新入女性社員の愚痴吐露生活
あれから私と桐谷先輩は、二人っきりですが、チョコ作りを始めました。あ、間違いました。菊池先輩も残ったので3人でしたね。ですが、菊地先輩はただ、私と桐谷先輩のチョコ作りを見学しているだけで下。これ、さきほども見たと思うのに、どうしてそんな志気を高めて見ることが出来るのでしょう?同じもの、同じ光景を何度も見て飽きると思うのですが。ま、菊地先輩のことですから、何か考えがあるのかもしれません。どのような考えなのかは分からないですけどね。今回、桐谷先輩に教えたのは、チョコブラウニーと、棒状のチョコクッキーにホワイトチョコレートをくぐらせたものの2つです。本当は見た目にこだわったチョコを教えたかったのですが、あれはチョコを複数回固める必要があるので、今回は簡単に口頭で説明し、レシピを紙に記し、桐谷先輩に渡しておきました。これで分からないことがあれば聞きに来てくださいと言ったので、不明な点があれば、聞いてくることでしょう。そして、思った以上に早くチョコ作りが終わってしまい、残すはチョコが完全に凝固することくらいです。そういえば、時刻は間もなく夕飯、というか、人によってはもう夕飯の時刻ですね。夕飯、用意していないのですが、何にしましょう?
「桐谷先輩、夕飯の事なのですが、何が食べたいですか?」
「あ!?そ、それでしたら、私が近くのコンビニに行って適当に買ってきますね!もちろん、菊地先輩の分も一緒に買ってきますね!」
「あ。」
桐谷先輩、まだ私、何も言っていないのに出て言っちゃいました。
「・・・。」
菊池先輩も、さきほどの桐谷先輩の行動に、少し笑みをこぼしています。確かに、さきほどの行動は嬉しいですが、私達、夕飯に何が食べたいのか一切言っていませんよ?聞かずに今日私達が食べたいものを当てられる、そんな自信があるのでしょうか。
「・・・あの、夕飯、何か食べたい物ありますか?」
「「・・・。」」
その後、私、菊池先輩、桐谷先輩の3人でコンビニに向かい、夕飯を簡単に買い、そのまま社員寮でいただいた。最近のコンビニって、かなり品ぞろえが豊富ですよね。おかげで夕飯の幅が広がりました。値段の方は・・・まぁ、スーパーや商店街と比べると少し高めな気もしますが、利便性が高いことも考慮すれば、妥当な値段なのかもしれません。
「やっぱ、休日にお酒を飲むのって、特別な感じがしますね。」
桐谷先輩は夕飯に加え、お酒も買っていました。私、お酒を飲んだことが無いので飲酒する際の気持ちはよく分かりませんが、そういうものなのでしょうか。そういえば、工藤先輩も何度か、似たような発言をしていた記憶があります。それに対し、菊地先輩がお酒を買っているところ、ほとんど見たことがありませんね。買っているところといえば料理目的、くらいですかね。飲酒目的で買っている場面、見たことありませんね。菊池先輩はお酒、飲むのでしょうか?飲酒は人それぞれですし、私が口を挟むべき事項ではありませんね。
この時、優と菊池、桐谷とは別の影が現れ、共同リビングに入ろうとしていた。
「おっと。」
その影の主は、三人の存在に気づき、咄嗟に隠れる。
「おい。なんで急に隠れたんだ?」
「いえ。人がいたもので、咄嗟につい。」
「まぁいいけど。それじゃあこのまま・・・、」
「待ってください。」
その影の主の一人は、もう片方の主の肩を掴む。
「なんだ?」
「何か三人で話し始めるみたいです。このまま聞いてみませんか?」
「…ま、いいか。その後にまた二人で飲み直せばいいしな。」
「はい。」
二つの影の主、工藤直樹と橘寛人は廊下でひっそりと三人の話を聞き始める。
そして、桐谷先輩は、
「うーヒック!」
すっかり、酔っているようです。そういえば桐谷先輩、この後の帰り、どうするつもりなのでしょう?この社員寮に泊まるのであれば別に構いませんが、この後自宅に戻るのであれば、控えた方がよろしいかと思います。
「あー。嫌なこと思い出した~。」
顔を紅く染め、酒を大量に摂取した後、缶を思いっきりテーブルに置く。健康のために一気飲みは控えて欲しいです。それにしても、桐谷先輩って・・・、
「この子、お酒を飲むと性格、変わっちゃうのかしら。」
「かも、ですね。」
飲酒前と飲酒後で口調に違和感を覚えます。普段の桐谷先輩は猫を被っていた、ということなのでしょうか。それとも、多重人格?
