【幼馴染】
廊下を走る。この行為が何を示すかわかるか?
それは、学生にとって最も厳しいところである。チャイム寸前の遅刻。走りたくても走れない廊下。
先程の保健室のことから怖くなった俺は廊下を走り先生につかまってしまった。
「どうゆう事だ?私はチョークを取りに行けと言ったのにチョークはもらえず挙句の果てに廊下を走る」
俺の担任……生徒指導の先生でもある椎名先生は顔に青筋を立てて説教を始める。
この学校はやけに廊下のルールについて厳しい。
なんでも廊下を走って骨折させた前例があるらしい。
机を人差し指でトントンとリズミカルに叩いている。
「聞いているのか?宇都。私はお前を信じていたのに……なんで走ったのか怒らないから言ってみろ」
100パーセント怒るフラグ作ってますけど……まぁ俺はその理由を述べることにした。
「すみません。遅刻しそうだったので」
平然を装っているが嘘である。
保健室で知らない人に話しかけられて逃げてきたなどとはいえない。
情けないからな。コミュ障が出てしまった。
「そうか。でも走ったらだめだろ。最近の中学生は気が緩んでいる。以後気をつけるんだぞ」
「はい」
そう言って俺は教室へ帰された。
すでに5時間目の授業が始まっていたので入りずらい。
多少躊躇しながらも入らなきゃなぁと思い重く感じたドアを開けた。
…………視線が痛い。
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5時間目が終わり俺のところに人が少し集まってきた。
悪目立ちをしてしまった。
そんな中ひとりの少女が俺の元にやってきた。
「優月なんで授業遅れたの?」
こいつの名前は橘涼葉、親が高校時代の先輩後輩の関係で仲が良く俺達もよく一緒にいるようになった。
幼馴染と言うやつだ。生まれた時からの腐れ縁で保育園小学校と一緒だった。
「いやっ、廊下走って生徒指導室に連れてかれたんだよ」
「そっか」
それだけ言って自分の席に戻ってしまった。
昔はもう少し馴染みやすいやつだったんだけど、いつからかツンデレ属性になっていた。
まぁ、結局仲は悪くないないので良いのだが。
いつの間にか6時間目のチャイムがなり授業が始まった。
俺は爆睡してしまった。
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6時間目が終わり帰宅準備をしていたところ涼葉がこちらを見て手招きをしている。
何やら用があるらしい。
俺は居眠りのせいで体の節々が痛いが涼葉のいる一番前の席まで足を運んだ。
「何か用か?」
「このあとうち来ない?」
少し照れたように涼葉が言う。
元々顔立ちが美人なので頬を赤らめたりされると余計可愛くなってなんとなくだが見る場所に困ってしまう。
ちなみに胸は顔に見あった……俺好みの大きさである。
決して大きくはないがスタイルがいいのかそこそこ目立つ。
「いいよ。またパンの新作」
涼葉の家は家系でパン屋を営んでいるので仲の良い宇都家は、時々新作の試食をさせてもらえる。
「そっ。新作」
そう言って俺達は教室を出て一緒に学校をあとにした。
ちなみに四葉は「んねぇー」とか「ぬぇぇー」とか「ですです」と言ってギャル友と盛り上がっている。
そろそろ心配な域である。日々悪化してるぞ。