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学園戦争  作者: 奥村しんや
2/27

篠崎桐也VS蒲光紀

一月二十四日


「私は君らを勝利へと導く使命がある!それは私が君らの総大だからだ!だから私は・・・・・・・・・・」

 全校生徒が入ってもまだ余裕がある大きな会場。

 演説が部屋全体をこだまする。

 壇上には総大将の巨漢。この学校の生徒会長であり、戦争時の総大将である。

 その側には日本刀を提げた男と銃を提げる男が付いている。

 司会席には両腰に日本刀を提げた女性が立っている。

 そして周りは眠そうにしている学生、熱心に聞いている学生、寝ている学生・・・が座っている。

 人数は1600人ほどが集まっている。全校生徒ほとんどが来ていた。

 ・・・来ることを強制されていた。壇上の人間に。

 今は開戦式という名の苦行の真っ最中だった。

 

 眠たくなる演説をなんであんなに長々と語れるのだろうか。

 早く終わらないかな。

 なんなら私も二人の戦いを見たかったな。

 って、そうなると呼びに行く人が居なくなるから駄目か。

 早く終わらないかな。

 佳子は開式してから2時間ほどこんなことを考えていた。

 隣に立っていた教師たちも疲れたのか椅子も無いので床に座り込んでいた。

 教師側にも椅子が欲しいですね。


学園稽古場

 二人がぶつかり合っていた。

「そろそろウォーミングアップはいいだろう。本気でいくぞ。」

「いいぜ、いつでも大丈夫だ。かかってきな。」

 

 互いに構えを改めて取り、一事の静寂が生まれた。

 彼らは武器を使わず掌を構えている。

 先に動いたのは桐也だった。

 桐也は蒲に向かって走り出す。

 掌を放つ。

「お前にしたら甘い攻撃だな。」

 そう言うと簡単にカウンターを放つ。

「これが餌だとは分かってると思うがな。」

 そう答え受け止める。再び放つ。

 互いに放ち、逸らし、受け止め、放つを繰り返すが攻撃を当てることは互いに敵わずまた距離が離れた。

 新たに構え、動くは蒲。

 蒲の周りに風の渦が巻き、掌に集まっていく。

「技を出すのは初めてだな。これが本気だ。風扇ふうせん風掌波ふうしょうは!!」

 掌を放つ。

 距離はあるが掌に集まった風の渦が波状となって襲い来る。

「まじか!ぐぅぅぅぅぅぅ。」

 咄嗟に防御したがそれでも風の勢いは止まらず吹き飛ばされ、背中に強い衝撃が生まれる。

 地に落ちるが、倒れずすぐに蒲に襲いかかる。

 蒲はすぐに来るとは思っていなかったらしく、驚き構えを急いで取ろうとするが間に合わない。

「見積もりが甘かったんじゃないか?風牙ふうが餓狼掌連撃がろうしょうれんげき。」

 両掌に風を纏う。

 そして、凄まじい勢いで掌を放つ。何度も何度も。

 掌が当たる度に服は斬れ、肌は裂かれ、血が流れる。

 最後の一発と振りかぶると風に吹き飛ばされた。


講堂

 あれから変わらないペースで1時間経っていた。

 熱心に聞いている人が減り、頭を下に向けている人が増えている。

 まだ終わらないかな。

 もう聞いている人の方が少ないだろう。

 壇上にいる方だったら分かるだろうに何でまだ話をしているんだろう。

 終わらないかな。

 早く終わればいいのに。

 いっそ終わらせようか。

 壇上の奴を。

 佳子の陰が暗く深くなってゆく。

 演説が終わるのはこの数分後だった。


学園稽古場 

 蒲は風の渦に包まれ球体となって浮いていた。

「これが風扇:防風陣ぼうふうじん。風扇の防御陣だ。」

 さっきから攻撃をしようと防風陣に飛びこんで行くが、風に阻まれて跳ね返されていた。

 桐也の体はボロボロになり、全身傷だらけになっていた。

「この陣を超えられる技をお前は持っていないだろう。お前が使う風牙は風の力を纏って攻撃力を強化する技。だが俺の風扇は風の力を操り風で攻撃する技。一撃は強いが近くに来られなければ怖くねぇ。」

