始まりの入学式
元東風四季の星雪唄雨と申します。やっと大学に受かったので執筆活動をゆったりと再開してきたいと思います。よろしかったらどんなことでもいいので感想などをお待ちしてます。
そこは、すすきが揺れる黄昏時の草原だった。そこには、見渡す限りのすすきと種類はわからないが天を突くように伸びてる大きな樹、そして幼いころの自分と少しだけ年下の女の子がいる。幼い自分と女の子は樹の太い枝からぶら下がったぶらんこに乗って漕がずに会話をしている。だけど、会話しているはずの俺は少女と自分が話している事は何故かモザイクが掛けられた様に理解できない。だけど、話し続けて空が闇に包まれた頃、その少女が別れ際に言う言葉ははっきり聞き取れる。
「また明日この樹の下で会おうね!お兄ちゃん」
という何か大切な事を思い出させそうな言葉だけは、、、
午前5時、ピピピ、ピピピていう規則正しい電子音のリズムに叩き起こされる。俺は顔をしかめながら起き上がり、小さな丸い机に置かれたデジタル時計を叩いて止め、また寝ようとベッドに向かおうとするが、突然部屋のドアが勢いいよく開けられ、黒髪ロングヘアーで賢そうな顔が印象的な従姉、若木夜露が
「朝だよ~起きなさい」
という優しめの言葉とは裏腹に分厚いマンガ雑誌が俺の後頭部目掛けてぶん投げられる。それは華麗に宙を舞い後頭部にクリーンヒットして俺はその痛さに床に突っ伏して悶絶する
「何するんだよ!夜露ねぇ!」
「また寝ようとした罰よ」
「いや、、、、そうだけどさすがに分厚いマンガ雑誌ぶん投げるのはどうかと思うよ!下手したら死ねるよ!」
夜露ねぇはにっこり笑って言う。
「柊は丈夫だから多分、大丈夫よ」
「俺の体のスペックそんなに高くないからね!?」
俺と夜露ねぇは二年間ほぼ毎日している会話しながらリビングに向かう。なぜ2年間ほぼ毎日かというと、俺が小さい時、交通事故にあって父さんと母さんは亡くなってしまったらしい。さらに事故のときの衝撃で俺は記憶消失になった。そんな俺を引き取ってくれたのが、母さんの兄にあたり、夜露ねぇの父にもあたる晴樹おじさんだ。おじさんの家族は俺を温かく迎えてくれて、育ててくれた。
だけど、2年前おじさんが仕事の都合でシンガポールに転勤することになり俺と夜露ねぇは一緒に行くか、それとも残るかの選択を迫られシンガポールって何語話すの?って感じになって結局、俺と夜露ねぇは宮崎の都城市の駅裏のマンションで2人暮らしながら電車で私立中学に通っている。
ちなみに今日は入学式であり、生徒会長である夜露ねぇは勿論忙しいわけで、俺も生徒会員でもないのに何故か会場設営を無理矢理手伝わせられる事となり始発の電車に乗るために普段より1時間早起きしている。そんなわけで急いでる俺達はササッと朝食を食べて、夜露ねぇがアイロン掛けしてくれた制服を着て、足早に駅に向かった。
そして見事、電車で2席を取れた俺は
「練習しなきゃ噛む、、、!」
と焦っていた、夜露ねぇの入学生への式辞の練習に付き合って電車での移動時間を過ごしたのであった。
―――――――――
1時間後俺達は神武中高一貫校前と書かれた駅で降りて
「終わったら、駅集合ね」
「OK」
と軽く会話して夜露ねぇは宮崎市のコンサートホールに。俺は学校にそれぞれ向かう。突然だが神武中高一貫校について話しておこう
神武中高一貫校とは、宮崎出身の神武天皇の様な素晴らしい人材を育てようという目的で創られた学校だ。1学年約300人、生徒総数約1800人を誇る超マンモス校だ。
それゆえ、高校と中学合同でやる入学式のあるコンサートホールに生徒全員が入れないわけがないので、入学式はコンサートホールには在校生の数人が行き、それ以外の在校生は中学、高校用の体育館でライブビューイングで式に参加する方式で行われる。
俺と数人の男子生徒はライブビューイングに使うでっかいスクリーンを運び、お偉い人々用のパイプイスを並べ終わると、一緒に準備に駆り出されていた、友人の1人{無駄にイケメン(変態)}の赤澤集人がニヤニヤしながら話しかけてくる。
「おい柊、聞いたか?」
「何をだよ。目的語を言えよ。目的語を」
「今日の入学式で答辞を読む中1がすげぇ可愛いって噂だよ!」
「いや知らないけど、、、ていうか知ったところでどうしようもないだろ」
「夢がねぇな柊。もしかしたら同じ部活になってキャッキャウフフできるかもしれねぇじゃねぇか!」
「お前、この学校でそれを言うのか」
因みにこの学校は生徒数と比例して部活と同好会の数が超多い、その数65個である。そんなにあるなかで同じ部活になるなどほぼありえない。
「それを言うなよ....だが!俺は少しでも可能性がある限り諦めねぇ!」
「はいはい、わかったわかった。もうそろそろ始まるからほら、並ぶぞ〜」
と集人を適当にいなして、主席番号順に並んで体育座りして待つ。
数分後、、、在校生の数人による毎年、新入生の度肝をぬく校旗を使ったパレードみたいなダンスが披露される。それが終わったら教頭の挨拶で入学式が始まる。あとは普通の学校と同じように退屈なお偉い方々のお祝いのお言葉が5連続であり、まぁ俺はそのうち3個は寝てたが
