に見られています。主に雑誌に載せられて。なので、潮田さんは私を女性と誤認していてもおかしくない状況ですね。
それにしても友チョコ、ですか。そういえば会社の人もそのような言葉を言っていた記憶があります。確か、友達同士で交換するチョコ、でしたっけ?それについて聞いている、という認識で合っているでしょうか?そうですね・・・。
「別にいいのではないでしょうか?」
そういう文化?風習?言葉?が生まれたのですから、かなり人気があったり、そのような行動をとったりする人達が多く存在したのでしょう。であれば、その行動を悪く言うと、友チョコをしている人々を悪く言う事と同義となります。私はそこまで友チョコに嫌悪感はありませんし、抵抗もありません。なので、問題ないと個人的に考えます。聞いてきた潮田さん本人がどう思っているのかは謎ですが。それにしても、どうしてそのことを私に聞いてきたのでしょうか?
「そ、そう。」
そう言ったと思ったら、潮田さんは部屋を出て行ってしまいました。
「?」
何故潮田さんが部屋を出ていったのでしょう?その前の会話の意味も理解できませんし。気のせい、ですかね。全てを気のせいで片付けるのは良くないことかもしれませんが、これ以上考えても何も答えが出てこないと思うので諦めましょう。
(さて、これで先輩方に連絡しても大丈夫ですかね。)
どんな経緯であれ、潮田さんの用事は済んだみたいですし、早急に帰るとしましょう。そういえばお昼ご飯がまだでしたね。せっかくテレビ局に来たのですから、このテレビ局内限定のアイス・・・じゃなかった。ご飯を召し上がりたいものです。
「!?」
突如、扉が開きました。開いた人は、潮田さんでした。さきほど出ていったのに何故?
「これ、取りに行っていたの!」
と、潮田さんは自身の掌を見せてきました。その掌には何小包みが乗っています。もしかして潮田さん、さきほど出ていったのはこれを取りに行くために?先ほどそう言っていたのはこういう意味でしたか。
「それで、これは何ですか?」
ですが、この小包みの中身までは分かりません。小包みは小綺麗でおしゃれかと思いますが、中身までは見えることが出来ません。意図的にそのようなデザインにしたのかも知れません。
「と、友チョコよ。ほら、受け取りなさい。」
どうやらこの小包みの中はチョコらしい。それにさきほどの友チョコに関する発言。なるほど、私の発言次第で友チョコをあげるかあげないか決めたのでしょうね。となると、私のさきほどの発言は適切だった、と言えるでしょう。何せ、潮田さんから友チョコをもらえたのですから。潮田さんは、私が女の子であると勘違いして友チョコを渡してきたので心境は複雑ですが、このことは潮田さんに言わないでおきましょう。言うと私だけでなく、潮田さんも混乱しますからね。
「ありがとうございます。」
と、私は潮田さんからチョコをいただく。
(さて、潮田さんに渡すお返しの事を考えなくてはならなくなりましたね。)
この件は・・・桐谷先輩の件が片付いてから本格的に試行錯誤するとしましょう。後で手帳に記しておきましょう。
「それと、これも。」
そう言いながら、潮田さんは追加で何か渡してきました。どうやら、先ほど取りに言ってきたのは小包みだけではなかったみたいです。渡してきたのは・・・何でしょう?何か小さな鞄?それにしても四角いです。何かを入れる入れ物みたいな、小包みとは異なる風貌です。
「これは?」
「あなたのお誕生日プレゼント。」
「は?」
私の記憶が確かなら、潮田さんに自身の誕生日を言っていなかった記憶があるのですが?となると、さきほどの潮田さんの発言は間違いでしょうか。間違いを堂々と言うなんてことはしないでしょうし・・・謎です。
「私の誕生日って、2月14日なの。」
「2月14日、あ。」
「そう。バレンタインが私の誕生日なの。」
「そうだったのですか。」
私、潮田さんの誕生日プレゼントを用意していないのですが・・・。どうしましょう?とりあえず、感謝の言葉だけでも伝えておきましょう。
「お誕生日、おめでとうございます。」
「ありがとう。だからこれ、受け取りなさい。」
「・・・どういう事ですか?」
さきほどの発言もそうですが、今回の発言も意味が分かりません。潮田さん、今日が誕生日なのに、私の誕生日プレゼントを渡そうとするなんて。その上、私の誕生日は今日じゃありません。どんな意図、狙いをもっているのでしょう?