「まったく!どうして私があんな浮気男と結婚しなくちゃいけないのよ!」
「!?」
き、桐谷先輩!?それ以上は・・・!?
「・・・。」
あ。これは間違いなく、菊地先輩はさきほどの発言、聞いていましたね。飲酒行為により、口が緩んでしまったのでしょう。
「私だって、結婚する人を選ぶ権利くらいあるわよ!でも、でも仕方ないじゃない!?」
「「・・・。」」
「私が結婚しなきゃ、あの会社が潰れるかもしれないのよ!?だから、私が身代わりになるしかないじゃない!?」
・・・よほど、溜めていたのでしょう。普段の桐谷先輩とは全く異なり、声を荒げ、独り言とは思えない声量で語り続けていきます。
「あ~あ。私もとんだ貧乏くじを引いちゃったわ。これで一生、浮気される人生確定だわ。」
そう言い、桐谷先輩はさらに新しい酒缶を開け、息を大きめに吸ってから、勢いよく飲み始めました。
「プハー。あ、でも、あいつ社長だから、お金には困らないかも♪それならまだまし化も♪」
「「・・・。」」
・・・桐谷先輩、そんなやせ我慢はしなくていいんですよ?言葉だけ聞けば、金しか見ていない女性に聞こえてしまいますが、私と菊地先輩には、そのような錯覚はしません。だって、さきほどの桐谷先輩の発言が嘘だと分かりますから。
(悲しげに笑いながら泣くなんて・・・。)
今の桐谷先輩は、ご機嫌なようで、とても感情が不安定な気がします。それほど、前に言っていた結婚の件が精神的に辛いのでしょう。私だって一回聞いただけで辛かったのですから、その問題に直面している桐谷先輩は、私とは比べものにならないほど精神的負荷がかかっていることでしょう。
「でも、でも。私はあんな結婚、なん、て・・・。」
桐谷先輩の最後の言葉を聞くことなく、桐谷先輩は酔い潰れてしまいました。
「・・・どうぞ。」
私はそんな桐谷先輩に、毛布をかけることしか出来ません。本当なら、もっと桐谷先輩の心に寄り添ってあげるべきでしょうが、今の私にはそんな勇気、ありません。
「・・・。」
毛布を優しくかけた後、私は先ほどまで座っていた席に戻る。
「「・・・。」」
き、気まずいです・・・。こんな時、菊地先輩にどのような話を振ればよろしいのでしょうか?
「菊池先輩、今日の天気は晴れ晴れとしていたため、過ごしやすい一日でしたね。」
「・・・優君、さっきこの子が言っていた事、本当なの?」
どうやら、私が振った話など気にせず、菊地先輩は別の質問を私にしてきました。ま、聞きたくなるのは当然ですよね。いきなりあんな話をされたのですから。それに、察しのいい菊池先輩の事です。きっと、私が隠していることが、さきほど桐谷先輩がこぼしたことなのだと容易く考えることでしょう。酔っていたとはいえ、桐谷先輩本人が言っていましたし、これ以上はさすがに隠し切れませんね。
「本人から、そう、聞いています。」
私はこれまで隠してきたことを菊池先輩に打ち明ける。簡単な一文にしてみましたが、決意するには重く、文とは呼ばないほど長考し、やっとのことで出た言葉でした。
「そう。」
菊池先輩はこれ以上聞くことはしませんでした。こういう時、菊地先輩は何も聞こうとしないんですね。そういう優しさが良くも悪くも染みます。深く詮索しないでくれて感謝していますが、私が菊池先輩に気を遣わせている自覚をしてしまいます。
「それで、優君はどうしたいの?」
「私、ですか?」
「ええ。」
「私は・・・。」
桐谷先輩の結婚なのに、桐谷先輩が幸せになれない結婚なんかしても意味ありません。ですから、そんな結婚式を無かったことに出来るよう行動し、手を回したいです。ですが、私の思い違いかもしれません。
よく考えてみれば、私がこれまで桐谷先輩の事を考え、色々調べ物をしていたのですが、それも全て無駄。それどころか、桐谷先輩に迷惑をかけていたのかも?であれば、私がこれ以上行動するのは控えた方が・・・。
「優君がどういう行動をとるにしろ、私は優君の味方よ。」
「き、菊池先輩・・・。」
こういう時、親身になって私の心に寄り添ってくれます。こういう気遣いが本当に助かります。
これから桐谷先輩の事を助ける助けないどちらにしても、桐谷先輩の平穏は一時的に大きく損なわれることになるでしょう。私が桐谷先輩の人生をかき乱して迷惑がられないでしょうか。余計なお世話じゃないでしょうか。
「ねぇ優君?」
「…はい、何でしょうか?」
少し考え事をしていたため、菊地先輩に対する返事が遅れてしまいました。
「私は、優君がいてくれて本当に良かったのよ。毎日毎日が幸せで、優君が可愛くて愛おしくて。」
「・・・。」
この時の菊地先輩の言葉は、ただ甘いだけではないように思えた。いつもの腑抜けた声とは違う声質でした。一体、何を言うつもりなのでしょう?
