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現実世界で2週目始めます  作者: 柳翠
第一章 リスタート
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【再会】

「い、一条先輩!ど、どうもです」


し……しまった。話をするがほぼ1年ぶりの会話。突然のイベント発生に緊張してしまう俺氏。


いやっ、俺の前世を合わせると18年ぶりっ?!


しかし突然話しかけられるとどうもダメみたいだ。


しかも好きな先輩。


「どんな本探してるの?18禁?私居ない方がいいかな?それならごゆっくり続きをどうぞ」


「いや!なんか勘違いしてません。全然そうゆう本じゃないですよ!」


慌てて両手でぶんぶんしてしまった。


かえって怪しい感じになってしまった気がする。


しかしこの状況はやばい。なぜって……あいつがいるからだよ!


するとタイミングを見計らったように四葉が来てしまった。


「探してる本なかったです……ってえっ?!」


四葉もこの状況を察したらしい。


「あっ。えぇと――お、お兄ちゃん早く行こ。足疲れちゃった!」


おっ、いい対応だ。好きな人に、俺が違う人と(女子)と出かけてるなんて知られたくなかった。


「えっ?妹さん病気じゃなかったっけ?ほら今田舎で暮らしてるって言ってなかった?」


あっー覚えてたか。


そう、実の妹は少し色々あって田舎のばあちゃんちに母と暮らしている。母は時たまうちのことを気にして帰ってくることもある。


俺達は小学校の頃同じ図書委員会で人が少ない時一緒にだべっていた仲である。なのでその時俺はペラペラと色々しゃべっていたようだ。


ちなみに俺の完全な片想い。相手には想い人がいるらしい。


とりあえず先輩の頭に浮かぶ?マークを取り払わなければ。


「ええっと、その。いとこなんです。――そう!いとこなんです!」


「ああっーなるほどそう言うことかぁー。ついに宇都くんにも青春が来たかと思っちゃった」


ただいま現在進行形で青春が過ぎていきます。ありがとう先輩。


「あ、あのそろそろ帰らないといけないのでまた学校で」


これ以上喋っていたら色々ボロが出そうなのでとんずらすることにした。


もっと喋りたいけど心の準備がっ!


まぁ中学が同じなのでまた話す機会はあると思うが。


先輩もふむふむとしている。「わかった」と言ってバイバイと手を振って帰って行った。


「ふぅー緊張した。――あっ、ごめんそれじゃ帰ろっか」


そう言うと四葉も本を諦めて帰ろうとした。結構ガッカリしているな。ネットで買っといてやるか。


■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■


この日は卒業式の前日、なので図書館の利用率は少ない。


と、そこに「うぅー寒っ」っと言って図書館に来たのは今年卒業する一条先輩だった。


「おっおサボり仲間発見。ただちに駆除する!」


「何言ってるんですか?見てくださいちゃんと仕事してますよ」


という俺は今日来た人のクラス人数を数えていたのだ。


先輩は「冗談冗談」と言って、にひっと笑った。嘲る(あざけ)姿がいかにも小学生って感じだが、性格が幼稚園児みたいに好奇心旺盛なのだ。


そんな姿に俺は心をハートのキューピットさんに貫かれてしまったのだ。


「なんかごめんね。仕事任せちゃって」


そう言うと両手を顔の前で合わせて正座をした。


なんか拝められてるみたいでこの配置はいいな。


「あっ全然気にしないでください。卒業式前なので卒業生は仕方ないですよ。……ところで何しに来たんですか?」


卒業生が今図書館に来る理由はない訳だが……何故だろう?


「いやぁーこんな時まで本が読みたくなっちゃって一緒にいてもいいかな?」


さすが、この人は本当に本の虫なのだ。卒業前に本が読みたいとか、なかなか変わっている。


「どうぞ。何借りるつもりなんですか?」


「えぇーと――あった。これだよ今まで人気だったのかなかなか無くてさぁーこの日のために待っていたのだよ」


笑顔で本を探す先輩は、砂山にトンネルを作る時の幼稚園児にしか見えなかった。


笑顔で「これだよっ」と言って本を見せてくれた。


「蜘蛛の糸ですか」


「そう!すっごい楽しみなの」


その本は有名な芥川龍之介の作品『蜘蛛の糸』だった。


「俺的にその作品はあまり好きじゃないんですよね」


「ええぇーなんで?」


「だって犍陀多(かんだた)の気持ちになると可哀想じゃないですか?」


「ああっー君はそっち派かぁー」


「そっち派?どうゆうことですか?」


「んー。読んだら私の感想教えてあげる!――っとそろそろ休み時間終わっちゃうそろそろ教室もどろ」


そう言うと先輩は「廊下寒っ」と言ってパタパタと外に出てしまった。


俺はストーブの電源を切って戸締りをして外に出た。


先輩はもういなかった。


待っていて一緒に帰ろうと言うのが本心なのだがなかなか上手くいかないみたいだ。


□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□


そのまま先輩は本の感想を言わず卒業してしまったのだ。


その後、『蜘蛛の糸』は返却されずに行方不明のままとなってしまった。


俺だけが知ってるありか。なぜ返却しなかったのか謎であるが今更犯人を探そうなんて思わないので放置していたのだ。


一条先輩の心理は謎のまま俺も小学校を卒業したのだ。






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