やっと夜露ねぇによる新入生歓迎の式辞のばんになる。夜露ねぇは一言も噛まずにすらすらと読み終わったら台に式辞の書かれた紙を置き舞台を降りる時に一瞬カメラに向けて多分俺に向けて、可愛いくどや顔している。ちゃんと噛まずに読めただろという意味を込めて、それに思わず一瞬、従姉という事を忘れて純粋に可愛いと思ってしまった、、、たぶんこれがギャップ萌えていうやつなのだろう。
とか俺が考えているうちに、高校の方の新入生歓迎の式辞が終わり、進行役をしている白髪の教頭が
「新入生代表の答辞」
というと、演壇に続く木の階段に1番近い席の少女が大きく返事して立ち上がり緊張しているのだろうか壇上にちょっぴりおどおどした感じに上がる。
その少女は背が少し低めで茶色がかったショートカットの髪で守ってあげたくなるような、とても可愛いらしい少女だ。
「ーーーこれから学業に励みたいと思います。新入生代表、桜時小萩」
とアニメ声で答辞読み終わったら、また緊張しているのかおどおどしながら席に戻る。てか、右足と右手が一緒に出てるからあれは絶対緊張しているなぁ。
最後に昔の生徒が作ったといわれる校歌を歌い入学式が午後1時には終わったが、俺は朝と同様に椅子とスクリーン、プロジェクターの片付けを手伝わせられ、それが終わったのが午後3時、乗ろうと思ってた電車には乗り遅れ、さらに次の電車が来るのはまさかの45分後という泣きっ面に蜂だ。ちなみに一緒に帰る予定だった夜露ねぇは
『用事あったの思い出したからさき帰る☆(ゝω・)v』
というメールが1時間前に届いていたので、すでに電車に乗っていてもうすぐ都城駅だろう。
まぁ落ち込んでも仕方ないので、俺はとりあえず、駅の近くのショッピングセンターに向かった。入学式の会場からそれほど離れていないからか、真新しいうちの学校の制服を着た生徒が親と一緒にいるのを見かける。俺は数人並んでいるマイクナルドでテリヤキバーガーのセットを食べ、本屋でいくつか雑誌を立ち読みして時間を潰す。アニメの情報誌に読み耽っていてふと、時計を見ると3時42分つまり電車が着く3分前になっていた。俺は雑誌を棚に戻し、全速力で駅まで走る。駅に着いたときには丁度ホームに電車が着いていた、俺は痛む横っ腹を抑えながら最後の力を振り絞って階段をかけあがり、電車に飛び乗る。その直後アナウンスと共にドアが閉まる。俺は入り口近くの椅子に座り入学式の準備とさっき走った疲れのせいかすぐに眠ってしまった、、、
三股駅のアナウンスで起こされた俺は、次の駅が都城駅なので少しぼーとしながら鞄から定期を出して立ち上がりドアの前に立つ、数十秒後アナウンスと共にドアが開き後ろから押し出されるように駅のホームに出る。それから寝ぼけながら駅員に定期見せて改札を通り抜け、駅の裏側に続く地下道を通って家に向かう。オートロックの入り口を開けエレベーターを上がり、404と書かれたドアの鍵を開けて入る。靴を脱いでいると、リビングに続く部屋から夜露姉ねぇが水色のポケットがたくさん付いてるエプロン姿でおたまを持ちながら出てくる。
「お帰り。遅かったわね、、、昼御飯ちゃんと食べた?」
「電車の待ち時間長かったからその時に食べたよ。晩飯は何時から?」
「7時からよ。あっそうだ柊、お風呂入る前に部屋に荷物置いてリビングに来なさい」
と夜露ねぇは俺に急かす様に言ってリビングに戻っていった。俺は夜露ねぇに言われた通り部屋の机の上に荷物を置きに何か夜露ねぇに怒られる様な事をしたか考えながら行く。夜露ねぇが
「柊、お風呂入る前に部屋に荷物置いてリビングに来なさい」
と言う時はだいたい俺が怒られる時だからだ。思い当たるのが入学式で寝ていた事しかないが、まぁそれもやばいが夜露ねぇと俺は会場別だったし気づくわけがない。いったい何の事で怒られるのだろうか、、、
俺は恐る恐るリビングへ続くドアを開けた、、、
リビングには何時もと違うところがひとつあった。
背が少し低めで茶色がかったショートカットの髪で神武中の真新しい制服を着たここにいるはずのない少女がソファー生真面目に姿勢よく座っていたのだ。
俺はその少女とは初対面だが、一回見た事がある。そう、さっきの入学式で、、、
夜露ねぇが鍋をかき混ぜながら
「小萩ちゃん、そいつが私がさっき言ってた愚弟よ。ほら柊自己紹介しなさい」
と言う。俺は夜露ねぇが早くリビングに来させたかった理由を理解し、同時になぜ此処に小萩さんがいるのか疑問に思いながら自己紹介をする。
「え~と、初めましてや夜露ねぇの弟の若木柊といいます。小萩さん、よろしくお願いします?」
それに対して、小萩さんは立ち上がり
「柊先輩は先輩なんですし敬語じゃなくてため口で、名前も呼び捨てで呼んで下さい!これから一緒に住む桜時小萩です。柊先輩よろしくお願いいたします」
とアニメ声で俺が抱いてた疑問の以外過ぎる答えと共に可愛らしく礼をしながら言うのであった、、、