「今日って私の誕生日でしょう?」
「そうみたいですね。」
現在の私ではその真偽を見分ける術はないですけど、そう思いましょう。
「だから、何でも私のお願いをしても許されるじゃない?」
「何でもというには語弊があると思いますが・・・まぁ、その可能性はあると思います。」
「それで私、あなたの誕生日を知らなかったことに気付いたの。だから、あなたの誕生日を今日祝おうと思って。」
「はぁ。」
なんだか、考えがおかしな方向に進んでいる気がします・・・。
「もちろん、文句は言わせないわ。なんて言ったって今日は私の誕生日なんだから。」
「・・・まぁ、別に言いませんが。」
疑問に思う事は何個かありますが、今は言わない方が賢明でしょう。
「だからまずは、はい。」
潮田さんは私の手を取り、私の腕に小さな鞄の紐をひっかける。
「お誕生日おめでとう、優。」
潮田さんは私のお誕生日をお祝いしてくれた。確かに今日は私の誕生日でも何でもありません。ですが、こう祝ってもらう行為は、悪い気がしないものです。少し照れくさく、申し訳ない気持ちになりますが、この気持ちは胸に秘めるべきものでしょう。
「ありがとう、ございます。」
そういえば、この鞄に入っているものは一体何なのでしょう?私が持っている保冷機能搭載の鞄に似ています。あの鞄、結構重宝するんですよね。ちょっと冷凍食品を買うにもあったら便利ですし、アイスを買っても入れておける素敵な鞄ですからね。それにしても、何故潮田さんがこの鞄を持っているのでしょう?それに、何故このタイミングでこの鞄を私に?
(もしかして・・・?)
先ほど言っていた私の誕生日のお祝いに、という事なのでしょうか?こんな機能性抜群な鞄を私に?ありがたいのですが、そんな誕生日プレゼント、あるのでしょうか?私が無知なだけなのかもしれませんが、もしかしたら誕生日プレゼントに鞄をもらう人もいるのかもしれません。前に聞いた覚えがあったような、無かったような?
「中、開けてみて。」
「?分かりました。」
潮田さんの意図は不明ですが、潮田さんからの提案に乗ってみましょう。私は潮田さんの言葉の通り、鞄を開けてみる。
「・・・?」
中には保冷剤がいくつかありますね。これでこの鞄の保冷機能も高まっている事でしょう。ん?中に入っているのは・・・箱?それも、よくスーパーやデパートでよく見られるお弁当箱に近いですね。この容器の素材はプラスチックでしょうか?て、今は容器の素材に関する考察はどうでもいいですね。
「開けてみてもよろしいですか?」
「ええ。」
その短い返事の意味を理解し、私は箱のふたを開ける。
「!!??こ、これって!!!???」
「うん。」
これは見間違えることなんてありません!もしかしなくとも、アイスじゃないですか!?確かにアイスは要冷凍なので持ち運びにはこの鞄は必須だったのかもしれません。ですが、この時期にアイスを誕生日プレゼントとしてチョイスするなんて・・・、
「あ、ありがとうございます!」
最高じゃないですか!
「え、ええ。こちらこそそんなに喜んでくれて、渡し甲斐があるってものね。」
それにしても、この季節にアイスを誕生日プレゼントに選ぶなんて、よほど勇気ある行動だったのでしょう。アイスが好きな私だからこそ良かったものの、他の人ならどんな反応をしたことやら。
(あ、他の人にこのようなプレゼントは贈らないですよね。)
そもそも、誕生日プレゼントは、その人に見合ったもの、似合うと思ったもの、ふさわしいと思ったもの、様々なものを贈るはずです。それがたまたま私の場合、アイスだっただけに過ぎないのでしょう。他の人であれば、洋服だったりアクセサリーだったり、千差万別、十人十色だと思います。
「それじゃあもったないないから、今食べちゃいなよ。」
「え、いいのですか!?」
確かにアイスは時間経過により溶けてしまいますので出来るだけ早く食べたほうがよろしいかもしれませんが、控室内で食べていいのでしょうか?確かに飲食禁止と記載されていなかったので、飲食可能かもしれませんが・・・もう深く考えなくていいか。目の前にアイスがあるのです。これは是非とも食しましょう!
「いいわよ。」
「それではいただきます!」
確かいざという時のためにあれが鞄の中に・・・ありました。マイスプーンを持ってきておいてよかったです。
「優。あなた、自分のスプーンを持ってきていてたのね・・・。」
なんか潮田さんがこちらを憐れむような呆れているような視線を送っている気がしますが、気にせずいただきましょう。
(お、美味しい!?)
