小さな会社員の女子小学生モデル遭遇約束生活
私と菊池先輩は社員寮に戻り、そのままジャージに着替え、夕食の買い出しに向かいました。やはり主婦の方々が多く、通行人の女性率が高めです。もちろん、男性の買い物客もいるのですが、大半がお酒やお酒のおつまみを買っていることから、今日の夕飯の買い物、というわけではなさそうですね。
「やぁ、優ちゃん!今日も可愛いね。」
「今日はこのニンジンが一推しよ!是非買っていって!」
「なら、毎日安定した値段で供給されているいつも美味しい卵はどうだ!?」
商店街のみな様はいつも私に優しく、私が購入する分をいつも確保してくれています。これも、私が普段から贔屓にしているからかもしれません。贔屓と言っても、普段はこの商店街にある店を使用しているだけなんですけどね。
「いつもありがとうございます。もちろん、ちゃんと買わせていただきます。」
私は財布からお金を取り出し、食材を調達する。
「いつもありがとうございます。そして、お疲れ様です。」
いつも労いの言葉をかけながら。誰だって感謝の言葉を言われたいものですし、言っても問題ないですよね。私は誰でも感謝の言葉を言われたいと思っているのですが、中には罵倒されたい、という人もいるのでしょうか。まさか・・・いましたね。私限定ですけど。
そんなことを脳の端で考えつつ、私は本日の夕飯に必要な食材を買い揃え、
「・・・よし。」
材料も買い揃えたことですし、これで帰る事にしますか。
社員寮に帰り、私は夕飯の用意を始める。
「今日は・・・私と菊池先輩の二人、ですか。」
そういえば、今日は初出社してから初めての週末。新年会をするにはいい日程なのかもしれません。翌日は土曜なので、仕事のことなど心配せずに飲めますからね。もしかして工藤先輩、橘先輩も新年会の気分で飲みにでかけたのでしょうか。ま、男同士、募る話でもあるのでしょう。・・・あれ?私って工藤先輩や橘先輩と同じ男、ですよね?であれば、私も二人の先輩について行った方が良かったのでは?いえ、二人は成人男性で、きっとお酒を飲まれるはずです。それに対し、私はまだお酒を飲むことが社会的に許されないので、まだ公の場で飲むことが許されません。
(いつか、あの二人の先輩とお酒を交わしたいものです。)
そんなことを考えながら、今日も私はフライパンをふるい、料理を作っていきます。フライパンをふるうといっても簡単な料理なので、一緒に食べる菊池先輩が不快に感じなければいいのですが。
「ふんふ~ん♪」
私が料理のこととは無縁のことを考えながら料理している一方、菊地先輩は料理の手伝いをしてくれていた。
「優君、ご飯はもう少しで炊けるわよ♪サラダも準備OKよ!」
「分かりました。私の方ももう少し、で!」
私はフライパンを振り、本日の夕飯のメインディッシュを宙に浮かせる。
「わ~お♪さすがは優君♪料理の技術も日に日に伸ばしていっているわね。・」
「そんなことありませんが、お褒めの言葉、ありがとうございます。」
普段は料理しているのですが、最近は料理の練習をしていないんですよね。そのおかげで料理のレパートリーがなかなか増やせない状況なんですよね。まだまだやることが山積みで大変です。
「謙遜している優君、本当に可愛い~♪」
・・・菊池先輩は無視してがんばりますか。
今日の夕飯は、菊地先輩が用意してくれたご飯、サラダ。それと、私が用意したお好み焼きの3品です。…お好み焼きを多く用意したのですが、夕飯に3品は少し物足りないでしょう。残ったおせち料理をだすことにしましょう。見た目やにおいから判断するに腐っていないと思うので大丈夫だと思います。
「さて、夕飯にしますか。」
「はーい♪一緒に食べさせ合いっこしましょうね♪」
「いえ。それはしません。」
「そんな!?」
何故菊池先輩はそこまで驚いているのでしょうね。本当に謎です。
その後、私達は夕飯を食べ終え、食器を洗い終え、
「それじゃあ優君、自室に戻る前に、私の部屋で一緒に脱いで念願のバスタイムを・・・、」
「それでは菊池先輩、お休みなさい。」
菊池先輩が何か言っていましたが、私はそれを遮り、自室の部屋の扉の鍵をかけた。
「まったく。」
どうして菊池先輩はくだらないことにあそこまで一生懸命なのでしょう。私がくだらないと思っていることに何か深い意味でもあるのでしょうかね。私には分かりませんが。
「さて、お風呂に入る準備と寝る用意、それと・・・、」
私がこれからやることを脳内で反復していると、
「おや?」
私の携帯が振動し始めました。一体誰でしょう?まさか・・・菊池先輩?いえ、それはありえないですね。今しがた別れの挨拶をしたばかりですし。ですが、万が一、という可能性もあります。もしくは、工藤先輩が元気にしているかどうかの確認電話かもしれません。私は電話してきた相手を確認してみると、
「・・・あれ?この番号って・・・?」
どこかで見覚えのある数字の羅列でした。確かこれは・・・。
「もしもし?」
私は粗相のないよう、細心の注意を払いながら電話を始める。
「もしもし、私よ。」
・・・。誰?
