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小さな会社員と何でも出来るOLのお仕事代理生活

 仕事指導も大体終わり、通常勤務に戻ろうとしていたころ、事件は起きた。

「はぁ!?お前、前、言っていたじゃないか!この企画は全部俺がやるって。だから俺は全部お前に任せたというのに…!」

「だから!その企画がいつになるのか教えてくれって言ったじゃないか!ちゃんと教えてくれないお前の方が悪いだろ!」

「何を!」

「なんだとぉ!?」

 …どうやら、仕事上のトラブルらしい。

 ほとんど起きないが、こういうすれ違い?食い違い?が起こる。

 これが会議の場で話し合うならましなものだろう。

 だが、今回は企画の日にちを伝え忘れていたらしい。

 何というか、報連相は大事だよね。

 私もいや!というほど体に教え込まれたし。

「第一、こんな大事なことを何故言っていなかった!?」

「お前こそ、こんな大事な企画の日にちを忘れるとは何事か!?」

 と、二人は言い合いを始めていた。

 一方、こっちはというと、

「優く~ん。今日も私の心と体を癒して~。」

「おい菊池。まだ勤務中だぞ?分かっているのだろうな?」

「分かっているなら、さっさとその手を動かしたら?私、あなた待ちなんですけど?早く確認してくれないかしら?」

「このやろー。仕事を早く終わらせてやがって…。少しは俺の苦労も考えろってものだ。」

「あら?出来ない人の妬みですか?そんな口を動かすより、手や目を動かしてくださらないかしら?」

「「…。」」

「あははは…。」

「…優。相変わらず、二人の言い合いも凄いな。」

「そ、そうですね。」

 こちらも言い合いを始めていた。

 まったく、ここは職場だというのに。

 私はお茶を淹れなおそうと思い、席を立ち、給湯室に向かおうとしたら、

「!こ、こいつが悪いんだ!こいつが俺の計画をちゃんと伝えなかったからだ!!」

 と、そんなことを言われた。

「え、え~っと…。私が、何か?」

「貴様がちゃんと俺のスケジュールを管理していなかったから、こんなことになったのだぞ!」

「…先ほどから言っている企画ってもしかして今月の始めから取り掛かっているあの一大プロジェクトのことですか?」

「そ、そうだ!」

 私が勤務している会社では、先月から進めている企画がある。

 だが、その企画は今、私達が所属している課とは異なる課で進められていたはず。

 だから、その企画に、私は一切関わっていない。

 ま、人伝で大きなプロジェクトをやっている、とは聞いていたけど。

「…私、一切関わっていなかったと思いますが…?」

「いや!俺は予め、お前に言ったはずだ!日にちが迫ってきたら俺にメールをよこして知らしてくれと!」

 と、勝ち誇った顔で言われた。

 あ、確かに言われていたな。

 だけど、

「でしたら、今週、ずっと送り続けていましたよ?毎日。」

「え?」

 先輩はさっきから携帯やパソコンを確認し始める。

 そして、

「…ない。ない!やっぱないじゃないか!!」

「ええ!そんなはずは…。」

 あ。

 そういえばこの人、いつも退社時にメールを全削除する癖があったよね。

 もしかしてその時に私のメールを見ずに削除したのでは?

 後は…、あ!確かあの時、

「先輩。あの時確か、手帳にメモしていませんでしたか?」

「手帳に、だと?」

 先輩は私に怒りをぶつけながら手帳を取り出す。

「あれ?先輩が持っているのって赤い手帳では?」

「は?それは去年の手帳だぞ?そこに書くわけがないだろ。」

 と言いつつ、先輩は青い手帳をデスクに置き、赤い手帳を取り出す。

 …なんで去年の手帳を持っているのだろうか。

 捨てればいいのに。

「…あれ?俺の目がおかしくなっちまった。なんでこっちの手帳の今月の予定が書かれているんだ?」

「…。」

 それは、あなたが間違って去年の手帳に書いたからではないですか?

 と、言いたいところだが、私が行っても逆切れされてしまう恐れがあるので言わなかった。

「…それは、あなたが間違って去年の手帳に書いたからじゃないの?」

「き、菊池先輩!?」

 なんでここに!?