これはもしかしなくともバニラですね。バニラの香りが際立ち、味も優しく、後味スッキリで爽やかで美味しいです。かといって薄味ではなく、バニラの味がしっかり舌に感じ取ることが出来ます。この味、どの店で食べたことがあるのでしょうか?これまで数多くの店でアイスを食べてきたので、どの店のアイスか大体見当がつくと思っていたのですが、そんなことはないみたいです。私の知らないアイスの味があったとは。私もまだまだです。もっと他の店のアイスを、他の味のアイスを食べつくすとしましょう。
(それにしても美味しい~♪)
こんな冬に食べるべきではないと思いますが、それでもつい食べてしまいます。このアイスが絶品だからではないでしょうか。そう思い込んでしまうほど、自然とスプーンが進んでしまいます。
「あ。ご、ごちそうさまでした。」
もう食べ終えてしまいました。もっと食べていたかったのに、残念です。
「潮田さん、こんな美味しいアイスをありがとうございました。」
もちろん、このような素敵なアイスをくれた潮田さんには感謝の言葉を贈らない、なんて選択肢は存在しません。きちんと言葉で感謝を伝えましょう。
「べ、別にいいわよ。あなたへの誕生日プレゼントなわけだし。」
その誕生日プレゼントも、潮田さんの誕生日という強制力が働いた中渡された物なんですけどね。それでも嬉しいです。
「ところでこのアイスはどこで買われた物なのですか?」
私もポケットマネーで購入し、また味わいたいものです。
「・・・自分で作ったわ。」
「!?これ、潮田さんのお手製なのですか!?」
このような美味しいアイスを手作りするなんて・・・!潮田さんはよほどバニラアイスを研究したのでしょう。もしくは、よほどの料理センスをお持ちなのでしょう。いずれにしても、まさか手作りとは。まったく想像していませんでした。
「そ、そうよ。」
「随分料理が上手なのですね。」
私は美味しいアイスを食べた余韻を残したまま笑顔で潮田さんに話を振る。
「え、ええ。まぁね。これくらい当然よ。」
なるほど。潮田さんは勉強もでき、モデル活動も素晴らしい成績を残し、料理も上手とは。才能もある程度関係してくるのかもしれませんが、その裏には視認させないくらい数多くの努力で成り立っているモノなのでしょう。料理や勉強に関してはある程度分かるのですが、モデル活動だけは想像できません。今の私でさえ辛いのです。モデルになるため、モデルでい続けるための努力なんて想像できません。私、なんだかんだの成り行きで始めましたからね。その上、私は男ですし。
「さて、それで私への誕生日プレゼントは?」
「え?」
何故このタイミングで潮田さんは誕生日プレゼントを欲したのでしょう?
・・・。
なるほど。そういうことですか。
おそらく潮田さんは、私の逃げ道を塞ぐためにあえて、私に先駆けて誕生日プレゼントを渡したのでしょう。私がどんな理由を述べたところで、
“でもあなた、私の誕生日プレゼント、受け取ったでしょう?”
と言い返すおつもりですね。かといって、高価な物や、無理難題な物を現段階で要求しないあたり、そのようなものをお願いするわけではなさそうです。だからこそさきほどの言葉を言えたのでしょう。高級品を欲しはしないけど、私のお願いを聞くくらいでいいでしょう?そんなことを言いたいのかもしれません。私の勘違いかもしませんが。
(それにしてもどうしますかね。)
潮田さんの誕生日プレゼント、用意していないんですよね。潮田さんの誕生日を把握しきれていなかった私にも原因はあるのですが、何故誕生日が近いと進言してくれなかったのでしょう。いえ、こういう事は自分の口から言い辛いのかもしれません。私は普段、自身の誕生日が近いのでプレゼントの用意をお願いします、なんて言いません。ですが、それは私だけに当てはまる事項の可能性もあります。他の人の誕生日事情を把握しておけば、こんなことに悩まずに済んだことでしょう。ここは素直に本人に相談しましょう。自分の事なら自分で考えて失敗してもいいでしょうが、誕生日プレゼントで失敗するのは今後、潮田さんとの付き合いに何かしら溝が出来、付き合い辛くなってしまうかもしれませんからね。
「誕生日プレゼント、用意していないのですが、何か望みのものはありますか?」
「そんなことだろうと思って、はいこれ。」
と、潮田さんはあるものを見せてきました。これは・・・どこかで見たことがありますね。どこで見たのかは覚えていませんが、何かのチケット?でしょうか。どこで見たのでしょうね。
「これは?」
「・・・覚えていないの?」
「はい、覚えていません。」
この場面で嘘をつくメリットを感じなかったので、私は素直に答えます。
「去年、あなたと一緒にいた人が渡してくれたものよ。」
「私と一緒にいた方が?」
私と一緒にいたといえば、おそらく菊池先輩の事でしょうが、菊地先輩が潮田さんに一体何を・・・あ!
