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13・ビーフキノコを食べよう

 ワクワクしながら、村へ戻ると……。


「君達はずるいんだにゃ! どうして、そんなに戻ってくるのが遅いのかね!」


 プンプンと怒りながら、ミディアが駆け寄ってきた。


「ああ、悪い悪い」

「お仕置きだにゃー」

「勘弁してくれよ。代わりに良いもん見つけてきたから」

「良いもの?」


 首を傾げるミディアに、俺は採れたてのビーフキノコを見せてあげる。


「くんくん、良い匂いだね。これは?」

「ビーフキノコっていうヤツだ」

「ビ、ビーフキノコ? そんな貴重なものが、森に生えてたのかね!」

「え、ミディア。知ってるのか?」

「当たり前だよ! ビーフキノコを知らないヤツなんていないんだにゃー!」


 興奮気味にミディアが声にする。

 ……俺、知らなかったんだけど。


「まあいっか。とりあえず、みんなで食べよ」

「賛成!」

「賛成だにゃ!」

「あんっあんっ」


 イヴ、ミディアとワッフルが声を弾ませた。


「さて……どうやって食べようか」

「やっぱりシンプルにいきましょう。丸焼けキノコといこうよ」

「おお、それは良いな」


 ここはイヴの意見に賛成しよう。


 それから、俺達は手分けして古紙や落ち葉、石などを掻き集めた。

 家の前で石を積んで、その下に古紙や落ち葉を摘んで、火打ち石で火を付けようとする。


「……湿っているのか、なかなか付かないな」


 何度かカチカチとやってみるが、一向に付く気配がない。


「どうしよ、おとーさん」

「なあに、心配するな。ミディア、ちょっとここでカチカチとやってくれるか」

「分かったにゃ」


 ミディアに火打ち石を預ける。


 カチカチ。

 小さく火花が散ったのを見て、俺は急いでこう詠唱する。


「……火の神よ。我に力を貸してくれたまえ……フレイム」


 すると、俺の手にぽわぁと赤く優しい光が宿った。


「うわぁ。付いた付いた!」

「にゃー!」


 ボッと火が付き、その上に置いた網を加熱し出した。


「おとーさん、魔法も使えるの?」

「まあ、全然大したことないけどな。これくらいなら、イヴだってミディアだって、練習すれば使えると思うぞ」

「さすが、ボクの師匠だね!」


 ……こんなので、いちいち褒められてたらむずがゆい気持ちになるが、悪い気分じゃない。


 実際、俺に魔法の才能はない。

 魔力なんて、ほんの一つまみくらいしかないだろう。

 さっきの魔法だって、火打ち石によって生じて火花に力を送り込んで、やっと火が付いたくらいなので、戦闘では役に立たない。


 しかし、王都にいた頃に超スパルタの魔法使いがいた。


『魔法くらい使えるようになりなさいよ! これだから、最近のおっさんは……』


 魔法使いのフラヴィに教えられ、なんとかこれくらいは使えるようになったのだ。


「どうしたの? おとーさん、顔色悪いように見えるけど」

「大丈夫かね!」

「あんっあんっ」


 ……はっ!

 ほっぺをワッセルの大きい舌で舐められて、正気に戻る。


「だ、大丈夫だ。ちょっと考え事してただけだから」

「それだったら良いけど」


 イヴが不安そうな顔を向けてきた。


 200連勤した頃を思い出して、無意識に体が恐怖を覚えたんだろう。

 やはり、あの頃は思い出すだけでも健康に悪い。


「……よし。とりあえず、網も温まってきたし、キノコを焼こうか」

「「はーい」」


 ビーフキノコとバターを網の上に載せる。


「良い匂い……」

「むにゃ〜」

「あんっあんっ」


 二人(と一体?)の言う通り、網の上に載せた瞬間に、煙と一緒に香ばしい匂いが鼻まで届いた。


「ほんとに牛肉みたいだな」


 目を瞑っていたら、牛肉を焼いていると錯覚してしまう。

 さらに、ビーフキノコは牛肉よりもしつこくなく、野菜を焼いている時のような匂いもあった。


「いつまでも嗅いでいられる」

「ビーフキノコの匂いだけで、世界の美食家がお金を払う……とも言われているわ、おとーさん」


 物知りのイヴが補足説明をしてくれた。

 うむ。義娘ながら優秀だ。俺も勉強しなくちゃな。


「もう、大丈夫じゃないかな?」


 イヴが箸でビーフキノコを持ち上げたりしながら、そう言った。


 イヴは料理が得意だ。それは、モーガン爺さんの世話になりながらも、今まで一人暮らしをしていたことからも分かる。

 なので彼女の言うことを信じるべきだろう。


「よし……みんなで食べようか」

「あんっあんっ」

「もちろん、ワッセルもだ」


 例え犬だろうが、俺は差別したりなんかしない。


『……われは犬ではない。魔狼だ』


 俺の心を読んだのか否か、ワッセルがそう否定した。

 ごまかすように、俺はワッセルの頭をくしゃくしゃ撫でてやる。


「あんっあんっ」


 そうしてやると、嬉しそうに顎を上げるワッセル。


「「「いただきます!」」」


 お皿に丸焼けのビーフキノコを載せて、俺達は一斉にキノコを口にした。


「——っ!」


 ……旨い!


 思わず言葉を失ってしまうほどであった。


 目をつむって、ゆっくり噛んでビーフキノコを味わう。

 噛むたびに、中から油がじゅわぁ〜と出てきた。

 良質な肉を食べているような食感と味。それでありながら、お肉を食べ続けた時の独特のしつこさがなく、さっぱりしている。


「美味しい〜」

「にゃーっ!」

「あんっ! あんっ!」


 どうやら、俺以外も同じ感想らしい。

 あっという間に、一発目のビーフキノコ達がお腹に収まった。


「みんな、まだお代わりいるか?」

「「いる!」」

「だよな、ワッセルは?」

『いるに決まっているのだ』


 ビーフキノコは全部で三十本あった。

 まだまだなくならないのだ。


 再度、ビーフキノコを網の上に載せ——、



「おっ? すごい良い匂いするけど、なんだ?」

「肉を焼いているんじゃなかったのか? え、キノコ?」

「ボクも食べた〜い!」



 ようとした矢先、どこからともなく俺達の周りに人々が集まってきた。


「……やっぱりバレたか」


 これだけ良い匂いなのだ。

 外で焼いていたこともあり、狭い村全域に伝わるのは無理のない話だった。


「これは、ビーフキノコだよ! みんなで食べよう!」

「「「「ビーフキノコっ?」」」」


 イヴがそう言うと、みんなが驚きの声を上げる。


「そんな、貴重なものいただいていいのか?」

「ああ。それに、ビーフキノコは森に生えていたものだ。別に俺が育てたわけでもないからな」


 独り占めするつもりもないのだ。


「にゃー……ボクはもっと食べたいな」

「くぅーん」


 ミディアとワッセルは少し嫌がっていたが、強く反論しようとはしなかった。


「ただ数は限られている。子どもから食べるのが良いだろう……」

「わーい」


 そんなことを言いながら、残りのビーフキノコを焼いていく。

 ちょっともったいないような気もしたが、これで村のみんなが笑顔になれるなら、安いもんだろう。


 あっという間に、ビーフキノコはなくなってしまった。

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