食事会
零に連れられ、食事処に来ていた。
学園内の小さい食事処だが生徒会が気に入っている場所なんだそうだ。
木造の店内に明るすぎない照明で落ち着いた雰囲気になっていた。
俺たちの貸し切りになっているようで生徒会メンバーと俺たち以外は客はいなかった。
大きな机に生徒会メンバーと俺たちがそれぞれ料理を前に向かい合っていた。
食べながら自己紹介ということで向かって一番左の位置する女性が先陣を切る。
「この学校の生徒会長、高等部三年、佐倉花見でっす。よ・ろ・し・く・ね!」
あざとい笑みを見せ自己紹介する美女。
ピンクに染まった髪をなびかせ、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる、お洒落も欠かせない自他共に認める美女と言ったところだろうか・・・しかし、俺はゾッとする何かを感じた。
拓武は彼女を見てかなり緊張した様子でガチガチになり、隣に座る須賀はやれやれといった表情を浮かべている。
「生徒会庶務、三年、須賀剣悟。改めてよろしく。」
「私の幼なじみなのよ!」
付け加えて腕を絡めながら言う佐倉。
「うるさい、黙れ。食べづらい。」
慣れているのか、諦めているのか振りほどくことはなく、箸を左に握り直し食べ続ける。器用なものだ・・・
「まーたそんなこと言ってー、友達出来ないって毎回言ってるでしょ。」
「あー、分かった、分かった。」
変わらないトーンであしらう。
こちらも分かった。これは完全に慣れて、諦めている。
「夫婦漫才はいいから、次行くよ!生徒会会計、渡辺媒徒!俺も三年だ。よろしく!」
夫婦漫才をぶち切り自己紹介を進める媒徒。かなり佐倉さんに睨まれてますよ。
「生徒会副会長、一年、雨霧零。すぐ戦うことになるけど今は楽しもうか。」
この後に戦うことになっているから今は、と付けたのだろう。
最後に一番右側の少女が口を開く。
「零先輩の弟子の、紀久玲奈です。中等部四年生です。よろしく、お願い、します。」
緊張で堅くなっている紀久。
しかし、見た目は零より胸は大きい様だが、背や雰囲気は中等部にしても小さいのではないだろうか・・・
「私も、この子も飛び級してるんだ。」
そう付け加える零。
「私は一年。この子は四年飛び級してるんだよ。」
あっさりと言いのける零。
紀久は四年飛び級と言った。実際は小学生だということだ。そう考えると胸の成長は異常じゃないか?
「そんなに見るとこの子が怯えちゃうよ。確かにおっきいからね-。私だって小さくないのに同じくらいなのよー。」
「そ、そんなことありませんーー。」
ポカポカと顔を赤くしながら零を叩く紀久。
「そんなことあるでしょ。私には劣るけどこの柔らかさ、いい揉み心地ー。」
手をワシワシしながら寄っていく佐倉。
「やめろ馬鹿。」
「なにー?いやーん、焼きもち?」
「うぜえ、いいからそれはやめろ。」
紀久に寄っていく佐倉を首根っこを取り席に座らせる。
「じゃあ、こちらも自己紹介を・・・、俺は中等部四年、篠崎桐也だ。よろしく頼む。」
「同い年!?」
顔を突き出し声を上げる零に、以前同じ反応を見せた三人がクスクス笑う。
「私も中等部三年、結城姫路です。よろしくお願いします。」
どこか似ていると感じたのか、姫を睨み付ける佐倉。
そのせいで手に力が入る。
無言で佐倉の頭を叩く須賀。
意外といい音が鳴り響いた。佐倉は頭を埋めて痛がる。
「同じく佐々木美礼よろしく。」
いつものように暗いトーンで自己紹介する美礼。
「もっと明るくしたら可愛いと思うんだけどなー。出来ないの?」
復活して早々明るく言う佐倉。
「いつも言ってるんですけど、直らないんですよ。」
それに加勢する姫。
「じゃあ、外見から変えてみるってのは?」
「髪とか短くしたり、服を可愛くしたこともあるけど、恥ずかしくて外に出られなくなっちゃって・・・」
「なにそれ、見たい!写真とかある?絶対可愛いでしょ!」
「写真はないけど可愛かったですよ。今も可愛いけど、より可愛くなったの!」
「見たい!絶対見たい!やろう。今すぐやろう!」
意気投合する女子力の高い二人。顔を真っ青にする美礼。
かわいそうに・・・、俺には何も出来ないからこっちに助けの眼差しを送るのはやめろ。と首を振る。
絶望の顔に変わる美礼。
なんか・・・すまない。
だが美礼は拓武の腕を引っぱる。
さっきからいつ自己紹介すればいいか悩んでいた拓武。
今だと示され声を出す。
「高等部一年、棚橋拓武です。よ、よろしくお願いしましゅっ。」
噛んだ・・・
顔を赤くし、ワタワタする拓武。
優しく見守る姫と佐倉以外の一同。
姫と佐倉は聞かずに席を離れ、美礼変身計画を考え始める。
カオスだ・・・
「それで、戦う機会があるということだが、多対一で毎回戦ってるのか?」
思っていたことを零に聞く。
「そうよ。でも厳密には違うの。多の人たちも敵同士、商品の私は一人で倒した人が受け取れる。だからとどめを刺した人が商品を受け取れる。協力して、というよりもみんなを蹴落としてでもとどめを刺す、ということだから思っている以上に楽よ。」
「なるほどな。どっちかっていうとバトルロイヤルって感じか。」
「そういうこと。」
笑顔でそう答える零。
「それでも毎回倒されないのは異常。」
呟く須賀。
「そうかなー。君も勝ち残れると思うけど・・・」
そう聞いてくる零。
「俺も学園でのバトルロイヤルでは毎回生き残るな。」
「でも、弱小学校・・・」
そう聞く美礼。
「弱小なの?一体どこから?」
「岐阜県立建築工業学園だ。」
「「「「!?」」」」
驚きを隠せない四人。
「それって、初代から四年連続で優勝した建築工業学園!?」
「ああ、教科書に載ってる建築工業学園。」
目を丸くする四人と、やっぱり・・・と思っているこちらの二人。
「弱小ってどういうこと?」
零が聞いてくる。
当然だろう。優勝したこともある学校が弱小になるなんてことは珍しい。
「その学校で強かったのは最初の一学年だけだったんだ。それに昔は今みたいに弟子を作る人たちも少なかった。だから、他の学年は弱く、すぐに廃れたんだろうな。」
「そうなんだ・・・けど、君はそんな学校を変えようとしてるんだね。」
全国大会に出場することが俺たちの目的だ。
「結果的にはそうなるのか。」
「結果的に?」
「全国に出ることだけが今の目的で動いている。だがそうなったら自然と変わることになるだろうな。」
「でも、初代の二の舞にならないとも考えられるよね。」
正直俺が卒業してからの学校はあまり興味無かった。だが、蒲がそんなことを許すわけがないだろう。
「まあ、そうならないようにするさ。」
全国に出場し、廃校を阻止することができたなら、何年も続く。
そんな学校がどうなるかも考えなければいけないと思うが、あまり実感が持てない。
今は今だけのことを考え、未来のことはその時に考えようと思った。
みんなそれぞれ食べ終わり、もうすぐ時間だと全員で戦いの場へと向かった。