(そういえば。)
何か渡していましたね。確か・・・とある衣裳店の優待券、だったでしょうか。それが今、潮田さんの手の中にあると。そういうことでしたか。
「思い出した?」
「ええ。」
そういえば去年、そのようなやりとりをしていましたね。なんだか去年の出来事ですのに、半分近くの事を忘れている気がします。
「その券、期限が今年までだけど、来月あたりには使いたいわ。だから、ホワイデーに、私のお誕生日プレゼントとして付き合ってね?」
「・・・。」
ら、来月、ですか・・・。確かホワイトデーは、私の記憶が確かなら3月14日だったはずです。その周辺の日にちであれば大丈夫かもしれません。3月中旬であれば、桐谷先輩の件も片付いている事でしょうし、問題ないでしょう。別口で証拠集めもお願いしていますし、大丈夫ですね。
(でも、)
万が一のために、了承の返事はしないようにしましょう。
「用が出来次第、こちらから連絡させていただきます。」
「ほんと?」
何故か速攻で聞かれてしまいました。何故でしょう?もしかして、私が忘れん坊な人だと思われているのでしょうか。常に手帳に記し、忘れないように志しているのですが、それでもまだ意識が足りていないのかもしれません。もしかしたら、仕事用と私生活様に手帳を分け、常に二冊の手帳を携帯している必要があるのかもしれません。今度、実践してみましょうかね。
「ええ。時間が空いたらですが。」
「とかいって、単に連絡し忘れて結局、なんてことにはならないわよね?」
「ええ。行けるにしろ行けないにしろ、必ず連絡いたしますのでご安心を。」
今はまだ了承できませんが、連絡する事だけは保証出来ます。何せ、どんな時でも報連相は必須ですからね。例え怒られると分かっていても、辛いことを話すにしても、報連相は必ずするよう心掛けているつもりです。そう先輩にも教えてもらいましたし。未だに出来ていない時がありますけどね。
「それならまぁいいわ。いい連絡、期待しているわ。」
・・・と、これで潮田さんの用事は済んだ、みたいですね。
「?」
何やら突然、ジャージのポケットに違和感が。これは、携帯の振動みたいです。ということは、何か受信したみたいです。
「少し、失礼します。」
私は潮田さんにそう言い、携帯の画面を開く。
(・・・そうですか。分かりました。)
私は表示された文字の並びから、私に伝えたい用件を知り、潮田さんに話を振る。
「潮田さん。」
「な、何よ?」
私が声をかけると、潮田さんがなにやら身構えているように見えました。別にこれから潮田さんに何かする、というわけではないのですが、そこまで私が潮田さんを攻撃するように見えたのでしょうか。
「峰田さんから伝言があります。」
私は、さきほどきた内容とは少し異なる内容を伝える。
「何?」
「はい。私との話が終わり次第、スタジオに戻ってほしい、とのことです。」
「スタジオに?何でよ?」
「何でも、仕事で確認したいことがあるのだとか。それも、潮田さんの写真の事で、です。」
「ふ~ん。」
潮田さんは、
「分かったわ。服装は私服でいいのよね?」
さきほど来た内容には、服装の指定はなかったですね。ということは、服装は自由ということでしょう。
「さきほどきた文によると、そのような記載は見られなかったので問題ないかと思います。」
「そう。ならこれでいいわね。優はこれからどうするの?」
「私はこのまま帰ります。」
私に関する記載は・・・ないみたいですね。であれば、私がここにいる理由も必要性もないでしょう。
「そう。それじゃあ来月に、ね。」
「ええ。来月には必ず連絡いたしますので。」
そう言い、私はこの部屋を後にする。
「さて、先輩方の方はどうなっているのでしょうかね?」
次回予告
『女子小学生モデルの生誕祝賀生活』
早乙女優が潮田詩織と話をしている間、峰田不二子や他の小学生モデル達は、ある準備を行っていた。そのことをメールで知った早乙女優は、潮田詩織をスタジオに案内する。スタジオに案内した後、早乙女優は菊池美奈にある連絡を入れる。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?
 




