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16・競りに参加しよう

※みなさんからご意見いただき、少し内容を変えてみました。

 そこから二時間ほど馬車に乗って、やっとのこさユニオールに到着した。


「いっぱい人がいるにゃ!」

「すごーい!」

「あんっあんっ」


 ユニオールの活気に、二人(と一匹)が感嘆の声を上げた。

 商業都市ということもあり、人も多く賑わっているのだ。


「少し歩いてみようか」

『では、われも元のサイズに戻るとしようか』

「ダメだ」

『どうして?』

「街の人がビックリするだろ」


 忘れそうになるが、ワッセルは魔狼まろうなのである。

 本来、元々でかい俺を乗せられるくらい、体もでかい。

 こんなヤツが街中に現れてみろ。あっという間に、街中はパニックになるに違いない。


『しかし……戦闘力が……』

「そんなもん、ユニオールでは必要ない」

『主が危ない目にあっても、咄嗟に助けられないんだぞ?』

「魔狼に助けられるような場面なんてこないから」

「くぅーん」

「嫌なら、街の入り口でお留守番だぞ」

「…………」


 渋々といった感じで、ワッセルも納得してくれた。


 という感じで俺は二人(と一匹)を連れて、歩き出した。

 商業都市ユニオールは、王都のように整備された街並みではない。

 所々、道にはみ出るような形で屋台がいくつも出ている。


「師匠? あれはなにをしているんだい?」


 その中の一つの屋台を指差し、ミディアが質問してきた。



「300ギラ!」

「400ギラ!」

「400ギラ……400ギラ……他に誰かいないかい?」

「450!」



 屋台を囲むようにして人だかりが出来、手を上げて数字を言い合っている。


「ああ。あれは『競り』っていうヤツだ」

「競り?」


 ミディアが首を傾げる。


「そうだ。ああやって、自分が出せるお金の数値を言い合って、一番大きな数を言った人に購入権が渡るんだ」

「にゃ、にゃんと! それは面白そうだね」

「よかったら、一度参加してみるか?」

「にゃーっ!」


 ミディアが人だかりに突っ込んでいく。


「あんな馬鹿な猫耳娘が、商品を落札出来るわけないわ」


 呆れるように、後ろからイヴが競りの風景を眺めていた。


「イヴは競りをしたことあるのか?」

「何度か。ユニオールに買い物来た時に」

「お目当ての商品は落とせたか?」

「ダメだった。というか、途中で怖くなって逃げ出しちゃった」

「仕方ないな」


 実際、競りに参加している人々は殺気立っている。

 ミディアやイヴのように小さな子が参加したら、圧倒されてしまい、最悪泣いてしまうかもしれない。


 それなのに、臆せず競りへと参加したミディアは大したものか。


「では……次は高級薬草! 100ギラから始まるよ!」


 高級薬草か……。


 ただの薬草とは違って、香りや見た目がよく高値で取引されるものである。

 ちなみに、外面そとづらがいいだけで、他の薬草と効果自体は変わらない。

 そのせいで、治療薬として使われるというよりも、香水の材料やハーブとして使われることがほとんどだ。


「相場は一枚2000ギラといったところか……」


 さて、競りの神髄しんずいとは、どれだけ安く商品を手に入れることが出来るかに尽きる。


 ミディアのお手並みを拝見させてもらおう。


「相場は一枚2000ギラといったところか……」


 さて、競りの神髄しんずいとは、どれだけ安く商品を手に入れることが出来るかに尽きる。


 ミディアのお手並みを拝見させてもらおう。


「100ギラ!」


 うん、偉そうなことを言ったわりには、まずは順当に金額を述べたか。


 しかし。


「200ギラ!」


 すぐに他の人から、それ以上の金額を言われてしまった。


「し、師匠! どどどどどうすれば!」

「慌てるな。慌てずに、少しずつ金額を上げていったらいいじゃないか」


 本来は、いきなり大きな金額を言って、周囲の戦意を消失させてしまう戦法もありだろう。


 だが、それをミディアにやらせるのは、あまりにも怖かった。

 こいつ……いきなり「10万ギラ!」とか言い出しそうだしな……。


「さ、300——」


 そうリネアが手を上げようとした時。


「400ギラ!」

「500ギラ!」

「1000ギラ!」


 怒濤の勢いで次々に言われてしまった。


「む、う、うにゃあ?」


 その勢いに負けて、ミディアは続けることが出来ない。

 というか、後ろから見ていても明らかに混乱していることが分かった。


 競りにおいても戦いにおいても、冷静さを失ってしまうヤツはやられてしまうのだ。


「2000ギラ!」


 高級薬草の順当な金額をコールされてしまった。


「にゃー……」


 意気消沈しているミディアは、わなわなと震え口を開くことすらも出来なくなっていた。

 こいつ、高慢こうまんだが戦いの場には不慣れすぎる。


「……仕方ないな」


 放っておいてもよかった。

 しかし、あまりにもミディアが高級薬草が欲しがってそうな視線を送っているし、俺も余興としてこういう場に身を投じてみたかった。


「2000ギラ、2000ギラ! 他にありませんか?」


 だから——。


「1万ギラ」


 手を上げて、俺は金額をコールする。


「い、1万ギラ? ほ、他にありませんかっ!」


 司会は慌てるようにして、周囲をキョロキョロとするが、これ以上の金額をコールする者が現れるわけもない。


「で、では! こちらの方、高級薬草1万ギラ落札でーす!」


 無事に競り落とすことが出来たみたいだ。


 俺は司会から高級薬草を手に取った。

 周囲からは「どうして高級薬草なんかに、1万ギラ払うんだ? 金持ちの余興か?」というような視線を向けられたが、これはこれで良いのだ。

 パーティーにいる頃、いっぱい働いたから、これくらい屁でもない。


「師匠! お金持ちだにゃ!」


 ミディアが小さくジャンプしながら、近寄ってきた。


「おう」

「その高級薬草はどうするつもりだい?」

「やるよ」


 とミディアに高級薬草を投げる。


 なんとなく競りに参加してみたかっただけだ。

 高級薬草自体は、正直どうでもよかった。


「……! 師匠、ありがとう! 家宝にするにゃー!」


 ミディアは嬉しそうな顔をして、高級薬草をほっぺですりすりしていた。


「さて、ミディアの社会勉強も終わったとこだし……なんか食うか?」

「「うんっ!」」

「あんっあんっ」


 なんせここは商業都市なのだ。食べ物を出している屋台も、たくさん道ばたに並んでいる。


「コロッケでも食うか」


 その中の一つの屋台に立ち寄り、人数分のコロッケを購入した。

 もちろん、ワッセルの分もだ。


「はふっはふっ、美味しいにゃー」

「あつあつすぎて、火傷しそう!」


 はふはふ言いながら、二人が美味しそうにコロッケを食べる。


「旨いか?」

「あんっあんっ!」


 どうやら、ワッセルも気に入ってくれたらしい。


 コロッケを二つに割る。すると、中からほわっとした潰したジャガイモが顔を現した。

 それを口にしてみると、途端に優しい暖かさが口中に広がった。


「師匠! オカワリ買って!」

「猫耳娘だけずるーい、イヴもー」

「はいはい」


 外出すると、ついつい財布のヒモが緩んでしまうというものだ。


 それからしばらく、ベンチに座ってコロッケを味わっていた。

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