 あ、そういえば、すぐに戻るつもりだったから誰にも言わずに席を離れたんだっけ。

「さっきから話を聞いていると、優君はまったく悪くないんじゃないの?」

「…それじゃ、俺が全部悪いってか?」

「ええ。」

 菊池先輩は言いづらいことをスラスラと告げる。

 菊池先輩ってすごいなぁ…。

「それじゃ、この企画どうするんだよ!?来週の月曜、しかも朝一の会議で使うんだぞ!?」

「そんなの、私の知ったことではないわ。あなたが何とかしなさい。さ、優君、デスクに戻りましょ。」

「は、はい…。」

 私と菊池先輩は自分のデスクに戻ろうとする。

 だが、

「…あなたなら、なんとか出来るのではありませんか?」

 他の課の課長が菊池先輩に話しかけてきた。

 これはおそらく、仕事の要請なのだろう。

 来週ってもう今日は金曜だし。

「そんなの、私の知ったことではないわ。そのミスはあなたの部下の責任でしょ?あなたが責任とるのが筋ってものじゃないの?」

 だがそれを、菊池先輩はサラッと拒否した。

 何というか、これぞ、菊池先輩だ。

 一応、上司にあたる人からのお願いだったわけだが、それをはっきりと断る。

 普通なら、少しくらい躊躇うところだと思うのだけど。

「そういえば、今回の企画って、上の方達も来るから、綿密にやらなきゃいけなかった気がしたけど、他の課のことだし、別にいいわよね。」

 さらりとプレッシャーをかけながらつぶやく菊池先輩。

 菊池先輩はひとり言のつもりだったと思うけど、

「「…。」」

 二名ほど固まっていた。

 そして、この世の終わりを実感しているような青い顔をする二人。

「…どうすればやってくれるのかね?」

 そして、課長の方が折れたのか、菊池先輩に相談する。

「…そうね。絶対条件として、二つ、かしら。」

「その二つとは?」

 菊池先輩は少し笑った後、

「まず一つ目は、優君への謝罪。そして、今回、この仕事を引き受ける代わりの特別休暇。そうね…四日、もらおうかしら?」

「「は?」」

 確かに、第三者から見れば、菊池先輩は無茶な要求をしているのかもしれない。

 だが、そんな無茶を許してしまうほど、二人は、二人が所属している課は追い込まれているわけだ。

「…わかった。許可しよう。」

「やり♪さ、まずは優君へ謝罪をしてね?」

「…すまなかった。俺が馬鹿やったばかりにこんな面倒ごとに巻き込んじまって…。」

先輩は思いっきり頭を下げる。

「あ、いえ!人間誰しも間違うのですから、気にしないでください!」

 かくいう私も今まで数え切れないほどのミスを犯し、その度に先輩方にフォローしてもらったわけだし。

「…俺、優がミスするところなんて見たことないのだが?」

「あれ?もしかして橘、覚えていないか?家庭訪問の前の日、優はミスしていたぞ?」

「…そういえば。」

 あの、私の恥ずかしい話は止めてほしいのですけど…。

「それじゃさっさと今回の企画の概要、聞かせてもらえるかしら?」

「「は、はい!」」

 そして、菊池先輩と二人は会議室に向かう。

「…何しているの、優君?優君も手伝うのよ?」

「え?私もですか!?」

「むしろ、優君がいなきゃ、こんな大きい仕事なんて出来ないわ。」

 訂正。

 私を含めた計四人は会議室に向かう。


「…と、いうことなんですけど、どうでしょう?」

「…なるほど。大体分かったわ。」

 会議は終盤に差し掛かりる。

「それで、日曜のお昼頃、ここに集まってくれないかしら?それまでに全資料を完成させておくから。」

「…ほんとに出来るのですか?」

 2人は菊池先輩に疑惑の眼差しを向ける。

「出来るわ。だからこそ、あそこまで要求したわけだし。それに、あなた達の課にいる人は全員、今週末に予定、入っているのでしょう?」

 それに対し、菊池先輩はあっけらかんと答える。

「は、はい…。」

 その会話に私は、

「…。」

 ただただ黙って聞いていた。

 私だって、周りの人達より子供である、という自覚はあるため、会議の場ではほとんど話さず、聞くことに徹している。

「…それでは、今回の企画の概要については話しましたが、何か聞きたいこと等はございませんか?」

「ないわ。」

「そ、そうですか。」

「それでは、頑張ってください。」

 そう言って、二人はペコペコしながら会議室を出る。

「…さて。優君、やりますか?」

「はい。」

 私達も会議室を後にする。


「それじゃ、まずは仕事の分担からね。」

「はい。」

 急きょやることになった仕事はかなり大きいので、こうして事前にどこをやるのか綿密に打ち合わせを行う。

「それじゃあ私がここからここまでやるから、優君は残り、お願いしてくれるかしら?」

「え?」

 それだと、菊池先輩が半分以上やることになるのだが…?

「そんなに一人で抱え込んで大丈夫なのですか?」

「それは誰に向かって言っているの?」

「あ。」

 確かに、菊池先輩ならなんとかなるだろう。

 そう思い、私は残りの仕事に目を通し、仕事を始めようとする。

「…ねぇ優君。競争、しない?」

「競争、ですか?」

 まさか、ここで何かレース的なことでもするのだろうか。

「どっちが早く仕事を終わらせるか、よ。」

「なるほど。」

 確かに、そっちの方がやる気が出るかもしれない。

「優君が勝ったら、長崎限定ちゃんぽん味のアイスをあげるわ。」

「な、なんだって!?」

 いつの間にそんなアイスを仕入れていたなんて!

