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現実世界で2週目始めます  作者: 柳翠
第一章 リスタート
3/9

【改善】

チュンチュンと、気持ちのよい朝の太陽。


時間を確認しようと携帯に手を伸ばす。


パッと明るい光が俺の顔を照らした。寝起きには少々厳しい光の強さに目を細めてしまう。


――刹那。俺は重大なことに気がついた。


それは――待ち合わせの時間に遅れそうってこと。


普段友達と出掛けたりしない俺は、恋人なんてワンランク上のやつらと出掛けたりはしない。俺ぐらいになるともう100ランクぐらい上の階級に位置する天使と出掛けるのだ。


普通に考えると、絶対にあり得ないが。


ことの始まりは俺が39歳で自殺し、かくかくしかじかで特殊能力を得て、天使様とおちかづきになったのだ。

そしてかくかくしかじかで俺の伸びきった髪を切りに行こうと勝手に美容院に予約をいれてしまい、なぜか天使もついてくると言い出すのだ。


そんな、今までのかくかくしかじかな物語の回送を終えると、待ち合わせの公園についた。時刻は13時36分。


6分ほどの遅刻。


ひぃー怒られる。しかし俺はそこにいる天使に目を奪われて公園の入り口で足を止めてしまった。


そこにいる天使は、こんなぼろっちい公園には似合わない。

紅色のロングスカートに白い長袖。

上からさらにこの季節では寒いだろうと思える薄い上着を来ていた。


俺がいるのにきづいたのかこちらをパッと振り返り、ニパッと笑ってこっちだよーと言わんばかりに大きく手をふる。


端からみればただのデートの待ち合わせですね。


俺は友達とか言うのより1000ランクぐらい上の階級に位置する天使(めちゃくちゃかわいい女の子)と髪を切りに行くのだ。


髪の毛を切りに行くところロマンも何もない。


しかし走る度にバッサバッサと左右に振られる髪は邪魔くさいとしか言えない。


俺は、ごめん遅くなって、と言わんばかりに額の汗をぬぐった。


「おそい!30分も待ったんですよー」


ぶんぷんと怒ってはいるが、その姿からはかわいいの言葉しか出てこなかった。


「悪い。――しかしなんで30分も待ったんだ?待ち合わせの時間に6分しか遅れてないぞ?」


「なにいってるんですか?普通男子は、あぁ今日は女の子とお出かけするのか。そう思うと胸が苦しいよ。まだ約束の時間まで3時間んもあるのに待てないよ。っていって待ってるのが普通なんですよ」


常識でしょ?っていうように手を腰にあてて不服そうに睨んできた。


ってか3時間待つのが世のリア充男子の宿命なら俺は一生彼女要らない。


「待ち合わせなんかしなくても天界からすぐこれるんだろ?なら別に待ち合わせしなくても良かったんじゃないか?」


そう、俺の部屋(ベットの下)にはどうなっているのか天界から繋がるルートの出入り口になっているらしい。


まぁ突然ベットの下から天使が出てきても多少怖いが。


「もう少し私の立場を考慮して下さいよ。あなたの家族に見つかったら大変ですよ。何より、貴方にデートの待ち合わせというのを体験してもらいたくて」


少し嬉しそうに小悪魔的オーラを醸し出しつつ天使感のある婉然(えんぜん)たるさまに目を奪われてしまった。


しかし女の子と髪を切りに行くのはデートと言えるのか?


おっとそろそろ予約の時間になってしまう。


俺は「じゃ行きますか」と言ってから公園を後にした。


見慣れたはずの下り坂、いつもなら通学路という道でしかなく下るたんびに気分も下がっていったが、女の子(天使)と歩くだけでこんなにも景色が違うのかと驚嘆してしまう。


毎日一緒に登下校できたらな、と思いを馳せていると隣で「くしゅ」と可愛らしいくしゃみが聞こえた。


前から思ってたけど女の子はどうしてそんなくしゃみになるのか疑問である。


丁度俺はかなりの厚着をしていたので上にはおっていたパーカーを肩にかけてやることにした。


ふぇー以外と寒かった。


「あ、ありがとう」


俺の行動に驚いたのか、顔を赤面させてうつむいてしまった。


「いやいいよ。ところで今の俺の行動かっこ良かった?」

「今の発言がなければかなりかっこ良かった……ですかね」


なるほど余計なことは言わないようにしよう。


20分ほど歩いて目的地についた。


「っらしゃーいませぇー」


ラーメン屋?と入った瞬間思ってしまった。俺はさっさと受け付けに行き、客が少ないのですぐに椅子に座らせられた。


天使はファッション雑誌を読んでいた。


天使もそういうの読むのか?と思っていると。


「お兄さんずいぶん髪長いね」

「あっ、えっと、いつの間にか伸びていて、いたですん」


わぁぁあーですんってなんだよ!