「例え、優君自身がお節介だと思っていても、やること成すことに私は感謝していたの。だから、」
菊池先輩は私の手を取り、
「ためらわないで。」
「!?」
菊池先輩が私の手を優しく握ってくれた時、私は今までの事を思い出していました。
年越しの事、クリスマスの事、コンサートの事、美和さんとの事、運動会の事、お盆の事、新人歓迎会の事、京都での仕事の事、ゴールデンウィークの事。それぞれの出来事で見せてくれた菊池先輩の顔を思い出していきます。その顔はどれも笑顔で、私に見せる事がもったいない、申し訳ないと思えるくらい輝いていました。
(さきほど菊池先輩の言っていたことは、これらの事、だったのですね。)
私が行動を起こし、桐谷先輩もあのように笑えるのなら、
(ですね。)
そもそも、私は何を迷っていたのでしょうね。もう前から、桐谷先輩の事を助けると決めていたのに、いつの間にか迷い、何度も足踏みしてしまいました。
ですが、菊地先輩に言われて気づかされました。
(もう、ためらいません!)
私は、桐谷先輩の事を助けます!例え独りよがりでも構いません。桐谷先輩の笑顔を守るため、これからも桐谷先輩の笑顔を見るため、行動に移すとしましょう。
(桐谷先輩には事後報告になりますが、まぁいいでしょう。)
さて、これからどう動きましょうか。本格的に動くとなると、色々やることがありそうです。
「ふふ♪」
「?どうかなさいましたか、菊池先輩?」
急に笑い出すなんて、毒キノコでも食したのでしょうか。確か、食べると笑いが止まらなくなるキノコがあったはずですね。そんな食べ物、この社員寮に置いておいた記憶はありませんし、夕飯にも使った記憶はありません。
「優君ったら、分かりやすいんだから♪」
「?どういう意味、ですか?」
一体、私の何を見てそのような判断をしたのでしょうか。
「この子、助けるんでしょう?」
「ええ。」
もしこれで、桐谷先輩に嫌われることになっても後悔しません。今後も桐谷先輩が笑顔でいられるのであれば、私は満足です。
「どうせ、自分が嫌われても助ける、なんて考えているんでしょう?」
「!?」
ど、どうして私の考えを!?…もしかしてこれが以心伝心、なのでしょうか。こんなことまで以心伝心しなくていいですのに。
「そのことに関して間違っているわ。」
「どういうことですか?」
「この子は、助けてくれた人を理不尽に嫌うような性格じゃない、ということよ。それは、この一年間共に仕事してきた私、そして優君なら分かるでしょう?」
「…確かに、そうですね。」
この一年間、桐谷先輩と仕事をしてきました。その仕事のやり方や態度から、桐谷先輩の性格はある程度予想できます。ですから、桐谷先輩が無意味に、そして理不尽に人を嫌うような性格をしていないことは分かります。嫌われる明確な理由があれば、話は別かもしれませんが。
「だから、優君は思う存分行動していってね♪もちろん、私も力を貸して、尽力するわ。」
「え?ですが、そんなことをすれば菊池先輩に負担がかかってしまいます。」