「逆に私が勝ったら…。」

「勝ったら?」

 正直、いやな予感しかしない。

「…楽しみにしていてね?」

「…。」

 絶対に勝とう!

 私の明るい未来と、アイスのために!

「それじゃ、用意、スタート!」

 こうして、私と菊池先輩は勝負(仕事)を始める。



 そして休日。

「ん?あ、あぁ~。」

 とある男が起き上がる。

 男はベッドから起き上がると、

 プシュ。

 グビグビ。

「かぁー!やっぱ朝一に飲むビールは格別だな!」

 冷蔵庫からビールを取り出し、飲み始めていた。

 今日が休日というわけで、朝からビールを飲もうとしていたのだ。

 そして、頭が覚醒し始める。

「…そういえば、あいつら、大丈夫かね?」

 この男、工藤が言う『あいつら』とは、菊池と優のことである。

 あの二人は二日前から、大きな仕事を抱え込んでいるわけだが…。

「ま、あの二人なら大丈夫だろ。」

 あの二人が集中しているなら、どんな仕事もすぐに終わるだろう。

 …。

 とはいえ、少し心配だな。

 会社には今、あの二人だけ。

 つまり、菊池が優に好き勝手している可能性がある。

 …。

 はぁ。

「ちょっくら、様子見に行くか。」

 工藤はため息をつきながら着替えはじめ、部屋を出る。


 コンビニで軽食を買い、会社に入ると、

「ほら、優君。これ!これなら似合うから、試しに、ね?」

「嫌ですよ!その服は何なんですか!?」

「何って水着よ?」

「女性ものじゃないですか!?絶対に着ません!」

「いいから、ね?」

「絶対に着ませんから!!」

 二人は社内で追いかけっこしていた。

「…お前ら、何やっているんだよ…。」

 さっきより深いため息をつく工藤であった。


「それで、仕事は終わったのか?」

「ええ。後は最終チェックだけよ。」

「ほんとに仕事早いよな、お前らは…。もちろん、ミスなんてないだろうな?」

「あまり優君と私をなめないでほしいわね。」

「そ、そうか。それより、軽くご飯にするか?コンビニのご飯だけど。」

 工藤はレジ袋から買ってきたものを取り出す。

「わざわざありがとうございます。それじゃあ私はお茶、淹れてきますね。」

「おう。頼むわ。」

「はい!」

 そう言って、優は給湯室に向かう。

「それじゃあ私はこのカップスープをいただこうかしら?」

「それじゃ、優はこのナポリタンで、俺は牛丼か。」

 工藤はコンビニでもらっておいた箸やフォークを渡し、

「はい、お茶をどうぞ。」

「優君ありがと~♪」

「おお。いつも悪いな。」

「いえいえ。」

「それじゃ、」

「「「いただきます!!!」」」

 三人での遅めの朝食をいただく。

「ねぇ工藤。もしかして、お酒飲んだ?」

「?飲んだが、それが何か?」

「お酒臭い。」

「うっせーな!休日に酒飲んじゃ悪いかよ!」

 雑談も交えながら。


 そして後日、菊池先輩と私で進めた企画は成功した。

 上の方々も満足気で安心した。

「…本当に俺達の手柄にしてしまっていいのですか?」

「ん?べつにそんな手柄なんかいらないわ。私は優君と休みが取れるならそれでいいわ。」

「そ、そうですか…。本当に、ありがとうございました!」

 と、男は腰を直角に曲げて、頭を下げる。

「…別にいいわ。それより…。」

「はい。もちろん受理しておりますので、大丈夫です!」

「そ。ならよかったわ。」

 ちなみに、受理してもらったのは休暇届である。

 今回は、なんと五日分、つまり、一週間分休んでいいわけなのだ!

 さすがに申し訳ないと思ったが、

「こういう時は、素直に人のご好意に甘えるものよ!」

 という菊池先輩からのアドバイスをもらい、素直に甘えることにした。

 そして、

「最初の二日、私に付き合ってくれないかしら?」

 菊池先輩からこんな提案をされる。

「いいですけど、どこか行くのですか?」

「ええ!テレビ局よ!」

 こうして、私と菊池先輩の休暇生活が始まる。

次回予告

『小さな会社員と何でも出来るOLの休暇生活~1日目~』

二人の活躍により無事、会社のトラブルは片付く。菊池はその見返りとして5日の休暇をもらい、優と一緒に休暇を堪能することに。1日目はテレビ局へと向かう二人。二人はどんな休暇生活を送るのか。


こんな感じの次回予告ですが、どうでしょうか?

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