女店員に突然話しかけられたので身構えもせずにいた俺はスキル人見知りを発動してしまった。


肩まで伸びた髪をわさぁーと広げる女店員。しばらく「ふむふむなるほど」となにかを考えてそれから「一気にかっこよくなっちゃおうか」と言って雑誌を見せ「どれがいいですかー」と言われた。


あまりよく分からないので「僕に似合いそうなので」と言ってしまった。坊主になりそうならとめればいっかと思い、後を任せた。


□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□


「お兄さん出来ましたよ。起きてください」

「ふぁ」


いつの間にか寝ていた俺は突拍子のない言葉を発していた。


……恥ずかしい。


「はいっ。後ろはこんな感じ」


もうひとつ小さな四角い鏡を持ってきて後ろ髪も見してくれた。


目元が隠れるぐらいの長さだったのに眼の上らへんで右に流されていてる前髪。

サイドの部分は癖っ毛からなのかピョンピョン外側に跳ねている。

後ろ髪は俺のチャームポイントでもあるピョンピョン跳ねをさらに跳ねさせていてうなじのちょい上辺りで首からひょっこりしていた。


たしかこう言う髪型をウルフといったか?かっこいいイメージのあるあの髪型だ。


「ありがとうございました。見違えるようです」


すると店員は「でしょでしょ」と言って、「かっくぅいー」とからかってくる。


俺はあははと流して会計をしに受付のところまで行った。そこで天使と合流した。今まで待合室のところで本を読んでいたのか目をしぱしぱさせている。どうやら本を読むのに疲れたようだ。


「悪いな待たせて」

「いや、大丈夫です。本読んでて楽しかったので」


少し眠そうな天使。あまり気を使わせたくなかったのでさっさと会計をすませ店を後にした。


「どうだ、結構見違えたと思わないか?」


俺は誉められるのを期待していたが「かっくぅいー(棒)」と返されてしまった。トホホ。


「なぁそう言えばさ天使の名前なんていうんだ?」


誉められなくて全然気にしてないよ、とがっかりを隠そうとして話題をふった。


ずっと心のなかで天使天使と言っていたが、さすがに名前で呼びたいところである。

しかし天使から帰ってきた言葉は驚愕の一言である


「天使に名前はないですよ」

「えっ!そうなの!?」

「はいっ。まぁ蟻みたいなものですよ。働き蟻、女王蟻、みたいな区別で特に名前はないんです」


そうなのか?よくゲームであるような名前がみんなについているとばかり思っていた。


しかし名前がないとなぁー呼ぶのに困るし……


「不便だな……なんか名前つけてもいい?仮の名前。だめか?」

「まぁ確かに多少不便ではありましたね。なんならお願いしてもいいですか?」

「わかった」


うーん。天使の名前だからな幸運?幸せ?うーん……あっこれでいいか。


勅使河原四葉(てしがわらよつば)何てどうだ!」


「安直ですねまぁいいですかね」

「いいのか!?」


自分で考えておいてなぜか不安になってきた。


「んじゃ勅使河原さん」

「長いですね。四葉の方でいいですよ」


天使を呼び捨てでいいのか不安だがそっちが言いと言うなら別にいいか。


しばらくして本屋があったので今日のお詫びということでさっき床屋で読んでた本の続きを買ってやることにした。


「やばいです。その髪型めっちゃかっこいいです」


今ごろ誉められた。


まぁ嘘であれかわいい子に誉められるというのはなかなか良いので「さっすがどんな髪型でも似合います。いっそ坊主にしては?」何て言ってるこいつはほっといて自分用の本を探すことにした。


「この本の続きは気になるがやはり新作に手をだすという選択もある。しかし金銭的に考えてシリーズ化されてるのは厳しいな全部買うのに金がかかりすぎる」


ぶつぶつぶつ。


と俺の癖なのか本探しのときのぶつぶつが始まってしまった。きっと回りから見たらキモいのだろう。


すると右斜め後ろから声がかかった。四葉の声ではない。


しかしこの声もまたなんと言うか……安らぐと言うか可愛らしいと言うか?猫みたいな?


……まぁ、語彙力が死んでしまうぐらい可愛らしい声である。


宇都(うと)くん。なにぶつぶつ言ってるの?救急車?」


その声の主は四葉のものではなく……何を隠そう俺の初恋の一個上の先輩。一条希(いちじょうのぞみ)さんのものである。








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