私一人であればどれほど時間をかけ、苦労しても問題ありませんが、他の人に、それも私の大切な人に迷惑をかけるようなことは避けたいです。
「ううん。私は負担だなんて思ってないわ。」
何故?私には負担にしか思えません。
「むしろ、私を頼ってくれることは嬉しいし、頼ってくれないと悲しくなるわ。だから、ね?」
そう言い、菊地先輩は私の肩に手を置き、
「私にも手伝わせて?」
「・・・。」
この時、私は下手に言葉を吐き出すことが出来ませんでした。
安易に断れば、菊地先輩を傷つけてしまいますし、了承すれば、菊地先輩もこの件に関わらせてしまいます。どうすればいいのでしょう?・・・少し汚いですが、菊地先輩の意志に、気持ちに任せましょう。
「本当に、よろしいのですか?」
「ええ。」
まさかの即答でした。私の問いに答えているのか、そんな疑問が発生するくらいの早さでした。
「だって私、優君とずっといたいもの。それに、」
「?」
「同じ女として、その男の事は嫌悪感しか抱いていないの。だから、」
菊池先輩は、ちょっとワンパク少年みたいな顔をし、
「一緒に追い詰めようね?」
本来、追い詰めようとか脅そうとか、そういう類の言葉はあまり用いるべきではないでしょうが、今の私にはそんなことどうでもよく思い、
「はい。一緒に頑張りましょう。」
私はただ、今回の事は菊池先輩と共に頑張ろう。そんな決意を言葉にしました。
「ええ。でもその前に、」
菊池先輩は、少し後ろを見たかと思うと、そのまま、
「まずはそこに隠れて盗み聞きしている男共の目でも潰す?」
「・・・え?」
「「!!??」」
急に声が大きくなったと思ったら、菊地先輩は廊下側に向けて声を放つ。一体菊池先輩はどういう心境で声を放っているのでしょう?そんなに声を大きくしても意味無いと言うのに。そんなに声を大きくしてしまいますと、桐谷先輩が起きてしまいますよ?
「・・・ほぉ?声を殺していればばれない、そういう考えのつもりなのね?いいわ、本気でやってあげるわ。優君、氷ある?」
「え?まぁ、ありますけど。」
「4つ頂戴♪」
「いいですけど、氷を一体何に使うのです?」
「決まっているじゃない。そこに隠れている気でいる二人の目を二つずつ、計四つ潰すのに使うのよ。」
「「!!??」」
「・・・あの、本気で?」
さっきから菊池先輩が冗談で言っているようにしか思えません。しかし、冗談で言っているにしては、なんだか様子がおかしい、そんな気がします。目が本気の目に見えますし。
「ええ、本気よ。」
「ま、待った!!」
「!?」
え!?こ、この声はもしかして!?
「く、工藤先輩、ですか?」
姿もはっきり見えているので明らかなのですが、確認せずにはいられません。
「あ、ああ。ちなみにもう一人というのは、」
「お、俺だ。」
「た、橘先輩まで・・・。」
この先輩方、何故廊下で音を殺していたのでしょう?それにいつから・・・いつから?
(さきほど、菊地先輩がこう言っていましたよね。)
盗み聞きしている、と言っていたはずです。ということはまさか?