いえ、声でなんとなく分かるのですが、相手も名乗ってもらわないと困ります。て、自分も名乗っていませんでしたね。私も自分から名乗るようにしましょう。少し考えたのですが、相手から電話をかけてきたわけですから、かけられた私は名乗る必要はないかも知れません。
「どちら様ですか?」
「私、潮田よ。」
「ああ、潮田さんでしたか。」
やはり、潮田詩織さんでしたか。声からなんとなくそうではないかな、と考えていたのですが、推測で名前を発するのはよくないと思い、言葉にしませんでした。
「ええ。ちょっと遅くなったけど、新年あけましておめでとう。」
「ええ。こちらこそ、新年あけましておめでとうございます。」
潮田さんから新年の挨拶をしてきたので、私も返すべきかと判断し、新年の挨拶を返す。
「去年は大変お世話になりました。」
「ええ、お互いにね。」
「そうですね。」
確かに潮田さんの言う通りかもしませんね。
「それで、一体何の御用でしょうか?」
何の用も無しに連絡をしてきた、なんてことは早々ないはずです。潮田さんはきっと何かしら私に用があるはずです。何の用かまでは、話を聞いてみないと分かりませんが。
「・・・ちょっと、話があるの。」
潮田さんはさきほどより声を重くして話しかけてきた。これはきっと、潮田さんにとっては重大な話かもしれません。心して聴きましょう。
「そうですか。それで、これからその話をするのですか?」
私個人の意見としては、大事な話を電話で済ませることに違和感を覚えますが、これの感覚には個人差があるでしょう。
「ううん。出来れば会って話がしたいの。」
「会って、ですか。」
潮田さん的には、電話で気軽に話せるような話ではない、ということなのでしょう。それほどまでに潮田さんは悩み、誰かに話を聴いてもらいたい、そんな心境なのでしょうね。できれば早く解決して欲しいものです。
「ええ。出来れば早く話したい。」
「そうですか。」
となると・・・、
「では、今週末、いつも待ち合わせしている場所でどうですか?」
私は潮田さんに提案する。これで駄目ならもう来週末になるますかね。ですが、潮田さんが待てない、と言うのであれば、無理にでも都合をつけ、来週の平日でも会えるよう時間を作る必要もあるかもしれません。
「ええ。それでお願い。」
「分かりました。」
良かった。どうやら無理に時間を作る必要はないみたいです。早急にメモ帳の欄に予定を記しておきましょう。
「それでは来週末、駅前で会いましょう。」
「ええ。それと・・・、」
「?」
なんだか、潮田さんの言葉の歯切れがよくありませんね。まだ何かあるのでしょうか?
「急なことに付き合ってくれて、ありがとう。」
潮田さんは申し訳なさそうな声で感謝の言葉を述べてきた。
・・・。
「その言葉はまだ受け取れません。」
「え?」
私の言葉に潮田さんは驚いている様子でしたが、私はこのまま自分の考えを話すとしましょう。
「その言葉は、潮田さんの話を聴き、潮田さんが元気になったら改めてお聞かせください。」
現段階では、潮田さんの話は聴いていませんし、私は潮田さんに対して何もしていません。なら、私が潮田さんに感謝の言葉を言われるのはどこか変だと思うんです。あくまで自分の個人的見解なので、他の人の同意なんて求める気はありませんが。
「そう。それじゃあその時に改めて言わせてもらうわ。」
心なしか、潮田さんの声に元気が戻った気がします。それにしても、自身の意見を押し付ける気はありませんでしたが、あのタイミングで言ったのは潮田さんに押し付ける、
と同義かもしれません。私の考えすぎかもしれませんが、今後は気をつけますか。
「そうですか。それでは潮田さん、また今週末に会いましょう。」
私の言葉に、
「ええ、そうね。」
潮田さんは返事を返す。
「それでは失礼します。」
「ええ。またね。」
私は電話を切った。
「話、ですか。」
潮田さんの言う話は多分、話ではなく相談、という言葉が合っている気がします。もし、この私の推測が正しければ、潮田さんは今週末、私に何か相談してくることになりますね。
「潮田さん、今週末まで持つでしょうか?」
そういえば、今日は金曜日でした。であれば、すぐに潮田さんと会うことになりますね。今の今まで気づきませんでした。手帳を見た時に気付くべきでした。
「となると、大丈夫でしょう。」
潮田さんに会うのは二日後。かなり深刻なご様子でしたが、一日くらいは大丈夫なはずです。
「さて、勉強でもしますか。」
今後、大人になってもあの会社で仕事し、貢献できるように資格の勉強でもしますか。
「まずは復習から始めましょう。」
習ったことを、覚えたことを忘れないためにも。
次回予告
『女子小学生モデルから小さな会社員への中学進学相談生活』
潮田詩織への電話を終えて週末。早乙女優は待ち合わせの場所へ行くと、既に潮田詩織は待っていた。そして早乙女優は、潮田詩織から話を聴く。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?




