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学園戦争  作者: 奥村しんや
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始動

石川県立衛生専門学校

「おぅい!てんめー!どこのもんだ!コラー!!」

「そうだぞ!コラ!!」

 いきなり絡まれてしまった。

 一体どうしてこうなった。


一月二十五日

 準備期間始まりの日、仲間を集めるべく最初の目的地、石川県立衛生専門学校に四時間ほどかけて到着し、今、自分の時計は十時頃を指している。

 大きく煌びやかな宝飾が施された立派な門の奥に、豪華絢爛で岐阜建工の四倍ほどの大きさもある西洋のお城を思わせる外観の学校がそびえていた。

 門は・・・開いてない。どこかに止めようかと考えたが、周りは木々に囲まれて駐車場は見当たらなかった。

 学園戦争が始まってから建てられた学校はほとんどが攻められにくい様に木々や、池に囲まれた所に建てられるようになったからだ。

 仕方なく道路脇に車を止め、とりあえず門の前まで行き、門を叩く。

 すると、門の奥から返事が返ってきた。

「何者だ。」

「岐阜県立建築工業学園の篠崎桐也。」

「何用だ。」

「外交での訪問に来た。」

 無機質な問いに形式上の返答をする。

 少し時間を置き、門の隣のにある人一人通れる大きさの扉が開かれ招かれた。

「外交においてこの学校には規定などはございません。ご自由にお探しください。」

 先ほど問いかけていたであろう表情の変わらない男性がお辞儀で送り出してくれた。

 

「さて、どうやって優秀な人を探そうか。」

 キョロキョロしながら誰か人捜しに協力してくれそうな人を探す。

 しかし、目に入った人間は優秀な選手では無く、ガラの悪そうな二人組だった。

「おい、テメー!何よそもんが勝手に入ってんだ!!」

「そうだ!ここは兄貴の島だぞ!」

 前方から白の軍服だったのだろう物を黒く染め、ギザギザに袖を切った大小の二人組が大幅で歩み寄ってくる。

「おぅい!てんめー!どこのもんだ!コラー!!」

「そうだぞ!コラ!!」

 大きい方が顔を近づけ言い寄ってくる。

 ここは外交は自由に出来るのではなかったのか?

 門の前の男性を見ると、小さく頷く。殺って良いって事か?

「無視してんじゃねーぞ!こら!!」

 ガンつけながら言ってくる。

 さすがにずっとこのままって訳にもいかないか。

「はあ、んで、俺になんか用か?俺は外交で来た岐阜建工の篠崎だ。用が無いなら時間の無駄だからどっか行ってくれ。」

 だが面倒臭かったから適当返答する。

「うおい!何命令してんだ!てめー!ぶちのめすぞゴラぁ!!」

「そうだぞ!ゴゥラ!!」

 全く話になっていない。

 面倒くさいことになった。

 二人とも腰に差した刀を抜き構える。

「やめとけ、お前らじゃ相手にならん。」

 目の前で構える二人を見て率直に思ったことを伝えたが、逆に血が昇らせてしまったようで、やる気を上げてしまった。

「皆の物!見よ!!この俺様、今城こんじょうたけるが敵であるこの糞ヤロウに制裁を下してやる!!」

「さっすが兄貴!!」 

高らかに述べる大きい方。合いの手を入れている小さい方。

 その大声に呼応し、ギャラリーが増えてくる。

 が、ギャラリーの視線は俺の方に向き、

「頑張ってください。」

「あいつらを調子づかせんなよ!」

 と、何故か応援される。

 どうなってるんだ?

 俺を応援して何か利益でもあるのか?

 同じ学校の生徒に応援されないこいつらのことをなんかみじめだと感じてしまう。

「いくぞ!ゴラーー!!」

「おう!!」

 かけ声と同時に勢いよく迫ってくる。

 掲げられる刀。

 刀が振り下ろされ、

 空を斬る。

「お前ら弱すぎ。」

 次の瞬間二人は地に伏した。

 集まった人たちの歓声が響き出す

「一発殴っただけで気絶かよ。喧嘩売ってきたにしては安い買い物だったな。」

 そうだ。この状況を使わせてもらおう。

 そう、生徒が集まったこの状態を・・・

 歓声が止むと再び俺に注目が集まる。

「えーと、外交でやって来たんですが、誰か専門学の優秀な人か、その人を知っている人はいないですかね?」

 大勢の前で話すことに慣れてないので緊張し、頭を掻きながら聞いてしまう。

 周りの生徒達はザワザワし始め、あいつはどうだ、こいつはどうだと議論し始める。

 が、すぐにそれが止んだ。

 一人の人物の登場によって・・・

「それなら、わたくしに任せては頂けませんか?」

 今まで会った生徒の中でずば抜けて大人びた存在感を放つ少女。しかしその外見は幼く、中学生と言われても疑わないほどだった。

「あんたは何者なんだ?」

 警戒よりも純粋に気になり聞いてみた。

わたくしは三年、月野つきの百合ゆり。ここの生徒会長兼総大将を務めさせて頂いております。よろしくお願い致します。」

 一つ一つの仕草が洗練されていて、生きている世界が違うのでは無いのかと思わせるほどだった。



 薄暗いライトが照らす部屋。

 それほど広いことは無いが、今集まっている人数なら余裕で入ることが出来るほど十分なスペースがあった。

 いくつかのパソコンも完備されてはいるが、使っているのは一人しか使っていなかった。

「何人集まった?」

「七人だ。」

「随分と少ねえな-おい。元々は二十人の大所帯だったじゃねえか!」

「私たちの他に活動している人もいるよー。四神に付いてたりー、情報を探りに行ってたりーー。役職的に来られない人もいて-、軍に居たりー、教師になってたりーー。」

「教師だからって来れるだろ。俺たちも現に来てる訳だし。」

「私たちが暇なんでしょ。」

「・・・感じる。」

「で、俺たちを集めた理由はやっぱりあのことだな。がば。」

「そうだ。三十年もの戦いに勝負をつける。」

「けどー。まだ分からないことは沢山残ってるよー。」

「だが、急がなければいけない状況になってきている。」

「・・・処刑。」

「たしかなのか?」

「確かな情報だ。」

「わたしとー、佳子よしこさんの情報を疑うのー?」

「悪かった。続けてくれ。」

「俺たちはこれまで、奴らに見つからないように活動を続けてきた。だがこれからは表に学園を置くことで俺たちが活動しやすくなる。」

「どういうことだ?」

「要するに、私たちの活動が見つかりにくくなるって事。まあ、用心するに超したことはないけど、今まで出来なかったものに手を出すことも出来るようなるのよ。」

「・・・楽」

「いや、楽ではねーよ。」

「これで、今まで得られなかった情報が得られる。四神に関係する物を消そうとした奴らのおかげで動きやすくなった。」

「だが、時間が無いことには変わりない。急いで動かなくてはいけないようだな。」

「では、みな、自分のやるべき事をやってくれ。」

 その言葉を最後にパソコン前に二人、部屋から四人出て行き、一人椅子に座ったままだった。

「・・・感じる。」

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