「お二方はさきほどの話を聞いてしまったのですか?」
出来れば聞いてほしくありませんでしたが、聞いている可能性があります。もしかしたら聞いていない可能性もありますが、菊地先輩の発言から、高望みはしない方が良さそうです。
「すまん。」
「悪い。」
工藤先輩に続いて、橘先輩も謝罪の言葉を述べてきた。私の質問に対し、このような回答手段をとったということは、
(やはり、さきほどの私達の会話、聞いていたのですね。)
こう捉えるべきでしょう。こうなった以上、もう冗談だとか嘘だとか、下手な言い訳をしても無意味でしょう。
「それで、お二人はこれからどうするおつもりなのですか?」
私は二人のこれからを知るため、二人に聞いてみる。
「「・・・。」」
やはり、先ほど聞いたばかりでは、状況を全て飲み込むことなんて出来ませんか。そして、これからどうすればいいのかも迷っている。そんな感じでしょう。であれば、今私が思っていることを話しますか。
「私はこれから菊池先輩と共に、桐谷先輩のために動くつもりです。ですので、下手に止めようとしても無駄ですので、おやめくださいね?」
「「・・・。」」
お二方は私の言葉に難しい顔をしていました。それほど、私がおかしなことを言っているのでしょう。ですが、たとえ私がおかしくても、桐谷先輩を助けるつもりです。
「それと、下手に巻き込まれるといけませんので、お二人は今後、知らないふりをしていてください。そうすれば少なくとも、工藤先輩と橘先輩に火花が飛び散る、なんてことはなくなります。」
「「・・・。」」
二人は未だ、沈黙状態が続いています。考える時間も必要なのでしょう。桐谷先輩も寝ている事ですし、ここは解散し、また後日、お二人の考えを聞くことにしますか。
「菊池先輩、手伝いますので、私の部屋に眠った桐谷先輩を運ぶの、手伝ってくれませんか?」
「ちょっと待って。」
「?はい。」
何でしょう?ま、一人で桐谷先輩を運べない、なんてことはないので一人でも運べます。ですが、一人で運ぶとなると、桐谷先輩を傷つけてしまう恐れがありますから、菊池先輩に応援要請をお願いしたのです。ここは、菊地先輩の待機発言を素直に聞き受けるとしますか。それにしても、菊地先輩はこれから一体、何をするおつもりなのでしょうか?
「あなた達、今ここでどうするかハッキリしなさい。ここで将来有望な後輩を時の流れに任せ、退職へと誘導するか。それとも、去年みたいに5人で仕事を続けていくため、優君や私と共に抗うか。」
「「・・・。」」
「菊池先輩、そんな簡単に答えなんて出るはずありませんよ。今日はもう解散して・・・、」
「俺は抗う、抗います。」
「「え??」」
菊池先輩の問いに答えたのは、橘先輩でした。私と工藤先輩は驚き、声を出してしまいました。
「さっきから盗み聞ぎしていたけど、どう考えても桐谷は無理をしていた。金の話なんか特にだ。あんな政略結婚を望んでいるならまだしも、望まない結婚なんかしてほしくない。なにより俺は、」
“桐谷に仕事を辞めて欲しくない。”
「だから俺は、優や菊池先輩と共に協力して、結婚の話をぶち壊す。これが今の俺の意志だ。」
ひとしきり言い終えた後、橘先輩は菊池先輩を睨むように見ていた。サングラス越しとはいえ、かなりの迫力です。
「ふうん。なかなか男らしい決断じゃない。私は結構好きよ。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
菊池先輩の発言に橘先輩は戸惑い、感謝の言葉が震えていますね。
「それで、あんたはどうする気?」
ここで菊池先輩は、工藤先輩に話を振りました。工藤先輩は・・・、
(頭、抱えていますね。)
何やらお困りの様子です。菊池先輩の無茶ぶりに困っていそうです。私も菊池先輩のような振りをされたら、工藤先輩と似たような反応をしてしまうかもしれません。
「は~、俺も馬鹿なもんだな。」
?一体何の事を言っているのでしょう?
「どうやって桐谷の事を助けようとか、桐谷の今後の事とか色々考えていたけど、今はそんなこと、聞いちゃいねぇよな。今大切なのは、」
工藤先輩は、菊地先輩の目をまっすぐ見、
「桐谷を助けるか助けないか、ただそれだけだったよな。」
そう言った後、
「俺もやるぞ。男がみんな浮気性だなんて間違えた思考、ぶっ壊してやる。」
どうやら工藤先輩は、同じ男として許せない部分があるみたいです。
「・・・なるほど。二人の考えはよく分かったわ。それじゃあ、この5人でこの危機、乗り越えましょうか。」
「「「5人???」」」
5人とは、誰の事を指しているのでしょう?
菊池先輩、工藤先輩、橘先輩、そして私。どう考えても1人足りません。菊池先輩は私には見えない何かが見えていて、その誰かを含めて5人と言っているのでしょうか。
「ね?途中から狸寝入りしている桐谷杏奈さん?」
「「「え???」」」
次回予告
『新入女性社員の哀情暴露生活』
政略結婚に関して口を滑られしてしまった桐谷杏奈は、そのまま狸寝入りを始めるも、菊池美奈にばれてしまう。そして、色々ばれてしまった桐谷杏奈は自身の哀情という感情を周囲の人間にぶつける。ぶつけられた言葉に受け答えしたのは、菊池美奈に恩を感じている早乙女優だった。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?