「以外にあんた、ビビりだな。そんな殻に籠もってるなんて。だがそれを破らねえと攻撃できねえのは確かに厄介・・・。」

 すると防風陣から風の刃が降ってきた。

「もともとこれは対多用に開発した技だからな。防御しながらの攻撃も考えてあるんだ。」

 桐也は何度も放たれる刃を躱し続けていた。

「それがあんたの本気か?」

「本気だよ。この技は現役の時にもよく使っていた技でなあ、この技を越えられた奴はそうそういねぇ。お前はこれを越えられるか?」

 桐也は胸の前で手を合わせると魔方陣が展開する。

「風よ、我が身に纏い力と成せ。魔属性付加エンチャント。」

 桐也の周りに風が纏う。

 桐也は空を駆け、蒲に向かっていく。蒲が放つ風の刃も当たる前に弾きとばす。

「風牙:風掌天解ふうしょうてんげ。」

 防風陣に桐也の掌がぶつかり合い、消し飛ばす。

 そのまま蒲に掌を放つ。

 しかし、蒲もうまく弾き、回避する。

 距離が離れた場所に着地する二人。

「まさか魔術を使うとは、ますますあいつに似てきたんじゃないか?」

「見覚えの無い奴に似てると言われても自分じゃ分からんな。」

 話をまじえ二人は構え直す。

「そろそろ終わらせようか。風扇:風波籠ふうはろう!!」

 蒲が放つ掌から風の龍が桐也に向かって一直線に襲いかかる。

 桐也は魔方陣を展開すると風がまとまり、弓と矢が形作られる。

「風よ、矢と成りすべてを打ち砕け!!」

 矢を放つと、ものすごいスピードで進み、風の龍を二つに割り蒲へと向かって行く。

「風扇:風波籠二扇ふうはろうにせん天籠てんろう。」

 蒲が床に掌を放つとすぐ前から風の龍が昇り、風の矢を喰らう。

 二人は同時に駆け、ぶつかり合う。

「「肺朽掌はいきゅうしょう!!」」

 二人の掌が交差しする。

 飛ばされる二人。

 壁に衝突し、むせ返る。

 すると転送装置が解除され、現実世界に戻った。



 転送を解除したのは佳子だった。

「ようやく転送の時間よ。総大将の話が長すぎて、教師みんな途中から座っていたわ。床に。」

「俺たちみたくか?」

「あんた達みたいに楽しんでの疲労ならまだいいわよ。」

そういう佳子の顔には怒りの表情が見てとれた。

「そんなにやばい話だったんすか?」

 総大将の話を聞きたくなかったから戦っていたのだが、佳子さんの様子を見るとどんな物だったのか興味が出てきてしまう。

「ええ、精神的にくるようなやばいものよ。ただただ退屈な話を聞かされる苦行よ。あんな物。マジで

ざけんじゃねえって感じだ。くそっ!」

 段々言葉に怒りが入ってくる。

「・・・怖い、怖いよ。佳子さん。」

 怯えたふりをしながら茶化す蒲。

「あんたに頼まれてなかったら最後まで聞く必要無かったんだかんな!あとでうまいもんでも食わせろよ。」

「わ、分かった。あんまり高い物は駄目だが、まあ、いいだろ。」

「ああ?」

「いえ、何でも頼んでください。」

 俺は見えなかったがあまりにも恐ろしい形相だったのだろう。今までこんなに速く意見を変えたのは初めて見た。


 三人はすぐに講堂に向った。

 そこには、ずいぶんと眠そうにしている人たちであふれ、こっちまで眠くなるように感じてしまうほどだった。

「なんだ?誰かが催眠魔術でも使ったのか?」

「そうだとしたら使ったのは総大将だわ。」

 もう疲れ果てたかのように気の抜けた返事を返す佳子。

「そんなに疲れてるのか。すまないな。こんなこと頼んで。」

 珍しく謝る蒲。

 そんな蒲を見て佳子は・・・

「キモっ。」

「キモって何だよ!ひどくないか?珍しく謝ったってのに!!」

「珍しかったからキモかったのよ。いえ、元々だったかしら・・・」

「元々であってたまるか!!」

 クスクスと笑い出す佳子。

「何だよ!本気で言ってるんだぞ!」

「いえ、何でも無いですよ。ふふっ。」

 


「それでは転送を開始します。」

 司会を担当する副会長が宣言すると、その場に居た生徒、教師が転送された。


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